なんだかんだで、次で百層になるところまで来た。流石に僕とカエデの二人だと厳しかったと思うけど、律とユエのバックアップ込みなら、そんなに大変と言うわけでも無かった。
「いつもより、慎重?」
「いつも慎重だけどね……」
「次はきりの良い百層だからね、大ボスが居るのが定石、みたいな? 有希子ちゃんに借りたゲームとか大体そんな感じだったし」
迷宮が百層もあるようなゲームはそう無いような……。DSとかのだと、ランダム生成されてたりするような気がするんだけど。それはともかく、大ボスが居そう、ってのは同感なんだよね。
と言う訳で、九十九層から百層へと降る階段を降りて、下に辿り着いてみると、とても荘厳な雰囲気がした。宿り木の蔦が螺旋状に絡み付いたような、そんな大きな柱が無数に並んだ通路があった。警戒しつつ進むと、とても巨大な扉が見えた。また、その少し手前には、これまた大きな広間が見えた。その広間に足を踏み入れた瞬間、とても大きな魔方陣が展開された。
「召喚魔法!?」
「ベヒモスの時より大きいと思う」
「多分、最上級クラス」
その大きさ、直径30m以上、円の大きさベヒモスの9倍。出て来る敵は、間違いなく大ボスクラス。気合を入れていこう。
魔方陣の光が抜けると、そこに現われたのは、体長30m、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の龍が居た。えっと……。
『地球で言うところのヒュドラに似てますね』
「神話級ー!」
「ヒュドラ、再生能力……あ」
強烈な殺気を叩き付けてくるけど、二代目死神よりはマシなくらい。まず、ヒュドラの6本の首の内、赤い紋様の刻まれたのが口を開くと、火炎放射が飛んでくる。飛び退くと同時に、茅野が触手を叩き付け、そのまま切り落とす。
「ユエの居た部屋のサソリよりは柔らかい!」
「分かった!」
「んっ」
取り敢えず一つ、と思ったけど、白い紋様の刻まれた頭が一つ吠えると、即座に再生した。回復役、ってことなんだと思う。技能【死神の天使】の感覚の言う所によれば、命は1つだけど7つ。赤い頭を切り落とした時点で1つ減ったけど、再生されたらまた増えた。心臓っぽい所に大本みたいな命があって、欠片が首1本につき一個。心臓とは別に、見えてない命のある部分が1個。どこだろう。
「白いの最優先! 他の首はそれで全部蘇生される! 心臓潰したら全部落ちるかも!」
「ん」
「ヒーラーから潰せ! 定石中の定石!」
◇
暫く削ってみるも、盾、攻撃、回復、デバフと役割分担がはっきりとしていて、とても戦いにくい。回復役を潰そうとすると盾役が邪魔で、他は潰してもすぐ回復されて意味が無い。盾と回復を纏めて撃破出来れば最良だけど、それをするには最上級魔法が必須で、そうするとユエが棒立ちになる。それは流石にイマイチ。
「渚、お願い!」
「カエデ、陽動は任せるよ」
技能【死神の天使】の中にある『死神の鎌』。必中必殺の一撃、間違いなく試してみる価値はある。
カエデが、ユエを頭の上に載せての、視線を切りながらの魔法移動砲台をする隙に、僕は可能な限り気配を消して、鎌を当てられる距離を目指す。6つの首はすべてカエデに釘付け。そうして、すぐそこに来た時、音もなく、銀色の紋様の着いた、最後、7つ目の反応のある首が立ち上がってブレスをする。
だけど、それは予想出来ていた。必殺の時こそ注意せよ、とは暗殺の基本。そのまま、胴体の下に滑り込む。そして、死神の鎌を展開、そのまま心臓を通す。
「やった?」
「ユエ、それフラグ!」
…………生命反応消失。多分、死んでいる。
「フラグ、じゃないみたい。多分倒せた」
ヒュドラを倒したら、巨大な扉が開いたので、中へと入った。