ガンダムビルドデューラーズ 清掃員外伝   作:地底辺人

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第三話「巡り逢い」

 

 季節は初夏。桜の花びらはすっかりと散り緑生い茂る季節。勇気高校の校庭でも美しい緑が生い茂っている。

 

「やっぱりこっちは暑いなあ……。」

 

 白い肌の女性、ヒナセ・シイナは額の汗を拭いながら校庭を歩く。北の大地で長年過ごした彼女にとって本土の気温はまだ慣れない。

 

「先生、顔色悪いですけど大丈夫ですか?」

 

「……あら、サイトくん、おはよう…………。」

 

「大丈夫じゃ、無さそうですね………………。」

 

「平気だよ…………。ただまだちょっとこっちの気温に慣れなくて…………。」

 

「今日は悪い日になりそう……………………。」

 

「あ、先生………………!」

 

「聞きたい事、あったんだけど。また今度にするか。」

 

 シイナはそう言うと、とぼとぼと歩いて行った。サイトはその姿を見て聞きそびれた事があったが野暮と思いそのまま教室へと向かった。

 

 サイトは寄り道する事なく自分の教室である「2-1」へと足を運ぶ。いつもなら少し早めに学校へ来て理科準備室に寄ってから教室へ向かうが今日は自宅を出るのが少し遅かった事もあり直接来ることにした。

 

「よう、サイト。今日も眠そうだな。どうせまた遅くまでガンプラいじってたんだろ?」

 

「おはよう、アキタケ。まあ、そんなとこかな。」

 

「全く、マジに好きなんだな。ガンプラ。」

 

「うん。僕にとってトクベツだからね。」

 

「はは、じゃあそんなサイトにいい情報教えてやるよ。」

 

「本当か!?」

 

「ああ、例の『ガンダムリパルド』の噂だけどさ………………。」

 

***

 

「……………………何年ぶりかな…………。」

 

 イヌハラ・フウトは勇気高校の近くの公園に赤と黒のバイクを止め、懐かしい思いを馳せる。

 

 彼の、彼らの旅のはじまりの場所。そして何の運命のいたずらなのか今まさに彼の再出発のスタート地点となろうとしていた。

 

 なぜこの場所なのか、理由や理屈よりも運命や縁がここにまた彼らを呼び寄せたのだろう。

 

「…………さて、ぐずってねえで行くか。」

 

 大きく深呼吸をして、校門の方へと向かう。新入生でもあるまいのに少しドキドキする。いつになっても校門を潜る事には慣れないものだ。

 

『…………ん…………………………………?』

 

『…………へへっ、あいつァ、あン時のクソガキじゃねぇか。生きてりゃこんな事もあるもんだねえ……。』

 

 煙草の煙がもわもわと爽やかな初夏の空に漂っていた。

 

「…………ええっと、確か、『ふうちゃんが、よく知っている場所』に行けばいいんだよな。」

 

 フウトは慣れた様子で旧校舎の方へと向かう。その間学校の景色を眺めながら昔の情景を思い浮かべる。

 

 校庭や校舎には所々変わったところがあるが概ね変化はない。あえて変わったことを挙げるなら自分たちの頃に建てられた所謂「新校舎」はもう新校舎らしくは無くなったという事だろうか。

 

 校庭の風も木々の匂いもまだ若い可能性を感じられる事も昔のままだ。

 

 フウトは「彼が最も知っている場所」へゆっくりとした足取りで向かう。

 

「えっと、確かここに隠し扉があるんだよな。懐かしいな。」

 

 フウトは手慣れた手付きで隠し扉のドアノブを握りガチャッと扉を開ける。子供の頃を思い出すと少しニヤっとしてしまう。

 

「………………………………………………。」

 

 何年ぶりだろうか。

 

 それは彼の青春そのものだった。

 

 小さな作業机

 

 皆で勝ち取った全国大会優勝のトロフィー

 

 旧式のGPDの筐体

 

 照明もなく狭い物置のような部屋であるが昔のままだった。仲間と共に切磋琢磨しあったあの日々が次々と思い出されていく。フウトにとってこの空間はあまりにもトクベツ過ぎた。ただ立ち尽くした。立ち尽くす事しか出来なかった。

 

「………………ちくしょう…………。別れはしたはずなんだけどな………………………。」

 

「………………帰ってきたよ、俺。」

 

 フウトは涙を必死に堪えて小声で力強くそう呟いた。彼の道のはじまり。だが、彼はまだ道の途中。

 

 そしてここは彼にとって間違いなく道を繋げるランドマークなのだ。

 

 フウトが感傷に浸っていると何やら扉に近づく足音が聴こえる。コンコンとヒールの音だ。しかし今のフウトには関係無かった。それにここを知っている教員など限られているとも鷹を括っていた。

 

 コンコン

 

 ドアを叩く音だ。

 

「まじかよ。今いいところだぜ?」

 

 フウトは慌てて涙を拭う。

 

「校長先生、もう来てますか?」

 

「………………………!!?」

 

 フウトはこの女性の声をよく知っていた。

 

「まだなのかな?うーん、とりあえず先に入っておこうか。」

 

「…………シイ…………ナ……………………?」

 

 女性が扉を開いた瞬間とほぼ同時にフウトは振り返った。

 

 新緑の爽やかな風が2人の間を吹き抜ける。

 

「……え……フウトさん…………………………?」

 

 白い肌に美しい琥珀色の瞳。髪は肩まで綺麗に伸びサラサラと風に揺られる。右耳には蒼白く煌めくイヤリング。

 

 彼と彼女は無言の時でお互いを見つめあった。もう何年も会っていないのだ。その空間は彼ら2人だけのものだ。永遠にさえ感じた。

 

「………………本当にフウトさん……なんですか…………?」

 

「…………………あぁ…………俺だ、シイナ……。」

 

 そう一言だけやり取りをするとシイナはフウトに抱きつき胸を叩き出す。

 

「もう、ばかばかばか。フウトさんのばか。帰ってきたんだったら言ってくださいよ……。」

 

「しかもどうしてここなんですか…………。もう………本当にあなたって人は…………。」

 

 泣きじゃくるシイナの髪をそっと撫でフウトは強く抱きしめる。

 

「──ごめんな。」

 

「ただいま。」

 

「帰ってきたよ。シイナ。───」

 

「──おかえりなさい。」

 

「あなたは本当に間の悪い人です。───」

 

 初夏の季節にも関わらず雪の匂いが少しだけあたりを包んでいた。

 

「そういえばシイナ、今日は俺の事『不審者』って言わなかったな。」

 

「あ、あれは初めて会った時の話じゃないですか。それに、あの時のフウトさん、本当に不審者だったんですよ!!」

 

「改めてそう言われると結構傷つくな…………。」

 

「こればっかりはフウトさんが悪いんですからね!」

 

「──やれやれ、相変わらず仲がいいねえ、2人とも。」

 

 白衣を纏った男性がいつの間にか扉の前に立っていた。

 

「先生…………!!アララギ先生!!」

 

「やあ、ふうちゃん。長旅ご苦労様。」

 

「おかえり。」

 

「ただいま。」

 

 白衣の男性、アララギ・ユウリは相変わらず暖かく優しい人であった。かつての恩師とかつて彼の元で教えを請うた場所でこうして再開する事になるとは思ってもみなかった。

 

「校長先生、今日いらっしゃるのはてっきりユウキさんかと思っていましたよ。」

 

「驚いた?まあ俺がふうちゃんを呼んだんだよ。シイナにはサプライズで会わせてあげようと思ってね。」

 

「さて、積もる話も色々あるだろうがそろそろ本題に移りたいんだけどいいかな?」

 

「もちろんです。そのためにここに来ましたから。」

 

「えっと、わたしはここにいても良いんですか?」

 

何やら真剣な話がはじまりそうな雰囲気を察したシイナはそう問う。

 

「うーん、そうだねえ。シイナは一旦保留!授業に行って来なさい。」

 

「………承知しました。では失礼します。」

 

 シイナは物分かりよくそう言って部屋を退出した。まだ状況を把握出来ていないフウトの頭には所々クエスチョンマークが浮かんでいたがアララギは後で追い追い説明するといった素振りを見せた。

 

「さて、ユウキくんからはどのくらい話を聞いてるんだい?」

 

「えっと……………………。」

 

「そういや、ほとんど何にも聞いてなかったな…………。」

 

 フウトは頭をかきながらよそ見をする。アララギはそれを見てやれやれといった表情を顔に浮かべる。それを見たフウトは咄嗟に兄の発言を思い出し口にする。

 

「『俺の愛した世界を守ってくれ』って、兄からはそう言われました。」

 

「なるほど。『俺の愛した世界』か…………。」

 

「ユウキくんがGBNのテスターとして開発に関わっていた事は知っているね?」

 

「はい、詳しくは聞いてませんがなんとなく。」

 

「彼はその中で『光』を見たと言っていたよ。」

 

「『光』ですか?」

 

 アララギは部屋にあるトロフィーや写真などを細い目で見ながら話を続ける。

 

「だが同時に『闇』もあるといっていたよ。彼はどうやらその2つを守りたかったみたいだ。」

 

「『闇』もですか?」

 

「それらは彼曰く、表裏一体だそうだよ。」

 

「まぁ、少し曖昧な話になったね。本来彼自身がこれらに関わるべきなんだけど調査の途中で突如暗闇に呑まれたらしくてね。GBNのデータそのものが破損、今じゃダイブする事自体も危険みたいなんだ。」

 

「そこでだ。アテにされたのが私だったわけ。」

 

「でも私も今や母校の校長なんぞになってしまってね。そこで私がよく知る腕利きのデューラーを集めてるというわけだ。」

 

 フウトはここで先ほどから気になっていた「校長」という言葉に食いつきたかったが空気を読み本題の話に沿って会話を重ねる。

 

「じゃあ、ハヤシやエクも!?」

 

「彼らもかなりの腕利きだからねえ。まあ、ふうちゃんはユウキくんの推薦だったけどね。」

 

「ユウキくんはその『闇』と『光』がいずれGBNになんらかをもたらすと感じ取っていてね。代わりに調査をしてもらいたい。というのが彼の用件みたいだね。」

 

「なるほど。かなり曖昧で実感はありませんが兄の意思は俺達が継ぎます!」

 

「その覚悟はもうとっくに出来てます。」

 

 フウトの脳内にに過るのは最後にGPDで相棒と闘った事。

 

 フウトのホルダーから蒼いボディが一瞬煌めく。アララギもそれを見逃さずフッと微笑む。

 

「───兄弟の想いがカタチになり翼となったか…………。」

 

「ふうちゃん!私も出来る限りのサポート、情報提供は行う!この部屋も寝泊まりでもなんでも使いたまえ!!」

 

「本当ですか!先生!ありがとうございます!!」

 

 普通に考えれば卒業生といっても部外者が子供たちの学び舎に混じっているというのはおかしな話であり認められる事でもないがアララギに常識は通じない。彼は常識以上に大切な事を理解している。そんなアララギだからこそ教え子達に慕われるのだろう。

 

「さらに!隠れ大本営にはこんなものもッ…………!!」

 

 アララギは嬉しそうに笑みを浮かべながら屋根裏に繋がる天井を開け梯子をかけ足取りよく登り出した。

 

「ささ、ふうちゃんも来なさい。」

 

「マジかよ、これじゃマジの秘密基地じゃねえか…………!!」

 

 男ならみんなが好きなシチュエーション。フウトも目を輝かせながら屋根裏へと向かう。

 

「どうだい!ここからGBNへダイブ出来るようにシステムを組んである!!」

 

 ドヤ顔である。普通、教え子のためにここまでするか?いやここまで行くと絶対先生も学校で合法的にGBNにダイブしたいのではと思ってしまう。

 

 家庭用GBNの筐体が並べられ複雑な回線で繋げられている。インターネットもこの屋根裏に繋げられて照明も付いてあり完備である。見たところ最大4台接続できそうだ。しかしよくもまあこんなにも丁度いい場所があったものだ。

 

「昔、馬鹿な生徒が勝手に屋根裏を開拓したなんて言えないなあ…………言えない。」

 

「先生、何か言いましたか?」

 

「いやいや、たまたまだよ。こんなに丁度いい場所があるのは。うん。」

 

 横目で汗を拭いながら言うアララギ。これでも校長になったらしい。

 

「そうそう、ユウキくんが言っていたよ。」

 

「『GBNは様々な人が集まり、繋がり、大きくなる場所だ』ってそんな世界を彼は誰よりも愛していたよ。」

 

「ふうちゃん、君も新世界で無限の旅に行ってきなさい。」

 

「──その翼で君達どこまでも翔べるさ。」

 

 アララギはそう言うと梯子を降りて部屋から出て行った。翼、いつの間にその事をと思うとやはり彼の凄さを感じられる。何年経っても彼の持つ凄みは変わらないものだ。

 

「無限の旅か………。どこまでも翔んでやるよ。」

 

「なぁ、ソフィエルカイザー…………!!」

 

***

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 校内では6限終了の鐘が鳴り響く。

 

「っしゃー、やっと終わったなー!!」

 

「うん。でもアキタケ、ほとんど寝てたじゃないか。」

 

「うっ……。やめろよサイト、俺は放課後のために体力を残してたんだぜ?」

 

 本日の授業を終え放課後の時間にウキウキする生徒、サイトとアキタケ。下校の準備をしながら話を続ける。

 

「で、行くだろサイト?リパルドに会いにさ!」

 

「もちろん!今度こそ僕が勝つよ…………!!」

 

 2人はにっこりと顔を合わせて元気よく教室を飛び出した。

 

──GBN 高地エリア内

 

「ここに、リパルドが現れるのか?」

 

「噂だと、最近この近接戦を得意とするダイバーが集まる高地エリアでフレーム構造が独特で太刀を振るう赤黒の機体が決闘を申し込んでるらしい。」

 

「へぇ、それってまさにリパルドじゃないか!アキタケすごいな!」

 

「まぁね。」

 

 スプリッター迷彩を施したグフのコックピットの中でオノサカとアキタケは会話する。レーダーで索敵しながら狙いの獲物を探す。

 

「──やべぇ、翔び過ぎたなあ。迷っちまったよ。」

 

 一方、この高地エリアに何も知らずして幻想的な翼を広げた蒼の機体が上空を漂っていた。

 

「……………!!?なんかいるぞ!オノサカ!」

 

「ほんとだ!追ってみよう……!!」

 

 2人はレーダーを見ながら反応する対象物を追う。そしてオノサカは1人あの日出会った鈍い輝きと似たものを感じ取っており1人ワクワクしていた。

 

「会いたい…………彼に…………もう一度ッ…………!!」

 

 グフは武器を構えホバーで移動し対象物へとどんどん近づく。もうすぐ、もうすぐ。2人は疑いもなく近づいていった。

 

 レーダーの対象物と自分の現在地を示す点が重なる。

 

「なんだ、あの機体…………?」

 

「…………リパルド…………じゃない…………?」

 

 そこには赤黒とは真逆の蒼と白のボディ、幻想的な青紫のグラデーションがかった翼を大きく開き、背中に付けられた太陽炉から緑のGN粒子が散らす、まるで天の皇帝が、そこに佇んでいた。

 

「ん?そのグフどっかで………………。」

 

「やばい、気づかれた。オノサカどうすんだ。見るからに強そうだぞ!」

 

 オノサカは額に汗を滲ませながらニヤリとしグリップを強く握った。この感覚、相手は間違いなく強者。だからといって引く理由もない。

 

 ボイスチャットの回線を相手に繋ぎオノサカは宣言する。

 

「僕と闘ってください!!」

 

「ほぅ、面白ェ。かかってきな!!」

 

「丁度散歩すんのには飽きてきたところなんだッ…………!!」

 

 もちろん機体の正体は蒼の皇帝、ソフィエルカイザーとフウト。彼にとってGBNで2度目の闘いが始まる。

 

 互いに臨戦体形に入ると暗黙の了解で交戦する。

 

 先手を取ったのはフウト。

 

「そらよ!!」

 

「くっ…………。巧い…………。」

 

 ソフィエルは中距離戦闘用にカスタムされたGNスナイパーライフルIIを用い上空からグフを的確に襲う。

 

「おい、この射撃の精度まじかよ!」

 

「アキタケ、しっかり捕まっててよ!」

 

「やっぱり簡単に倒せそうな人じゃないみたいだ………!!」

 

 グフはモノアイを光らせ移動速度を上げながらソフィエルに近づく。しかし蒼い機体から繰り出される精密な射撃が全く彼を寄せ付けない。

 

「ほれほれ!どうしたよ!」

 

「くっ、これなら…………!!」

 

「どうだッッ………………!!」

 

 グフは右腰にあるグレネードを対象物目掛けて投擲。そして目の前で爆発。ソフィエルの動きが止まる。

 

「グレネードか!くそっ、機体が動かねえ!」

 

「いまだぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 グフはそのまま勢いよく懐に飛び込み蹴りを1発入れる。力強い蹴りはソフィエルを吹き飛ばし転倒させた。

 

「まだ、終わらないよッッ…………!!」

 

「いけえええええ!オノサカァァッ!!」

 

 グフは攻撃の手をやめない、ビームサーベル2本を展開しパワーあるバックパックを吹かせ距離を詰め追撃を行う。

 

「やるじゃねぇか、でも少し行儀が悪りィぜ?」

 

「何っ………………!?」

 

 ソフィエルは追撃の一撃目、グフのヒートサーベルの一振り目を転倒した状態からバーニアを素早く吹かし避けると同時にビームサーベルで反撃を行う。

 

「なんて対応力だ。ほんの一瞬、なんなんだこの人…………?」

 

 ソフィエルとグフはビームサーベルで激しく打ち合う。お互い譲らない中オノサカは一気に攻め立てる。

 

「そろそろ、下がれよッ…………!!」

 

 グフはソフィエルの斬撃を弾き胴を空をにした瞬間、2本のビームサーベルを胴目掛けて横から振る。

 

「──ここは皇帝の領域だぜ…………?」

 

 瞬間、ソフィエルの緑のツインアイが鋭く光る。紙一重でしゃがみ込み横から来る斬撃を避けそのまま蹴りを入れ体制を崩した。

 

「……オノサカやべえ、来るぞ…………!!」

 

「……え…今の動き……?」

 

「さっきのお返しだッ!!!」

 

 ソフィエルは肩の翼の部分を巨大なブレードとして2本を取り出し対象物にそれを強くぶつける。体制を崩したグフはまともにその斬撃を喰らい吹っ飛ばされる。

 

「よく斬れんじゃねえか。やっぱりブレードがねえとしっくりこねえよ。」

 

「──おい、オノサカ大丈夫か?」

 

 モニターは一気に赤くなり操縦桿では警告音が鳴り響く。今までに受けたことのない斬撃。どうやらとんでもないダイバーと機体に出くわしたみたいだ。だがそんなことよりもオノサカはある事が気がかりだった。

 

「……今の動き、ヒナセ先生と似ていた……いや同じ…………?」

 

 以前GBN内でシイナと対戦したオノサカが衝撃を受けた動き。常時離れした反応。そこから繰り出される強烈なカウンター。

 

 彼は知っていた。

 

 この動きをもっと前から知っている。

 

 この洗練された動きをもっと前に彼は。

 

『立てよ、俺。』

 

『この人に勝つんだろ?』

 

 脳内に自分とよく似た声が響く。それがなんなのかはよく分からない。理解する必要もない。オノサカはグリップを握り直し再び立ちあがる。

 

 目の前には蒼い皇帝。このシルエットにも見覚えがある。

 

「いくぞぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」

 

 今度はヒートサーベルを構え突撃する。

 

「パワー勝負か?だが動きが直線的過ぎるぜ!」

 

 ソフィエルもまたブレードを構え攻撃に備えるがその瞬間グフは姿を消す。

 

「しまった、今の動きはフェイク!?スプリッターで消えやがった!」

 

 オノサカのグフにはスプリッター迷彩が施されており姿を一時的に消すことができる。直線的な動きで相手を油断させ突然消える。トリッキーな動きだが対戦相手からするとこの上なく厄介だ。

 

 フウトはモニター周りとレーダーを冷静に見てかく乱に動じる事なく構える。

 

「消えったってどうせバイタルには入るんだ。」

 

「来いよ、グフ使いッ!!」

 

 右前方にヒートサーベルの熱が灯った。本体が実体化していても武装自体は消えない。フウトはこの一瞬を見逃さなかった。

 

「来たか…………!!」

 

 ソフィエルはそのサーベルの方へと体の矢印を向ける。

 

「かかった!目が良過ぎるからッ!!」

 

「!!?」

 

 フウトが反応したヒートサーベル何も起きる事なくそのまま地面に落ちた。どうやら熱を灯した瞬間に手放し囮として使い本体は回り込んでいたのだ。

 

「それは囮!今度こそォォッッ!!」

 

 グフは握り拳を作り虎の子ヒートナックルでソフィエル目掛けて渾身の一撃を振るう。

 

「……………………!!!」

 

「……………………ッ!?」

 

 フウトの眼が光り背後からの攻撃に反応し咄嗟の宙返りで渾身の一撃をまたしても避けた。

 

「…………また避けられた…………?」

 

「こんな修羅場何回通ったかわかんねえよ。」

 

「言ったろ?ここは俺の領域。」

 

「俺がこの空間を支配してるんだよ。」

 

 宙返りするソフィエルのツインアイと振り返るグフのモノアイに映る。

 

「この人は一体………………?」

 

「俺は、ただの清掃員だよ。」

 

 宙返りのままバイシクルキックを頭部に受けたグフのモノアイの光は静かに消えた。

 

 ──battle end──

 

「楽しかったぜ!グフ使い!!」

 

「こちらこそ、えっと…………。」

 

 オノサカが男の名前を知ろうとデータを見ようとした瞬間レーダーに高速で近づいてくる飛翔体の反応があった。

 

「やばい!オノサカ!なんか来るぞ!」

 

「このスピードもしかして…………!?」

 

「──また会ったな。グフ使い。」

 

「ガンダム…リパルド…………?」

 

 太刀を腰にぶら下げた赤黒の機体。肩の特徴的なマーキング。まさしくその姿はガンダムリパルド。

 

「なんだ?お友達か?」

 

「ガンダムソフィエル。俺と戦え。」

 

「中にいるのはイヌハラ・ユウキなんだろ?」

 

「アンタも、俺が倒す………………!!」

 

 高地に突如現れたガンダムリパルド。

 

 ガンダムソフィエルとイヌハラ・ユウキの名を知っている彼は一体何者なのか。

 

 決闘を申し込まれたフウト。この戦いはいかに。

 

 (続く)

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