地球防衛軍5 英雄は元民間人 作:軍曹は不死身、はっきりわかんだね
何もする気が起きず、寝転がり空を見ている三上の元へと南条軍曹が近づいてくる。
「大丈夫か?」
「はい…何とか」
寝転がって動かない三上を心配し声をかける。三上が気の抜けた声を返すと、そうかとだけ声をこぼし、手を差し伸べてきた。
まだしばらく寝転がったままでいたかったが、いつまでもそのままでいるわけにもいかないため、ありがたく軍曹の手を借りて立ち上がる。
体についた砂を軽く払いながら周りを見渡す。
大群で押し寄せてきた怪物を退けることに成功はしたが、手放しに喜べるほどに余裕は持てていなかった。
三上たちが地下から出たときには数十人はいたであろう軍人は十人ほどしかおらず、あれほど強力であったコンバットフレームすらも、形を残しているのはたったの三機だけであり、そのうち二機は煙を吹いており、ほとんど故障寸前の状態だった。
立ち上がってもまだ放心状態である三上を見かねた西森隊員は、無理やり肩を組ませて話しかけた。
「それにしても、お前ら二人ともそこらの軍人よりもいい動きしてたじゃねぇか」
「え…?」
いきなり声を掛けられて出てしまった声を、『二人』に対する疑問の声だと判断したのか、後ろへと指をさす。
そこには途中から一緒に戦っていた女性が三上と同じように、軍曹の手を借りて立ち上がろうとしているのが見える。
「途中で俺たちんところに転がり込んできたときはびっくりしたが、おかげでだいぶ消耗を抑えれたぜ」
「な、ならよかったです」
三上は、自分が生き残るためとはいえ、戦いの邪魔になっていたのではないかと考えていたため、役に立てたと聞いて安堵の息を吐く。
「一緒に戦っていたんだろ?せっかくだから話し合って来いよ」
「うわっ!」
三上はいきなり背中を押され、軍曹と話していた女性の近くまで進んでしまう。それを見た軍曹は気を使ったのか、三上をちらっと見た後、西森隊員たちを連れて離れていった。
三上はいきなり二人にされたことによって戸惑うが、まだしていなかった自己紹介をしようと口を開いた。
「ゆっくりできる時間なくて自己紹介できてなかったから、今しないか?」
「そう、だね。僕たち以外は軍人さんみたいだし、同じ民間人同士、仲良くしたいもんね」
「俺の名前は三上遠矢だ。遠矢って呼んでくれ。役割的にはレンジャー?ってやつだと思う」
「僕の名前は
二人とも、この場にいる中で唯一の同じ立場であったため、戦いの中での苦労などを話題に、話が弾んでいた。
「全員注目!」
襲撃を乗り切ったことで緩んだ空気の中に軍曹の声が響く。その声につられ、それぞれ話していた者たちの視線が軍曹の元へと集まる。
「また怪物の襲撃が始まる前に、この基地から離れる。北峰は倉庫から数人連れて、倉庫から車両を引っ張り出せ。西森と東は周囲の警戒を。そのほかは装備の整備を行え!」
「「「了解!!」」」
全員の視線が集まったところで軍曹は手短に指示を出す。それを聞いた軍人たちは気を引き締め、それぞれが師事された通りに動き出す。
三上と天城は何をすればいいのか判断できなかったため、軍曹の元へと歩いていく。
「南条軍曹、俺たちは何をすればいいでしょうか?」
「お前たちはそこで待機し――――」
「軍曹、空から何かが降ってきます!!」
三上と天城の民間人の二人への指示を遮るように、東隊員の声が響く。基地内にいた人たちが、弾かれたように空へと視線を向ける。
空を見上げると、黒い点のようなものが近づいてきているのが見えた。全員がそれが何かを確認しようと目を凝らす中で、軍曹はいち早く指示を出した。
「総員離れろ!」
軍曹の声を聴き、慌ててその場から離れようとする。しかし、判断が遅れてしまったため、行動に起こすことはできなかった。
空から降ってきたものは、唯一動いていたコンバットフレームをたやすく壊し、地面に突き刺さる。強烈な生き酔いで地面に突き刺さったことで、軽く地面が揺れ、風が吹き荒れる。吹き荒れる風から目を守るように目を守っていた腕を下した三上の目に飛び込んだのは、巨大な棒状の機械のようなものであった。
はるか上空から落下してきたそれは、地面に深く突き刺さってなお傷一つついていない。金属のような光沢に、ところどころで明かりをともす赤色のライト、上部はガラスでできており、その中には円状の棒が回っていた。
「巨大な塔だ」
「機械でできてるぞ」
明らかに人工的なものが降ってきたことで、全員の思考が止まる。
そんな彼らを待つわけもなく、上部のガラスの付近に光が集まり、その中から怪物が出てきた。
「怪物だ。等の周りに怪物が出現している」
「塔は怪物を出現させる装置のようです。次から次へと出現してきます!」
『怪物を攻撃しろ!』
怪物が出現したことで
「この塔を破壊、か」
「俺たちの持ってる銃じゃ無理だぜ、こいつは」
十数体の怪物を出現させた塔は、怪物を出現させずに沈黙していた。
今のうちに怪物を出現させる塔を破壊しようとするが、放った銃弾はすべて弾かれてしまう。しかし、銃以外を使おうにもほかの兵器はこの場にはなかった。どうやって破壊するか頭を悩ませるが、すぐに塔から怪物が出現し始める。
今度は準備ができていたため、怪物が出現する瞬間を狙って攻撃することができた。
「怪物を出現させているのは、塔の上についている部分だ!都合の良いことにあの部分だけ他よりももろくできている。半分は塔の上部を攻撃、もう半分は怪物の対処を行え!」
「「「了解!」」」
怪物たちに反撃されないように、鳴り響く銃撃の音の中から、軍曹の声が聞こえる。それに従い、怪物に対処していた軍人の何人かが後ろへと下がり、塔の上部へ向けて銃撃を始める。
今まで銃撃に参加していなかった三上と天城も、上部を狙うくらいならば誤射の心配もないため、銃撃に参加した。
怪物を対処していた軍人が何人か抜けたために、怪物に押され気味になってしまったが、その分だけ塔上部には銃弾が叩き込まれ、ガラスにひびが入っていく。
銃撃が一か所に集まったことでついに耐え切れなくなったのか、
――――ドンッ!!!!
と、一際大きな音を立てて上部が爆発した。
それに合わせて、今まで傷一つついていなかった部分もひび割れ、崩壊していった。
「成功だ!塔の上の部分を攻撃すると破壊できるぞ!」
塔が完全に崩壊すると、上部を攻撃していた軍人たちも、怪物の処理に加わったことで怪物の殲滅スピードが加速した。
何事もなく怪物を倒しきると、軍曹たちはもう一つの空から降ってきていた塔の方を向く。塔も下には出現した怪物が多く溜まっていた。怪物たちの感知範囲は意外と狭いのか、こちらにはまだ気づいてはいない。しかし、今もなお塔から怪物が出現し続けている以上、早期に対処しなければ大変なことになる。
軍曹を先頭とし、移動しようとしたとき、上からゴオオオオという音が聞こえてきた。それが何かを確かめようと空を見上げた彼らは言葉を失った。
そこには、先ほど破壊した塔が、何本も飛んで行っていたのだ。
「僕の目おかしくなったのかな。さっきの塔が何本も飛んで行ってるよ」
「奇遇だな。俺もちょうど今、目がおかしくなったみたいだ」
「だよね。あんなものが何本もあるわけないよね」
あはははは、と遠矢と舞は現実逃避するように無理やり笑う。
二人は飛んでいった塔を見なかったことにして、もう一つの塔に専念することにした。
「また降ってくる前に、もう一つの塔の破壊を行う。上部の部分の破壊は民間人に任せる。俺たちは怪物の対処を行い、手が空いたものから破壊の手伝いを行え」
空を飛んでいく塔に気をとられている二人をよそに、軍曹は手早く指示を出し、突撃の準備を整える。
塔によって出現した怪物の数が多く、ただえさえ少なくなったのを二手に分けると、対処できないと考えたのか、乱戦の中では誤射する可能性の高い遠矢たちに上部の破壊を任せると、自分達は怪物の駆除を優先する。
遠矢たちは怪物の気を引かないように、距離をとって上部を狙い撃つ。距離をとっていたこともあり、撃った銃弾は多くが当たらずに逸れていったが、着実に上部に傷がついていく。
塔を攻撃されると攻撃の対象となるのか、怪物を攻撃していないが標的とされてしまう。
軍曹たちを抜けて向かってくるかと身構えた二人だったが、軍曹たちは一匹も通すことはなかった。
「十分数も減った!西森と東はそのまま怪物の対処に専念。それ以外は塔の破壊を優先しろ!」
「「「了解!」」」
塔の上部の傷が目立ち始め、もうそろそろひびが入りそうになった時、軍曹の声が響いた。
怪物の数が多かったとはいえ、怪物の群れを半分包囲した状態であったため、最初は数十体いた怪物も5体ほどにまで数を減らしていた。
軍曹の指示に従って軍人たちは、塔の上部へと大雑把に狙いをつけると、周りに出現する怪物を巻き込むようにして銃撃を行っていった。
彼らの集中砲火を浴びた塔にひびが入る。そのひびは瞬く間に広がってゆき、全体を覆うように広がった後、塔は耐え切れずに爆発し、崩壊していった。
「こんなもの街に落ちたら大変なことになるぞ!」
「一つ落ちただけで壊滅かもな」
「時間がかかればかかるほど怪物が増えていくとか、冗談もほどほどにして欲しいぜ」
基地に落ちた塔を全て破壊したのに、彼らの顔色はすぐれない。
降ってきた塔は一度に十数体の怪物を出現させる。それが何度も繰り返され、あっという間にこちらを上回る数が出現する。そんなものが何本も飛んで行ったところを見てしまっては、一本破壊したところで喜べないのも仕方ないことだ。
残った怪物の掃討を行っていると、また一本塔が降ってきた。
「また降ってきたか。怪物が増える前に破壊する!」
軍曹は残った怪物の掃討に数人残すと、ほかの隊員を引き連れて塔の破壊へと向かった。
もう塔の破壊の仕方は判明しているため、比較的楽に破壊することは可能だ。それでも多数の怪物相手に無傷というわけにもいかず、何人かの軍人がもろに酸をかぶってしまう。
体はアーマーが保護してくれたことで無事だったが、咄嗟に銃をかばったもの以外のものは酸によって溶かされ、もう使い物にならなくなっていた。
「時間が経つと死体が消えるなんて、不気味すぎるよな」
三上たちは安全な場所から銃撃しているだけだったため、会話をする程度の余裕はあった。そのため、塔の上部を攻撃したまま、襲ってきた怪物の不思議なというより、不気味な現象に対して話していた。
今倒したばかりのものはまだ残っているが、基地内にあったはずの死体は無くなり、兵器や塔の破片が散らばっている。時間が経てば溶けるように消えていくそれは、自分達が何と戦っているのかすらも分からなくさせていった。
「テロ組織の仕業とかかな」
「こんなのを開発できる組織があったら嫌すぎるな」
「えー。じゃあ、遠矢はどこだと思うの?」
「空から降ってきたのを考えると………いま、地球は宇宙人からの侵略を受けているんだ!」
出来るだけキリッとした顔を作ってそう言う。
「小説の読みすぎだよ。と言い切れないのが悲しいところだね………」
冗談のつもりで言ったことだが、空から降ってきた塔のことを考えると、間違いと言い切れなかった。
そんなことを話しているうちに、塔が爆発とともに崩れ落ちた。油断していたため、いくつかの銃が使い物にならなくなってしまったが、
基地に突き刺さった塔を破壊すると、倉庫のシャッターが開き、数車の車両が出てきた。
「倉庫の中にあった武装車両は2両でした」
「わかった。また塔が降ってくる前に出発するぞ!」
手早く車両に乗る振り分けを決めると、早く移動するように促す。
あと少しで全員が乗り込めるというところで絶望が降り注ぐ。それに最小に気が付いたのは、外に残って空を警戒していたものだった。
「軍曹!塔がまた降ってきます!」
「急いで車両に乗れ!全員が乗り込んだものから出発していい!生き残ることだけを考えろ!」
そう言うと、近くにいた遠矢と舞を2台の中へと押し込み、自身は助手席に座る。
他の場所でも、軍曹の決めた割り振りでなく、近くにいた車両に乗っていった。
運転席に座る北峰は、軍曹が乗り込むのをみると、何か言われる前にアクセルを踏み込んだ。急な発進にまだ座れていなかった2人はバランスを崩し、声が出てしまうが、塔が地面に突き刺さる轟音にかき消される。
「うわわっ!」
「おっと、大丈夫か?まだ揺れそうだ。どこかにつかまっていた方がいい」
塔をよけるための荒っぽい運転で、車両の荷台が大きく揺れる。咄嗟に手すりをつかむことができた遠矢は大丈夫だったが、フライトユニットを背負っていた舞は、不安定な姿勢だったためバランスを崩してしまった。
隣にいた西森に支えられたため、倒れることはなかった。
発進した車両は、振ってきた塔や地面に落ちる怪物の残骸をよけ、突き刺さる塔の衝撃に揺られた。
後ろからは轟音以外にも、何かが爆発する音や硬質なもの同士がこすれる音が聞こえ、不安を
「ひでーことになってんな」
後ろののぞき窓から基地を見る。
基地には十を超える塔が突き刺さり、駄目押しとばかりに、数えるのも
「何台逃げ切れた?」
「俺たちのも合わせて3台だけです」
もはや怪物によって基地を攻略させるのではなく、塔を使って直接基地を破壊するような攻撃に、3台だけでも生き残れたことは奇跡に近かった。
しかし、悪いことは続くようで、取り付けられたレイダーを見た軍曹は舌打ちをし、無線をつなぐ。
『前方に敵の反応がある。俺たち武装車両が先導し、道を作る。他は離れずに後ろをついてこい』
それだけ言って無線を切る。どういうことか問いただそうとするが、カーブを曲がってすぐに、道をふさぐようにしながら向かってきている怪物の群れが確認できた。
「あの群れに突っ込む気ですか!?」
「生き残るためにはこれしかない!前の敵は俺が砲撃する!アクセルは絶対に緩めるなよ!」
「了解」
北峰がアクセルを思いっきり踏み込んだことで、車両は一気に加速して突っ込んでいく。
生きて現状を切り抜けるためには、軍曹がどれだけ前の怪物をどけさせれるかと、北峰が車両を安定させるためにコントロールすることにかかっていたのだった。