番外編『とある裏方のモテモテ計画』
俺の名前は『只野喪不男(ただのもぶお)』。このアイドル事務所ホロライブのスタッフとして働く敏腕社員だ。そして此処でアイドルをしている女の子達は世界で活躍するほどの超スーパーアイドルにして超可愛い娘ばかりなのだ。総勢30人程の可愛い女の子達、そんな娘達とお近づきになりたいというのは当然の事!いつかは俺もホロメンの娘達とあーんな事やこーんな事を…ブフフフフ♪
しかし、実際は……
「ねぇねぇレイくん、今日は白上の配信に一緒に出て下さい♪」
「駄目なのですフブキ先輩。玲二さんは今日るしあのおうちで一緒に過ごす予定なのです」
「るしあ先輩そんな約束してないでしょ?ねえレイ兄ちゃん、今日は一緒にねねと遊ぼー♪」
「玲二様、今夜はちょこと一緒に熱ぅーい夜を過ごさない?」
「だあぁーッ!!お前等人が仕事してるのにうるせぇーーッ!」
…まただ。またあの男『佐々木玲二』の周りにホロメン達が集まっている。何故だ!何故奴の周りにだけホロメン達が寄っていくんだ?!俺の元には一切寄ってこないのに!この間だってそうだ!偶々ダンスレッスンしていた時に俺と佐々木が一緒に行ったら
「おぉ、玲二様!余のダンスどうだった?」
「お疲れあやめ、前にも増して動きに無駄が無くなってきたな。若干息が荒いが、前よりも良くなってるぞ」
「むふふ~♪」
「ねえご主人!あてぃしは?!」
「あくあはスタミナが少ないせいかあやめより息が上がってるな。でも、前よりも楽しそうに踊って良かったぞ」
オデコに角を生やした少女『百鬼あやめ』ちゃんと小柄なメイド少女『湊あくあ』ちゃんが佐々木に誉められて嬉しそうに笑ってる。ようし、なら俺も
「あやめちゃんあくあちゃんお疲れ~♪二人ともダンスキレッキレで最高だったよ~♪」
「うえ…あ、ありがと…」
「ッスゥーーー…アリガト…」
…なんでだよ、何で佐々木に誉められた時は嬉しそうにしてたのに俺が誉めたら物凄く嫌そうな顔すんだよ。同じように誉めてあげたのにそんなのってねぇだろ!それだけじゃない、この間だって
「玲二さん、ちょっとお願いがあるんですが」
「ん?どうしたラミィ、また○イオ○ザードの事か?」
「ちーがーいーまーすー!今日はちょっと此処にサインと判子が欲しかったんですけど……」
そう言って水色のロングヘアーの少女『雪花ラミィ』ちゃんが佐々木に大きめの封筒を渡していた。その封筒には一ヶ所四角い穴が開いていて名前と判子を押す欄が見える。
「…因みになんだこれ?」
「えーと…承諾書?」
「…言っとくがこの手はフレアとはあとが既にやってるぞ。こんなバレバレな手に引っ掛かる訳ないだろ諦めな」
「ふえぇぇぇぇん!玲二さんの馬鹿ぁ!」
佐々木の奴が拒否するとラミィちゃんは半泣きになりながらその場を立ち去ろうとする。佐々木め、可愛い女の子のお願いを拒否するとはなんて奴だ!フッ仕方がないここはこの俺が
「やあラミィちゃん、承諾書にサインが必要なんだって?急ぎの物だったら代わりに俺が―ドゴォンッ!―うぼぉッ?!」
「触んな豚野郎…」
…なんでだ?!なんで俺が腹パンされなきゃならないんだ!しかもなんだ豚野郎って?!どうやったら半泣き顔が一瞬で絶対零度の無表情に変わるんだよ?!
畜生ッ!!なんだよ皆して佐々木佐々木って!あんなのちょっと顔が良くて仕事が出来て頭良くて運動も出来てフレンドリーでコミュ力あるだけの優男じゃねぇか!俺だって、俺だってなぁ!
「…まーた只野がブツブツ何か言ってるペコ」
「ホント気持ち悪いにぇ、こないだだってみこやそらちゃんの事やらしい目でじろじろ見てたし」
「仕事もロクにしてないどころか自分の仕事他人に押し付けてさっさと帰るし、ホント何しに此処に来てんだろうね?」
只野が自分の世界に入ってる中、そんな只野をホロメン達はまるで異物を見るような軽蔑の目で見ていた。そう、只野喪不男は自分の事を優秀な社員と思っているが実際は仕事も遅く時には他人に仕事を押し付けて帰り、その中年太りした体型やハゲ散らかして汗ばんだ頭皮等の見た目、更には性格も悪く暇さえあればいっつも女の子を厭らしい目でじろじろ見てる等のせいでホロメンはもちろん事務所のスタッフ一同からも嫌われている。哀れ只野喪不男(48)
(クソッ!俺は奴より優れているんだ!何とかして奴からホロメン達を…そういえば確かあの娘達最近ガンダムのプラモデルに嵌まってるらしいな、何でも佐々木の影響だとか…ブフフ、ならこの俺が奴より凄いガンダムを作ればあの娘達も佐々木を見限り俺に寄ってくるに違いない!よおし、見てろよ佐々木、お前の天下も此処までだ!ブフフ、ブフフフフ、ブハアッハッハッハァ!!)
―その夜只野宅―
「遂に買ったぞ…奴を越える最強のガンダムのプラモデルを!」
俺はあの後仕事を終えて(後輩に押し付けて)家電量販店に行き店員に一番高いガンダムのプラモデルを聞き、そして遂に手に入れた!これさえあれば佐々木なんて目じゃない!
「プラモデルなんて生まれて初めてだが、この俺の手にかかれば余裕!さぁ、早速組み立てていくぞ!」
見てろよ佐々木!お前が威張ってられるのも今のうちだ!(別に威張ってなどいない)そして待ってろよホロメン達!この俺が最強のガンダムを作り、君達のハートをバッチリ掴んであげるからな!
「えっとこれとこれを取って…あぁもうなんだよこれ取りにくいなぁ」―ブチッブチッ―
「このパーツ同士をはめて…ってなんで上手くはまんねぇんだよ!」
「ヨシッこのパーツを此処に着けて…―バキッ―ああぁッ?!俺のガンダムがぁ!!」
なんでだ?!どうしてこんな上手くいかねぇんだよ?!説明書もやたらページ多いしパーツも細かすぎる!誰だよプラモデルなんて簡単だとか言った奴!めちゃくちゃ難しいじゃねぇか!
只野は上手く組み立ててられない事に腹を立てているが、それも当然。何故なら只野が買ったのはガンプラの中でもハイレベルの『PGユニコーンガンダム』である。価格も二万もして、サイズも1/60と巨大だがその分パーツ数も半端なくHGやRGなど比ではない。今日初めてガンプラに手をだし、尚且つニッパー等の工具を使わず手でパーツを引きちぎっている只野に上手く組み立てられる訳がなかった。
―そして夜明け…―
「……………………」
只野はただ呆然としていた。目の前にはユニコーンガンダム……になる筈だったパーツの瓦礫の山が積み上がっている。手で引きちぎったため所々残ってるゲート跡、無理にはめようとした結果破損したパーツ等が連なっており、日が昇る頃には只野の心はすっかり折れてしまっていた。
「ま、まずい…このままだと佐々木の奴に負けてしまう…こうなったら、奥の手だ!」
俺は直ぐ様スマホを取り、その中にあるフリマアプリのメル○リを開き商品を探す。
「こうなれば既に完成している凄いガンダムを探して、俺が作った事にする!これなら奴に勝つ事が出来る!おっと、このガンダムなんてカッコいいじゃないか!早速ポチっと……」
これで数日後にはガンダムが手元に届く。ブフフフフ、その日が来るのが楽しみだ!
―数日後、事務所―
「おはようございまーす…ってあら?どうしたんだあくあ」
「あ、ご主人大変だよ!なんかいきなりあいつがガンプラを持ってきて皆に見せびらかして…」
あいつ?あいつって…あぁ、只野か。確かに言われて見ればあいつの周りにホロメン達が集まってるな。へぇ、あいつもガンプラやってたんだな?どれどれ…
「ブフフ、どうだい皆?佐々木が作るガンダムよりよっぽどカッコいいだろう?」
「う、うん…(く、悔しいけどレイくんが作ったガンダムより重厚感があって凄い…)」
「こ、これ本当に只野、さんが作ったの…?(か、カッコいい、前にアズキやそらちゃんが作ったフリーダム達よりもずっと凄い…)」
「ブフフフ、まあ、俺の手に掛かればこんなのちょちょいのちょいだね♪」
「よぉ、只野。お前もガンプラ作ってたんだな?」
「ん?なんだ佐々木か。そうとも、君のガンダムよりも素晴らしい物を作ってね、折角だから皆に見せに来たんだよ。どうだい?君も見てみたらいいさ、この俺の最高作品を」
へぇ、そんな自分で言うほど凄いもんなのか。只野って実はプロレベルなのか?どれどれ…ほう、デスティニーガンダムか。塗装もしっかり施されて重厚感のある仕上がり…ってちょっと待て、これって…
「…やっぱり!お前、これってメタルビルドじゃねーか!?」
「ん、メタルビルド?…あ、あぁなんだ佐々木、君も知ってたのかいこの技法を…」
「馬鹿かお前?!メタルビルドはガンプラじゃなくてアクションフィギュアだ!」
『………え?』
俺の言葉にホロメン達はおろか何故か只野まで驚いている。
METAL BUILD(メタルビルド)はガンプラとは違い最初から完成しているアクションフィギュアで、ガンダムは好きだけど作るのが苦手な人がコレクションとして買ったりしている。クオリティーはかなり高いが決してモデラーが作った物ではない。
「そ、それじゃあレイくん、これってこの人が作った訳じゃないの?」
「あぁ、これは最初からこの状態で売られてるんだよ。てかなんで持ってきた只野本人がそんな事知らないんだ?」
「ギクッ!?」
俺がそう言うと只野は何か焦った様子になる。そんな只野をホロメン達は白い目で見る。もしかしてこいつ……
「…もしかしてあなた、玲二さんに対抗しようとして何処からか中古品を買ってそれを自分で作ったなんて言ったんじゃないですよね?」
「ギクギクゥッ?!」
俺が思っていた事をラミィが代わりに言ってくれ、只野は更に動揺していく。やっぱり図星か。心なしかホロメン達の只野を見る目が更に冷たくなってるのを感じる。只野も居心地が悪くなってきたせいか顔中から脂汗がダラダラと流れている。
「お、只野君此処にいたか」
「え?しゃ、社長?!」
そんな中、このホロライブプロダクションの社長谷郷(通称YAGOO)が突然只野を訪ねてきた。その手には何やら封筒が握られている。
「只野君おめでとう、君に新しい仕事を持ってきたんだ」
「え!?お、俺にですか!?」
「あぁ、君にしか頼めないし、君以外にこれ以上の適材もいないからな。どうだい、引き受けてくれるよね?」
「は、はいそれは勿論!いやぁ、社長も分かってらっしゃいますねぇ♪誰に仕事を任せるべきかをちゃんと理解していらっしゃる!」
「はは、そうかそうか。ではこれが君に頼む仕事の書類だ」
社長はそう言うと手に持っていた封筒を只野に渡す。只野は先ほどまでの事を忘れ嬉しそうに封筒を開け、ホロメン達はYAGOOが直々に只野に仕事を?あり得ないという表情を浮かべていた。しかし…
「…あ、あの社長?これは一体……」
「新しくホロライブAM(アマゾン)を設立しようと思ってね。君には現地に行って新しいアイドル候補を見つけて来て欲しいんだ」
「あ、あの、それって僕じゃなくても…」
「ん?どうしてだい?仕事もロクにせず後輩に押し付け暇を持て余している君にはピッタリの仕事じゃないか」
あ、これ社長めっちゃ怒ってるやつだ。顔は笑顔だが目が一切笑ってない。只野もショックのせいか真っ白になりその場で呆然としていた。まあ……ドンマイだな。
―それから数週間…―
「只野の奴今頃どうしてるんだろうな?」
「やめてよレイくん、折角あいつの事忘れかけてたのに」
「でもちょっと可哀想だったな、見つけるまで帰って来るなって言われてたし。同情はしないけど」
只野がいなくなってから事務所はすっかり平和になり、今日も今日とて俺達はいつも通りの日常を過ごしている。でも本当に今頃あいつどうしてるんだろうな?
―その頃のアマゾン―
「くそぅ、新しいアイドル候補見つけろって…こんな野生動物しかいない場所でどうやったら見つかるんだよぉ!?」
密林の奥深く、アマゾンの中心部では只野が虚しく叫んでいた。周りには寝床となるボロ小屋が一つしかなく、周囲からは野生動物達の鳴き声が響き渡る。とてもアイドル候補どころか人すらいる気がしない。
「ちくしょおッ!!俺はこんな所で終わんねぇぞ!必ず戻ってやるから待ってろよ佐々木ぃッ!!」
そんな中でも只野は諦めず玲二に復讐するために本社に戻る事を誓う。頑張れ只野!負けるな只野!もうお前の出番は無いが強く生きろ只野!
「…え?俺の出番もうないの?ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………ッ!!」
初めての番外編でしたがどうでしたか?因みに最後に書いた通り只野はもう出てきません(笑)
次こそスバルーナの話を近日中に上げますのでお待ちくださいm(_ _)m