「県大会決勝、聖モナカラ学院4-0で甲子園進出か...」
太一は、『聖モナカラ学院、初甲子園出場!』という見出しの記事を見ている。聖モナカラ学院は、県大会3回戦で、楠第三高等学校を敗った学校である。
「太一くん、モナカラ学院にやられたのが相当悔しかったんだね...」
「あぁ...まさか中学最後の野球で敗れた投手に2度もやられたからな...」
聖モナカラ学院にやられた太一を気遣っていたのは、太一の同級生の涼風音羽。彼女は太一と幼馴染で、幼稚園の頃からの付きあいである。
「それより、カツサンド作ったから食べる?」
「おぉ!?いいのか!?食べるぞ!」
音羽はランチボックスを開ける。その中には、大量のカツサンドが入っている。太一はカツサンドが大好物なので、喜んでカツサンドを頬張る。
「慌てて食べなくても、カツサンドは逃げないよ。」
といいつつ、美味しそうに食べてる太一を見て、微笑んでる音羽であった。
「じゃあ、練習終わったら図書室に向かうからな。」
「うん、わかったよ。」
太一は音羽と約束し、練習へ向かう。今日は練習前にミーティングを開く予定を立てていた。
「みんな、集まったか。我々3年生は今日をもって引退をする。それに伴い、新キャプテンの発表をする。」
引退する3年生達は、在籍している部員達の前に立っている。前の部長がミーティングの進行役を務めていて、前の部長の口から新キャプテンを告げようとしている。その様子に周りは少しざわついている。
「では、新キャプテンの発表をする!新キャプテンは、櫂太一!櫂太一!」
「お、俺ですか!?」
前の部長の口から太一の言葉が出た時、太一は驚きの表情を隠せずにいる。しかし、周りの部員達は太一が部長に指名されたことに関しては納得している様子だ。
「お前は俺ら先輩を上手くまとめあげたからな。今度は同級生や後輩を引っ張ってやってくれ。」
「は...はい!誠心誠意込めて務めてまいります!!」
前の部長に期待された太一は、3年生の期待に応えるかのような眼差しをしている。3年生のミーティング終了後、棚橋監督が現れる。
「さて、茶番は終わったようだな。まずはランニングだ!太一は俺からの部長昇進祝いの20周!他のものは5周走る用に!!」
「「はい!!わかりました!!」」
棚橋監督は太一に昇進祝いと称して、他の部員の4倍の量を走るように指示をする。それに対し、太一や部員達は大声で返事をする。
その頃図書室にて、音羽は女友達と勉強をしている。
「どうしたの、音羽?」
「棚橋先生、少し生徒に優しくなってもいいと思うんですが...」
図書室の窓から野球部の練習を見ていた音羽は、女友達に心配される。音羽はどうやら棚橋監督の行きすぎた指導に問題視しているようだ。
「あー、棚橋ねー。あいつ野球になると熱が入りすぎて困るのよ。ウチの周りでスパルタ指導のせいで8人もやめたのよ。」
「太一くん、体壊さなきゃいいんですが...」
女生徒は、棚橋監督の噂を流している。それを聞いた音羽は、太一の身体を心配するのである。
「音羽が図書室の窓から覗いてる...」
カーン!!
太一はグラウンドから、図書室の窓を見ていた。よそ見をしていた太一に、棚橋監督の強い打球が飛んできて、顔面に当たる。
「新部長がよそ見とは何事だ!!窓の向こうに可愛い女の子がいたのか?俺の練習中によそ見をした罰として、お前だけ2000球増やす!!」
「はい!!すみませんでした!!」
棚橋監督はよそ見をしていた太一にキレ、ノックの球数の1000球の所を2000球に増やす。太一はよそ見していた事をを監督に謝り、ノックを再開する。
「あ゛ー、死ぬ...マージで監督俺らのこと殺す気かよ...声出し過ぎて喉痛てぇ...」
「.....なんであんな昭和脳についていけるんだ....」
棚橋監督の陰口を叩いていたのは、太一の同学年の青崎海尊と覇堂道成。彼らは一般入試組ながら、棚橋監督のシゴキのおかげで実力をつけた選手たちである。
「青崎、覇堂!神聖な練習に俺の陰口を言うのはいい度胸だな。罰として、ウサギ飛びでグラウンドを3周してこい!!」
「「は...はい!!!」」
(あーあ...喉痛てぇよ...)
(あいついつか通報して、クビにしてやるかな...)
青崎と覇堂は、監督の思いを胸にしまい込み、ウサギ飛び3周を開始する。
「今日の練習はここまで!!今日は後味が悪いから、明日はそんな事は2度と起こすんじゃねぇぞ!!」
「気を付け!ありがとうございました!!」
「「ありがとうございました!!」」
今日の練習が終わり、部員達の練習態度の悪さに棚橋監督はキレていた。太一の激励で今日の活動を締めるのであった。
「あー、腹減った...太一、これから焼肉食いにいかねぇか?」
「悪りぃ、道成。今日は予定があるからまた今度な!」
更衣室にて、覇堂は太一を焼肉に誘うも、太一は音羽と下校する約束をしているので、誘いを断る。
「お疲れ、太一くん。」
「お疲れ、音羽。」
太一と音羽は合流し、校門を抜けていく。
「太一くん...くれぐれも身体には気を付けてね...」
「お...俺はあんな監督にやられる程やわじゃないぞ!!」
その言葉を聞いて安心したのか、音羽は太一の腕を掴んで、微笑むのであった。その様子に太一は少し照れている様子だ。