○○と付き合ってるって言ったらテイオーはどうなるのだろうか 作:ししゃも丸
キタサン天井した(おこ)
マチタンの声が俺を狂わす
ダイヤ出て衝動的に☆5レベル5にした
ママが再婚して、新しいパパとお兄ちゃんが出来てから半年ぐらい経ったぐらいだろうか。ママと一緒に暮らしていたマンションから、みんなで住む家に引越すことになったんだよね。
一言で言うと新しい家は結構いい所にあって、多分友達の家と比較するとそれなりに大きい家だと思う。
「念願のマイホームだから、二人ともちょっと張りきったんじゃないかな」
お兄ちゃんはそう言ったけど、ボクには二人の気持ちがこの時分からなかった。
外観からそうだし部屋も普通の家と比べると多い。ボクの部屋は一つだけだけど、パパとママにお兄ちゃんは自室の他に仕事部屋があった。
「いいかいテイオー。仕事部屋には勝手には入っちゃダメだぞ」
そう躾けられたけど、ある時期までは家にいるのはお兄ちゃんとボクだけで、だから必然的にボクはお兄ちゃんの仕事部屋に入り浸っていたんだよね。
入るときはちゃんとノックしてから入ったし、部屋にいてもボクはゲームをしたりしながらお兄ちゃんとその日あったことを話しているだけで楽しかった。他にもお兄ちゃんに勉強を見てもらっていたから、自分の部屋で勉強する時間よりもお兄ちゃんの部屋で勉強する時間の方が多かったかも。
そんなお兄ちゃんの部屋に入り浸っていたボクだけど、ふと部屋にある棚に目がいったんだ。それは大きなトロフィーだった。
それを見てボクの口は、自然とお兄ちゃんに尋ねていた。
「ねえお兄ちゃん。あれ、なんのトロフィーなの?」
「え? ああ。これはね、お兄ちゃんの……教え子が初めて1位を取ったやつでね。その子が記念にってお兄ちゃんにくれたんだよ」
「じゃあお兄ちゃんの仕事って学校の先生なの?」
「似たようなものかな」
学校の先生、つまりは部活のコーチだとこの時のボクは思ったんだと思う。そう言ったボクの言葉に対し、お兄ちゃんはトロフィーを見ながら苦笑していた。
「──懐かしい夢だったなぁ」
ボクはトレセン学園の女子寮ではなく、実家の自室のベッド上で目を覚ました。夢なんて見てもいつも翌朝には忘れちゃうのに、今回の夢はまだよく覚えていた。
「あれって……多分レースのトロフィーだよね」
自分もレースに出るようになり、それなりに勝利を重ねてきたから当然トロフィーはもらっている。だからあの時のトロフィーがそうだとボクは断言できた。
「……」
ボクは寝起きだけど意識はハッキリとしていたので、早速ベッドから出てお兄ちゃんの仕事部屋に向かった。もうお兄ちゃんは起きて朝食を作っているはずだから、多分バレることはない。
仕事部屋と言っても鍵はかかってないから、普通に開けるだけで簡単に入れる。何度も入っている部屋だけど、目を凝らして部屋を見渡した。
「……ないや。しまったのかな?」
あるべきはずの棚にはあのトロフィーはなかった。毎日のように入り浸っていたはずなのに、あれがいつまであっていつからないのかまったく思い出せなかった。
『テイオー! ご飯できたぞー!』
「……いまいくー!」
一階からお兄ちゃんに呼ばれたので、ボクは何の成果も得られずに退散することに。まあいいや。大事なことが他にもあるし。そう思いながらボクは部屋を出た。
「──ねえお兄ちゃん。今年の感謝祭こそは来てくれるよね?」
朝食を食べ終えた後、台所で洗い物をするお兄ちゃんの背中を見ながら、分かりきっている質問を投げかけた。
「あー……今年もその日は仕事が……」
「むぅー」
ほら。またこれだよ。
トレセン学園には感謝祭というイベントがあって、この日だけは関係者以外の立ち入りを解放しているので、一般来場者が多く訪れることができる。
当然ボクはトレセン学園に入学してから毎年お兄ちゃんを誘っているんだけど、毎年同じような言い訳で断られてしまっていた。
しかし、それが毎年続けばきっと何か裏があると思うのは当然なわけで。特に今年はブラックにダイヤも入学しているから、そんな言い訳はもうボクには通じないのだ。なのにも関わらずそう言ってくることは、何かあるということをほのめかしているはずだ。
「どうせブラックとダイヤにも言われてるんでしょ? それにマックイーンだってさ」
「それは……うん。そうなんだけどさ……」
「今年はライブがあってさ、それにボクも出るんだよね」
そう言うとお兄ちゃんの身体がびくりと震えた。お兄ちゃんは昔からこういった行事でボクがメインで関わっていると、いつもハンディカムを持って応援しにやってくる。言ってしまえばシスコンの鑑というやつだろうか。
まあそれを見れないパパとママのためにもっていう理由もあるけど、後日家族全員でその映像を見る光景は幼いボクでも恥ずかしくて堪らなかったよ。
だから今年はライブに出ることもあって、絶対に来るっていう確信がボクにはあった。いくらマックイーンやブラックでもその事までは予想できはしないので、誰よりもお兄ちゃんとの時間を独占できるとボクは踏んでいた。
「……テイオーのライブ……でもなあ……いやしかし……」
「あーあー。折角の舞台なのに、お兄ちゃんに見てもらえないんてボクは悲しいよ」
「うぅ……」
お兄ちゃんは洗い物をやめて体を横に振っては唸っている。一目見ればすごく悩んでいるのはわかるんだけど、一体何がそこまでお兄ちゃんの決断を迷わせているのかと逆に勘ぐってしまう。
だけど待っている時間も勿体ないのでボクは必殺技を使うことにした。
「お兄ちゃんとの思い出残せないんだー、そっかー、残念だなー」
するとピタリとお兄ちゃんの体が止まり、それから数秒後。
「……行くっ」
「お兄ちゃん大好きー」
お兄ちゃんにとって一番大事なのはボクなのだ。だからボクより優先することなんてありはしないんだよね。
ただこの選択を後悔するとは、この時のボクには思いもよらなかったのである。
「テイオーのライブ最高だったぜ。生で見れなかった親父たちに自慢したろ」
感謝祭当日。俺は学園内に設置されているベンチに座りながら、テイオーのライブの録画映像を見ていた。
そこに映るテイオーは初めて見る衣装で、何でもこの日のために特注したやつらしい。まったく、俺の妹は最高だな。これを生で見れるとかマジで感謝感激雨あられだな。
「……」
ライブから今まで保っていたライブの興奮やら高揚感から少しずつ冷めてきて、ふといきなり冷静になる。
「はあ~~」
盛大なため息をついてしまう。
そう。俺は来てしまった。ここ、トレセン学園に。入場は別にいいんだ。人混みに紛れて、流れに身を任せればすんなりと入れるから。ライブはまあ……他にも似たような人ばっかだし、全然俺がいるってことはわからないだろう。
ただステージ上からテイオーが俺がいる方を見ていたと思うので、きっと俺のことを見つけていたに違いない。流石俺の妹だ。速いだけではなく目もいいとは。
しかしだ。問題はこのあとだ。きっと今頃テイオーが着替え終えてこちらに向かっているに違いない。そのあと合流したら感謝祭を見て回ることになっているのだ。別にそれはいい。それはいいんだけど……。
「見つかるリスクがなあ……」
一人なら問題はないだろう。だが隣にはテイオーがいるからどうしても目立つ。まあテイオーは可愛いから仕方がない。
重い頭をあげて、目の前に広がる光景が目に入る。
「相変わらず感謝祭はにぎやかだ」
これは毎年のことだし、むしろ年々来場者が増えているんではなかろうか。
「懐かしいな。この雰囲気」
実を言えば、俺はここでトレーナーをやっていた。もう数年前になるだろうか。いま思い返せば我ながらよくやっていたと思う。いや、彼女達相手によく平静というか平気でいられたなと。
トレーナーを辞めた理由は父が再婚して出来た妹のテイオーが原因。別にそれでテイオーが悪いという訳ではないし、俺が自分で進んで二人の代わりにテイオーの面倒を見ると言ったからだ。彼女達……特にあの子には悪いことをしたといまでも思っている。いくら契約期間である三年目を終えたと言ってもだ。
だけど……。
「お兄ちゃんお待たせ!」
「お疲れさま、テイオー。ライブすごいよかったぞ」
「えへへ。でしょでしょ。お兄ちゃんのこともステージから見つけたんだから。お兄ちゃんは気づいた?」
「もちろん。兄ですから」
「ふっふっふ。兄妹の愛の成せる業ですな」
「……」
この子の笑顔を見れば、自分がテイオーのために取った選択は決して間違ってない。俺は胸を張っていえるだろう。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「うん? 俺の妹は世界一可愛いなって」
「なら世界一可愛いボクが学園を案内してあげよう」
「頼むよ」
「よーし。まずはあっちね!」
テイオーの笑顔を見られる。それはいい。それはいいんだけど……やっぱ早く家に帰りたい、と言える訳もなかった。
「次はこっちー」
「はいはい」
お兄ちゃんの腕に抱きつきながら次の目的地に向かう。
ボクはいま、最っ高の気分だ。絶好調だ。なぜならボクの計画が完璧に進んでいるからだ。本来であれば邪魔者がいるところを、兄妹水入らずで一緒にいられているんだからね。
別に障害や問題がなかったわけではない。現にマックイーン、ブラック、ダイヤには感づかれたからね。まあそれもそのはずだよ。当日のボクはかつてないほど不気味なぐらい笑顔だったらしいから。
それを見てマックイーン達も察したのか。
「テイオー。もしかして、いえ、もしかしなくてもお兄さんが感謝祭に来るのではないでしょうね」
「うん。来るよ」
「なんですって!?」
「ずるいですよテイオーさん!」
「そうですよ! 私達があんなにもお兄さまを誘ったのに!」
「愛だよ愛。ま、ボクは機嫌いいからね。ボクがお兄ちゃんと見て回ったあとなら別にいいよ」
ただし。お兄ちゃんが学園にいれば、だけどね。ニシシっ。
とまあこんな感じで三人にもチャンスを与えたわけだ。ボクって優しいね。
それにしても……ボクがこうして学園を案内してるわけだけど。なんだかお兄ちゃんの反応がなんか薄いや。まるでトレセン学園を知ってるみたいだ。普通だったらもっとこう……物珍しそうに周りを見ると思うんだけど。
そこでボクは先日見た夢のことを思い出した。あの部屋にあったトロフィー。そしていまのお兄ちゃんの様子。これらか導き出される答え……。
もしや、お兄ちゃんの仕事はトレーナー……だった?
い、いや、仮にそうだとしてだよ? なんでボクに教えてくれないのさ。言えない理由があるとか? 普段からボクに隠し事なんて滅多にしないお兄ちゃんなんだよ。それにさ、最近なんてお兄ちゃんの部屋を探索しても、男子が一つは持ってそうなえっちな本とかないから、逆にお兄ちゃんを心配しているというのに。
それは別にいいんだ。いや、よくないんだけど。
とりあえず悩んでも仕方ない。ボクは勇気を振り絞って聞いてみた。
「ね、ねえ、お兄ちゃん」
「うん?」
「お兄ちゃんってさ、もしかして──」
「……お前こんなところで何してんだよ」
「へ?」
「……はぁ」
突然ボクらの会話に割って入ってきたのは、よく聞きなれた声だった。はっぴを着て、特製焼きそばを売っているゴールドシップだ。別にそれはよくある光景だから問題はないし、ゴールドシップもお兄ちゃんのことはみんなの前で一緒に紹介したこともあるから他人ではない。
問題なのはボクに対してではなく、そこまで親しい間柄ではないお兄ちゃんに対して、やけに親しそうな物言いだということだ。
そのお兄ちゃんもお兄ちゃんで、何やらため息をついている。どうみても反応がゴールドシップを知ってるような素振り。
「ふ、二人ってそんなに仲良かったの……?」
「あっ。いやな、テイオー。そのだな……」
「なんだよオマエ。まだテイオーに話してなかったのか。いいか、コイツは……やっべ! テイオーちょっとコイツ借りるぞ!」
「え!?」
「お、おい!」
ゴールドシップの耳がピーンと張りつめると、いきなりお兄ちゃんの腕を掴んで屋台と屋台の間に飛び込んでいき、そのまま目で追っていると人混みの中に消えてしまった。
「い、行っちゃった……」
「おや。テイオーじゃないか。どうしたんだ、こんなところで?」
すると入れ替わるようにカイチョーが後ろからやってきた。
「あ、カイチョー。いや、その、お兄ちゃんと一緒にいたんだけど、急に消えちゃって」
「お兄さん? ああ、テイオーには年の離れた兄がいると言っていたね。兄妹水入らずというやつか」
「うん、まあそんな感じだったよ。ところでカイチョーはどうしてここに? 見回り?」
「まあ……そんなところだ。ただ少し、懐かしいニオイがしたから、かな」
「におい?」
「気にしないでくれ」
「?」
今日のカイチョーはヘンだ。普段はこんなこと絶対に言わないのに。
「それじゃあ私は見回りに戻るよ」
そう言ってカイチョーはまたどこかへ歩いていく。ボクには先程のカイチョーが、どこかとても嬉しくて、残念そうに見えたのは何故だろうか。
それよりも……お兄ちゃんのことどうしよう。
なんだかんだでキタサトが実装されたので、二人のお話をセットで書く