楠第三高等学校野球部   作:親子丼(前:ゾーンタイガー)

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本編
進め、楠ナイン!


ミーンミンミーン ミーンミンミーン

 

夏の県大会、3回戦。8回の表1アウト三塁、楠第三高等学校野球は聖モナカラ学院相手に3-0とリードしていた。そんなチャンスで、3番打者が打席に入るのであった。

 

「よーし、ここで犠牲フライを打てばまたリードが広がるぞ!」

 

楠の3番打者は三塁ランナーを返すため、犠牲フライを狙っていた。その時、聖モナカラの監督は、タイムをかける。

 

(へっ、流石にリードされちゃ、タイムかけるのも無理はねぇな。)

 

タイムをかけた監督を見て、楠ナインは気を緩んでしまう。それもそのはず。聖モナカラ学院は、偏差値は高いものの、野球の強さに関しては、目にも見られない弱小校だったのだ。それに対し、楠第三高等学校は常に県大会でベスト4入りする中堅校なので、余裕になるのも無理がなかったのだ。

 

タイムが終わり、試合に戻る。その時、楠の3番打者は疑問に思ってしまう。何故なら、4番を前に敬遠をしていたからだ。

 

審判のフォアボールの叫びで、櫂太一が打席に入る。太一は2年生ながら、先輩を差し置いて、4番キャッチャーを任されている。太一は長打力と強肩が売りのキャッチャーで、ここで長打が決まれば2点は入るという、絶好のチャンスでしかも、今日の試合の3点のうち、2点は太一の打点であった。

 

「ここで、ピッチャー交代!千賀に代わって、佐野!」

 

『聖モナカラ学院、選手の交代をお知らせ致します。ピッチャー千賀くんに代わって、佐野くん。』

 

「おい、佐野って太一と同じ学年だよな。」

 

「そうらしいな。打たれて泥沼化になんなきゃいいけどな。」

 

楠ナインは、太一と同じ学年だと知り、また余裕をかましていた。しかし、佐野の投球練習を見て、言葉を失う楠ナインだった。それもそのはず、佐野こと佐野駿人は、2年生ながら球速156kmの速球を放っていた。しかも左で投げていたので、ナインが言葉を失うのも無理がなかった。

 

「おい、速すぎるだろ...」

 

「太一、バットを短く持ってミートしていけ!」

 

「はい...」

 

速球を目の当たりにした楠ナインは、太一に助言する。しかし、太一はその助言が耳に入らないほど、深く何かを思い出そうとしていた。

 

(櫂...中学の借りは返してやる...)

 

佐野はインコース高めに、直球を入れる。考え事をしていた太一は、胸元に速球が入り、よろけてしまう。その時、何かを思い出したようだ。

 

(佐野...!確か中学時代にホームランを放った選手だ!)

 

 

 

 

 

 

2年前

 

『4番、キャッチャー。櫂くん。』

 

中学時代の太一は、打席に入る。太一のチームは佐野のチームに2-0と押されていた。

 

(ここで点を決めて、勝利の狼煙をあげてやる...)

 

太一はホームラン狙いで、バットを長く持ち構える。中学時代の佐野は渾身のストレートを放つ。すると、太一の配球の読みが当たったのか...

 

カーン!!

 

佐野の放ったストレートは、太一の一振りでスタンドに入る。太一のホームランで、太一のチームは1点返すのであった。しかし、太一のチームメイトは、太一に続くことはできず、2-1で太一のチームは負けてしまったのだ。

 

「クソッ!この僕がホームランを打たれるなんて...」

 

佐野は勝利の嬉しさより、太一にホームランを打たれたことの悔しさが勝っているのだった。

 

 

 

 

 

 

2球目、佐野はまた強気にストレートを投げる。配球の読み当てた太一は、強気に長打を狙いにいく。

 

ポロッ...

 

「しまった...」

 

配球を読み当てたのにも関わらず、佐野のストレートのノビが中学の頃より格段に上がっていたため、なかなか飛ばなかった。セカンドゴロの併殺打に終わり、8回の表が終了する。

 

「すみません、先輩方...チャンスを無駄にして...」

 

「なっ...何...気にするな...ここ守れば俺らは勝てるさ...」

 

佐野の速球に動揺した楠ナイン。8回の裏、聖モナカラ学院は6番打者から始まるのであった。

 

(ここを抑えれば、俺らは勝てるぞ...)

 

佐野の速球に動揺した楠の投手は、ペースが乱れてまい、四球を許してしまう。それが7番打者にも同じ事が起きるのだった。

 

(なんかおかしいぞ...よし、喝を入れるためにインコースを攻めるか。)

 

動揺した心を殺すため、楠高校の投手は、8番打者のインコースを思い切り攻めるも、それが裏目に出てしまい、死球を与えてしまった。

 

『9番、ピッチャー。佐野くん。』

 

佐野の姿を見て、動揺した投手は、緊張で手が震えてしまう。手汗で球が上手く握れてない様子だ。

 

(先輩...)

 

中学時代、佐野の打撃を目の当たりした太一は、1点取られるのを承知の上で敬遠を要求する。佐野も太一同様、長打力に自信があったのだ。楠の投手は敬遠策に応じるも、手汗でコントールが効かず、ど真ん中にボールを放ってしまう。

 

カーン!!

 

(櫂...こんな試合じゃ、恨みが晴れないぞ'...)

 

楠の投手の失投を逃さなかった佐野は、長打を狙う。佐野の放った打球はスタンドに入り、3-4と逆転してしまうのだった。

 

「すまん、太一...佐野という投手に動揺してしまって...」

 

「先輩!俺に謝るなんて水臭いですよ!まずはこの回を終わらせましょう!」

 

太一の言葉で、調子を取り戻した楠投手。打たせて取るピッチングで、8回裏を終わらせる。しかし、佐野の速球に対応できず、9回の表は三者凡退で終わり、楠第三高等学校の夏は終わるのであった。

 

 

 

 

 

 

「あんなお坊ちゃまの集まりの軟弱高校に負けるとは何事だ!!お前らたるんでおるぞ!!特に櫂、お前の併殺打がなけりゃ、この試合は勝てたんだぞ!!」

 

試合が終わり、3-4という結果に、棚橋監督は呆れている。試合に負けた原因を、太一に押し付けている。

 

「はい!私の併殺がなければ、この試合は勝てていました!!」

 

「よし、蟹より小さい脳みそのお前でも理解できたようだな!!罰として、学校までランニングで帰れ!!」

 

「はい!ありがたき幸せです!!」

 

太一は負けたことに責任を感じ、反省をする。棚橋監督は太一に罰として、球場から高校までランニングで走ることを命じ、太一は快くランニングで帰宅することを引き受ける。

 

(やっぱ、監督は相変わらずだよな...)

 

(太一が気の毒だぜ...)

 

楠ナインの先輩方は、夏が終わった悲しさより、監督の支配に解放される安心感が勝っていた。どうやら楠ナインの先輩方は、安心してバスに乗れたようだった。

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