第1話『白上、初めてのガンプラ』
ここはホロライブプロダクション。今世界で最も有名なアイドル達が所属するタレント事務所である。俺はそこのスタッフとして働いていて、今まさに次の企画書を纏めていた最中だったのだが…
「レイくん、白上ガンプラを作りたい!」
「…は?」
突如獣耳を生やした白髪の少女がやって来て俺の前に立つと意気揚々と謎の欲求をぶつけてきた。人が仕事中だっていうのにこいつはいきなり何を言い出すんだ?
「…いきなり来て何を言い出すかと思えば、また何かのアニメに影響されたか?フブキ」
俺は仕事の手を一旦止めて呆れながらも目の前の少女『白上フブキ』の話を聞く事にした。どうせこのオタク猫「キツネじゃい!」…地の文に入ってくんなよ。まあ、このオタクキツネの事だ、どうせアニメ見て自分も作りたくなったってところだろうが。
「えへへ~、実は昨日ゲーマーズの皆と一緒にビルドダイバーズリライズを見てて、それで白上もこんなガンプラ作ってみたいなーなんて」
「やっぱりか。てかそれならゲマズの皆と模型店なり量販店なり行けばいいじゃねーか。見ての通り俺は次の企画書纏めるのに忙しいんだよ」
「いや~、それがですね~、皆にガンプラ作ってみたいって言ってもあまり乗り気じゃなくてですね、レイくんなら昔からガンプラ作ってたし色々と詳しいかなーって」
まあ、確かに昔から趣味で作っていたりとかはしたけど、言うほどガンダムの原作はあまり詳しくないし、あくまで見た目で気に入った物を買っていただけだし、精々ゲート処理や部分塗装、後は墨入れぐらいしかしていない。プロモデラーがやるような塗装や改造なんてやった事すらない。そんな俺が教えられる事なんてたかが知れている。
「お願いですよぉ、白上どうしてもガンプラ作ってみたいんですよぉ~。幼馴染みのお願い聞いて下さいよぉ~」
…はぁ、また始まった。昔からこいつ一度駄々こねると中々しつこいんだよなぁ…仕方がないか。
「…わかった。取り敢えず15時前には終わってそのまま直帰だから少し待っててくれ」
「やたー!流石レイくん、持つべき者は頼りになる幼馴染みですねぇ♪」
…本当に調子いいやつだなこいつ。まぁ、頼られる自体は悪い気はしないからいいけどな。それに俺もそろそろ新しいガンプラ作りたいと思ってたし、せっかくだから今日のガンプラは奢ってやるか。
こうして俺は早く終わらせるために自分の仕事に手をつけるのであった。
―数時間後、場所は変わって某家電量販店―
「という事でやって来ましたビ○クカ○ラ!」
「着いて早々デカイ声出すな、周りの人に迷惑だろうが」
仕事を終わらせた俺はフブキを連れて大型家電量販店○ック○メラへとやって来た。ここのホビースペースはかなり広く、下手な模型店よりも品揃えが豊富なのが魅力的である。早速プラモデル売り場に着くとフブキは沢山あるガンプラを前に目をキラキラさせていた。
「おぉー!ガンプラがこんなに沢山、どれにするか迷っちゃいますね!」
「ガンプラは種類が豊富だから、目移りしてしまうのは仕方がないな。でもフブキは初心者だから、HG(ハイグレード)がオススメだな」
俺はそう言うとフブキを連れてHGスペースへ向かう。HG(ハイグレード)は1/144サイズのキットでガンプラの中でも手頃な値段と組み立て易さで初心者から上級者まで幅広く愛されているシリーズだ。まぁ、中には元のサイズ設定のせいででかく値段も高いのがあるがそれは置いといて。
「おぉ、このガンダムバルバトスカッコいい!こっちのダブルオークアンタもいいですねぇ」
「どっちも作りやすいキットだな。特にバルバトスはパーツ数も少なくプロポーションも良いからオススメだ」
「へぇ、ならこのバルバトスに決めよっかな~…あれ?」
組むガンプラが決まると思いきやフブキは 何かを見つけたのかバルバトスを元の場所に戻して別のガンプラを取り出した。
「レイくん!白上やっぱりこっちがいい!」
「ん?こっちって…えぇ!?」
そう言ってフブキが出してきたガンプラに俺は思わず驚いてしまった。フブキが出してきたのはパッケージに宇宙空間に白い装甲を纏ったガンダムが描かれているガンプラ『HGジュピターヴガンダム』だった。
「マジかよ、ジュピターヴが売られてるってかなりレアケースだぞ」
「そうなの?リライズ見ててこのアーマーが一番カッコいいなぁって」
ジュピターヴガンダム
ガンダムビルドダイバーズRe:Riseの主人公クガ・ヒロトが作り上げたガンプラの一つ。コアガンダムという他のガンダムより一回り小振りな機体にプラネッツシステムと呼ばれるアーマーを装着するという今までに有りそうで無かった換装システムが人気のシリーズであり、特にこの宇宙空間での戦闘を想定したジュピターヴは再販されても直ぐに売り切れになるほどの人気のガンプラなのだ。
「まさかジュピターヴがあるなんて…てかよく見たらユーラヴェンもあるし」
「へぇ~よくわからないけどスゴイ事なんですね」
コアガンダムシリーズって一部除いて中々手に入らないのにドンピシャでコイツ等があるなんて…ま、まぁ、折角有るんだし俺もユーラヴェン買っていこうっと。
「んじゃフブキもそれで良いなら会計しにいくか。ほら、買ってやるからよこせ」
「え、いいの?白上全然お金出せるけど…」
「折角ガンプラに興味持ってくれたんだし、趣味レベルとはいえここはガンプラ先輩の俺に出させてくれ、な?」
「あ、ありがとう…えへへぇ~、やっぱり持つべき者は優しい幼馴染みですねぇ♪」
白上はそう言うと顔を赤らめながらにへらと笑い、尻尾をゆらゆらと振りながらレジへと向かっていった。
―ガンプラ購入後、主人公宅―
「イエーイ久々のレイくんちだぁ♪」
「久々って2日前にミオとスバルと来てただろ。てかソファーにダイブする前に手を洗え」
あれから俺達はガンプラを買った後自宅に戻っていた。最初は事務所の空いてる部屋かフブキの家でやろうと思ったがさっきの買い物でうっかり工具を買うのを忘れてしまったために急遽俺の家で作る事にしたのだ。部屋に入った瞬間フブキはソファーにダイブしたが、このご時世なんだから家に入ったらまず手を洗えよ。そんなやり取りをし俺達は手を洗った後早速テーブルの上に自分達のガンプラを開ける。
「おぉ、思った以上にパーツ数が多い…」
「コアガンダム系統はアーマーもあるから他のやつに比べたら少し多いかもな。けど説明書通りにやれば問題ないし、早速組んでいくか」
「よぉし!それじゃあ早速作りますよー!」グギギギギ…
「って馬鹿!何無理矢理パーツ取ろうとしてんだよ?!」
コイツいきなりパーツを手で取ろうとしやがった!折角のガンプラを壊す気か?!
「あれ?何か違いました?」
「手でパーツを取ろうとするな!パーツが破損する可能性もあるし、怪我する原因にもなるんだよ!パーツはこのニッパーを使ってゲート部分を切るんだよ」
「ご、ごめんなさい…」
「まずは説明書通りにニッパーでパーツを切り取っていく。その際に直接切るんじゃなくて少し間を取って切るんだ」
「?何で直接切っちゃダメなの?」
「直接切るとパーツが傷付きやすくなるし、色の着いたパーツが白い跡が残りやすくなってしまうんだよ。だから予め少しゲートを残して切って、それからパーツに密着させて残りの部分を切る。この時にゲートの薄い方に合わせて切れば白い跡が残りにくくなるんだ」
「おぉー、キレイに取れました!よぉし、どんどん切り取っていこー!」
そう言ってフブキはパーツを切り説明書とにらめっこしながらパーツを合わせていく。さて、俺もユーラヴェン組み立てるか。
―パチパチパチパチッ…―
「えーっとここがこうで……ってえぇ!?レイくん説明書は?!」
「いらん。コアガンダムシリーズは何度も作ってるから見なくてもわかる」
フブキは俺が説明書無しで組み立てているのに驚いているが、もう何度もコアガンダムシリーズを組み立てているから見なくても殆ど分かる。これもガンプラあるあるかもな。
「んー、シールが小さくて貼りづらいなぁ」
「そういう時はつまようじ使うとキレイに貼れる。そして貼る前に一旦ハンカチとかで拭いてから貼ると剥がれにくいぞ」
そうして俺はフブキにアドバイス(殆どネットで得た初心者用のテクニックだが)をしながら一緒にガンプラを組み立てていく。フブキは楽しいのかさっきから尻尾をフリフリさせているのを見てると、たまにはこういう事も悪くないと思えるな。
―そして約一時間後…―
「後は手に武器を装着させて……やたー!ジュピターヴガンダム完成だぁー♪」
「お疲れ。初めてのガンプラ作りはどうだったか?」
「うん!最初は組み立てるのに苦労したけど、段々楽しくなってきたし最後出来上がったこの子見たらなんだか嬉しくなってきちゃった♪」
そいつは良かった。一度とは言えガンプラの楽しさを知って貰えたらこっちも教えた甲斐はあったな。俺も完成させたユーラヴェンを自分のガンプラ用のショーケースに飾っていくと、フブキは興味津々でショーケースを眺めていた。
「へぇ~、コアガンダムシリーズってこんなに種類あるんですね」
「アーマーがプラネッツシステムの名前通り太陽系惑星を冠した8つと、後は派生のものがあるからな。ここに飾ってる以外に俺の知ってる限りだと二種類ある筈だな」
ホント、売ってる時にロゼ買っとけば良かったな。後リライジングガンダムはたまに見かけるけどなんだか買う気が起きない。なんでだろう?
「よし、これで基本のプラネッツアーマーは全部揃った」
「やっぱりこれだけ並ぶとカッコいいですねぇ、横にいるアルスの偽アースリィと偽ニューガンダムもいいなぁ♪」
アルスアースリィとフェイクニューガンダムな。確かに劇中では名前出て無かったけど。
「ねぇねぇレイくんレイくん」
「ん?どうした」
「あのね、もし良かったらまた一緒にガンプラ作りたいなーって…ダメかな?」
「なんだそんな事か。こんな素組ぐらいしかしない俺で良かったらいくらでも付き合ってやるよ」
「イエーイ!ありがとレイくん、やっぱり持つべき者は優しくてカッコいい幼馴染みですねぇ♪」
「おいコラ飛び付くな!後ろショーケースあるんだから危ねぇだろうが!」
余程嬉しかったのかフブキは尻尾をブンブン振りながら俺に飛び付いて来やがった。ショーケース割れたらどうすんだよコイツ!
―翌日ホロライブ事務所―
「レイさん!フブキにだけガンダム一緒に作ってズルい!ウチともガンダム一緒に作って!」
「…は?」
フブキとガンプラを作った翌日。いきなり俺のディスクに犬耳を生やした少女『大神ミオ』がやって来て大声あげながら俺の肩を掴んで揺らしてくる。頼むから止めてくれ、気持ち悪くなってくる。
「いきなりやって来て何を言い出すんだミオ?お前確かフブキがガンプラ作ろうと言った時に断ったんじゃないのか?」
「うぅ~、だってプラモデルなんてウチには難しいと思って…でも昨日の夜にフブキと一緒に配信してたらレイさんと一緒に作ったって言ってガンダム自慢してくるんだもん」
そういえばコイツ等昨日配信していたな。ミオが昨日のアーカイブを見せると其処には確かにニヤケながらジュピターヴを自慢気にミオに見せるフブキがいた。
「『昨日レイくんと一緒に作ったんだ~♪』って嬉しそうに見せてくるんだもん!ウチだってレイさんに教えてもらえるって知ってたら一緒に行ってたもん!」
「いやそんな事言われてもなぁ」
「とにかく仕事終わったら一緒にガンダム買いに行こ!フブキに教えたんだからウチだっていいよね?!」
「既に決定事項かよ…まぁ、いっか。もう少しで仕事終わるからそれまで待ってな」
「ホント!?ありがとレイさん!」
ミオが尻尾をブンブン振りながら喜んでいる。フブキもそうだがそんなに振って痛くないのか?まあそれはともかく、理由はどうあれガンプラに興味持ってくれるなら俺も嬉しいしな。ミオのためにも、さっさと仕事終わらせるか。
「レイさんはーやーくー!」
「分かったから肩掴んで揺らすな!気分悪くな……ウップ」
そしてミオ、楽しみなのは分かったから頼むから揺らすな!
その後某家電量販店に行き、ミオもフブキと同じくコアガンダムシリーズを買おうとしたが既に売り切れてしまい、仕方がなく沢山置いてあったジャスティスナイトガンダムを一つ買って作ったのであった。
白上フブキのアニメの影響で始まったガンプラ作り。これがきっかけで後にホロライブにガンプラブームが起こる事になるのであった。
佐々木玲二
本作の主人公的存在。ホロライブのスタッフとして働いており白上フブキの幼少期からの幼馴染み。ホロメンの皆からは結構慕われており、配信の時に稀にゲストとして出てる時もある。好きなアイドルはヒメヒナだがそれを口にすると何故かホロメン達の機嫌が悪くなる。ガンプラは幼い頃から作っているがガンダムのアニメ等は部分的にしか見ていない。簡単な塗装等はするが改造等はしない所謂カジュアル勢。最近ではフブキを筆頭にホロメン達とガンプラを作るのが日課になりつつある。
世界観
現実の世界とそう変わらないが人間以外にも獣人や鬼人、天使やエルフ等様々な種族が共に共存している。種族差別もなく平和な世界である。
この間近くにある量販店に行ったらジュピターヴとユーラヴェンとアースリィが売られていてびっくりしました。翌日無くなってましたが(・・;)
こんな駄文でしたが楽しんで頂けたら幸いです。次はそらちゃんとAzkiちゃんをメインに書こうと思ってます。