地球防衛軍5 英雄は元民間人   作:軍曹は不死身、はっきりわかんだね

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第4話 絶望か、希望か

 南条(なんじょう)軍曹たちが必死に怪物を倒しているのを後ろから見る。足止めを重視する戦い方から、怪物を倒すことを重視した戦い方に変わったことによって、数を減らすことはできたが、その分怪物との距離が詰まってきた。

 怪物たちは何体倒されてもひるむことなく進んでくる。亡骸(なきがら)を踏み越え、天井すらも這い回り、時折酸を飛ばしてくる。南条軍曹たちは最低限に避けながら銃を撃っていく。囲まれないように横を超えようとする怪物の足止めも行うが、隊員のうち一人に酸が直撃した隙に怪物が横を抜けてくる。

 

 

「しまった!」

 

 

 体勢を崩した隊員が立て直したころには、怪物は後ろに回り込んでておりすでに手遅れだった。後ろに抜けた怪物を倒そうにも前にいた怪物との距離が近すぎる。無理に倒そうとすればさらに多くの怪物を通してしまうことになる。一度に何体も突破された流れは、そう簡単に止めることができず囲まれることになってしまうだろう。それだけは避けなければならなかった。

 

 後ろに出た怪物は、三上も追い越したところでようやく立ち止まり後ろへと振り向く。三上はそれを見ていることしかできなかったが、怪物が攻撃してこようとしているのを見て、咄嗟(とっさ)に転がるようにしてよける。動き出しは遅かったが、怪物が足を損傷(そんしょう)していたことによって狙いがずれたことによって、酸がかかることはなかった。

 

 

「うおぉぉぉおお!!」

 

 

 恐怖心を叫ぶことで紛らわせながら、至近距離にいる怪物に銃を連射する。銃口のブレを最低限抑えながら、狙いをつけることなくマガジンの全てを打ち尽くす。至近距離だったこともあり、怪物の踏ん張っていた力がなくなると、その躰は軽く吹き飛んでいく。

 リロードを行いながら警戒するが、動きだすことがない。そこで(ようや)く倒せたことを実感し一息つく。

 もとから少し損傷があったとはいえ、一人で怪物を倒せたことによって、ようやく腕の震えが収まる。

 

 

「はあ、はあ…」

 

 

 たった一体倒しただけなのに息が上がる。本当に死んでいるのか、もしかしたら立ち上がって攻撃してくるかもしれない。そんな不安が次から次へと湧いて出て銃を下すこと下できなかった。

 

 倒れた怪物を警戒しながらゆっくりと近づいていき、銃の先で頭をつつく。そのことにほっとしながらも今度は近距離で銃を撃ってみる。そこまでして動かないことを確信し、漸く銃を下すことができた。

 

 

 

「誰か応答してくれ!現在、地下で交戦中!救援を要請する!…だめか」

 

「軍曹、そろそろ限界ですっ!!」

 

「倒しても倒しても出てくる、きりがねぇ!」

 

 

 南条軍曹たちの方へと振り返ると、ギリギリ後ろに行かれないように戦えている状態だった。そのことに気が付くと慌てて銃口を天井や壁を張って回る怪物に向ける。誤射がないように狙いをつけるとトリガーを引く。短時間だけトリガーを引くことを繰り返していく。

 放たれた銃弾は、南条軍曹たちに当たることなく天井や壁を這い回る怪物に当たっていく。

 

 

「民間人も手伝ってくれてるんだ、気張れよ!」

 

 

 三上が足止めをし始めたおかげで、南条軍曹たちは前にいる怪物にさらに集中できるようになった。最初は群像たちを抜きそうになったのも何体かいたが、時間が経つにつれ量も勢いも収まってくる。

 T字路を少し過ぎた場所まで下がるころには怪物の数も少なくなっており、足を止めても余裕をもって戦えるようになっていた。

 

 

「これで…最後だな」

 

「この怪物どれだけいやがんだ…?」

 

「壁を突き破って侵入しているということは、もう基地のどこにあの怪物がいてもおかしくないな」

 

 

 ひとまずは出てきた怪物をすべて倒すことはできたが、格納庫の壁や天井を食い破っていたことを考えると、この基地内で安心できるところはないと考えた方がいいだろう。

 これからのことに不安を募らせていると、北峰隊員がそばまで近寄ってきた。

 

 

「三上、よく頑張ったな。後ろから援護してくれて助かったよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 本職の人に褒められたことで自信がわくが、命のやり取りに対してだったため微妙な気持ちになる。

 

 

「すぐに移動した方がよさそうだ」

 

「怪物が現れたってのに、地上の奴らは何やってんだ!」

 

「きっと救援の部隊が来るさ」

 

「いくぞ、こっちだ」

 

 

 軍曹たちはできるだけ式を下げないようにと、楽観的なことを言いながら先へと進む。

 

 

「おかしい、10メートルほどの怪物が群れをなしているんだぞ。こうなる前に誰かが気が付いたはずだ」

 

「よほどいい隠れ家があるってことか…」

 

「しかし、あんな大きさの怪物が出入りできる洞窟など、すぐに見つかりそうなものだがな…」

 

 

 そんなことを話しながら進んでいると、突如目の前の天井が崩れ落ちる。

 幸いにも誰も巻き込まれることはなかったが、もう少しでも進んでいれば巻き込まれ、下敷きになっていただろう。

 

 

「あっぶねぇ!」

 

「くそっ!まだ出てくる!」

 

「全員固まって戦え、絶対あいつらには背を向けるなよ!」

 

 

 いきなり天井が崩れたことに動揺し、至近距離に現れた怪物に素早く対応できなかったため、足止めを行う間もなく後ろに回られる。

 南条軍曹の言葉で全員が一つに固まり、それぞれの死角をかばい合う。

 

 酸を飛ばそうとしている怪物を優先的に狙っていく。完全に囲まれてしまったが、先ほどよりも数がだいぶ少ないことが幸いした。その場でとどまっていても押し切られバラバラになることもなく、怪物の猛攻をしのぐことができていた。

 

 

「こんな大群どこに隠れていたんだ!」

 

「壁を壊すなんでふざけてやがる!」

 

「全く、夢に出てきそうだ…」

 

「救援部隊はまだなのか!?」

 

「返答もないんだから、絶望的だろうよ」

 

 

 やはり先ほどよりも余裕があるのだろう。話しながらでも対処ができていた。

 

 

「これで最後…か」

 

「…お前、民間人の割も度胸があるな」

 

「軍人に向いている、志願したらどうだ?」

 

「い、今の仕事で満足しているので遠慮しておきます」

 

「ま、だよな。訓練もなしにこんなことに巻き込まれて軍人になろうなんて、相当なことがないと考えなねぇよな。」

 

 

 現状の空気を換えようと軽い口調で話題を変える。

 西森隊員にとっては笑えるような冗談であっても、いきなり怪物と戦う羽目になった三上としては冗談だと分かっていても軽く流すこともできず、断った後に期待していなかったことが分かり、安堵の息が漏れる。

 

 

「こっちも塞がりましたね…」

 

「急いだほうがよさそうだ。玄奘(げんじょう)、後ろを警戒しておいてくれ」

 

「わかりました」

 

 

 偶然であるだろうが、こうも進路をことごとく塞がれてはそのうち脱出口すべてが通れなくなり、地下に閉じ込められるのではないかという不安が頭をよぎる。

 南条軍曹は、もしもまた出てきても対応できるように後ろを警戒しておくよう言うと(きびす)を返し、少し戻ったところにある格納庫の前まで移動する。

 

 

「一番近い出入り口はこの先だ。準備はいいか?」

 

「少し待ってください。心の準備を」

 

「おいおい、んなことしてたら奇襲とかに対応できないんじゃねぇか?」

 

「今は突然現れたとかじゃないんだ。できるだけ冷静に入れるようにした方がいいだろうが」

 

 

 軍人たちが何か言っていたが、三上は気にすることなく準備を行う。念のためにリロードを行った後に深く深呼吸をする。

 

 

「いいか?…ロックを解除する」

 

 

 準備を、覚悟をするのに十分な時間が経ってから、南条軍曹は一言声をかけてから隔壁の操作を行う。

 

 

「うおおおおおおお!…って、あれ!?」

 

 

 隔壁が徐々に上がって行く。

 隔壁の向こう側にどれだけの数の怪物がいたとしても、気後れしないよう西森隊員は雄たけびを上げながら前に出る。しかし、その予想に反して格納庫の中には一体も怪物はいなかった。

 

 

「脅かしやがる」

 

「気合が空回りしてるじゃないか」

 

「っるせぇ、いると思ったんだよ」

 

 

 先ほどの仕返しか、東隊員が憎まれ口をたたく。

 

 

「いないのならば好都合だ。先を急ぐぞ」

 

 

 二人は皮肉を言い合っていたがすぐにやめ、南条軍曹に続いて進みだす。

 

 

「こちら228基地所属レンジャー5、地下に取り残されている。救援を求む。………やはりつながらないか」

 

「きっと今頃、救援部隊の準備をしているさ」

 

「そろそろ救援部隊が到着するころだ。今頃地上で待機しているに違いない」

 

 

 できるだけ前向きなことを言っているが、こんな状況では何事もなく、救援部隊が到着していると言うことはまずないだろう。

 

 

「地上へはこっちからだ。開けるぞ」

 

 

 南条軍曹が隔壁を開けるが、その先にも怪物はいなかった。いないのならば戦う必要がなくなるのでいいのだが、今まで行く先々で怪物が現れたことを考えると不安になってしまった。

 きっと怪物は地下からきており、地上付近にはまだ来ていないのだと考えるが、それでも嫌な予感がぬぐえなかった。

 

 

「またこの急勾配(きゅうこうばい)を上るんですか?」

 

「仕方ねえだろ。近場の人用出入口への道は塞がれたし、遠回りするくらいなら急勾配だがAFV用の道を使った方がいいだろ」

 

「できるだけペースを合わせて上るが、それでもだめなら言ってくれ」

 

 

 またAFV用の通路を上らなければならないことにしり込みしていた三上にそれだけ言うと、南条軍曹は上り坂を上り始める。確かにそのペースは最初に坂を上ったときと比べ物にならないほどにゆっくりであり、怪物と戦ったことや駆け足で移動し続けていたことで、精神的にも肉体的にも疲れがたまってきていた三上にとっても少しだけだが余裕をもってついていけるペースであった。

 先ほどのようにいきなり壁を突き破ってくる可能性も考えると、ほかの軍人たちも移動するスピードを下げてでも、周囲を警戒した方がいいと判断したのだろう、多少遅くなっても何か言ってくる人はいなかった。

 

 

「地上には救援部隊がいるはずだ。ここを出れば助かるぞ!」

 

「地下まで来ていないということは、何か問題が起きているのかもしれないな」

 

「何があったにせよ、今の俺たちよりもひどくはねえだろ」

 

「しかし、どこの国の兵器なのだろうか」

 

「こんな生物兵器を生み出せる国はあったか?」

 

「ちょっと待て、生物ってことはこいつら繁殖しねえよな!?」

 

 

 西森隊員の一言で先ほどまで借る口をたたき合っていたほかの隊員も押し黙ってしまう。その憶測が現実のものだとすれば、あの怪物を絶滅させるまで安心した生活が送れないだろう。今の時点であれほどの数がいたのだ。もしもここだけではないところに現れたせいで救援部隊が対応しきれていないと考えると、もう相当の数がいるのだろう。

 

 

「もし繁殖するのだったら最悪だな…」

 

「南条軍曹!無事でしたか!」

 

 

 急こう配な坂を上り切ると、別のルートから来たのであろう数人の軍人がいた。

 

 

「私たちは数人殉職してしまいましたが、なんとか無事です。軍曹たちは大丈夫でしたか?」

 

「ああ。だがここ以外の地上への道が塞がれてしまった」

 

「しかしこの先に怪物が多数いる様なんですよ」

 

「外に出るルートはここしかない。怪物の群れに突っ込む覚悟はできているか?」

 

「はい、それは大丈夫なんですが…」

 

 

 そう言うと少し顔を(しか)め、三上の方をチラリと見やる。

 

 

「そっちに民間人がいる様ですが、私たちは守れる余裕はありませんよ?」

 

「ある程度は自分の身を守れる。なるべく後ろに怪物を活かせないようにするだけでいい」

 

「…了解しました」

 

 

 そういって隊員は完全には納得できなかっただろうが、前に向き直る。

 

 

「三上は俺たちを追い越そうとするやつを足止めしてくれ」

 

「わ、わかりました」

 

 

 三上がうなずいたことを確認すると隔壁の前まで行き、一度全員の顔を確認した後端末を操作し始めた。

 自分の手で怪物を倒すことはできたが、それでも体の震えは止まることがない。何度も深呼吸をし震えを鎮めようとするが止まることはなかった。

 

 そうこうしているうちに隔壁が昇っていく音が聞こえる。慌てて前を向き銃を構えるが震えは先ほどよりもひどくなったように感じた。今までは突然の襲撃であり無我夢中で恐怖を感じる余裕もなかったが、先ほどの肩透かしによって緊張の糸が切れたのだろう。気持ちを落ち着けようとすればするほど恐怖心がわき出し、体の震えが止まらなくなる。それでも一度開き始めた隔壁を閉じることなどできず、無情にも隔壁は上がり続ける。

 

 

「ひっ!」

 

 

 隔壁の向こうには今までにないほどの数の怪物がおり、こちらに気が付いたのか一斉に駆け出してきた。

 その光景に三上はわずかに悲鳴を上げ、その場から後ずさった。ゆっくりと準備の時間が取れ、怪物と戦わなければいけないと冷静な頭で再確認してしまうと、今までにないほど恐怖を感じたのだ。

 それでも背を向けて逃げ出さなかったのは、南条軍曹に頼られたということもあるが、一度怪物を倒したことが大きかっただろう。

 逃げ出したい気持ちをグッと抑え、震えたままの銃口を前に向ける。

 

 

「ある程度の酸ならアーマーが防いでくれるが直撃だけは注意しとけよ!」

 

 

 南条軍曹たちの銃撃で足を止めるものも少なくはないが、格納庫の外から売っている関係上、壁に車線を遮られている場所を通る怪物も多くいた。そういった怪物に距離を詰められ、十分にとれていた距離はもうほとんどなかった。

 

 

「ここは隔壁から近すぎます。そう遠くないうちに後ろに回られますよ!」

 

「だが坂で戦うよりはましだ」

 

 

 襲撃を行っている位置から隔壁への距離はほとんどなく、距離をとろうにもすぐ後ろは急こう配の坂になっている。

 足場の悪い下り坂よりは戦いやすいが、次から次へと隔壁から出てくる怪物に対応できず、後ろに回られるどころか、敵の物量に押されて陣形が崩れ、乱戦になるのも時間の問題だろう。

 混戦になってしまえば、ただえさえ生き残る可能性が低いのに、その可能性もほとんどゼロになってしまう。そう考えた南条軍曹は賭けに出た。

 

 

「―――俺たちが中に突っ込み囮になる」

 

「なっ、正気ですか!?」

 

 

 正気を疑うような発言に南条軍曹へと視線が集まる。

 自分たちが捨て駒になるような作戦を提案した割には、あきらめたわけではなかった。

 

 

「ここで固まって戦っていても絶滅するのは時間の問題だ。そこで敵の標的を二つに分けることで乱戦になる可能性を減らせる」

 

「しかしそれでは軍曹たちが…」

 

「大丈夫だ。乱戦にさえならなければそうそうやられはしない。それに奴らの知能は高くない。おそらく中に入る俺たちに多く引き寄せられるはずだ。そうなれば人数が減ってもしのげる」

 

「しかし」

 

「こうなった軍曹は止められん、諦めた方がいい」

 

 

 南条軍曹と火炎放射器を持つ軍人が言い合っていたが、北峰隊員が南条軍曹の顔を見てそう言った。

 軍人も確かに誰かが囮にならなければ生き残れないと理解していたが、仲間を質に送るような作戦をとりたくはなかったのだ。しかし南条軍曹の覚悟が固く、取りやめる気はない態度を見ると諦めたように溜息を吐いた。

 

 

「わかりました。ですが、死なないでくださいね」

 

「ああ。玄奘、虎児、隆司、覚悟はいいな!」

 

「大丈夫です」

 

「行くぞ!」

 

 

 南条軍曹の気合の入った掛け声とともに、怪物がひしめき合う格納庫の中へと突撃していった。

 道をふさいでいた怪物の下や横の隙間を通り、足を止めることなく前へと進んでいく。いきなり突っ込んできた軍曹たちに対応しきれていないのか、酸を掛けられることなく通り抜けることができていた。

 

 

「後ろに抜かれないことを最優先にしつつ、一体づつ確実に倒していけ!民間人おまえにも働いてもらうぞ!」

 

「わかりました!」

 

 

 狙い通り怪物たちの多くが軍曹たちに狙いを付けたのか、人数が減った状態でも少しの余裕が出てきた。更に怪物の間を通り抜けたことで、怪物同士で酸を掛けたり、ぶつかり合ったりと予想以上の効果もあった。

 

 三上もぶれる標準で味方に当たらないよう天井を這う怪物だけを狙って攻撃する。怪物の攻勢が緩んだおかげで足止めだけではなく、集中狙いによる撃破を行える場面が増え、減ることのないと思えた怪物の数は順調減ってきていた。

 それでも前へと進める程度の敵の密度になるまでには時間がかかり、その分だけ南条軍曹たちが生きているのかが不安になってくる。

 

 

「これだけの数ならば囲まれても十分に対応できるはずだ!前進し南条軍曹たちを救出する!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 構成が弱まった瞬間を狙い前進する。前進する分だけ後ろへと周りコマわれる可能性は高くなるが、今までの攻撃で少なからず傷をつけられた怪物が多かったためか、一匹も後ろへと行かせることなく前進することができていた。

 

 少し前に進むと怪物の向こう側から銃声が聞こえ始める。わずかだが声を掛け合っているのが聞こえるため、まだ戦闘は続いているようだ。

 そのことに安心しつつ、対応しきれずに後ろに回り込まれた怪物に集中する。後ろに回り込んでくるのは少ししかおらず、三上の他にも後ろの対処を行っている隊員もいるため、酸を飛ばされることもなく処理を行えていた。

 

 

「南条軍曹、御無事でしたか」

 

「ああ、正直助かった」

 

「少しの間守りますので、その間に少し休憩していてください。お前ら、軍曹たちに指一本触れさせるなよ!」

 

 

 南条軍曹たちは無事ではあったが、全員が肩で息をしていた。

 そんな軍曹たちを守るため、軍曹たちを囲むように移動する。

 

 

(この数怪物をたった四人で倒したのか!?)

 

 

 移動する際にちらっと周りの状態が確認できた。

 周りには多くの怪物が動くことなく転がっていた。ちらっと見ただけだったためしっかりとした数はわからないが、軍曹たちが囮になってくれていた間に倒せた怪物よりも多いだろう。たったの四人だけでそれだけの戦果を挙げた軍曹たちに戦慄する。

 周りの床には酸がまき散らされていることを見ると、アーマーが削られることも構わず敵を倒すことを優先して戦ったのだろう。それでもこれだけの数を倒せてしまうのはすごすぎると思うが。

 

 

「天井に張り付いている奴らにも気を付けろよ!」

 

 

 上を見上げると数体だが怪物が張り付いており、酸を降らしてくる。早目に倒したいが、落ちた後に自分たちが押しつぶされる可能性を考えると慎重にならざるを得なかった。

 酸を飛ばされないよう注意しながら戦っていると、十分な休憩をとれたと判断した南条軍曹たちが加勢してくれる。そこからは目に見えるほどに殲滅のスピードが上がった。特に南条軍曹はリロードの際以外止めることなく銃撃を行っていく。銃撃の衝撃を押さえつけ放った弾丸は驚くほどに怪物に当たっていく。

 

 

「もう怪物はいなさそうだな」

 

「怪物と戦うことになるとは思いもしてなかったぜ」

 

 

 最後の一隊が天井から落下し派手な音を立てるが、そんなことを気にしている人はいなかった。

 格納庫の中に積みあがった怪物の死体を避けるように進み、ついに軍曹たちは出口へとたどり着いた。

 

 

「出口だ!部隊と合流する」

 

 

 出口の前まで付くと気が緩んだのか、軍人たちは思い思いに話していた。

 

 

「この先にも怪物がいました!とかいう展開にはなりませんよね」

 

「この先は地上だからな、もしいたとしてももう片付いてるだろうな」

 

 

 三上も横にいた軍人に話しかける。本当にそうだとしたらシャレにならない冗談を言ってしまったが、誰もそんなことを気にする者はいなかった。

 

 

「地上は安全だ!急ぐぞ!」

 

 

 隔壁が昇り切った向こう側には怪物がおらず、急こう配な坂道が続いていた。坂の上は外へとつながっており、非常用の照明に慣れた目にはまぶしく感じた。思わず顔をそらす。やっと外に出れるのだという思いが込みあがり、戦いの後にもかかわらず気持ち軽やかに坂を上る。

 

 

「民間人!お前は頼りになる!」

 

「ここを出たら伍長のところへ行け。入隊手続きをしてくれる」

 

「えっ!入隊しなきゃいけないんですか!?」

 

「気が向いたらだ、気が向いたら。強制はしねぇよ」

 

 

 もう三上が入隊するのが前提のような言い方に驚くが、そんなことはなく、軽い冗談のように言っていることに気が付く。

 

 

(よかったぁ。もうこんな思いはしたくないし、よっぽどのことがないと軍隊に難で入りたくないなぁ)

 

 

 この基地からの脱出のことを振り返り、そんなことを思いながら遠い目をするのであった。

 

 

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