全ての仮面ライダーに変身したいと言ったけどガチャなんて聞いてないよ 作:けーやん
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【緑谷視点】
佳面くんと轟くんと別れた後、138階のサーバールームで待ち構えていた警備ロボットを飯田くんたちが食い止めてくれてたお陰で、僕とメリッサさん、麗日さん、波動先輩、そしてタツロットは180階まで進む事が出来た。
そして、メリッサさんの案内された扉を壊すと風が吹き込んで来た。
「こ、此処は……」
「風力発電システムよ」
僕たちの前に広がっていたのは、タワーの空洞部分を利用して作られた風力発電だった。
「どうして此処に来たんです?」
タツロットの問いにメリッサさんは立ち止まって高い吹き抜けを見上げる。
「タワーの中を昇れば、警備ロボットが待ち構えている筈。だから、ここから一気に上層部へ向かうの。あの非常口まで行ければ……」
凡そ20階分の高さがある天井に、小さな非常口の扉があった。
「あんな所まで……」
「お茶子さんの触れたものを無重力にする個性ならそれが出来る……」
メリッサさんは毅然と話しているが、拳は震えていた。
麗日さんの個性があるとは言え、今から20階分を飛んで移動するんだ。
怖くない筈が無い。
麗日さんはメリッサさんの覚悟を汲み取る。
「うん、任せて!」
「なら私が緑谷くんとメリッサさんを上へ運ぶね。無重力の状態だと無防備になっちゃうから」
確かに波動先輩の個性は応用で飛行が可能で、先輩の推進力が加われば直ぐに非常口へ辿り着ける。
「波動先輩、お願いします!」
「うん!2人とも私に掴まって。麗日さん!」
「はい!」
僕とメリッサさんが波動先輩の手を掴み、麗日さんが肉球で僕とメリッサさんに触れると、無重力で髪や服が浮き上がった。
「行くよ!」
波動先輩が足元からねじれ状のエネルギーが放出され、エレベーターの柱を沿う様に上へ上昇する。
「皆さんその調子ですよ!」
僕たちの傍をタツロットが平行に飛ぶ。
麗日さんは両手の肉球を何時でも合わせられる様に待機する。
非常口に到着したと同時に個性を解除する為だ。
その時、少し離れた場所から音が聞こえた。
下を見ると、奥の扉からゾロゾロと警備ロボットが湧いて出て来たのだ。
「麗日さん!」
「個性を解除して逃げて!」
僕とメリッサさんが麗日さんへ叫ぶ。
けど麗日さんは警備ロボットに向かい合う。
「出来ひん!そんな事したら、皆を救けられなくなる!」
迫り来る警備ロボットに対して、麗日さんは個性を使わずに立ち向かおうとしていた。
僕は怒りに似た焦りで波動先輩に叫ぶ。
「波動先輩!急いで!」
「分かってる!もう少し!」
「私がお茶子さんを!」
タツロットが麗日さんの元へ引き返し、僕たちが非常口まで残り凡そ20mにまで近づいた所で、麗日さんに警備ロボットがジャンプし襲い掛かろうとする。
「お茶子さん!!」
メリッサさんが叫んだ次の瞬間、
「ハアッ!」
すると、その
その
「来太さん!」
「え!?佳面くんなん!」
タツロットの声によって蝙蝠の鎧の正体が佳面くんである事が判明する。
「ごめん、遅くなった。大丈夫?麗日さん」
「う、うん!デクくんとメリッサさんと波動先輩が今、最上階に向かってる」
驚く麗日さんを他所に、後に続く警備ロボットを今度は波の様な氷が呑み込む。
轟くんである。
轟くんが佳面くんと麗日さんに駆け寄る。
「轟くん!」
「緑谷たちは上へ行けたみたいだな。なら、今はコイツらの足止めするぞ」
「そうだね。麗日さんは後ろに居て、緑谷たちが非常口に着くまで個性の解除が出来ないでしょ」
「うん!」
佳面くんと轟くんが麗日さんの前に立ち、警備ロボットと向き合う。
「2人とも、もう直ぐ着くよ!」
何とか間に合った事に安堵すると、波動先輩の声に反応して上を見上げると、発電エリアの天井が寸前に迫っていた。
僕は右手に装着したサポートアイテム【フルガントレット】を見て、覚悟を決める。
「(もう出し惜しみしてる場合じゃ無い!)波動先輩!僕が扉を壊します!」
「分かった!」
波動先輩に合図を送った僕は、渾身の力を入れて叫ぶ。
(ワン・フォー・オール、フルカウル!)
「デトロイト・スマァァァァッシュ!」
指先まで【ワン・フォー・オール】の力が行き渡った拳で、非常口の扉を壊す。
「緑谷たちが非常口に辿り着いた!麗日さん!」
「うん!解除!」
佳面くんの合図で麗日さんが肉球を合わせ、個性を解除する。
最上階へ続く非常階段で浮いていた僕とメリッサさんに再び重力が戻る。
「うわっ!?」
「きゃあ!」
落下しそうになった僕たちを波動先輩がなんとか支える。
「2人とも大丈夫?」
「は、はい!」
「私も平気」
ゆっくり通路に降ろしてくれた僕とメリッサさんは波動先輩に返事をする。
一息つこうとした次の瞬間、僅かな物音と気配を察知した波動先輩が突然右手からエネルギーを発した。
「ぐわっ!?」
すると波動先輩のエネルギーで刃物の腕をした男が通路に倒れる。
恐らく、
「危なかったー!いきなり襲って来るんだもん!」
(
「来たぞ!」
すると階段の踊り場では、待ち構えていた
「緑谷くん、そのまま行って!援護するよ!」
「はい!」
"フルカウル"で全身を強化し、そのまま
銃弾は波動先輩が引き受け、僕は壁を蹴りながら宙を駆ける。
「スマーッシュ!」
階段を昇り、遂に200階に辿り着いた僕たちは、周囲を警戒しながら制御ルームを探す。
「メリッサさん、制御ルームの場所は?」
「中央エレベーターの前よ」
すると、コントロールルームとは反対方向にある通路の先に開いた扉があり、その中に人影が見えた。
人影に気付き、僕たちは身を潜める。
その人影を見たメリッサさんは驚愕する。
「パパ……?」
「本当だ……!」
部屋の中にいたのは、メリッサさんのお父さんであるデヴィット博士だった。
博士は真剣な顔でコンソールを操作しており、他に人影は見当たらなかった。
「どうして最上階に……?」
「メリッサさん、あの部屋は何があるの?」
メリッサさんが訝しむと、波動先輩が訊く。
「あの部屋には貴重な物質や危険な発明品を管理しているの」
「もしかして、
メリッサさんの言葉に、僕は1つの可能性を口にする。
それにメリッサさんが心配で顔を歪める。
「救けないと!」
「はい」
メリッサさんと慎重に行動する。
部屋の壁がブロックのようなボックスになっており、それは天井まで敷き詰められている。
博士は作業を続け、そしてプロテクトの解除が出来だ事に顔に笑みを浮かべる。
「コードを解除出来た。1147ブロックへ」
「は、はい!」
博士の言葉に、助手のサムさんが急いで短い階段を駆け上がり壁のボックスに向かう。
すると、サムさんが近づいたボックス壁の一角からボックスが動く音がして少しすると、サムさんの目の前に飛び出した。
サムさんは飛び出してきたボックスを開けると、何かに入っているアタッシュケースを取り出した。
「やりましたね、博士!」
ケースを取り出して、確認したサムさんは興奮した様子で中身を博士に向ける。
「………!!」
中に入っていた物を見た博士は、喜びと安堵に眉を寄せながら笑った。
「全て揃っています」
中に入っていたのは、データの入ったケースと小さめの丸い形の物に大きなフックが付いている装置だった。
博士は後戻りが出来ない様な決心した顔で、拳を握り締める。
「……ああ、遂に取り戻した。この装置と研究データだけは、誰にも渡さない。渡すものか……」
「プラン通りですね。
「……ありがとう。彼らを手配してくれた君のお陰だ、サム……」
サムさんの声に我に返った博士が、急いでケースの元へ駆け寄ったその時、小さな強張った声がした。
「……パパ……」
声の正体は、信じられない面持ちで博士とサムさんを見るメリッサさんだった。
「メ……メリッサ……!」
「お嬢さん、何故ここに?」
博士とサムさんの質問に答える余裕が無いメリッサさんは、今にも崩れ落ちそうな足取りで博士に近づいて行く。
「"手配した"って何?」
「………」
「もしかしてこの事件……パパが仕組んだの?」
博士は言葉を忘れた様に、何も答えない。
「その装置を手に入れる為に……?」
博士が否定してくれる事を望みながら、メリッサさんは問い続ける。
「そうなの、パパ!?」
メリッサさんの必死な問い掛けに、博士はキツく目を閉じた。
「……そうだ……」
吐き出された言葉に、メリッサさんが固まる。
「……なんで……どうして!?」
食い下がるメリッサさんに、博士の代わりにサムさんが答える。
「博士は奪われた物を取り返しただけです。機械的に"個性"を増幅させる、この画期的な発明を……!」
力説するサムさんに、メリッサさんを含む僕たちは疑問に眉を寄せた。
「!?……個性の増幅……」
「ええ、まだ試作段階ですがこの装置を使えば薬品などとは違い、人体に影響を与えずに"個性"を増幅させることが出来ます。しかし、この発明と研究データはスポンサーにより没収。研究そのものを凍結させられた。これが世界に公表されれば、超人社会の構造が激変する……。それを恐れた各国政府が圧力を掛けてきたのです。だから博士は……」
「……そんな……嘘でしょ、パパ」
全てが博士が仕組んだ事が告げられても尚、メリッサさんは信じられなかった。
「嘘だと言って……」
「嘘では無い」
博士の言葉に、メリッサさんの体が固まった事に僕には分かった。
「こんなのおかしいわ……」
「メリッサさん……」
悲しみと怒りの入り混じった声で、メリッサさんが叫ぶ。
「私の知ってるパパは、絶対そんな事しない!なのに……どうして……!どうして……」
その姿に博士は苦し気に顔を歪め、絞り出すように声を出す。
「……オールマイトの為だ……」
その名前に僕はハッと顔を上げる。
「お前たちは知らないだろうが、彼の"個性"が消え掛かっている……」
「!!」
博士の言葉に、僕は目を見開く。
「だが、私の装置があれば元に戻せる。いや、それ以上の能力を彼に与えることが出来る。No.1ヒーローが……平和の象徴が……再び光を取り戻すことが出来る!また多くの人達を救うことが出来るんだ!」
親友であるオールマイトの力になりたい。
平和の為、世界の為にヒーローを失う訳にはいかない。
博士の原動力は全てそれだったのだ。
(僕が、【ワン・フォー・オール】を受け継いだから……オールマイトの力を失われている事を憂いて博士は……)
自分の存在が引き金になっていた事に、僕は自身の体の奥が冷えた気がした。
夢に向かって真っ直ぐ進んでいた裏で、博士のやり切れない想いが膨らんでいた事を思うと言葉が出なかった。
博士はアタッシュケースを抱えてメリッサさんに叫ぶ。
「頼む!!これをオールマイトに渡させてくれ!もう作り直している時間は無いんだ!その後でなら、私はどんな罰でも受ける覚悟も───」
「命がけだった……!」
博士の声を遮り、メリッサさんは俯いていた顔を上げる。
「捕われた人たちを救けようと、デクくんや、ねじれさんが、クラスメイトの皆が此処に来るまで、どんな目に遭ったと思ってるの!!」
激昂するメリッサさんに、博士は困惑する。
「ど、どういう事だ。
博士はそう言って隣のサムさんを見るが、サムさんは慌てて顔を逸らした時、入口から高圧的な声がした。
「勿論演技はしたぜ。偽物
眼鏡をした男を連れ、仮面の男がニヤリと笑って姿を現す。
「あいつは……!?」
レセプション会場に居た
波動先輩も足からエネルギーを放って、空中を舞う。
しかし、それより先に扉に触れていた仮面の
直後、保管室の手摺りがメキメキと外れ、生き物のように動き出し、僕と波動先輩に襲い掛かる。
僕は躱そうとするが手摺りの方が速く、体を絡めとられ壁に叩きつけられて、さらに縫い付けられる。
「デクくん!」
メリッサさんが僕に駆け寄る。
(ぐ……金属を操る"個性"か……!)
口元を塞がれてしまい、話す事も出来ない状態だった。
波動先輩は空中を飛び回って、襲い掛かって来る手摺りを回避する。
「このっ!」
波動先輩は仮面
「ちっ」
仮面
波動先輩は回避し続けるも次々と手摺りが襲い掛かる。
「ッ!?」
「さあ、いつまで耐えられる?」
仮面
波動先輩も応戦するも、室内で尚且つ僕たちがいるせいで"個性"の出力を制限する事を強いられていた。
「これで詰みだッ!」
全方位から鉄柱と手摺りが波動先輩の逃げ道を塞ぎ、ワイヤーで全身を縛られてしまう。
「きゃ!!!」
「波動先輩!!」
波動先輩は背中から床に落下し、そのまま倒れ伏す。
「少し大人しくしていろ。サム、装置は?」
仮面
するとサムさんは博士からケースを強引に奪い、小走りで仮面
「こ、此処に」
「サム……?」
何が起こったのか分からず、唖然としていた博士の顔が徐々に驚愕に歪んでいく。
「……ま、まさか……最初から装置を
博士の声にサムさんはピクッと反応し、立ち止まった。
「だ、騙したのはあなたですよ。長年、あなたに仕えてきたというのに、あっさりと研究は凍結。手に入る栄誉、名声……全て無くなってしまった。せめてお金くらい貰わないと割りに合いません……!」
サムさんは今まで塞き止めていたものを吐き出すかの様に言った。
その両目には涙が浮かんでおり、あまりにも弱々しかった。
心血注いだ研究を奪われた事で追い詰められていたのは博士だけでは無かったのだ。
そんなサムさんに、博士は言葉が出せなかった。
サムさんをあそこまで堕としたのは、間違いなく自分である。
今回の作戦に乗らなければ、違う形で苦しめていたかもしれないが少なくとも今のような事態にはならなかっただろう。
全て自分の弱さが原因だったのだと、博士はそう思ったからだ。
「じゃあ、これが謝礼だ」
仮面
挨拶するかの様に気軽に発砲された弾丸は、サムさんの肩口に命中する。
「ぐ、はあっ!」
「サム!!」
サムさんは肩口から血を噴き出して倒れる。
それに博士やメリッサさんが目を見開いて驚く。
「な、何故……約束が違う……」
「約束?忘れたなぁ〜」
サムさんは肩を押さえて痛みに耐えながら仮面
「お前は装置を守る為に
そう言い放った仮面
パァン!
銃声が響き、血が撒き散る。
目に入った光景に僕たちは目を見開く。
撃たれたのは博士だった。
サムさんを庇った博士は、胸から血を流しながら倒れる。
「博士……どうして……?」
呆然とするサムさんに、博士は言った。
「……に、逃げろ……」
「パパッ!」
「来るな!」
駆け寄って来たメリッサさんに向けて博士が叫ぶ。
だがその前で仮面
「ああっ!!」
「メリッサ!」
床を転がるメリッサさんに博士が悲痛を上げ、痛みも忘れて起き上がろうとするが、仮面
僕は力一杯もがき続けるも、拘束は外れない。
博士は痛みに呻き、仮面
「諦めろ。どんな理由があろうと、あんたは悪事に手を染めた。俺達が偽物だろうと、本物だろうと、あんたの悪事は消えやしない。俺達と同類さ。あんたはもう科学者でいることも、研究を続けることも出来ない」
仮面
「今のあんたに出来る事は俺の元で装置を量産するか、そのまま命で償うことくらいだ」
仮面
そして、眼鏡の男に「連れていけ」と指示を出す。
「パパを……返して……!」
その時、メリッサさんが這いずりながら呻くように叫ぶ。
仮面
「そうだな。博士の未練は……断ち切っておかないとなぁ……!」
「や゛め゛ろ゛ぉ~!!」
僕は渾身の力を籠めて、叫びながら鉄の拘束を振り解く。
そのまま壁を蹴って飛び出し、仮面
「スマーッシュ!」
仮面
すると僕の目の前に鉄の壁が出現し、拳にクレーターを作りながらも受け止める。
僕は眉を顰めると、メリッサさんに目を向ける。
メリッサさんは僕の目を見て、何を伝えたいのか理解してくれた。
「……!」
メリッサさんは涙を拭って、足をもつれさせながら立ち上がって走り出す。
「逃がすな!」
「はい!」
仮面
僕は直ぐに眼鏡の男を追い掛けようとしたところ、次々と鉄の壁が出現する。
僕はそれを壁から壁を高速で跳ねて一気に飛び越えて、眼鏡の男の前に降り立つ。
「行かせない!」
「調子に乗るなぁ!!」
仮面
僕は腕で受け止めるが、あまりの威力に背中から壁に叩きつけられた。
歯を食いしばって必死に耐えるが、増え続ける重量にじりじりと押されていく。
それでも気持ちだけは絶対に退かない。
皆を、そして大切な人を、絶対に救ける。
◾️◾️◾️◾️
その間にメリッサは制御ルームに駆け込んだ。
コンソールの前に座ったメリッサは、素早く正確に設定を変更していく。
少しすると、非常事態を示していた赤い表示が元の緑色に戻り、タワー内の明かりが点き、隔壁が上がっていく。
「チッ、警備システムを戻したのか!」
保管室でも明かりが点いた事に、ウォルフラムは憎々しげに立ち上がる。
出久は必死に耐え続けたが、鉄柱の下に生き埋めにされてしまっていた。
「緑谷くん!」
何とか拘束から抜け出し、ねじれは生き埋めになった出久の元へ駆け寄る。
◾️◾️◾️◾️
「!?これは……」
風力発電エリアで、続々と現れる警備ロボットたちに轟たちと連携を取りながら撃退していた中、突如警備ロボットの動きが止まった事に唖然とする。
続々と現れる警備ロボットたちに轟たちと連携を取りながら撃退し、遂に警備ロボットの動きが停まった。
麗日さんが怪訝そうに小さく呟く。
「…‥止まった?」
「みてぇだな……」
轟も疲弊しつつ答える。
「緑谷たちがやってくれたのか……2人とも」
「分かってる。最上階に居る緑谷たちと合流するぞ。警備システムが元に戻っても
「うん!」
俺の言葉を理解した轟と麗日さんが決意する。
最上階へ昇ろうとした、次の瞬間。
「来太、後ろだ!!」
「ッ!!?」
キバットの声が聞こえた直後、突然の殺気に気付き振り向くと、
「麗日さん!!」
「わっ!?」
咄嗟に麗日さんの腕を引っ張り、左腕で獣の牙を防ぐ。
「佳面!」
「佳面くん!」
轟と麗日さんが叫ぶ。
「ウグゥッ!ハアッ!」
【ドランメイル】越しの腕に牙が喰い込む激痛に顔を顰めるも、反撃の蹴りを繰り出すがジャンプで回避される。
「あの時の犬
「拘束した筈だぞ……どうやって」
獣の正体は植物プラントで闘った犬
鋭く血走った眼に、大きな口元から涎が垂れ、氷の拘束を無理やり抜け出した事で体の皮膚が所々剥がれ、その下からは肉が生々しく剥き出しになっていた。
「ヒッ!」
あまりの姿に麗日さんは顔を青褪める。
「止めろ。それ以上動いたら出血多量で取り返しのつかない事になるぞ」
「……それがどうした?」
此方の忠告に対し、ドーベルは冷たく返す。
すると懐から赤い液体の入った注射器を数本取り出し、自身の首筋に突き刺し、中身を注入する。
ドクンッ!
注射を打ち込んだ直後、ドーベルの体がビクッと震えると、全身の筋肉が膨張し、俺との戦闘で折れていた筈の爪を含め、牙が新しく生え変わったかの様に伸びる。
「何……あれ」
「おい、佳面……まさか、あいつ……」
「ああ。さっき打ち込んだのは……多分【トリガー】と呼ばれる"個性"を強化させる違法薬物だ」
日本では使用を禁じられており、一時的に"個性"を強化する効果がある薬物の一種である。
しかし、1度にあれ程の投与は本来不可能だろう。
正しく、
「……轟と麗日さんは急いで最上階に居る緑谷たちと合流して。此処は俺が引き受ける」
「佳面くん!」
「3人で闘った方が良いだろ」
「駄目だ。此処で3人全員が足止めを食らったら緑谷たちが不利になる。オールマイトたちプロヒーローが解放されたとしても、辿り着く前に最上階に居る
「でも……!」
食い下がる麗日さんの頭にポンっと手を置き、少し撫でる。
「大丈夫、俺もアイツ倒したら直ぐに駆けつけるから。……轟」
俺は轟の方を見る。
「頼む」
「ッ……!麗日……行くぞ」
「轟くん!」
轟は決意を固めた表情で麗日さんの手を掴み、地面に手を翳して氷柱を作り出し上へと昇る。
「タツロット、君は轟たちに付いて行ってくれ。2人をお願い」
「分かりました!来太さん、ご武運を!」
俺の指示を受け、タツロットは轟たちを追い掛ける。
再びドーベルに向き合うと、彼は此方を待っていた。
「意外だな……。俺たちが話している間に襲って来るかと思ってたけど」
「アイツらは後でも殺せる……今は貴様の始末が最優先だ……」
ドーベルはそう言うと、両手を地面に着け、まるで本物の犬の様に四足歩行の体勢を取る。
「生憎だけど、殺されるつもりは無いよ」
俺も構える。
風が吹いたと同時に、ドーベルが仕掛ける。
長い巨大な四肢で地面を蹴り抜き、前の戦闘よりも速いスピードで迫り来る。
「ハアッ!」
タイミングを図り、ドーベルの顔面目掛けて蹴りを打ち込むも、当たる直前で急停止し、回避したと同時にトップスピードで鋭い爪を振り翳す。
「グッ!?」
直撃した【ブラッティラング】から火花が散り、体が大きくよろける。
「ハッ!」
再びタイミングを図り今度は拳を振り翳すも、不規則な動きをするドーベルに翻弄され、視界から消えたと同時に突進を喰らい、地面に倒れる。
(さっきまでの格闘技を主体にした動きじゃない……まるで猛獣の様な本能で動いているみたいだ!)
「クソ〜ッ、これじゃあ、まるで本物の犬っころだぜ!」
キバットもドーベルの予測不可能な動きに愚痴を零す。
「来太、此処はアレで行くしかねぇ!」
「分かってる!」
俺は【フエッスロット】から【ガルルフエッスル】を取り出そうとする。
「させん」
「何!?」
しかし、ドーベルが一瞬早く動き、【ガルルフエッスル】を取り出そうとする左手を掴み妨害する。
「貴様はその笛をベルトの蝙蝠に吹かせる事で姿を変えていた……なら、吹かせなければ変える事は出来んのだろう?」
前の戦闘で此方の戦法を見た事で、その対策を取られてしまった事に仮面越しに顔を顰めさせる。
ドーベルはそのまま押し倒し、口を大きく開いて噛み砕こうとする。
「グッ!」
俺は咄嗟に空いている右手でドーベルの口を塞ぐも、今度はドーベルは左手で殴り掛かる。
何発もの拳を振り翳し、着実に此方にダメージを与えていた。
「たくっ、何やってんだ!」
キバットがそう言うと、【ガルルフエッスル】が宙に浮き、キバットの口に咥えられる。
「ガルルセイバー!」
キバットが【ガルルフエッスル】を吹くと、犬笛の様なメロディーが鳴り響く。
何も無い空間から青色の彫刻が光に包まれながら出現し、なんとかドーベルを突き飛ばしてグリップ部分【ワイルドグリップ】を左手で掴むと、魔獣剣【ガルルセイバー】へと変形する。
すると、左腕と胸装甲が
胸部装甲もガルルの影響により強力な筋肉組織が集結、驚異的な肺活量を誇る【ウルフェンラング】となり、キバットの視覚器官【キバットスコープ】が赤色から青色へ点滅と共に変化し、巨大な視覚増幅装置【オムニレンズ】がガルルのエレメントに影響されて黄色から青色へと変わる。
ウルフェン族であるガルルの力を宿した形態【仮面ライダーキバ ガルルフォーム】にフォームチェンジする。
「グルルルゥゥッ……ガアッ!!」
唸りと共に狼の様に吠え、地面を蹴る。
本来の姿である【エンペラーフォーム】を上回るスピードを誇る形態になったお陰で、ドーベルの予測不可能な動きに付いて行く事が可能となった。
「ガアァッ!」
「グウゥッ!」
ガルルセイバーと爪が鍔迫り合い、残像の残す空中で火花が飛び散る。
しかし均衡は崩れ始め、ドーベルは次第に追い詰められていた。
植物プラントでの戦闘によるダメージに、氷の拘束を無理やり抜け出した事で皮膚が裂け、決して少なくない出血に【トリガー】の過剰投与による無茶な強化。
その積み重ねが、ドーベルの身体に大きな負担を掛けていたのだ。
「ガアァァッ!」
「ガハッ!?」
俺の鋭い蹴りがドーベルの腹部に突き刺さり、そのまま地面に落下する。
「今だ、来太!」
キバットの言葉に応じて、俺は【ウルフェンブレード】をキバットに噛ませる。
「ガルルバイト!」
魔皇力を注入した事で、周囲に赤い霧が立ち昇り、周囲が草むらへと変わり、空には満月が現れる。
「ハッ!」
【ガウ・クラッシャー】に【ワイルドグリップ】を咥えて空高く跳び上がる。
満月をバックにドーベル目掛けて急降下する。
そして急加速し、大きく身体を翻しながらクラッシャーに咥えた剣を振り抜く。
「ガルアアァァァァァァァァッ!!」
必殺技【ガルル・ハウリングスラッシュ】がドーベルに炸裂し、今度こそドーベルは倒れた。
「ッ!グフッ!」
倒れたドーベルは血を吐き、荒い息遣いをしながら弱った目付きで俺を見上げる。
「フゥ……フゥ……何故……トドメを刺さない……」
ドーベルの言葉に、俺は変身を解除しながら答えた。
「例え貴方が
そう言って俺は倒れるドーベルの手当てを始めた。
ジャケットの袖を引き裂き、ガーゼ代わりにして傷口を塞いでドーベルが巻いているベルトでキツく縛る。
「貴方たちのせいで島にいる全ての人たちが危険に晒された。その償いは生きて必ず果たすんだ。……その為に、貴方は生きろ」
「ッ……!」
俺の言葉に、ドーベルはハッとする。
「……この"個性"のせいで、俺は周りから迫害を受けた……。バケモノだと罵られた事もあった……。傭兵になった後でも……それは変わらなかった……。貴様の様な人間からそんな言葉を言われたのは……初めてだ」
「……そうか」
異形型の"個性"は、その見た目のせいで周りから嫌悪される事が多少ある。
子どもの些細な苛めから、大人による迫害。
俺は彼なりに苦労があった事を察し、顔を伏せた。
手当てを終え、立ち上がった俺はドーベルに背を向け、再びキバに変身する。
ドゴオオオオオオンッ!!!
すると突如、屋上から凄まじい轟音が響き渡った。
「おいおい、来太。如何やら上でとんでもない事が起きてるみたいだぜ」
「ああ。急いで皆に合流しよう」
立ち去ろうとしたその時、ドーベルが俺に向かって言った。
「貴様の"個性"も……周りから忌み嫌われていた筈だ……。なのに貴様は何故……人を救ける」
ドーベルの言葉に少し考え込みながら、俺は呟く。
「初めてこの力が発現した時、確かに周りから怖がれた事もあった……。力のコントロールに苦戦して触れたものを壊してしまった事もある……」
「だけど……今はこの体と力が俺の
自分に言い聞かせる様に言い、俺は緑谷が壊した非常口へジャンプし、その場を離れる。
まだ闘いは終わっていない。
緑谷とメリッサさん。
轟に麗日さん。
……そして波動先輩を救ける為に俺は最上階へ向かった。
ライダーくんvsドーベル
氷の拘束を無理やり破り、再びライダーくんたちの前に現れたドーベル。違法薬物である【トリガー】の過剰投与による一時的な個性の強化を促したドーベルにライダーくんが単身で挑む。獣の様な動きに翻弄されるライダーくんは【仮面ライダーキバ ガルルフォーム】にフォームチェンジし、スピードを活かしたワイルドな戦法で対抗する。
必殺技【ガルル・ハウリングスラッシュ】が炸裂し、ドーベルに勝利したライダーくんは屋上へ向かう。
次回、遂に
今後のピックアップガチャ
-
仮面ライダーガッチャード
-
仮面ライダーガヴ
-
仮面ライダーゼッツ