ガンダムビルドデューラーズ 清掃員外伝   作:地底辺人

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第六話「憧憬」

――ビピピ……ビピピ……。

 

「――今日もやるか。」

 

朝5時。アラームが定刻の時間に鳴り響く。

 

いつも通りの時間に起き、顔を洗い、少し眠い目を擦りながら朝のトレーニングの準備をする。

 

――フウトが北海道に来て一ヶ月がたった。

 

こちらに来てからというものフウトにはルーティン的なものが出来上がっていた。一日のスケジュールとしては早朝に体力作りのためのランニング、その後大学のガンプラバトル部の朝練に混ざりトレーニングを行う。トレーニングが終われば学内の食堂で朝食を取り、研究室の掃除や部で使用しているGPDの整備やシステムチェック。それを終えると夕方の部活までアララギとマンツーマンでトレーニングを行う。夕方の午後練に合流してからは部員たちと日が暮れるまで切磋琢磨し合う。

 

大学は郊外から少し離れたところに位置しておりフウトにとってこれほどまでにガンプラに集中できる環境はなかった。

 

フウトはこの一ヶ月間、生活の中でガンプラに使える時間は全て使い格闘、射撃、防御、回避と基本動作をアララギに付きっきりで指導してもらっていた。

 

またそれだけでなく、デューラー本人の体力づくりやメンタル強化のためのランニングや座禅といったトレーニングも行っておりフウトは以前よりも忍耐力や集中力が高まっていた。

 

フウトは準備を終え靴を履き、ランニングへと向かう。

 

一ヶ月前に購入したランニングシューズだがもうすでにフウトの足の形に馴染んでおり少し薄汚くなっている。

 

――今日も朝日に照らされながら山沿いを走る。

 

いつも走っているコースは「たぬき山」と呼ばれる山道で片道6kmを走る。6kmというとそこまで長距離ではないが当然の如く道は坂道であり、地面もアスファルトのため足に負担がかかる。

 

このトレーニングを課したアララギは特に時間制限を設けなかったが、フウトは勝手に「40分以内」で走り切るという目標を立てていた。

 

トレーニングを行う際に自分で課題にどう取り組むか、それを常に考えろと教えてくれたのは他でもないアララギであった。

 

時間というものは誰に取っても有限である。

 

そして意味のある時間を過ごすか、無意味な時間をダラダラ過ごすかで大きく変わってくる。

 

フウトにとって強くなるための時間は全て意味のある時間にしたかった。このランニングを「走らされている」と思っていてはいつまで経っても上には行けない、このトレーニングの意味を自分なりに考えて行動しなければそれこそ無意味な時間を過ごしてしまうのだ。

 

この狸山もダラダラと走れば簡単に1時間くらい完走するのに掛かる。

 

それをしっかり40分で走り切り朝練へと挑むことで一日のスイッチも入る。そしてこれを毎日継続できたというささやかな自信も付くのだ。

 

取り組み方によれば体力づくり以外にも本人が意識を変えることでプラスアルファの効果を生む。

 

やって当たり前の世界ではプラスアルファ、いわゆる付加価値をどれだけ積み上げれるかも重要である。

 

――そういうものが、案外少しの差で勝敗を分ける時もある。

 

栄光のために、少しの差を埋めるべく、日々努力する。それがプロフェッショナルというものだ。

 

フウトはそう思いながら狸山の中腹あたりまで来た。時計を見るとタイムは15分、ここから続く坂道を考えると少しハイペースかもしれない。

 

そんな計算違いのフウトの前を歩く人影が見えた。

 

「今日もやってんねえ」

 

フウトの前を走っているのはヒナセ・シイナであった。

 

シイナもまた、アララギにトレーニングを課せられ走っているのである。

 

フウトは気付かぬフリをしてシイナを追い越す。

 

シイナもまたフウトに気付かぬフリをして後を追う。

 

視線すら合わせない。

 

合わないのではなく、合わせないのだ。

 

二人とも真剣なのだ。挨拶くらい、ランニングが終わればいくらでもできる。

 

気がつけば頂上に続く最後の急な坂の手前まで来た。この坂を登り切れば、後は下りのため楽である。

 

しかし、後ろから追い上げてくる者が一名。

 

この坂を手前に勝負を仕掛けてきた。こいつは差し馬か?

 

フウトも負けじと坂道を駆け上がる。

 

追ってくる人影をチラッと横目で睨みながら前へ駆ける。

 

一歩一歩、強く、地面を蹴り出し踏み込む。

 

後ろから怒涛の追い上げもあったが最終的にフウトは抜かれることなく頂上へと辿り着いた。

 

「――はぁ、はぁ……。イヌハラさんにまた勝てなかった……。」

 

「まだまだ、負けるわけにはいかねえなあ。」

 

後ろから追いかけてきたのはもちろんシイナであった。

 

シイナはいつもこの最後の坂道でフウトにラストスパートを掛ける。結果はいつもシイナの負けであるが。

 

「じゃあ、俺は先に行くぞ?」

 

「どうぞお先に……。」

 

疲れ切ったシイナをよそ目にフウトは先へ急ぐ。

 

下りの道を走っていると気持ちの良い風が吹く。

 

北海道の風は本土より冷たくなるのが少し早いだろうか。

 

そんなことを思いながら今日もたぬき山を降る。

 

「――よし、37分14秒……!」

 

色々なハプニングもあったが今日もいつも通りのルーティンをこなす。

 

「――やっと終わったぁ……!」

 

続いてシイナもゴール。男性でもなかなかきついコースを走り切る体力と足腰、そして気合いには感心される。

 

「シイナ、お疲れ。」

 

フウトはそう言ってシイナに冷えた水を渡す。

 

「ありがとうございます、イヌハラさん。」

 

シイナはそう言って水を受け取るとゴクゴクと飲む。

 

「……んっ…んっ……。」

 

「……ぷはぁ!」

 

いい飲みっぷりだ。餌付けしているようで楽しい。

 

彼女の姿と朝日が重なり汗がキラりと光る。

 

オリーブ色の髪色が反射して眩しいくらいだ。

 

「しかし、イヌハラさんもこういうところあざといですよね?」

 

「いや、親切と言え。」

 

「じゃあ、今日も親切頂きますね!」

 

たわいもない話をしながら、二人は部室へと向かう。

 

部室につけば朝練の準備を行う。朝練は特に参加必須ではなく自主参加となっている。そのため、顧問であるアララギが課したものではなく、各々が課題だと思っている点を各自自主練として行う。

 

朝練開始時刻は6時半、終了時刻は7時半と短期集中型となっている。

 

フウトは決まってこの朝練では格闘を中心とした近接距離の攻撃や立ち回りなどを行なっている。

 

これはアララギから「ふうちゃんはあまりにも攻撃を待ちすぎている。仕掛けられない相手に怖さはないよ?」と指摘されたからである。

 

実際フウト自身もカウンターを狙いすぎているという場面もありそれ一本で闘っていくのには今後不安だと感じていたからだ。

 

また、積極的な攻撃が功を奏でカウンターが生きる時もある。フウトの"眼"ならそれも可能だ。

 

「――遅いっ!!」

 

今日もジャスティスカイザーはトレーニング用のターゲットに対し強く踏み込み、ビームサーベルで薙ぎ倒す。

 

トレーニング用相手でも実戦で使えるようにトレーニングレベルを最大にしターゲットが動く速度も最大にしてある。

 

しかし所詮は機械、もはやいまのフウトの相手にはならなかった。

 

とはいえ、一ヶ月前はこの速さについていくのに精一杯だったのだ。少しは成長したのだろう。

 

――朝練終了。

 

フウトは食堂へ向かい、朝食を取る。

 

ランニングと朝練後のご飯は最高に美味しい。朝から疲れた身体を回復させるため炭水化物とタンパク質は多く採る。

 

とは言っても、白米と、味噌汁、納豆、鮭、キャベツとトマトのサラダと言った定番のメニューである。

 

「イヌハラさん、いつも同じもの食べてて飽きないんですか?」

 

隣にいつの間にかシイナが座っていた。

 

「お前の方も毎朝飽きずに目玉焼きとソーセージじゃないか?」

 

「これは何度食べても飽きないんですー!」

 

「俺も何度食べても飽きないんだよー!」

 

謎の言い合いがはじまる。大体シイナからこういった流れは始まる。

 

「みんなあっちで食べてるけど行かなくていいのか?」

 

「ん?あ〜ええっと……」

 

「ん?」

 

「い、いやこんな時じゃないとイヌハラさんと話せないし……。」

「それにイヌハラさんってちょっとドライだからさ……。」

 

シイナは部内でもその実力から部員からの信頼は厚く慕われている。別に孤立しているというわけでもない。

 

「――ドライか……。」

 

要するに態度が冷たいと言われているのだ。狸山の時や先程のようにシイナが一方的に絡んできても、自分からシイナに絡みに行くようなことはしない。いい大人が年下の女の子相手に何やってんだという話だが、その原因がなんなのかはっきりと分かっている。

 

かつて自分がやさぐれていた時にたまたま出会った少女とシイナがあまりにも似ていた。

 

容姿、機体、自分が使う技どれも知っているものだ。

 

あまりにも気になったフウトは一度、微かな記憶を頼りに少女と出会った町外れのGPDの筐体を探した。

 

辺りをウロウロしていると、それらしきものを発見し、死んでいたシステムを復旧させバトルのログを確認した。

 

「――確かあれは、5年前の、12月頃だったか……?」

 

ログが表示された画面を下にスクロールしていく。

 

「――12月12日 ∞ジャスティスガンダム.ヒナセシイナ win.」

 

「……あった。これだ…間違いない……。」

 

フウトは頭のどこかでシイナがあの日の少女でなければ良いと、自分にとって都合の良い事を考えていた。

 

自分にガンプラという道をもう一度与えてくれた出会いとの再会はフウトにとってあまりにも皮肉でしかなかった。

 

フウトは彼女とどう関わって良いのか正直分からなかった。

 

自分にとって彼女の存在意味はあっても、彼女にとっての自分は何なのかそもそも分からない。分からなくて当然なのだ。

 

だが自分だけが全てを知っていて、何も知らない彼女と接するのはなにかズルいと思ったのだ。

 

「イヌハラさん……?どうかされました?」

 

「あ、いや…。考え事を……。」

 

「ジィーーっ……。」

 

シイナがこちらを凝視する。

 

まずい、何か言わなければ。

 

「――ええっと、シイナはなんでガンプラバトルを始めたんだ?」

 

「え?」

 

シイナは驚いていた。質問した自分も驚いていた。

 

「あー、そうですね、わたし、その辺の記憶がちょうど無くて……。」

 

「そ、そうか。すまん。」

 

一瞬沈黙が2人の間を漂う。

 

「あ、でもでも、親が言うにはプロのデューラーに憧れてはじめたって言ってましたよ!」

 

「へぇ、プロデューラーかあ、誰だろう。」

 

「ええっとうまく思い出せないんですけど、あまり有名な人じゃなくて現在でもあまり記録が残ってないみたいで……。」

 

「そうなのか……。」

 

「イヌハラさんは知りませんか?元プロデューラーなんですよね?」

 

「元プロといってもなあ……。」

 

「でも凄くかっこよく見えたんだと思います。」

「ほとんど記憶にはありませんが、凄く近くでバトルを見ていたような気もするし、インテリジェンスかつ豪快なバトルスタイル……」

 

「――それから、何よりも、楽しんでいる事。」

「それがとてもわたしの眼にキラキラ映ったんだと思います。」

 

「あれ、わたしなんで覚えてないのにこんなに話せてるんだろ……?」

 

「覚えてなくても、心と頭は無意識のうちに知ってるってこともあるんじゃないか?」

 

「イヌハラさんは他人事だからってまた難しい事を言いますねー!」

「でも、少しだけ影が見えてよかったかもです……。」

 

俺は勘違いをしていた。自分がシイナと関わることに恐れていたのは彼女の記憶がないこと。記憶が無くてコミュニケーションの際話が合わなかったりら答えられなくて悲しい思いをさせるのではないかと勝手に勘違いをしていたのだ。

 

それに合わせて自分の考えや価値観を彼女に押し付け過ぎないようにと過剰になっていた。

 

人と人は話さなければその間に何も生まれない。

 

避けていてもなんにもならない。

 

――ましてや彼女が憧れる、憧れたプロデューラーなら……。

 

「そういうイヌハラさんはどうしてガンプラはじめたんですか?」

 

フウトが考えている間にシイナが質問を投げ掛ける。

 

一方が話してそれに対してもう一方が反応して、その繰り返しが会話となる。

 

「――そうだな、俺は……。」

 

―――――――――――――――――――――――

 

「ふうちゃん、ガンプラ組んでみない?」

 

「がん…プラ?」

 

「そうそう、兄ちゃんもやってるんだ、一緒にやろう!」

 

「でもぼくにできるかな……?」

 

「だいじょうぶ!にいちゃんがおしえてあげるから!」

 

幼き頃のフウトは、兄「イヌハラ・ユウキ」に誘われガンプラをはじめた。

 

しかし「イヌハラ・フウト」と「イヌハラ・ユウキ」は血が繋がっていない、いわゆる義兄弟だ。

 

交通事故で両親を失ったフウトは、5歳という年齢で天涯孤独の身となった。

 

引取先もなかなか見つからず、孤児院で一人寂しくいたところ、子連れの夫婦がフウトを迎えにきた。

 

兄との出会いはその時であった。

 

――綺麗な青い髪をした、やや弱きそうだが兄らしく振る舞おうとする少年の姿が今でも脳裏に焼き付いてる。

 

引き取られたフウトであったが、なかなか周囲に心を開かなかった。

 

5歳とはいえ、一心の愛情を注いでくれた両親はこの世界から消え、別の両親が新しくできたからといって、「はいそうですか、よろしくお願いします」とはならない。

 

ましてやまだまだ甘えたざかりの時期だ。

 

幼いフウトの孤独は消えなかった。

 

取引先の夫妻は時間が解決するだろうと思い不用意にはフウトをあまり刺激しなかった。

 

しかし、二つ年上のユウキはフウトに対して話しかけ続けていた。

 

「すきなたべものは?」

 

「すきなどうぶつは?」

 

「そとにあそびにいこう!」

 

「ねぇ、今日から『ふうちゃん』ってよんでもいい?」

 

正直、最初は鬱陶しかったフウトも、だんだんとユウキに心を開きはじめた。

 

強引なコミュニケーションはウザがられる時もあるがプッシュし続ければ成功する時もある。

 

そしてある日のこと、ユウキはフウトにあるものを見せた。

 

「みてみて、ふうちゃん!これなんだかわかる?」

 

「なんだろ……?……ぷらもでる?」

 

「そうそう!ガンプラっていうんだよ!」

 

「――ガンプラ……。」

 

「これはね、ガンダムエクシアっていってね、このじーえぬそーどーでたたかうんだよ!」

 

「が、んだむ、えく、しあ……!」

 

「これをつかってね!ガンプラバトルもできるんだ!」

「あっ!ふうちゃんもとうさんとかあさんにかってもらおうよ!」

 

「え、でも、ぼくは……。」

 

「――とうさん、かあさんーふうちゃんもガンプラほしいってー!」

 

「おお!そうか、じゃあさっそくいこうか!ふうちゃーん!」

 

「あらあら、あなたったら……うふふ…。」

 

「――ふうちゃん、おとうさんたちがガンプラをかいにいくっていってるわよ?」

 

「でもぼく……。」

 

「あなたは、イヌハラ・フウトよ?たとえ血が繋がっていなくても、わたしのだいじなだいじなこども。」

「それはみんな思ってることよ?」

 

「ぼく……ぼく……!!」

 

フウトはうまく言えなかった。言葉を知らなかった。

 

父さんと母さんにここで幸せになって良いのかと幼いながらに疑問を感じた。

 

それでも繋がりという結びつきは自分を悲しみから救ってくれた。

 

ガンプラが繋がりを与えてくれたのだ。

 

――いや、この場合は兄の方か……。

 

「ふうちゃん、好きなの買って良いぞ!」

 

「え、ずるい!ぼくのときはそんなこといってなかった!」

 

「男の子は我慢する時も大事だぞ……!」

 

「いやよくわかんないよ!でもまあいっか!」

 

はじめて見る景色。自分の背丈よりも上に積まれた数々のキットたち。

 

生まれて初めてわくわくした。夢のような世界だった。

 

「――じゃすてぃすがんだむ……?」

 

ジャスティスガンダム。数あるキットの中からその赤く少し独特な機体がフウトの眼には眩く映った。

 

「ジャスティスガンダム!ふうちゃんはこれがいいの?」

 

「うー、うん!!」

 

子供心ながらにこれでいいと聴かれると他の物も欲しくなるがフウトは決めたのだった。はじめての相棒をこのジャスティスガンダムに。

 

「よーし、じゃあそれで決まりだねふうちゃん!」

「大事にするんだよ!!」

 

「うん!!」

 

「――そ、その、お父さん、ありがとう…!!」

 

「――!?」

「うんうん。こちらこそ、ありがとう。」

 

こうしてフウトのガンプラ人生は始まった。

 

兄と共に、兄を追いかけ、兄を越えるために駆け抜けた。駆け抜けてきた。

 

「――ふうちゃん、いつか世界のみんながみるようなおおきなところでトロフィーをかけてたたかおうね!」

 

「もちろん!そのときはまけないよ!!」

 

―――――――――――――――――――――――

 

「――そうだな、俺も憧れの人がいてその人の後を追ってはじめたよ。」

 

「へぇー、なんか意外ですね!」

 

「そんなにか?」

 

「だって、イヌハラさんって『我が道をゆく!』って感じじゃないですか!」

 

「否定は出来んな……。」

 

いずれは人は与えるものとなる。

 

下の世代に何を伝えられるのか、どんな夢を与えられるのかそういう歳になる時がくる。

 

兄はその年齢が極端に早かったような気もするが、いずれ自分の背を見て育つ世代もいるという事だ。

 

フウトは、シイナに対し彼女が憧れるプロデューラーの面汚しにならないよう最低限いなければいけないなと直感的に感じたのだ。

 

「――さて、そろそろ与太話もこの辺にしておかないと授業に遅れるんじゃないのか?」

 

「え!?あ!ほんとだ!!」

「それではお先に失礼します!!」

 

シイナは慌ててソーセージを口に放り込んで食事の席を後にした。

 

――フウトも朝食を済ませ食堂を後にしアララギの研究室へと足を運んだ。

 

「――失礼します。」

 

コンコンとノックを3回叩く。

 

「どうぞ。」

 

「おはようございます。」

 

「おはよう、ふうちゃん。」

 

アララギ先生はコーヒーを片手に優雅な朝を送っているようだ。

 

「あ、そうそう、ふうちゃん。例の大会、出る気になった?」

 

「来年夏に行われるGPDの全国大会ですか?」

 

正式名称、ガンプラデュエル全国選手権。過去に13度も開催されておりそ国内でも屈指の規模で行われる大会である。

 

この大会の優勝者は世界大会への出場権を手に入れることができ、その狭き門をプロ、アマ関係なく熾烈な戦いが繰り広げれる。

 

――世界まだ見ぬ強敵たち。想像するだけでも鳥肌が立つ。

 

そして国内にうじゃうじゃといる強敵たち。

 

――そんなの、出ない理由がない。

 

「出ます。予選にエントリーして下さい!」

 

「よしきたあ!」

「そう思ってもうすでにエントリーはしてるんだけどねえ!」

 

「返事を読まれてた!?」

 

「それに、この一か月でかなり基礎は叩き込んだしそれ以上の物もみにつけようとしてるみたいだし、先生から特別プレゼントでーす!」

 

「先生のコネクションで、プロを指導しているミハイルさんが今日からふうちゃんの指導に来てくれまーす!!」

 

「え!?あのミハイルさんが!!」

 

ミハイル・ペドロウィッチ。数々のプロデューラーの指導を行ってきた名将である。

 

得意とする指導は、超攻撃的バトルスタイル。ミハイルさんの超攻撃的バトルスタイルは一時期一成を風靡したほどだ。

 

現在は北海道を中心に活動していると聞いていたがまさかこんな巡り合わせがあるとは。

 

先生に感謝しなければならない。

 

「で、もちろん狙うは優勝だよね?」

 

「どんなやつがきても倒しますよ。」

 

「それでこそ、イヌハラ・フウトだ!」

「とりあえず来年の予選までにふうちゃんの実力を上げるために俺が刺客を送りつけるから覚悟しておくよーに。」

 

「はい!」

 

もう少しで秋風が吹きそうかという時期に、フウトには夏の扉が開いた。

(続く)




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