ガンダムビルドデューラーズ 清掃員外伝   作:地底辺人

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EX5.「Who Am I」

 季節は嫌になる程に日が照りつける夏。世界中を旅していたイヌハラ・フウトは珍しく帰国し思い出の場所へと人知れず足を運んでいた。

 

「………また…………帰ってきちまったな。」

 

 かつて友とはしゃいだこの場所も知らない声が楽しく笑い響く。

 

 フウトの目の前にそびえ立つ大きな会場。彼が兄、イヌハラ・ユウキを打ち破り優勝した第14回GPD全国大会の会場にもなった彼にとって思い出深い場所。

 

 しかし、彼はもっと前に、この場所で激闘を重ねていた。

 

 彼は腰のホルダーに入った愛機『ジャスティスカイザー』を取り出しながら想いを馳せる。

 

───────────────────────

 

「いくよッ……!!フウト…………!!」

 

「こいッ……!!サワラッ………………!!」

 

『僕達は絶対に…………負けないッ!!』

 

 宇宙空間でぶつかり合う赤と黄の機体。

 

 フウトの頭に刻まれる青い記憶。好敵手、アララギ・サワラとの優勝を賭けた闘い。

 

 ただ、がむしゃらに。勝利という純粋なものを求めて両者は闘う。どちらかが果てるまで、闘い続ける。

 

「そこだッ…………!!」

 

「………甘いよ!サワラッ!!」

 

 黄色の機体、ガンダムアストレアType.Rの持つ大剣の鋭い斬撃がジャスティスカイザーを襲う。しかしこれを紙一重で躱し得意の蹴りでのカウンターの動作に入るフウト。

 

「…………くっ…………やっぱりきみは凄いな…………。どんどん強くなる…………。」

 

「だけど…………。今日も僕が……!!」

 

「…………僕が勝つ………………!!」

 

「ただ、それだけだ………………!!」

 

「勝つのは…………僕だ!!やるぞ!カイザー!!」

 

 互いの機体は秘められた力を解き放つ。黄色の機体は太陽炉を稼働させ紅潮する。赤の機体は核エネルギーを爆発させ黄金の輝きを纏う。

 

「フウトォォォォォォォォォッッ!!!」

 

「サワラァァァァァァァァァッッ!!!」

 

 限界を超えた二機はぶつかり合う。衝撃で生まれる輝きはまさに青春の輝き。今しかない、今しか出せない輝き。彼らの未来が今後どうなるなんて誰も知らない。上手くいくか、失敗するか、そんな事はどうでもよく、大事なのは、今という、この瞬間。それ以上に必要なものなんてなかった。

 

「………………………………………………。」

 

「………………………………………………。」

 

「俺の勝ちだ。」

 

「サワラ。」

 

 拳を高く掲げる赤い機体の姿。フウトの記憶に刻まれた懐かしく輝かしい記憶。何年経っても忘れられない闘いの詩。優しく強い黄金の輝きが色褪せた記憶を包みこんでいた。

 

───────────────────────

 

「……………………。」

 

「また、戻ってきちまったな。」

 

「黄金の季節に。」

 

 フウトは昔を思い出しながら閉じた目をそっと開ける。開けたばかりの景色は少しぼやけ何故かセピアがかったように見える。

 

 あの日と同じような太陽の光が自分に降り注ぐ。

 

 フウトは目を擦り視界を無理矢理元に戻すと辺りを歩き始めた。

 

 ***

 

「ふうちゃん、やったね!!」

 

 激闘を終えたイヌハラ・フウトは既に卒業した兄ユウキ達に祝福される。

 

「これで勇気高校は2連覇!!」

 

「フウトくんならやってくれると信じてたぜ。」

 

 テルキとタロウもそう言ってフウトをに言葉をかける。皆、満面の笑みで本日の主役の髪をくしゃくしゃに撫で掴みながら喜びを分かち合う。

 

「ははは!やめてよみんな!!痛いって!!」

 

「このこの!立派に強くなりやがってよ!!」

 

「倒したのは世代No.1桐國のアララギ・サワラだぜ!」

 

「しかもあのアララギ先生の………………。」

 

「…………アララギ先生の………………。」

 

「弟…………なんだよな………………。」

 

 アララギ先生、アララギ・ユウリ。元プロデューラーでリーグ戦無敗の伝説を作ったカリスマ。現在はフウト達、勇気高校の教員兼GPD部の顧問をしている。

 

「そういや、アララギ先生の姿見みないな。」

 

「なんだろう、このモヤモヤ感。くそっ、じれったいな!オイ!海賊!俺とガンプラバトルやるぞ!」

 

「お?やんのかフェニックス?」

 

 テルキとタロウは相変わらず戯れあいはじめる。卒業しても関係は良好のようだ。

 

 一方で、薄暗い通路で白衣を身に纏った男性はくしゃくしゃに泣きじゃくる少年と共にいた。

 

「──サワラ、悔しいか?」

 

「…………………………。」

 

「ふうちゃんは、この一年で驚くほど強くなった。」

 

「兄、ユウキくんの意思を継いで…………。いやそれだけじゃない。才能が一気に開花した。ユウキくんを凌ぐほどの。」

 

「………………………。」

 

「サワラ、この世界は平等じゃない。残念だけど勝者にしか得られない物がある。」

 

「今は泣いたっていい、叫んだっていい。悔しくて暴れたっていい。」

 

「だけど、もっと強くなれ。サワラ。」

 

「…………………………うん…………。」

 

「…………俺…………強くなるよ………誰にも負けないくらい…………!!」

 

 アララギは弟を叱咤激励するとその場をさっと立ち去った。サワラがこれまで感じたことない挫折と悔しさの経験はのちに彼を日本チャンプまで上り詰める原動力となる。

 

「──きっと、俺を超える強い男になれる。」

 

「負けを知らない男なんて本当は簡単に壊れてしまうくらい脆くて驚くほどに弱いものなんだよ。」

 

 アララギは立ち去りながら静かにそう呟いた。

 

***

 

「──ふうちゃんはプロになるの?」

 

 ユウキは突然フウトに問いかける。

 

「プロか…………。あんまり考えた事、無かったな。」

 

「ま、お兄さんとしてはまだまだ成長し続ける弟の脅威を少しでも遠ざけるためにあまり勧めないけどね。」

 

「なんだよ、それ。」

 

 ユウキは笑いながらそう言ったものの、弟の持っているモノを誰よりも評価していた。きっといつか、縛られた自分の生き方を変えてくれる、心のどこかでそう感じていた。それはただ、何かに縋りたいだけの願いなのかもしれないが。

 

「ふうちゃんもお兄さんに続いてプロになるのかい?」

 

「アララギ先生!!」

 

「いや〜ごめんね。遅くなって。道に迷った少年の手助けをしていて。」

 

「先生、ソレいつもの言い訳と同じです。」

 

「………………バレた?」

 

 あははと笑いながら頭をかくアララギ。生徒の前ではいつもこうやって戯けているが生徒からの信頼はかなり厚い。

 

「ま、私からはプロの世界は厳しいとだけ言っておくよ。」

 

「生半端な気持ちで進むと、食い殺されて終わるよ。」

 

「………………………………………………。」

 

「ま、よーーーく悩んでみたまえ!若き者よ!」

 

「さぁ!今日はめでたい日だよーーー!卒業生もいるしパァーッといこう!!!」

 

「いぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!」

 

 この時、フウトは自分の人生、道の先を少しずつ意識し始めていた。

 

 ***

 

「おーい!ふうちゃん!一緒にいこうよー!」

 

「あ、はい!今いきます!!」

 

 会場の外にいるテルキに呼ばれて駆け出そうとするフウト。しかしその瞬間に彼は突然違和感を感じた。その正体は分からない。だがこの違和感は異質だ。まるでそれは自分自身の残像のような気配。

 

 フウトは行くか、行かぬか、頭の中で数秒迷った。迷った末、彼はその違和感を確かめることにした。

 

「ごめん!テルキさん!忘れ物!!」

 

「しっかり確認しとけよーー!!俺たちこっちで待ってるからなーー!」

 

「うん!!」

 

 そう言ってフウトは先ほどまで激戦が行われていたGPD筐体の方へと走った。

 

「──懐かしいもんだな。」

 

 先ほどの少年よりも背が伸び少し老けた男性がGPデュエルを行うメインアリーナの中をコツコツと靴の音を経てながら見回しながら歩く。

 

 満員のギャラリーが一杯の印象がある会場内だが、今は静まり帰っている。ここにいるのはフウトただ1人。ただ、1人のはず、なのだ。

 

「ん?」

 

 誰もいないはずの来るはずのない会場内にもう1人、迷い込んでいた。はぁはぁと息を切らしながら何かを探すように周りを見渡す少年。フウトはその少年を見た瞬間、驚きを隠せなかった。それは紛れもない自分自身なのだ、一目見ればわかってしまう。

 

「マジかよ…………。」

 

「ったく、最近ヘンな夢が多いもんだぜ。異次元の交差点の次は俺自身かよ…………。」

 

 やれやれと頭をかきながら、まだ幼い自分がこちらの存在に気づくのを待つ。

 

「勘違いだったかな…………。ここに来ればいると思ったんだけどな。」

 

 少年フウトが諦めかけた瞬間に、斜め前方から視線を感じた。そしてそれが彼が感じた残像の正体だと直感で理解した。

 

「あ、あなたは………………。」

 

「よぉ、元気してるか。坊主。」

 

 薄暗い中で目と目が合った。これまた奇妙な出逢い。彼らの黄金の夏はもう少しだけ続く。

 

***

 

「えっと、あなたは………………。」

 

「言わなくても分かってんだろ?」

 

 2人の間に緊迫した空気が走る。少年は目の前の男性が言った言葉の意味を痛いほど理解していた。この人は、紛れもない自分なのだと。確証はなくとも自分自身のことはよく分かる。それにこの人の顔を見ていると自分がこの先経験するはずの未来をぼんやりとだが脳内にイメージとして共有される。

 

 だからこそ、少年は確かめたかった。

 

「僕とガンプラバトルして下さい。」

 

「…………いいぜ。上がれよ、リングに。」

 

 男性はニヤリとしホルダーから自分の機体を取り出す。少年もまた自らの愛機を取り出した。その同じ赤と黒の機体は持ち主と共に闘ってきた今も昔も変わらない相棒だ。

 

 そして互いのカードキーを筐体に読み込ませ自身のガンプラをセットする。

 

 Futo'sMobile Suit

Justice Kaiser Infinity

    VS

 Futo'sMobile Suit

  Justice Kaiser

 

「ジャスティスカイザー、出るぞ!」

 

「ジャスティスカイザー、行きます!」

 

 フィールドは輝く太陽煌めく地上。二機の皇帝が闘いの地へと勢いよく発信した。

 

「さて、成り行きでガンプラバトルする事になったが…………。」

 

「アイツは油断できる相手なんかじゃないんだよな。」

 

 フウトは用心しながら対峙する相手を敵策する。ガンプラバトルに子供だとか大人だとかそういったことは関係ないのだ。闘いのリングに立てば平等。あとは勝つか負けるかただそれだけのシンプルなものだ。

 

 故に、フウトはかつての自分が持っていた溢れんばかりの才気を警戒していた。今の自分が失い、かつての自分が持っていたモノ。

 

「……どうせお前からは仕掛けてこないんだろ……!!」

 

「………来たっ…………!!」

 

 大人フウトは待ちの姿勢を崩さない少年に対して先手を取りビームライフルで射撃を行う。少年のジャスティスカイザーはそれをビームシールドで簡単に防ぎドラグーンを射出する。

 

 ドラグーンによる遠隔攻撃とビームライフルで中距離から攻撃するカイザー、一方のカイザーインフィニティはそれをなんとか避けながら反撃の糸口を探る。

 

「あのカイザー、今とは少し違うみたいだ。」

 

「………その翼で、あなたは、何を掴んだんですか……?」

 

「まったく、ガキの俺は陰湿な奴だぜ!」

 

 ドラグーンの包囲網に手を焼くフウト。しかし彼もまたインフィニティに装備されたドラグーンを射出し三角形の頂点を作り出しバリアーを発生させ攻撃を無効化した。

 

「そんな!バリアー!?」

 

「まだまだァッッ!!」

 

 カイザーインフィニティはシールドに取り付けられたシャイニングエッジ・ビームブーメランを構え、勢いよく投げ飛ばす。

 

「ブゥゥゥゥゥゥゥメランッッッッ!!」

 

 前方から飛んでくる飛び道具を察知した子供フウトもまたカイザーのシールドに取り付けられた同じ武装を構え勢いよく投げ飛ばす。

 

「ブゥゥゥゥゥゥゥメランッッッッ!!」

 

 互いのビームブーメランは真正面からぶつかり合う。パワーはほぼ同等。衝撃の反動でそのまま互いの手の中にパシッと戻る。

 

「それならッッ!!」

 

「コイツでッッ!!」

 

 次は互いに接近し、ビームサーベルを構え突撃する。姿形のよく似た皇帝は写鏡のように鋭い斬撃を繰り出しては切り払い、一撃必殺のカウンターを狙う。皇帝の領域が重なる時、何が起こるかなど予測不能。

 

『この人、さっきからわざとガードを高く上げてる。』

 

『脇を開けてんのになかなか足蹴りしてこねえな。案外冷静だな。』

 

「それなら…………。」

 

 カイザーインフィニティは脇を上げたままさらにビームサーベルを構え迂闊に接近する。

 

「馬鹿にするなッッ!!」

 

 カイザーは対処物に対して高く蹴り上げる。その間、カイザーインフィニティは蹴りを予測したように避けビームサーベルでカウンターを打ち込む。

 

 並の相手なら、このカウンターは決まる。

 

 だが、目の前の相手はそれを許さなかった。

 

「……………………………………!!」

 

「……………………!?」

 

 少年のカイザーは蹴り上げた脚をそのまま地面に落とし軸足に変えビームサーベルでのカウンターを避け逆足でのカウンターを叩き込んだ。

 

「そんなんじゃ僕の眼は欺けない!!」

 

 そのままジャスティスカイザーは怯んだカイザーインフィニティに対し早業で展開したドラグーンとビームサーベルで畳み掛ける。

 

「……悔しいけどお前は俺よりも眼がいいんだよな……!!」

 

 カイザーインフィニティは敵機の凄まじい追撃を紙一重で受け流す。だが、どんどんと追い詰められついにエリアの隅へと追い寄せられ、目の前に皇帝が佇む。

 

「こんなもんなんですか?」

 

「ああ、こんなもんだよ。あんまり期待すんな。」

 

「なんですか、それじゃまるで自分は弱いって事みたいじゃないですか。」

 

「……いいや、お前は強いよ。紛れもなく俺の中で一番強かった頃だ。その溢れることを知らない才気、がむしゃらにガンプラバトルを楽しむ気持ち、根拠のない自信。」

 

「全部、俺が失ったもんだ。」

 

「それが何者にもなれなかった、アナタの戯言ですか。」

 

「さぁどうだろうな。」

 

「僕は認めない。」

 

 ジャスティスカイザーはビームライフルとドラグーン全基を円状に並べ敵機へと向ける。

 

「もう、終わりにしましょう。」

 

 少年フウトは全弾射出しとどめを刺そうとする。瞬間、目の前の機体はバックパックからブレードを取り出し構えると、分離し身軽になった状態でビームの包囲網を掻い潜りながら接近してきた。

 

「…………嘘だ………………!!」

 

「悪ィけど、俺は諦めだけは悪いんだ。」

 

「どんな時も抗う。決まったレールなんてこの世にはどこにもねェんだよ。」

 

 ジャスティスカイザーはドラグーンで厳しくカイザーインフィニティを追うが分離したバックパックから射出されたドラグーンが牽制し上手く追撃出来ない。

 

「くそっ!このままじゃ…………。」

 

「…………いくぜッッ………………!!」

 

 カイザーインフィニティは腰を落とすと力強いステップを踏み込み対象の懐に入るとブレードを最大限にしならせ振り切った。

 

「…………くっ………………!!」

 

 力強く放った斬撃は対象物の胴体を鋭く切り裂いた。フウトが新たに得意とした攻撃。この攻撃で幾度となくダウンを取ってきた。

 

「接近戦は苦手だもんな。」

 

「今の僕は底が知れてるとでも言いたいんですか!!」

 

「何言ってんだ、お前にもあるだろ?刀。」

 

 フウトはジャスティスカイザーのリアアーマーに取り付けられた太刀を指してそう言う。

 

「でもこれは…………。」

 

「なんだ?ただの御守りか?」

 

 フウトは少年を挑発し見覚えのある刀を取り出させる。

 

「…………うまく扱えるかはわからないけど…………。借りるよ。」

 

「この人だけには、負けたくないんだ。」

 

「さぁ、みせてくれよ。お前の可能性。」

 

 ジャスティスカイザーは使い慣れない太刀を構えると先程受けた攻撃の瞬間的記憶を脳内でイメージし同じ動作を試みる。

 

 アームレーカーを勢いよく押し込み、力強い一歩でカイザーインフィニティの方へと立ち向かう。先程の動きと機体が完全に重なる。

 

「……おそらく………大事なのは『踏み込み』」

 

 斬撃を強く放つためには下半身で蓄えたパワーで刀をしならせること。少年フウトはこれを先程の攻撃を受けて直感的に理解していた。

 

「…………やるな……。」

 

 フウトはニヤリとしもう一度素早く強いステップを踏みブレードを引き抜く。

 

 キーン。

 

 互いの刃が重なる音。

 

 威力は同等。互いの攻撃を重ねながら同じ顔をした敵機を睨み合い一歩も下がらない。

 

「捉えたと思ったのにッッ!!」

 

「まだまだ!甘いッッ!!」

 

 さらに激しく撃ち合う。斬撃を重ね、隙を見ては蹴りによるカウンター。2人は互いの空間で一歩も引かない。意地と意地がぶつかり合いながら同じ機体を傷つけ合う。腹に入れば腹を、腕をやられれば腕を、やられたらやり返す。さらに二機の撃ち合いは激しくなる。

 

「……もっと早く…………!!」

 

「……もっと鋭く…………!!」

 

コイツ(アンタ)だけには負けらんねえ!!」

 

 ジャスティスカイザーは一旦バックステップで距離を取るとドラグーンとビームライフルで再び包囲網を作りカイザーインフィニティの自由を奪う。そして太刀を片手で構え今日一番の踏み込みで対象物目掛けて飛び込む。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「やばい!!完全に押し負けるッッ!!」

 

 カイザーインフィニティは咄嗟にシールドで防御するがその力強く鋭い斬撃を止めることはできずシールドごと吹き飛ばされた。

 

「終わりだ!!」

 

「くそ!間に合え!!」

 

 ジャスティスカイザーはもう一度太刀を構え勢いに乗って斬撃を放つ。しかしその渾身の一撃は空を切った。

 

「どこだ……!?」

 

「…………上か!!」

 

 ジャスティスカイザーが空を見上げると分離していたはずのバックパックと再びドッキングし攻撃を回避し既に反撃の姿勢をとったカイザーインフィニティの姿があった。

 

「行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 そしてもう一度バックパックと本体を離すと上空からの高い位置エネルギーを利用してジャスティスカイザーの頭上からバイシクルキックの体勢で蹴り込んだ。

 

「くっ…………重い……。だけど…………!!」

 

「まだまだァァッッ!!」

 

 ジャスティスカイザーは頭上からの強い衝撃を太刀でなんとか振り払う。だがさらにもう一撃ビーム刃を展開したバックパックが凄まじい勢いで突撃してきた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 一撃目を振り払う事がやっとだったジャスティスカイザーに二撃目をなんとかする余力はなくボディを切り裂かれる。そして膝をついたカイザーインフィニティはガッツポーズをとりながら再びバックパックとドッキングする。

 

「……コイツは、俺を世界に羽ばたかせるための無限の翼だ。限界なんていくらでも超えてきたんだよ。」

 

「…………今の僕にはそんな翼はないけど、一緒に歩んでくれるコイツがいるッッ…………!!」

 

 大ダメージを負ったジャスティスカイザーはよろよろと立ち上がりながら核エネルギーを爆発させ機体を力強い黄金色で纏い始める。

 

 ──"God Advent"──

 

「やるぞ!カイザー!!」

 

「神モードッッッッ!!」

 

 ジャスティスカイザーのツインアイが鋭く光るとその機体に組み込まれた切り札を発動させる。立ちはだかる強敵と兄を倒したいと願った少年が授かった能力。このシステムを使いこなすには組み込まれた機体と通じ合う事、そして認められる事。少年のフウトはそれを既に完全に扱いこなしていた。

 

「来たか…………。でも俺とお前だってやれるよな。」

 

「父さんの創ったこのシステムは今も昔も変わらないッ…………!!」

 

 同じくカイザーインフィニティもまた力強く優しい黄金色の光を纏い出力を限界まで高める。そして両機は共鳴するように天高くその気高い光を漂わせた。

 

───────────────────────

 

「──フウト、強い男になるんだぞ。」

 

「この世界に神様なんて万能で都合のいいものなんて存在しないかも知れない。だけど、願う事と抗う事を辞めてはいけない。願いは人を強くする。その願いがいつかきっと誰かを護れるくらい、優しくて強い、そんな光になるんだ。」

 

「そして、抗うんだ。抗い続けるんだ。そうする事できっと…………。」

 

───────────────────────

 

「強くなりたいという願いが!!」

 

「自分の弱さを認め抗い続けることが!!」

 

 黄金色を纏った二機はまた再び激しく交わる。ビームサーベルを持ち斬撃を重ね合い、切り払られると次の手と一歩も引かない。

 

「はぁはぁ………………。」

 

「やるな…………坊主…………。」

 

 神モードの消耗は激しい。ボロボロとなった機体はその反動に耐えれず装甲が徐々に剥がれていく。もう長くはない。両者は次の一撃で決まることを予感し生唾を飲み込む。

 

「……一つ聞いてもいいですか?」

 

「なんだよ。」

 

「あなたは何者なんです。」

 

「俺は……………………。」

 

「俺は俺だ。何者にもなれなかったかも知れないが俺は俺として生きている。そんだけだ。」

 

「その道を知りてえんなら」

 

「自分のそのよく見えすぎる眼で確かめて自分の足で歩きやがれクソガキ…………!!」

 

 フウトはかさぶただらけの指でアームレーカーを力強く引く。

 

「…………言われなくたってそうさせてもらうよ…………!!」

 

 二機は拳を握り締め目の前にいる最高に気に食わない自分自身に対して振りかぶる。単純な攻撃。だからこそ、どちらかが速いかで決まる。

 

「……………………………………!!」

 

「……………………………………!!」

 

 拳が頭の装甲をクシャクシャにする音が両者から鳴り響く。

 

 ──battle end──

 

「……………………俺の勝ちだ。」

 

 コンマ数秒、カイザーインフィニティの拳が先にジャスティスカイザーにヒットしていた。ほんの少し、ほんの少しの差が勝敗を分けた。しかしこの差が勝負の世界なのだとそれを教えるかのようにカイザーインフィニティは黄金に輝くその拳を天高く掲げた。

 

「強くなれ。俺。」

 

「願いと抗いはきっと自分を本当の自分自身にする。」

 

「みんな、そうやって何者かになっていくんだよ。」

 

「望むのは他の誰でもない。望むのは俺自身だ。」

 

 フウトはそう呟き元の世界に戻る。自分自身を信じているからこそ、この言葉が少年に届かない事を祈った。そして自分自身もまだ道の途中である事、何者にもなれない自分がやっと誰かみたいではなく何者かになり始めた事を強く胸に刻みながら彼は目を瞑りその場を立ち去った。

 

***

 

 フウトは気づくともう辺りは真っ暗になっており会場近くの芝生で目を覚ました。またこのパターンかと先程の朧げな記憶を思い出しながら起き上がる。鏡を見ていると亡くした父の事を強く思い出した。幼き日に聴いたあの言葉の意味を完全に理解したわけではないけど、自分に正直に生きていれば『神が宿る』とでも言いたかったのだろうか。その答えは誰も知り得ないが答えを知る事が重要ではない。フウトはそう思い立ち上がる。

 

「久しぶりに墓参り、行くか。」

 

「アレ?もしかしてフウトかい?」

 

「ん?その声は…………!!?」

 

 芝生の背後から聞き馴染みのある声が聴こえた。青髪で爽やかな青年、アララギ・サワラだ。

 

「久しぶりだなーー!元気かよ!」

 

「久しぶり!てか帰ってくるなら連絡しなよ。シイナちゃんだって待ってるんだろ?」

 

「あぁ、ごめん。なんかふらっと来たくなってよ。ここに。」

 

「まぁ、気持ちもは分かるよ。俺も実際そうだし。」

 

 2人は夏の星空を眺めながらあの夏を思い出す。青葉を揺らしその瞬間にしか訪れないものを求めて、喉を枯らすほどに駆け抜けた季節に。ただ空っぽになるまで焦がれた、焦がれることの出来た黄金の夏。

 

「そうだ!久しぶりにガンプラバトルやろうよ!」

 

「お!いいねえ!悪いけど勝つのは俺だぜ?」

 

「何言ってんの、勝つのは僕だよ。」

 

 蒼い月の下で照らされた彼らはあの頃と変わらない顔つきで歩み出した。長い月日を経て出逢えた自分自身と共に。

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