僕たちの直感が、ユエ諸共その場から飛び退かせた。ふりかえってみると、ついさっきまで居た場所に、その化け物が表れる。
体長5m、四本の腕それぞれに巨大な鋏を持ち、八本の脚をわしゃわしゃ動かして、鋭い針の着いた尻尾を二本持つ、巨大な蠍。ベヒモスを除く地上の魔物よりも、地下の魔物の方が余程強そうだったけども、これはさらに格が違う感じがする。
「狙いはユエだよね……」
「多分ね。それまで影も形も無かったし」
恐らく、僕達だけの生存に関して言うなら、ここでユエを放置するのが正しいんだろう。でも、それじゃいけない。僕たちは、そうしちゃいけない。だから
「殺さなきゃね」
初手は紫色の液体の噴射だった。尻尾のウチの片方が膨らんだかと思うと、いきなり射出してきた。全力で避けると、液の掛かった床がじゅわっと音を立てた。触手が対先生用物質に触れた時みたいに。見なくてもそんな気はしてたけど、やっぱり触れちゃ駄目な類だ。
茅野の方が僕より圧倒的に身体能力が高い所為で、茅野がユエを背負いながら動いている。今のターゲットは僕らしい。
鋏が凄い高速で飛んでくる。関節が妙なことになってるっぽく、ヨーヨーみたいに飛んでは戻る。速くはあるけど、別に避けれない訳じゃない。殺せんせーや、二代目死神の触手に比べればずっと遅い。だけど。
「かたいっ……!」
相手の攻撃は毒飛ばし、鋏振り回し、突進。全部当たったらヤバいけど、避けれる速さだからどうにでもなる。そのかわりに、僕の攻撃も関節部分の脆いところにしか効かない。
炎を纏った茅野の触手がその蠍擬きを襲う。でも、殻で覆われた部分にあたっても、少し焦げ目が付くだけになっていて、埒があかない。
「だ……いじょうぶ?」
ユエが気遣ってくる。正直あんまり大丈夫ではない。律の魔法も端末越しじゃ火力が下るから、あまり有効打にならないのは確定してるし。
死神の鎌を持ってきても良いけど、正直刃を通せる様な場所が見当たらないというか、近付けない。まずは、鋏を一本落す所から始める。関節の、同じ部位に、攻撃を当てる。茅野の触手と合わせて、20回も攻撃して、やっと一本切れた。だけど、まだ終わってない。
「っていうか、もう、再生し掛けてるんだけどー!」
2本目を6回攻撃したあたりで茅野が叫ぶ。正直僕も同感、回復能力が殺せんせーみたいに面倒くさい。
「……渚! ちょっとあれ気絶させれる?」
「うん、やってみる」
クラップスタナーは切り札だから使わない。そっちじゃなくて、【死神の天使】の中の一つ、閃光弾を使う。弾頭を取り出して--どこから来てるのか全く知らないけど!--打ち上げる。
閃光が輝く。先に知らせておいた茅野やユエには被害が及んでいないけど、あの蠍は眼があるらしく、目潰しが効いている
「さて、どうしようか」
「んー、どうしよう」
悩んでいると、何か覚悟を決めたらしいユエが、茅野の首筋に噛み付いていた。ただ、とてつもなく真剣に、悩んだ結果であることは確かなので、僕も茅野も動けない。
すこし悩んでいる間に、蠍が再起動して襲い掛かってきたので、僕を率先して狙わせる。僕を狙っている間、アレは茅野とユエの方には意識を払えない。
「鬼さん此方!」
僕の周りの地面が揺らぎ、沢山の棘が飛び出てくる。全力で逃げ回っている僕の耳に、この戦いを終わらせる声が聞こえた。
「"蒼天"」
蠍擬きの頭上に直径6,7mくらいの太陽みたいな球が表われたかと思うとすぐに直撃する。当たった瞬間に蠍は苦悶の声を上げたけど、さっきの閃光よりさらに眩しい光に思わず目を閉じてしまった。
目を開けてみると、そこには、背中が半ば弾け飛び、死に体となっている蠍と、茅野に抱えられながら、かなり疲労した様子のユエが居た。
「チャンス!」
気を逃す訳にはいかない。茅野と二人掛かりで、確実に仕留める。
そうして、なんとかかんとか、無事に勝利を収める事が出来た。
更新が遅くなって申し分けありません。けして。けして忘れていたわけではないのです
別作作ったり作ったりデュエマやってたら……。
ごめんなさい、サボってました