side地上組
「渚に茅野ちゃんは、上手くやってるかねー」
「良い加減、恋愛的に進展が欲しいわ」
そう言うのは業と中村。周りに居る、結構なメンバーが頷く。
「なんていうか、じれったいからなー」
「カエデちゃん、ちょっと可哀想」
既に察している人も多いとは思うが、渚のクラスメイトは、渚と茅野の仲を進展させるために、二人で下に送ったのである。戦力的なことを考えるなら、触手組を中心にしただろう。それに、渚が一番光る環境は対人であるし。
それでも渚と茅野だったのは、ひとえに、吊り橋効果の類で、渚が思いを自覚しないかな、や、茅野がキレて押し倒したりしないかな、という下衆な思惑が動いていたからに他ならない。が、そこは御愛嬌という奴である。
勿論完璧にそれだけって訳でもなく、渚と茅野なら、ちゃんと帰ってこれるだろう、という勝算は合っての思考である。暗殺教室のメンバーに取って、ベヒモスでさえも、二人いれば割と倒せるだろう、という相手なのである。烏間先生なら一人でも楽々倒せるんじゃないか疑惑まである。
そんな期待を背負った渚カエペアの今はと言うと……
side潮田渚
「律、魔物の肉と、神水を一緒に食べたら、死ぬほど痛いだけで死なないんだよね?」
『はい! 大丈夫です!」
僕たちは、律の勧めで、魔物の肉をごり押ししながら食べることになった。なんでも、テンプレートらしい。他にも色々、持ち込んだ食料の温存云々も言ってはいたけど、其処に尽きていると思う。
「カエデ、行きまーす」
茅野が先に止める間も無く食べた。そしてすぐに、神結晶から流れ出ている神水を飲む。僕は茅野が一頻り食べ終わるまでは周囲の警戒を行う。ツーマンセルの利点の一つだと思う、間違いなく。
「……うーん……痛いは痛いけど……うーん」
茅野の波長は殆ど乱れていない。
「まあ、うん。触手より痛くないというか……」
成程納得……ではあるけど。それは別に良い情報でも何でも無いよね……。
「じゃあ茅野、お願い」
「うん、渚!」
というわけで、僕も食べ始める。食べているのは兎に似た何か。地球に居た時は、生で肉を食べたことはなかったけど……。
「いった……い? うーん? いや……確かに痛いけど……死ぬ程では……」
あんまりおいしい物ではないけど、別に死ぬ程痛い訳ではない。
『ステータスプレートを見てみてください! なんか変化しています』
律に促されて、自分のステータスプレートを見ると、技能欄に【魔力操作】と【纏雷】が生えてた。……どういうことだろう、技能は増えないと言う話だったと思うのだけど。
色々実験してみた結果、【魔力操作】というのは要するに、詠唱無しで魔法を使えるようになる技能で、直接魔力を扱えるらしい。【纏雷】は……字の通りかな。
「律、みんなにも伝えておいてね」
『分かりましたー!』
◇
そっから、階層を進めて行く。でも、一番怖かったのは第五層の、ひたすらに真っ暗な階層だった。視界がほとんど効かないから、気配と耳でどうにかするしか無かったから。でも、それ以外の階層は、茅野の触手が大暴れしていて、正直僕が必要だったかちょっと怪しかった。茅野が言うには、居ると居ないじゃ大違い、らしいけど……。
そして今はおそらく第50層。下に降りる階段は既に見つけてあるけど、ちょっと気になることがあるので、鍛えながら少し足踏みをしている。そして、今がその、ちょっと気になること、を調べる時である。
脇道の突き当たりにあるのに、とても重要な場所っぽい、おどろおどろしい雰囲気を持っていて、荘厳な両開きの扉がついている。
そして、中央に二つの窪みがついた魔方陣があった。
「ねえ茅野、どうすれば良いと思う」
「うーん、律?」
『はい、何かを嵌めるんだと思います。とりあえず魔力を流してみたらどうでしょう』
茅野が、触手を一本伸ばして、魔力を掛け始めた瞬間、扉から赤い稲妻が走り、茅野の触手が弾き飛ばされる。
「カエデ!」
「大丈夫! それより、あっち、紋様が化け物になってる」
茅野の言う通り、扉の両側に掘られていた一つ目の巨人が両方動き始めている。なんか厄介そうな気がするのでさっさと仕留める。
「《死神の見えざる手》!」
もとは二代目死神のスキルで、とても小さな拳銃弾を頚動脈に撃ち込むものだったけど、今僕の使った奴はちょっと違って、ホントに、僕にしか見えない鎌を使って切る技で、急所にあてたらまず一回で殺せる技。
それで片方を倒している間に、茅野も触手と魔法を組み合わせて倒していた。
ふと思いついて、それぞれの化け物から魔石を取り出して、窪みに嵌めてみると、ぴたりと嵌まった。そして扉が開いた。