またぼちぼち執筆していきます。
今回から分岐ルートに入ります。
「シイナルート」と「フウトルート」ご用意しておりますが、
まずは前者をお楽しみください。
初めての試みですので色々とグダるところもあるかと思いますが
頑張って執筆しますのでどうぞよろしくお願いします。
「…………きたッ………………!!」
静寂の砂漠地帯に突如爆発音が鳴り響く。
「グレネードか!あのグフ飛び道具を隠し持ってやがったのか!!ええい!厄介な!」
爆風が細かい粒子の砂をかきあげ相手の視界を奪う。マシーンは繊細で正直だ。バイザー型のメインカメラにノイズが走る。
「我慢した甲斐があった…………!!こいつで終わりだッ……!!」
砂の煙の中から灰色のグフがバーニアを目一杯吹かせて上昇してくる。右手には必殺のヒートサーベルの刃が灼熱の温度を宿し対象へと接近する。
しかし、砂漠地帯の砂風は厳しい。グフの垂直への推進は思ったより伸びない。飛び出すタイミングを間違えたのだろうか、それとも仕掛けるタイミングを間違えたのだろうか。このままでは慣性に押し戻される。
「フッ!ツキがこちらへ回ったようだな!!グフ使い!!」
「今度はこっちの番だッ……!!」
メインカメラの砂嵐が止むと緑色のバイザーは奥の眼を青く光らせる。バイザー型のモビルスーツは陸戦型ジム。陸戦型ガンダムのオリジナルカラーをベースに頭だけをジムに変えた、いわゆる「ジム頭」タイプ。チェストバルカンを小気味よく放ちながら向かってくる。
「まずい!このままじゃ相手の勢いに負ける!」
グフを駆る少年は手元の操縦グリップを握りながら起死回生のウェポンを探す。グレネードが残り1つ。状況を打破するにはこれに賭けるしかない。グフは手元を腰に手を回す。
「遅いッ…………!!」
「何だ!?」
突如飛翔体がグフのモノアイを襲う。首が思いっきり後ろへと衝撃を受ける。あまりにも突然だったのでパイロットは混乱を隠せない。地上の砂にはジムのシールドが突き刺さる。しかしそんな事気づくわけもなかった。
「くそ!なんだよ!なんなんだ!いまの!」
少年は何が何だか理解できず頭をかきむしゃる。
「同じ手が通じると思ったのか。まだまだ、腕は未熟だな!グフ使いよォ!」
「噂の『ガンダムリパルド」とエンカしたって少し小耳に挟んだが……この程度とはな!!」
「がっかりだ!こいつで終わりにしよう!!!」
「くそ!またか!また負けるのかぼくは!!」
───────────────────────
『今度は僕が勝つ。それだけ言いたかった。』
『は?このタイミングで何言ってんだ、お前みたいなヘボに負けるかよ。』
───────────────────────
頭の中に浮かび上がる。
ぼくは勝ちたい。
アイツに。
それだけじゃない。
あの人にも。
『──俺、右だ。』
『右へ避けろ。』
迫る陸戦型ジム。ビームサーベルを構えコックピット目掛けて突進してくる。
「…………右………………!!?」
「なんだと!!?」
少年オノサカの前髪に隠れた目が一瞬薄紅に光る。
突進を避けられたジムはそのまま砂に足を取られ前面から転ける。
「コイツ…………一体………………!!?」
「…………………………………………。」
グフはどすどすとジムの方へと歩いて行き倒れた対象物を足で踏みつけると紅いモノアイを低音でボワンと響かせ灯らせる。そしてその鋭い眼は対象物を見下し熱を灯したビームサーベルで突き刺した。
***
『──右だ…………。』
「あの声は一体…………。」
サイトは昨日GBNでガンプラバトルをしていた時の「声」が脳から離れない。自分とよく似ている声で、何故か他人のような気がしなくて。普通ならそんな現象に対して恐怖心を感じるが、なぜかイヤな感じもしない。不思議でたまらなかった。
「…………お…………い。」
「…………おーい…………。」
「……おーい……………!!」
「……おーい!!!起きてんのかサイト!!」
「あ、ごめん。アキタケ。GBNのこと考えてた。」
「ったく、お前は相変わらずだな。で、調子はどうよ。」
「うーん、まあまあかな。でも…………。」
「でも…………?」
サイトは目線を上に上げて昨日のバトルを振り返る。それだけではない、これまでのバトルの記憶も断片的に過ぎらせる。そして何故かぽつぽつと彼が求めるビジョンがぼんやり浮かぶ。
これまでのスタイルとは全く別で、
浮かぶのは鬼の顔と無限の刃。
そこには自分であって自分で無い誰かがいる。
この妙な感覚が、体験したことも見たこともない感覚が、何故かイヤじゃなかった。むしろ心の中の誰かが待ち望んでいるようなおかしな感覚。サイトはこの第六感に賭けてみることにした。
「………でも、僕はまだまだ強くなる。」
「だから、超近接型の機体を作ろうと思う。」
「は!?まじかよ!!サイト!!そりゃ無茶だぜ?だってお前、近接戦闘はそこまで得意じゃないだろ!!」
「それに近接戦闘機は確かにロマンこそあるが実際相手に近寄る分反撃のリスクも高い。そりゃ使いこなせさえすればタイマンじゃ無類の強さを発揮するけど集団戦闘やミッションじゃ汎用性に欠ける。らしくないぜサイト!」
「うん、分かってる。でも出来る気がするんだ。なんとなく。それに、その機体を使いこなせる日が来た時、僕はつまり相当強いってことでしょ?」
「はぁ、お前頭いいのか馬鹿なのかたまに分かんなくなるぜ。まあそういところが好きなんだけどよ。」
アキタケは頭をかきながらやれやれといった仕草を見せる。だが彼はガンプラという好きなものへの熱意と探究心を持つサイトの"バカ"なところが好きだ。彼にはまだそこまで夢中になれるものがない。だから羨ましいと思う事もある。羨ましいと思うこともたまにはあるが、それでもオノ・サイトという男を憎む事はなくバカのたどり着く先を見てみたいと思っている。それに彼といると、自分も何かバカになってみたいとさえ思うのだ。
「そんなバカにこれ。いいもん見つけてきたぜ。」
「バカは失礼だろ。お前もバカな癖に。」
サイトは口を尖らせながらアキタケがスマホに映し出した文字列を読む。
「……U18 GBN……全国選手権大会…………?」
「どうやら、毎年夏にやってるみたいだぜ。トーナメント形式で全国の18歳以下のダイバーと闘う。シンプルな大会形式は旧式のGPD時代が由来なのかもな。」
「GPD時代の………なごり、か。」
サイトの脳裏には街のテレビで見た蒼と赤の機体が繰り広げた天地が割れるほどの激しい闘いの記憶が過ぎる。いつか自分も。心のどこかでそう思ったあの日。
「いいね、やろう。」
「流石、大将!そういうと思ってたぜ!!」
「逢えるかな、彼と。」
「ん?リパルドか?さあ、それはわからねえけどこの大会でお前の名前が売れればあの戦闘狂の方から出向いて来るかもな。」
アキタケはニヤリとしてサイトにアイコンタクトを送る。サイトはそれを見てニヤリと返す。
「よーし、そうと決まれば早速新しい機体の製作に取り掛かるぞ!!」
***
一方、職員室
「てことでね。シイナ。そろそろ部活持ってみないかい?」
「え?わたしが部活ですか!?」
勇気高校の校長アララギ・ユウリと新人教員のヒナセ・シイナがデスクの前に座りながら話をしている。突然の話にシイナは少し動揺しているがアララギはその表情を見てニヤニヤしながら続ける。
「まあ、強制とは言わないけど。ウチの部活色々あるからさ。まあゆっくり決めてくれたらと思うよ。」
アララギはポケットから勇気高校の部活パンフレットを差し出す。中学生向けの学校紹介などで使われるものだろうか派手なポップとどの写真にもイキイキとした学生の表情が印象的に映る。まさに青春といったところか。しかし、シイナが望むものはなかなか見当たらない。
「……えーっと、アララギ校長…………?」
「はい、じゃあ考えといてねー。先生言うこと言ったからねー。先生これから接待で忙しいからねーー。」
「えっ!!ちょっと!!アララギ校長!!わざとですよね!!ちょっと待ってくださいよ!!」
アララギはシイナが何か言いかけるとそれを察知し素早くくるっと方向転換しいつもの白衣をふわっとさせ校長室へとそそくさと戻っていった。シイナはいつも通りほっぺをぷくっとふくらし不満を顔にだす。
「もう、また先生のいつもの手口。」
「部活かぁ…………。」
シイナはパンフレットに載った学生達の表情をぼーっと眺める。
「いいなぁ。わたしも学生の時はこんな感じだったのかな……。」
今のシイナには少しそのキラキラした表情が少し眩しい。手が届きそうではあるけど手が届かない、届くこともいつか辞めてしまったようなそんな表情。はたまたそんなつもりは本人になくともいつの間にか忘れてしまったのか無くしてしまったのか。やはりこの年代でしか味わえない事は我々大人の想像以上にある。
そんな過程を支えたい、見届けたい、と言う気持ちがシイナを今の職に就かせた。自分がそうしてもらったように、すこしおこがましいが今度は自分が。自分が誰かに繋いでいきたいと彼女は思った。それは「次は自分の番」という使命感は多少あれどあくまで自主的な感情で彼女は動いている。
シイナは天井を見上げて少し考え込んでいた。
──昼休み 理科準備室──
「ヒナセ先生、えらく顔が浮かないけど大丈夫ですか?」
「……はい。実は校長先生がそろそろ部活の顧問持ったらどうだって…………。」
「ふむふむ。」
「でも、その、顧問を持ちたいって部活がピンとこなくて、校長先生はゆっくり決めればいいとは言ってたんですけどこのままじゃ永遠に決まりそうになくて。」
「なるほど。それは大変ですね。」
「そうなんです。大変なんですよ。」
2人の男女が他人行儀に話を進めていた。
「むっ、というかさっきから他人事みたいに!なんですか!よそよそしく喋って!!」
「だって、俺、学校の雇われ用務員だし。シイナは先生だし、ここ職場だし。あ、訂正です。職場ですし。」
「こんな時だけ常識人ぶるなんてずるいです!アララギ先生もフウトさんもずるいです!!ふんだ!」
勇気高校の特別職員として雇われた用務員のイヌハラ・フウトは元同僚で恋人のヒナセ・シイナのご機嫌をやれやれと言いながら嗜める。彼がしばらく旅に出ていた間にすっかり大人の女性になったかと思っていたがこういうところはまだまだ変わっていない。とはいえ、こういった素の姿を見せてくれるのは自分に心を許しているからでと思うと内心少し嬉しかったりする。
「そういえば、フウトさん昔ここのガンプラバトル部だったんですよね。」
「なんだよ。急に。もうずいぶんと昔のことだけどな。あの頃は俺にとって兄さんとテルキさんとタロウさんとガンプラバトルする事が全てだった。4人で本気で日本一になるって夢みたいな事を本気で叶うって、やってやるんだって思ってたもんだよ。」
「そんな馬鹿みたいな事をアララギ先生はいつでも見守ってくれてたし、そのために必要なことを説いてくれていつも俺たちを成長させてくれたよ。」
「って…………なにぺらぺらと喋ってるんだ俺は…………。」
理科準備室はフウトにとって青春そのもの。目を瞑って独特の埃が混じったこの匂いがかつての記憶を思い出させる。何年も前のセピアがかった記憶がフラッシュバックする。
もちろん綺麗なことばかりではない。むしろ悩み苦しみ何度も辞めたくなったこともあった。今思えば兄に異変が起こり始めたのもこの頃だったのかもしれない。それでも、点は繋がる。道は出来る。どんなにでこぼこでもいくつもの道と繋がりその人だけの道ができる。そして振り返った時、過去の点など今を生きる事と比べれば美化されて見えるのかもしれない。
「ふふ………。」
「何笑ってるんだよ。」
「いいえ、別にー。」
そんな彼を見つめ微笑む彼女。フウトは照れ隠ししながら口を尖らせて話題を戻す。
「まあ、先生もゆっくりでいいっていったんだ。好きようにしろよ。」
「それに俺の昔話なんかより、今いるここの生徒に答えがあると思うぜ。」
フウトはそういうと用務員の帽子を髪が覆われるまで深く被りそそくさと教室を出て行った。
「あっ、フウトさん!ちょっとどこ行くんですか!」
シイナは慌てて手を伸ばすがフウトは既に姿を消していた。またあの人はといった表情をしながらも彼の不器用な助言を胸の内に飲み込ませる。目の前の生徒たちともっと真剣に向き合ってみようと思った。
***
放課後
「おい、サイト、このパーツは?」
「うーん、これは形状加工が厄介だなあ。」
「こっちは?」
「あ、これはつかえるかも。」
理科実験室の古びた卓上の上をガチャガチャと音を立てながら2人は手を動かしている。今朝サイトが新しく作るといった機体の制作の真っ只中だ。サイトが手を動かして作業をし、アキタケがパーツをマテリアル類を漁って2人がかりで作業をする。
「なあ、サイト。」
「ん?」
「意外と俺たち、こうやって共同作業するのはじめてだよな。オマエ、いっつも一人でなんでもやっちまうし。」
「確かに。」
サイトは手を動かすのに夢中できょとんとした顔で空返事をする。
「なーにが、確かにだよ。」
「昔もここの部屋で俺たちみたいなバカが居たんじゃないかって時々思わないか?」
古びた理科実験室、実は今日アキタケは初めてここにオノサカに連れてこられてやってきた。色んな匂いが入り混じったこの部屋の中心には初期型のGPDの筐体がある。その隣に作業机、棚には2つのトロフィーとガンプラに関する専門書とライトノベルのようなタイトルの小説や少し前に流行ったCDや漫画となぜか古典を記した新書などが保管されている。
彼らが改めて部屋の中を眺めていると風が一瞬、窓から二人の間を吹き抜けた。
「なんだこれ?」
風吹き抜けた後、棚の本の隙間から古い紙切れがひらひらと床に落ちる。
『明日は、絶対優勝!』
黄ばんだ紙にはこう書かれていた。それをそっとアキタケが拾う。そしてニヤッと口角を上げて少し黙り込む。
「なんだよ?アキタケ!それ、見せてくれよ。」
「…………………………………………。」
「おい!なんとかいえよ!!」
「…………はは!…………はは!!!」
突然笑い出すアキタケ。何もわからないサイトは困惑しながら彼の肩を強くゆする。
「すまん、すまん。ついおかしくなってよ。」
「なあ、サイト。」
「なんだよ。あらたまって。」
「俺とオマエで、バカやってみないか?」
「え?」
「──二人でガンプラ部をつくるんだよ!!」
アキタケは黄ばんだ紙をサイトに見せつけてドヤ顔でそう言い放った。サイトはその紙を見てかつてこの部屋を使っていた生徒が書いたものであると瞬時に理解をした。そして自分では到底思い付かなかったようなことを堂々と言い放つアキタケに驚きを隠せなかった。
「ほ、本気なのか!アキタケ!」
「当たり前だろ。これを見てピンときたぜ。やっぱりバカがいたんだよ。ここに!それに俺たちもこれから大会に出るんだ。そういうのがあった方が締まりが出るだろ。」
それを聞いたサイトは口角を上げてニヤリとする。
「本当に、お前といたら飽きないよ。やろう、部活。」
「へへ、そう来なくっちゃな!そうと決まれば俺は部活を作るのに必要な情報を集めてくるよ!お前はここで新しいの作っててくれ!」
そういうと彼は嵐のように立ち去っていった。サイトは苦笑いしながら頭をかく。
「いっちゃった。アキタケらしいな。」
「…………部活か…………。」
「なんか、青春っぽいな。」
サイトはそういって古い天井の上を見る。
「…………いかん、いかん、僕はアンチ青春派なんだ!何が青春だ!ガンプラバトルの大会に出るくらいで浮かれすぎだ。はやく作らなきゃ。」
彼の目の前にはAGE1をベースとして組まれている鬼の顔をした機体が置かれていた。
***
──某模型店
「よう、サイト。どうだ調子の方は?」
「お前、いっつもそれだな。まあまあだよ、新作も後少し。完成前だけど一度GBN上で遊飛行くらいさせたくてね。」
「お、じゃあ早速いくか。大将!」
二人はGBNにダイブするための筐体をレンタルするために店長へ一声かけにいく。
「だからよお!あの赤いクソガキはどこにいんだって聞いてるんだよ!青ひょこ!」
「いや、ですから。彼は今ここにはいませんし、俺もどこにいるのかは…………。」
店に入った時から何やら騒がしいと思っていたが、店長が赤い髪のいかにも気の強そうな女性に詰められている。2人はその威圧感に遠くからでもビビっており店長の方を申し訳なさそうな顔をして覗き込む。
一方、目の合わせどころのない店長も遠くを見ていると2人と目が合った。困り顔をしながら「使っていいよ」のアイコンタクトをすると2人はそれを察知し筐体のある奥の方へと向かう。それとほぼ同時に赤髪のポニーテールの女はサイトの方に一瞬振り向き目を合わせた。
「…………あの人、まじでその道の人かな……………。」
「この店って……かなり赤字なのかな………………。」
「てか、僕、あの人と一瞬目があった気がするんだけど。本気で怖かったよ…………。」
ヒソヒソと話しながら2人はGBNへとダイブする。
『──気が変わった。』
『青ひょこ、アタシも借りるぞ。』
『面白そうなモンを今みた。』
ダイブして早速機体のあるコンテナの方へと向かう2人。目の前にはまだサーフェイサーの状態の大きな巨人。頭部には2本鬼のような角が生えて少し背中を反って立っている。
「へぇ、AGEベースか。いいじゃねえか。」
「でしょ?僕もかなり気に入っているんだ。」
「じゃあ早速いくとするか。」
「そうだね。」
いつものようにサイトが機体に乗り、アキタケは小型のホバーに乗ってエリアへと飛び立つ。まだ未完成品ではあるが以前までのグフよりも数段馬力があるように感じる。
草原のエリアを試運転で旋回などを織り交ぜながら遊飛行する。グフとは全く違う操作感だが気持ちいいくらいによく動く。オノサカはこれまでガンダムタイプの機体をあまり使った事なかったため新鮮に感じる。まだ全身が灰色の機体は少しおぼつかないところもあるが調子は良好である。
「結構サマになってるじゃねえか、オノサカ。」
「よーし、もうちょっと飛ばすよーー!!」
オノサカが思いっきりアームレーカーを押そうとした瞬間、モニターに「Caution」の文字が浮かぶ。
「…………嘘だろ?こんなところで…………?」
「しまった!すまんオノサカ!そこは戦闘区域内だ!」
戦闘区域外で遊飛行をしていたつもりが、2人とも快く飛行しすぎていたせいかそれを忘れてうっかりと通常のエリアへと入り込んでしまっていた。
そして彼らの目の前に現れたのは、紅のストライク。
「ダイバーランクS、アカネ…………?」
「おい、そこのガキ。あたしとバトルしろ。」
あまりの格上からバトルを申し込まれたことと目の前に立つだけで滲み出る威圧感にオノサカは雰囲気に呑まれつつあった。しかしそんな彼をよそに、紅の機体は緋色の刀を構え突撃してくる。
「ちなみに、拒否権はねェぞ!!」
「うわっ!!」
鋭い刃がAGEを襲う。オノサカのAGEは脚部が地面で擦れる音をたてながらなんとか後退する。
「なんなんだ!あなたは!」
「無茶苦茶だぞ!この人!」
「聞きたいことがあるならあたしに1発喰らわしてみな!!」
「くそっ!」
再び彼女の操る紅いストライク「レッドストライク」は緋色の刀を鋭く振るわす。オノサカはなんとか防御するが簡単に弾かれる。
「面白くねえことすんなよ!ガキ!」
ガードがあいた腹部に斬撃を入れる。灰色のボディが割れる。強力な一撃と素早い斬撃。ただの力押しでできる業ではない。ダイバーランクの表示は本物であると、オノサカは瞬時に判断する。
「どした?やられっぱなしか?」
「見せてくれよ。テメーの中にあるモン全部。」
「なんなんですか……あなたは一体…………!!」
うすら笑いを浮かべるアカネ。対して必死に攻撃を仕掛けるオノサカ。ビームサーベルを連続で振るうがアカネには赤子をあしらうように刀一本であしらわれる。
「はは!いいね!いいね!」
「だけどそんなんじゃアタシには通じないなァ!」
「いいかい?クソガキ、剣ってのは"こう"振るんだ」
レッドストライクは緋色の刀を大きく振るわせ、AGEのビームサーベルを一気に跳ね除けるともう片手で背中のビームサーベルを引き抜き直線的に突進してくる。
赤い死神が、灰色の機体を通り抜ける。
「!?」
「ちゃんと見えたかい?」
直後、灰色の機体はバラバラになっていた。
「…………………………………………………………。」
「おい、オノサカ!!おい!!大丈夫か!!」
「…………嘘だ…………。」
敗北。
ほんの一瞬の出来事だった。正直ここまでの力量差だとは思っていなかった。あまりにも一方的。
頭がぼうっとして目の前は真っ白。
オノサカの頭の中に走馬灯のように様々な条件が映る。目の前で起こった事実が理解できず頭が混乱している。本当によくわからなかった。ここまでの力量の差を見せつけられたのは本当にはじめてだ。
何が大会だ。
何が部活だ。
やっぱり、僕は浮かれていたのだろうか。
力が。
力があれば。
もっと僕に、
力が。
俺に力が。
目の前の現実を変えるだけの
力が。
欲しい。
『──代われ。』
『俺が、やる。』
突如灰色のAGEの眼に光が灯る。いつもの緑色のツインアイの色ではない。片方にだけ赤色の光が鈍く灯る。
「………………………………。」
「…………やっぱり…………"素質"アリ……か。」
アカネは歯を出して笑みをこぼしだすとその狂気じみた笑いが止まらない。頭の中にはかつて見た光景が重なる。
「…………………………!!」
「こいよ、クソガキ。」
全身に重度のダメージを受け片足もロクに動かないAGEは無理やりバーニアを吹かせレッドストライクの方へと立ち向かうとサーベルを構え直線的に突進する。
AGEの斬撃の間合いに入った瞬間、レッドストライクは刀でその攻撃を阻止しようと斬撃の方向へと振るう。が、AGEは先ほどからは先ほどの動きからは考えられない反応速度で刀を躱しビームサーベルを振り切った。
「…………剣はこう振るんだろ?」
「ちったァ、やる気になったかよ。」
「でもよ、調子に乗るなよクソガキッ!!」
レッドストライクは攻撃に怯む事なく、刀を振り向きざまに大きく振るう。その凄まじい斬撃からは衝撃波が生まれAGEを襲う。
「くっ…………!!」
AGEは斬撃を避けるがそのコースの目の前には赤い死神が回り込んでいる。その間ぽろっと手に持ったビームサーベルを落とす。今度は刀を斜めに振るわせAGEを怯ませるとビーム刃のついた脚部で蹴りを入れてくる。動きが止まり武器を持たないAGEにとどめとなる一撃。
「このまま負ける気は…………ないッ……!!」
うずくまったAGEだったが、身体中に備え付けらていたビーム刃を発生させる基部から無数の刃を身体中に展開させハリネズミのように防御壁を展開させる。
「ほう!面白い!!でもよ、それじゃアタシには勝てねえよ。」
危険を察知したレッドストライクは蹴りの勢いを無理やり止め延伸力を生かして一回転したのちさらにその回転を生かし緋色の刀から超特大の衝撃波を繰り出した。
「…………そんなッ………………!!」
灰色の機体の目の前に緋色の光が灯り真っ白となる。
『──何してるんですかッ!!』
「…………………………え?」
「おお、これは、これは。」
特大の衝撃波を銀色の斬撃が打ち消した。
灰色の機体の前には白銀の機体が舞い降りた。
「大丈夫?サイトくん?」
「………………先生……?」
ヒナセ・シイナとスノーホワイトが絶対絶命のピンチに現れた。
「俺は……………………。」
「サイトくん!!しっかりして!!まずい、意識が!アキタケくん!彼を回収して早くここから離れるのよ!」
「は、はい!」
「させねえよ!アタシはそのガキに用があるんだ!赤ちんンとこの白雪姫ちゃんはお呼びじゃねえんだ!!」
レッドストライクはそうはさせまいとAGEを追う。そこにスノーホワイトが入り込む。
「邪魔だ!どけよ!おヒメさま!!!」
「いいえ!どきません!!」
赤の斬撃と白の斬撃が激しく重なる。お互いに距離を取った後も互いに一歩も引かない打ち合い。
「先生……強ぇ…………。」
「アキタケくんはやく!」
「よそ見してんなよ!!」
レッドストライクは落ちていたAGEのビームサーベルをスノーホワイトに対して投擲、簡単に弾き返すがその動作を隙にレッドストライクは一気に懐へ潜り込む。刀を構え斜め下から一気に振り切る。
「なんのぉッ!!」
「いい反応するじゃねえか……!!」
レッドストライク必殺の一撃を白銀のブレードで受け止めるスノーホワイト。そして鍔迫り合いもなんとか押し切り一気に形成逆転。
「これで………………!!」
「甘めェよ!!」
白銀の斬撃に対して緋色の刀を合わせにいくレッドストライク。
「………そこ…………!!!」
シイナの耳飾りが青白く光る。スノーホワイトは斬撃の方向のまま力を流し攻撃をキャンセルさせ刀を滑らせたままのレッドストライクに蹴りを叩き込んだ。
「くっ…………お前も赤ちんと同じか…………!!」
「おもしれェッ……………!!」
レッドストライクの眼に光が灯る。もはやその様は悪魔なのか鬼なのか死神なのか判別できない。あまりに狂気じみたオーラ。アカネの本能がオノサカからシイナへと対象を移す。シイナはそれを見逃さなかった。
「アキタケくん!いま!!」
「いくぞ、オノサカ!!脱出だ!!!」
その高次元の闘いに圧倒されながらもアキタケはオノサカと共に区域を脱出する。オノサカもまどろみの中でシイナとアカネの闘いを見ていた。
「…………ちっ。」
「やめだ。」
そう言うとレッドストライクは刀を腰の鞘に納刀する。先ほどまでの狂気は一気に引いた。スノーホワイトも臨戦状態を解除する。
「はぁ、なんの真似だ?白雪姫ちゃん。別にアタシの邪魔をするこたァねえだろうが。」
「私は彼の教師です。教師が生徒を守って何が悪いんですか。」
『──僕は彼の教師なんだ。センコーが可愛い教え子を守って何が悪い?』
アカネの脳裏に同じ情景が思い浮かぶ。
「………………諸行無常の響きあり……か……。」
ぼそっと呟く。
「けどアタシはただアタシが楽しめればいい、満足できりゃいい。その相手を探してる。」
「お姫様があのガキの子守りすることに文句はねェ。けどよ、いずれテメーの手に負えなくなる時が来るぜ?」
「あのガキはいずれあのクソガキと同じ道を辿る。」
「さっきから何言ってるか全然分かりませんけど」
「私は彼らの成長を見守ります。それが私の役目です。」
シイナはアカネにはっきりとそう言った。
「好きにしな。興醒めだ。帰る。」
アカネはそれを聞いてそっけなくその場を去った。
「…………サワラさんにもしかすると、って言われて来たけど。正解だったな。」
「あの人はいったい……………………。」
その瞬間、シイナの脳に電流のようにピリッとしたものが流れた。スノーホワイトは膝をつく。
「…………ッッ!!」
「…………ちょっと無理しちゃったかな…………。早く戻ってオノサカくんの様子を見に行かなきゃ。」
青空の下の草原だったエリアはいつの間にか焼け野原となりすっかり日が落ちかけていた。その場に残ったものは誰1人としていない空虚な場所と化していた。
***
GBNからログアウトし急いでサイトのところへと向かったシイナ。模型店へ向かうがサワラから近くの公園で休んでいると聞かされすぐに向かう。
「あ!いた!」
「先生!」
「大丈夫だった?」
「はい、仮想空間の出来事ですし。でも少し記憶が飛んでいるような……。」
「サイト、マジで大丈夫かよ?」
「うーん。」
顔色は特別悪くもなく、調子も悪くなさそうなサイト。しかし目の前で若干の異変を感じたアキタケはどうも腑が落ちない。
「まあ、大丈夫ならそれでいいか。先生もありがとうございました。マジに助かりました!」
「ううん、大丈夫。大丈夫。2人とも無事で良かった!」
心配していたシイナの顔が一気に緩み笑顔となる。2人ともこの笑顔を前にして少し鼻を伸ばす。しかしサイトはその感情を無理やり掻き消し、先程うつろうつろ見たシイナのガンプラバトルの実力を思い返し立ち上がって言う。
「先生!僕にガンプラバトルを教えて下さい!!!」
「僕は……………………。」
「強く、なりたいんです…………!!」
***
「アカネさん、どうしてあんなちょっかいを。」
「言ってんだろ。アタシが楽しめればそれでいい。って。」
「あなたはまたそうやって好き勝手言って…………。」
「別にいいだろ。類は友を呼ぶ。アレは逸材だぞ。青色のガキも相当だったがアレもかなりいい。」
「楽しみが増えた。」
夕焼けに煙草の香りが漂う。
物語は再び動き出す。
(続く)