ガンダムビルドデューラーズ 清掃員外伝   作:地底辺人

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第四話「mirage」

 

「……あんた、イヌハラ・ユウキなんだろ?」

 

 赤黒の機体、『ガンダムリパルド』に乗る少年は目の前のガンダムソフィエルに対してそう言い放った。そしてフウトはこれにニヤリとする。

 

「……だとしても、自己紹介からするのが礼儀ってものなんじゃないかい?少年。」

 

 フウトは得意げに兄の真似をして答える。この答え方には自分でも自信がありひとりでクスクスと聞こえないように笑っていた。

 

『……ホントにあの人、イヌハラ・ユウキさんなのか…………?』

 

 先ほどまでガンダムソフィエルと交戦をしていたダイバーオノサカは半信半疑でもう一度目の前の男のプロフィール画面を確認する。

 

「ダイバーネーム『Y』ランクはまだ5…………?」

 

「オイ!オノサカこの名前!!それにこのランク……!!まじであの『イヌハラ・ユウキ』がGBNに来たって事なんじゃ…………!!」

 

「うん……確かにそうとも言えるけど…………。」

 

「なんだ?お前、なんか腑に落ちなさそうだな?」

 

 実際に交戦したオノサカだからこそ分かる事もあった。目の前の男は確かにかつて最強と謳われたデューラーに似ている。似ているのだが少し違う。彼がその真実に辿り着くまでもう少しかかりそうだ。

 

「フン……アンタ、意外と大した事ないんだな。Yさん。」

 

「人は見た目で判断するもんじゃないよ。えっと…………。」

 

「………ヨネ…………。俺の名前はヨネだ。」

 

 オノサカたちが問答している間にこちら側の会話も進んでいた。ガンダムリパルドを操るダイバーの名は「ヨネ」モニター越しからもよく分かる白い髪と勝気な表情。

 

「アンタがイヌハラユウキ本人かどうかは闘えばわかる。それだけの話だ。かつて最強と謳われたアンタの力を見せてくれよ。」

 

「──俺が叩き潰すからさ。」

 

「……ッたく……。なんでこう最近の若者はこう血の気が多いのか。」

 

「でもまあ、君じゃ勝てない。"俺たち"には。」

 

 2人は互いを煽り合い武器を構えバーニアを吹かし後方へと下がると動きを止めた。

 

 広大な大地、高地地帯に一瞬の静寂が訪れた後、2機はツインアイを光らせ目にも止まらぬスピードで動きはじめた。

 

「まずは挨拶代わりさ!」

 

 ガンダムリパルドは右腕に装備されたライフルを乱射しながら突撃してきた。避けられない攻撃ではないが勢いのある突撃ほど怖いものはない。何を起こしてくるか全く検討がつかないからだ。いわゆる本能型と呼ばれるものだ。瞬間的な判断の速さ、的確さ、そして意外性、生まれ持ったセンスも起因するところが大きい。

 

「………やるな………………。」

 

 リパルドは低空飛行のままライフルを乱射し続ける。対してソフィエルは逃げ回るように避けるしか出来ない。

 

「逃げ回るしか出来ないのかよッッ!!」

 

「修羅の天使さんッッ!!」

 

 リパルドはさらに加速しバックパックに取り付けられたビームサーベルを引き抜きソフィエルに対して振り抜いた。

 

「…………ッッ!!」

 

 ソフィエルもまたビームサーベルを素早く引き抜き応戦するが、驚異的な加速力の加わった一撃は予想以上に重かった。

 

「まだまだァッ!!」

 

 リパルドは両手にビームサーベルを装備し連続で攻撃する。ソフィエルはしぶとく攻撃を受け流し続ける。

 

「すごい…………。あのガンダムソフィエルを押してるなんて…………。やっぱり彼は強い……。」

 

 戦闘不能となったグフのコックピットから彼らの戦闘を眺めるオノサカが小声で呟いた。しかし、同時に歯痒さも感じていた。なぜこの場所で自分は見ている事しか出来ないのか。両手に握り拳を作りながら彼らの闘いを見る。

 

「………………………………………。」

 

『なんだよ。この感覚…………。』

 

『相手はガンダムソフィエルだぜ?あまりにも手応えがない。本当にパチモンだったって事なのか?』

 

 操縦桿を握りながらヨネは異様な感覚に囚われる。まるで攻撃させられているようで、何かを図られているようで気味が悪かった。そして手応えを求めようと攻撃の手を止める事が出来なかった。

 

「……………………!!?」

 

 瞬間、鋭い光が見え機体からコーンと鈍い音が響いた。ガンダムリパルドからだ。

 

「言ったろ。勝てねえよ。俺たちには。」

 

 リパルドのメインスクリーンにはまるで皇帝のように佇む蒼く澄んだ機体がいた。その威圧感、先程何をされたのか全く理解できなかったヨネにとってそれは気味が悪いというより恐怖に近い混乱を感じさせた。

 

「なんだよ…………!!なんなんだよッッ!!」

 

「今度は見えるようにしてやるさ。」

 

「くそがぁぁぁぁ!!!舐めやがってッッ!!」

 

 リパルドは先ほどよりもさらに加速してステップを踏みながらビームサーベルを構え突撃する。しかし平静を失ったせいか攻撃が単調になり過ぎていた。

 

「………少年!狙いが甘すぎるぜッ!!」

 

 リパルドの渾身の一振りは空を切った。そしてその現象を理解した瞬間、速すぎる光がまた彼らを襲う。

 

 コーン。また鈍い音が響く。リパルドは腹の部分にダメージを受けた。

 

 空間を支配する皇帝の一撃は一瞬の時間さえも支配した。

 

「……カ…ウンター…………?」

 

「生まれつき、目が良いもんでな。」

 

 ヨネにとってここまで綺麗なカウンターを喰らったのははじめてだった。まるでそれは芸術とさえ感じた。そして一方で今よりももっと前に、脳裏に焼きついたある映像が彼の頭をよぎらせた。同時にそれを見たオノサカもまた先ほどまで腑に落ちなかった事が揺れ動く。

 

「…………ジャスティス………………」

 

「…………………カイザー……………?」

 

 彼らの脳裏に焼きついた映像。遠い少年の日の記憶であるが手に汗をかきながら見ていた事を鮮明に覚えている。

 

 赤と青の機体の天地が割れそうな激しい闘い。青の機体の方が格上の存在であった事は誰が見ても分かるものであった。しかし、もう一方の赤い機体は、何度倒れても、吹き飛ばされても、しぶとく立ち上がり最後には勝利をもぎ取った。その闘いの中で何度も見せた超反応とカウンター。間違い無くその動きと目の前の蒼い機体の動きは重なった。

 

 しかしなぜその赤い機体の動きと同じ動きを蒼い機体が起こしているのか。それはおそらく。

 

「………まさか………そんな事があるのかよ…………。」

 

「……いや、まぐれだ。そんな事は…………絶対ないッッ!!」

 

 リパルドは腰部のCファンネルを展開しメインウェポンである太刀を構える。

 

 ここで、フウトもまたある事に気づいた。

 

勢いのある近接攻撃、遠隔武装、加えて太刀を扱う事。まるであの少年のようだ。何度も交えた事のあるあの少年に似ていた。対峙する機体、そのもっと内側から太陽のように迸るようなエネルギーさえ感じる。

 

「…………まるで幻像だな。」

 

「だが、ここは俺の……領域だッッ!!」

 

 ソフィエルはバックパックの翼を展開しツインアイを光らせる。ただの眼光。だがそれはとてつもない威圧感を帯びていた。

 

 もはや神々しいとも言える目の前の機体はヨネにとってあまりにも眩し過ぎた。だがここで引き下がるわけにはいかない。負けられないのだ。絶対に。

 

「喰らえよッッ!!!」

 

 赤と黒に塗装されたCファンネルを次々にソフィエルに向ける。ソフィエルはビームサーベルで切り払いながら上手く避ける。Cファンネルは攻守共に優れた武装である。攻撃面でも敵機のボディを切り裂く程度は容易いものでありその危険性を熟知しているフウトにとっては絶対に受けたくない攻撃である。

 

 裏を返せば、これはヨネにとって格好の囮。Cファンネルを展開し距離を図り一撃必殺の太刀による斬撃は彼が最も得意とするコンバットパターン。実際にオノサカもこの攻撃を前に敗れてしまった。

 

 ヨネはニヤリとして太刀の鞘を少し上げ居合の体制に入る。

 

「── 流星一閃(グローイングストレート)ッッッッ!!」

 

 リパルドのコア部分から青白く煌めきその必殺技とも言える閃光の一撃が駆け抜けた。

 

「…………………………ッッ!!?」

 

 フウトの眼に白い光が映った。GPD時代には感じた事のないような力強さと速さ。そして一瞬、炎の一撃と姿が重なった。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 渾身の居合い。その閃光の一撃は対象物を通過していた。手応えはこれまでの闘いの中で最もあった。アームレイカーをゆっくりと定位置に戻し対象物を確認する。

 

 そこには、膝をついた蒼い皇帝の姿があった。

 

「やったか………………?」

 

 リパルドは臨戦態勢を解かずにもう少し様子を見る。

 

「今のは…………効いたぜ………………。」

 

 ソフィエルは破損した箇所をバチバチとさせながらゆっくりと立ち上がる。一撃必殺の居合いからどうにか急所は免れたようだ。

 

「嘘だろ…………?今の攻撃を…………。」

 

「だけどもう、アンタは虫の息だ。」

 

「……ああ。そうだな。」

 

「だから、そろそろ終わりにしよう。」

 

 ガンダムソフィエルはウイング部を大剣へと変形させ装備し一本、大きく投げる態勢をとる。

 

「いくぜッッ!!!!」

 

「ブゥゥゥゥゥメランッッ!!!!」

 

 大剣の持ち手を可動させそれを対象物目掛けて大きく投げつける。

 

「そんな単調な攻撃!躱せないわけないだろッ!」

 

 リパルドは直線的に来るものを軽く横っ飛びで躱し反撃の態勢を取る。

 

「まだまだッッ!!」

 

 ソフィエルはビームライフルで追撃を行う。しかしそれはあまりにも対象物とはかけ離れた方への射撃だった。

 

「馬鹿にしてるのか!?」

 

「いいや。」

 

「俺は、いつでも大真面目だぜ。」

 

 リパルドの操縦桿から注意音のアラームが突然鳴り響く。

 

「まさか、さっきの…………!!」

 

「でもこれなら避けられない攻撃じゃないッッ!!」

 

 リパルドはとっさにしゃがみこみビームライフルによって軌道の変わった背後から戻ってくるブーメランをなんとか避ける。

 

 安堵したヨネだったが、顔を上げた瞬間、そこには急加速し眼の前まで近づくガンダムソフィエルの姿がそこにあった。

 

「……………………え?」

 

「一撃必殺ってのはこういうモンだぁぁぁぁッッ」

 

 加速したガンダムソフィエルは戻ってきたブーメランをバシッと掴みその勢いに身を任せ渾身の斬撃をガンダムリパルドの頭部から下まで喰らわせた。

 

「………………そん……な…………。うそ…………だ…………ろ………………?」

 

「君の輝きはまだ、あまりにも鈍すぎる。ただそれだけだ。」

 

 蒼の皇帝が切り裂いた大剣は幻想的な輝きを煌めかせ目の前の星の騎士を一撃で葬った。

 

 ──battle end──

 

「負けた………………?この俺が………………。」

 

「嘘だろ…………。こんな低ランクに…………?じゃあ本当にこの人はあの時の…………。」

 

「…………ソイツをもっと使いこなせるようになったらまた闘おう。楽しかったぜ。少年。」

 

「ちょっと待て、アンタは結局………………。」

 

「君の想像通りさ。」

 

 そう言うと翼を大きく広げ上空へと飛びガンダムリパルドとグフの目の前から姿を消した。その姿は知っているはずのものとは対局で彼らもまた幻を見ているようだった。

 

 その後ヨネは天を見上げたまま暫く動かなかった。そこでグフを駆るオノサカがボイスチャットを繋げる。

 

「なんだ?まだ居たのか。」

 

「……オイ…………オノサカ何やってんだ!」

 

「少しだけだからさ。彼と話をしたいんだ。」

 

「無様だろ。負ければ最高にカッコ悪いんだぜ。」

 

「そうだね。だから、今度は僕が勝つ。それだけ言いたかった。」

 

「は?このタイミングで何言ってんだ、お前みたいなヘボに負けるかよ。」

 

「じゃあな。」

 

 ヨネはそう言うとその場を去った。負けたことがあまりのショックだったのだろうか、かなりバツを悪そうにしていた。

 

「アキタケ。」

 

「どうした?オノサカ。」

 

「僕、もっと強くなるよ。」

 

「へへ。そうだな。世界は広いみたいだな。」

 

 2人はそう言って拳を合わせニヤリとした。

 

 荒野を照らしていた日はすっかり沈み星空へと変わっていた。彼らはそれを眺めGBNからログアウトした。

 

***

 

 翌日、サイトは午前5時に起床し朝食を軽く済ませると理科準備室へと足を運んだ。昨日の激闘を忘れる事ができず夜もあまり眠れずにきた場所がここであった。そして、黒い旧式の筐体を今日こそ復旧させるために作業をはじめる。前々からなんとなく、直感的にこのシステムを立ち上げた時に得られるものが多くあると思っていた。それは昨日の戦闘を経てさらにその勘を確かめたくなった。

 

 かれこれ、1時間半作業を続け、遂にそのシステムを復旧させる事に成功した。1年生の夏から挑戦し続け遂にディスプレイが灯った。

 

「やった……………………。」

 

「やったぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 これまでにない達成感。つい大声で叫んでしまった。まぁ、誰もいないしいいだろうとテンションが高くなる。天井からガタガタと音が聞こえるが高揚したサイトにそのような音は聞こえなかった。

 

 しばらくすると黒い筐体は起動音と共にディスプレイに過去のバトルビデオを流し始めた。

 

 もう何年も昔のデータのようだ。1番はじめに流れたものはだいぶ映像が荒いが赤い近接機体の戦闘が流れその次に紫の機体が次々と敵を薙ぎ倒していく映像が流れた。バトルスピード、展開、機体の完成度、どれをとっても今まで見てきたものの群を抜いている。サイトは見ているだけで胸が熱くなった。

 

 そして、3番目にあの蒼い機体が現れた。

 

「ガンダム…………ソフィエル…………。」

 

 それは紛れもないガンダムソフィエルであった。昨日見たタイプとは異なっており、かなりシンプルな形状でおそらく最初期の型だろう。圧倒的なスピード、精密な射撃、トランザムによる必殺の一撃。どれをとっても全て一級品。かつてサイトが街のテレビで見たソフィエルとその動きが重なる。

 

 しかし、昨日見た動きとはあまりリンクしない。似ているようで似ていない。やはりあの赤い機体ジャスティスカイザーの方と重なる。

 

 その後映像を見続けたが蒼い機体の映像がメインでそれ以外は他の機体の戦闘がたまに映るぐらいだった。しかしここに来てこの偶然。あまりにもタイムリー過ぎる。それになぜ、この筐体にそんな映像が残っているのか謎が残る。

 

 サイトが項垂れていると登校完了のチャイムの音が聴こえた。

 

「うわ!やばい!!行かなきゃ!!」

 

 そのまま急いで教室へ向かいなんとかホームルームには間に合う事が出来た。

 

「今日はお前の方がギリギリだな。」

 

「……うん………まあね。」

 

 息を切らしながら答えるサイトとそれをニヤニヤしながら見るアキタケ。

 

「どうせ、寝られずに寝坊でもしたんだろ?ホームルーム中に寝るなよ〜。」

 

「うん。」

 

「こらーそこ、ホームルーム中は私語を謹んで〜!」

 

 アキタケの話を聞く前にクラスの副担任であるシイナが注意した。真面目な性格もあってかこういった私語にはわりと厳しい。

 

 サイトは先ほどの映像と昨日実際に見たものをを頭の中でぐるぐるとさせる。一体何が何だかさっぱりわからない。少しの間頭をぼーっとさせる。視界が歪みながらゆっくりと再び焦点が合う。その点と点を結んだ先に目に映ったものはシイナだった。

 

「そうか!」

 

「そうか!じゃないよ!サイトくん。提出物きちんと出してね。」

 

 考え事に夢中になりすぎてつい声が出てしまった。クラスメイト達にくすくすと笑われている。普通に恥ずかしい。

 

 だが、同時に閃いた。ガンプラの改造が上手くいった時に自分の事を本当は天才なんじゃないかと思う事があるくらい突如閃いたのだ。

 

 リンクしなかった動きが今、サイトの頭の中で重なった。

 

***

 

 ホームルームを終え、サイトは教室を出たシイナの下へ真っ先に行った。

 

「先生、聞きたい事があります。」

 

「どうしたの、そんな真剣な顔して。」

 

「先生、ジャスティスカイザーって知ってますか?」

 

 単刀直入に聞いた。シイナと対戦した時の動き、あれはまさにジャスティスカイザーと同じ動きであった。しかもシイナのジャスティススノーホワイトは同じジャスティスベースの機体。サイトはこの推測が限りなく正解に近いとそう思った。

 

「うん。知ってるよ。」

 

 シイナはニッコリとした表情でそう答える。

 

「ほんとですか!!じゃあその機体を使っている人は…………。」

 

「イヌハラ・フウトさんだね。」

 

 イヌハラ・フウト。それがジャスティスカイザーの使い手の名前。実はサイトは今まで彼の名前を知らなかったのだ。かつてテレビで見た後、彼のことが気になり様々なメディアを漁りに漁ったがどう言う訳か一切の経歴が残っていなかった。

 

 サイトはさらに続けて質問をする。

 

「もしかして先生、その人と知り合いだったりします?」

 

「うーん、そうだね。よく知ってる、かな。」

 

「えっと、じゃあ今どこにいるかとか知ってたりしますか!!?」

 

 その瞬間、サイトとシイナの隣を薄緑の作業着を着た男性が横切った。

 

「ふふ、」

 

「え、何が面白いんですか?」

 

「案外、近くにいるかもよ。」

 

 そう言ってシイナは授業があるからと言ってサイトの前を去っていった。サイトは重要な事をはぐらかされた気がしてバツを悪そうにするが今朝と比べると随分と晴れやかな表情となっていた。

 

「でもまあ結局、真相は分からないか。」

 

「よしっ、またあの人に会えるように僕も頑張ろう。」

 

 サイトは教室に戻り着席するとスケッチ用のノートを開いた。

 

***

 

「フウトさん、あれわざと通ったんですか?」

 

「何のことだ?」

 

「もう、とぼけないてくださいよ。」

 

「たまたまだよ。全部。」

 

「それに俺は、ただの清掃員だからよ。」

 

「あと、職場じゃフウトさん、じゃなくて清掃員さん。だろ。ヒナセ先生。」

 

「うっ……。なんかその呼ばれ方やっぱり慣れません。それにちょっと馬鹿にしてません?」

 

「そんなわけねぇだろ。立派だよ。本当に。」

 

「そう……ですかね…………?」

 

「ああ、立派だ。」

 

 青い木々にすーっと気持ちの良い風が吹き抜ける。風からはまだ春の風も混じっていた。

 

***

 

「…………この映像は…………。」

 

 蒼の機体の戦闘映像を真剣な眼差しで見る男性。

 

「…………王と皇帝、どっちが強いか興味深いね。」

 

 (続く)

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