○○と付き合ってるって言ったらテイオーはどうなるのだろうか 作:ししゃも丸
ここ最近の夢で、何故か引くはずのないサポカガチャを回していて、どういう訳かファインモーションが二枚出てきた夢を見たんです。
「──さんが新しいパパになるんだけど、テイオーちゃんはイヤかな?」
「ボクは、ママがそれでいいならいいよ。おじさんのこと、きらいじゃないし」
「そっか。うん。ありがとう、テイオーちゃん」
何気ない、ただ言われことを何も考えずに思っていたことを口にしただけなのに、ママはとても嬉しそうにしてボクを抱きしめてくれた。
ママが再婚する。
幼いボクにとってそれはそこまで悪い出来事ではなかった。正直に言えば、最初のパパのことはあんまり覚えていなかったというのもあるけど、ボクには大好きなママがいるからそれでいいと思っていた。それが関係しているのかはわからないけど、父性に飢えるってことはなかったんだ。
再婚するおじさん──新しいパパのことも、実を言えばママが何度かボクに会わせていたから、そこまで悪い印象はなかったし、むしろこれがお父さんなのかなって疑似的な体験を味わってもいた。
だけど、予想外だったのは──
「あとね。あの人にも息子さんがいるんだけど、もう成人してるのよ。だからちょっと年の離れたお兄ちゃんができるんだけど……」
ボクには兄妹がいない。できれば弟か妹がいいなって、兄妹がいる友達の話を聞いてそう思うこともあったけど、まさか再婚によって兄ができる……それも年が離れたお兄ちゃんだとは思いもよらなかったんだ。
これでもボクは誰とでも隔てなく友達になれるタイプで、大人相手でもこう……ママの後ろに隠れるような子供ではなかった。
だけどそれが義理の兄になる相手だと、ちょっと話が変わってくる。
だって一緒に暮らすんだよ? 幼いボクも色々と考えたり悩むわけだよ。仲良くなれるかな、優しい人かな、怖い人だったらどうしようとか。兎に角たくさんイメージをしたわけだよ。友達から聞いたお兄ちゃん像ってやつをボクなりに色々と。
で、いざ顔合わせというか、まあ全員で食事をすることになったんだよね。何て言うかちょっとお高いお店で、服もわざわざ新しく買ってくれた可愛いワンピースを着て。
おじさん──パパとは何度か会っているからそこまで緊張はしなかった。普通に挨拶をして、ちょっとぎこちなくパパって言えたのは、我ながらよくやったと思う。そんなボクの言葉にパパは嬉しくて年甲斐もなくはしゃいでいた。そんなパパに対して隣にいた──お兄ちゃんが厳しい言葉を浴びせていた。
「気持ち悪いぞクソ親父」
「お前には分からないんだよ。パパと呼んでもらえることの素晴らしさが」
「……初めまして、テイオーちゃん。コレの息子です。その、よろしくね」
「よ、よろしくおねがいします……お兄さん……」
お兄ちゃんは膝をついて、ボクの目線に合わせながら挨拶をしてくれた。何気ない優しさが、初対面だけどこの人はいいお兄ちゃんなんだって思えたのは、ボクとしてはとても好感触。
そんなお兄ちゃんもやっぱりボクとの年の差を気にしていたのか、ちょっとぎこちないって言うか、何を言ったらいいか分からないって顔をしていた。それを見て、ああボクと同じなんだって気づいたときはちょっと嬉しかった。
こうしてボクとお兄ちゃんファーストコンタクトはとてもいい感じで終われたのだ。
だけどこの時はまだ、ボクはお兄さんで、お兄さんもテイオーちゃんって呼ぶ間柄で、今のような感じじゃなかったんだよね。
まだ互いに距離感も分からないし、とりあえず家族になったっていう感じだったから。そのことにパパとママも微笑ましく見ながら気づいていたみたいだけど、二人の思惑とは違ってボクとお兄ちゃんの距離は意外なことにすんなりと縮まったのだ。
……と言っても、再婚したからと言ってすぐに一緒に住むという訳ではなかった。
住む場所は前々から決めていたみたいだけど、互いに引っ越しの手続きとか仕事もあって、一緒に住むまでに少しだけ時間を要していた。
そんな中、再婚したことで色々と余裕ができたというか、ママはお兄ちゃんにボクのお世話を頼むようになった。
ママは幼いボクのために可能な限りボクと一緒にいる時間を作ってくれていたんだけど、仕事上それは毎週できなくて、居ない事も少なくなかった。ママのお仕事は大変だけど遣り甲斐があって、立場も上の人間なのか多忙な人だった。それでもできるだけボクとの時間を作ってくれていたと知った時は、ボクは愛されているんだなって思えて嬉しかったんだ。
ママもお兄ちゃんにお世話を頼んだのはそのこともあったんだけど、ママなりにボクとお兄ちゃんの距離を少しずつ縮めようと思っていたんだと思う。そしてお兄ちゃんも快くその申し出を受けたのは、お兄ちゃんもそのことについて考えていたからだろう。
「テイオーちゃん、今日の夕飯なにが食べたいかな」
「……に、ニンジンハンバーグがたべたい……」
「りょーかい。じゃあ買い物にいかなきゃね。一緒に……いく?」
「……うんっ」
お兄ちゃんの家庭環境もボクと似たようなものだったのか、お兄ちゃんは意外となんでも一人で熟す人だった。料理は食べたいものを言えばなんでも作ってくれたし、ちょっとした我儘も聞いてくれたりもした。
一緒に買い物に行くようになってからも、最初はただ隣同士で歩いているだけだけだったのが、気づけばボクはお兄ちゃんと手を繋ぎながら歩くようにもなっていた。
「ねえお兄ちゃん」
「ン? なんだテイオー」
「えへへ。なんでもなーい」
「変な子だなお前は」
新しい家に引越して一緒に住む前から、お兄ちゃんは自ずとボクと一緒にいる時間を作ってくれていた。ボクが家に帰る時間にはもうお兄ちゃんがいたし、ママがいない時は泊ってくれて、朝も一緒に家を出るような生活を送るようになった。
逆に一緒に住むようになってからは、パパとママがいる時はお兄ちゃんは自分の時間に割いていたらしく、その事も相まってボクとお兄ちゃんの仲が本当の兄妹のようになるのにそう時間はかからなかったんだ。
気づけばボクはお兄ちゃんが大好きなブラコンになり、そんなお兄ちゃんも妹自慢ばかりするシスコンへと変貌していたり、何て言うかそういう運命なんだなって思ったよ。
ただそんな幸せな時間も、ボクがトレセン学園に入学することで終わりを告げてしまった。
トレセン学園は寮生で、入学と同時にボクはいま住んでいる家から寮に住むことになってしまうからだ。唯一の救いは申請すれば金曜の夜から家に帰り、日曜の夕方までに帰れるということ。これがなければきっとボクはお兄ちゃん成分が足りなくてきっと飢え死にしていたことだろう。
だけど……。
「毎日電話するからねお兄ちゃん! だから絶っっ対に電話に出てよね! それに休日は毎週帰ってくるからっ」
「わかったわかった。だけど中学生になったんだから、新しい友達と交流しなきゃだめだぞ」
「お兄ちゃんはボクに会わなくて平気なの!? ボクは毎日お兄ちゃんに会えないことがこんなにも苦しいのに!」
「平気じゃないけど友達は多いに越したことないし、そろそろお兄ちゃん離れした方がいいだろうし……」
「そういうお兄ちゃんは妹離れできるの?」
「……できないな」
腕を組んでそれっぽく見せて割には、ほんの数秒悩んで出た答えなど考えるまでもないものだった。
「でしょ」
「だから今のうちにテイオ二ウムを補充をしとくか」
「はぅ~ボクも補充~」
そう言ってボクはお兄ちゃんの膝に座りながら後ろから抱きしめられるのだ。
とまあこれがボクとお兄ちゃんの出会いから今のような関係になるわけだ。
なので次回はボクとお兄ちゃんに関わる人達について話そうと思う。
本当は別のウマ娘の話でしたが一向に進まないので切り札の一つを短いですか投入。
一応このお兄ちゃんは先生かもしれないしトレーナーなのかもしれないし、通りすがりのサラリーマンだったりするかもしれません。