翌朝から訓練と座学が始まる。時程を見る限り、3-Eの頃に比べて座学が減って、訓練≒体育の時間が大幅増量という感じ。それと共に、大体12*7cmの長方形の銀色のプレートがみんなに配られた。よく知らないものを配られた僕たちが不思議がっている間に、騎士団長メルド・ロギンスさんが説明を始めた。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明証でもある、失くすなよ?」
? じゃないね、ゲームの能力値の方かな。
メルド団長の話し方は非常にフランクだけど、僕たちにとっては、フランクな教官と言えばまずなので、むしろ警戒心を煽る。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ、それで所有者が登録される。〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理は聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
前原君が聞き返す。不破さん竹林君は微妙にその音の響きに目を輝かしている。
「アーティファクトというのはな、現代じゃ再現出来ない強力な能力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属が地上に居た神代に作られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトといえば国宝になるが、これは一般市民にも流通している。身分証明に便利だからな」
補足的に、ステータスプレートを作成するアーティファクトがあること、それが教会によって管理利用されていることが説明される。それは、身分証明が教会に依存することを示していて、正直恐ろしい。けれど、僕たちを与し易い馬鹿に見せ掛けないと、洗脳ですらされかねない。僕たちの居た世界でも記憶処理があった。こっちの世界は、別の世界へ干渉できる。そして、個人レベルの技術なら、浅野理事長や二代目死神は出来る。
……僕も、あの人たちほどではないけど。
ステータスプレートの魔法陣に、血を擦り付けると、それは淡く輝いた。輝いた後、僕のものは恐ろしいほどに高く透き通った空の色に染まった。ステータスプレートの色がすなわち持ち主の魔力の色らしい。カルマ君は触れたら火傷しそうな赫、茅野は見ていて楽しくなるような黄緑だった。
「珍しいのは分かるが、しっかり内容も確認してくれよ?」
というわけで自分のに目を通す。
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名前:潮田渚 年齢:17 性別:渚 レベル:1
天職:暗殺者
筋力:30
体力:70
耐性:40
敏捷:100
魔力:80
魔耐:90
技能
【言語理解】【暗殺】【殺せんせーの加護】【魅了耐性】【魅了】【死神の天使】
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とは言え、比較対象がなきゃなんとも言えないんだけど……。性別:渚ってなに? ねえ、僕男なんだけど?
「ねぇ、渚くーん。打ちひしがれてどうしたの?」
「ああ……カルマ。僕って男だよね……?」
カルマに僕のステータスプレートを見せる。傍から覗く人も増えて、一瞬でクラス全員に見られていた。
「渚……」
「まじか渚……」
「さすが! 渚きゅん。もう女装しない理由が無いねえ」
「もし本当に必要なら女装くらいはするからね!」
中村さんカルマ君を筆頭にみんなで弄り始める。
「全員見られたか? 説明するぞ? まず最初に、〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100で、それがその人間の限界を表す。つまり、レベルとは、その人間が到達できる領域の現在値を示しているわけだ。レベル100とは、自分の潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそう居ない。
自分の限界を他人に定められている気分。その人の限界が上がったらレベルは下がるのか、少々気になる。
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことは分かっていないが、魔力が体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられる。それと、後でお前ら用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。何せ救国の勇者御一行だ、国の宝物庫大開放だぞ!」
「次に天職ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職のりょうぶんにおいては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが、百人に一人は居るな。十人に一人という珍しくないものもある。生産職は持ってる奴が多い」
それなら、天職がないその道の働き手も沢山いる気がする。と、言うか。ものを壊す才能より作る才能を下に置く理由が分からない。
「あとは……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まあ、お前らならその数倍から数十倍は高いだろうがな、羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
その基準で言ったら、僕はかなり高いことになる。そして、読んで字の如く、恐らく戦闘系天職。伏せて、恵まれているのだと思う。
◇
全員分が見せ終わったが、メルドさんは少々頭を抱えている。ステータスはさておき、戦闘系の天職を持っている人が少なかったからだと思う。非戦系天職を持っていたのは先生含めて13人。残り17人でもカルマと磯貝君は天職〝指揮官〟で、あまり戦闘向きではない天職、律はユニークで戦闘か非戦かも見分けつかない。極め付けは、天職〝勇者〟がいないことだと思う。
とは言え、流石の団長ですぐに気を取り直してアーティファクト選びに行った。
『みんなこれは僕の技能の念話だよ。多分、みんな可能ならナイフが良いと思うんだけど』
『みんな狙ったら怪しまれるでしょうね』
『だから、ナイフ使う人絞っておきたいんだけど』
『物作り組が協力すれば多分ナイフ作れるぞ』
『そもそも戦争なんて嫌なんだけど』
『諦めるしかないよ、そこは』
『取り敢えず、渚に2本だな』
トントン拍子にアーティファクトを決めていった。それぞれの天職に合わせたものが与えられる。とは言っても、指揮官用や非戦用は無いみたいだけど。
そんなことがわかった日から二週間。僕たちははじめての迷宮への挑戦の日を迎えていた。
結構展開はまきでいきます