がんばれくるみ! ふぁいと☆グレぎみ殴打!   作:ウェットルver.2

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 ※この回では透明文字を使っていません。


そうです、私たちがカルデアです!

 いつものアラート。いつもの集合場所。

 ダヴィンチちゃんと、なぜかエルメロイ二世がいた。

 

 まわりを見回してみると、何人かスタッフがいないような気がする。

 

「彼らには別の任務にあたってもらっている。

 医療関係者を含め、何名かのサーヴァントが召喚されてしまったらしいのでね」

「いやぁ、ここまで人員が足りてないの、ひさしぶりだと思うよ。

 今回の特異点に関しては、ちょっと事情が特殊みたいだから、なるべく日本出身のサーヴァントの安全状態を確認しに行ってもらっているのさ。

 あと、今回の選考から除外される理由も理由だから、欲求不満のガス欠をしてもらうために一部スタッフが全力で催し物を企画して、なるべく影響力の強いサーヴァントと催し物の下準備をしてもらっているところ。

 君の存在証明も、何人かのサーヴァントに依頼することにした。

 レイシフトが終わった頃には、スタッフはみんなそろっていると思うよ?」

 

 存在証明を手伝えるサーヴァントか。

 ……BBみたいなAIサーヴァントとか、バベッジ先生とかかな?

 

「さて。

 簡単に言うと、また日本に特異点が発生したんだ。

 微小特異点ではあるのだけど、こう、広いテーブルクロスに金塊を乗せたまま、テーブルクロスを無理やり持ちあげたみたいな感じになっていて、あまりにも大きすぎるひずみのせいで、大規模な特異点のような状態になっているのさ。

 『蟻地獄型の特異点』って言ったほうがわかりやすいかな?」

 

 なるほど、学校の校庭とかで見つけたりするアレですか。

 

「そのせいで、レイシフト先が日本のどこなのか、まったくわからない。

 日本列島を無理やり圧縮するのと同然の時空間のゆがみが、おそらくは四次元的な観測に精確性を失わせているのかもしれない。

 三次元的な観測のうえでは、ひとつの地方都市にもみえるから問題はないけどね」

 

「おそらく、入手できた情報から推察するならば、蟻地獄型の特異点であるがゆえに、カルデアからの観測では異質な時空間に見えても、あの状態が『通常の時空間』として住民に認識されることで、疑似的なテクスチャとして成立しているのだろうな」

 

 ダヴィンチちゃんに続けて、エルメロイ二世が解説をする。

 

「そうだな、蟻地獄を上から見た構図が、特異点にいる住民にとっての『平面』なのだと置き換えてみるといい。高次の視点や観測手段ではありえざる光景でも、我々が四次元的な異常を認識しがたいように、彼らもまた四次元的な異常を認識してはいない。

 あの特異点はそのように日本を『圧縮』することで、むりやりひとつの狭い地域に変換しているのだろう。おそらくは秋葉原も新宿も冬木市もまとめて小規模な町にでもされているのではないか?

 ………………もっとも、観測結果を見た限りでは、それらの町が圧縮されすぎて、ブラックホールに呑み込まれる小惑星さながら観測不可能になっているのかもしれんが」

 

 なんか後ろから悲鳴が聞こえた気がするけれど、ものすごく見慣れた青い炎の音と聞きなれた銃声も響き渡って、それらがまとめて部屋の扉を開けて出ていった。

 

「ほとんどの日本出身のサーヴァントを同行させられなくはないけれど、エルメロイ二世くんが考察してくれた説にあわせると、かえって同行したからこそ『圧縮』に影響されて、はぐれるどころか『圧縮』される可能性がある。

 一歩でも歩いたら、いきなり京都から九州くらいの距離を移動しているような状態になっていて、京都と縁の深いサーヴァントが突然隣から消えるどころか、はぐれずとも知名度補正をいきなり失う危険性もあるってことさ」

 

 連れていくから、日本以外の国のサーヴァントがいいってことですね。

 

「理解が早くて助かる。

 だが、この私はわけあって日本に縁があり、疑似サーヴァントの面々も依り代が日本人で特定の地域での知名度を強く持つ者や、さまざまな日本の神話の神性との複合体のハイ・サーヴァントである者は多い。

 同様の理由で日本と縁がある、月の聖杯戦争に関わったアルターエゴ、および彼女たちの母体とも呼べるレディを含めて除外され、実際に同行できるサーヴァントはとても限られている。しかも、あの日本だ、下手に目立つサーヴァントを選べば、数時間実体化させ続けるだけでも面倒ごとを招いてしまうだろう」

 

 コスプレイヤーみたいな認識をされちゃうってこと?

 

「ネロ・クラウディウスなどがわかりやすい例だな。

 どうしても気性や美意識の問題で、自然と目立つ格好を選んでしまう面々も除外しなければならん。」

 

「例外を挙げるとするなら、そうだね。

 日本に縁はあるけど具体的な知名度があるわけではない、特殊な経緯でサーヴァントになった魔法少女たちだけ、ってところかな?」

 

 そう言われてみるとなんかショック!

 なんて声も聞こえてきた。イリヤさんはマイナーなサーヴァントだとしても、魔法少女としてはビックネームにも劣らないと思いますよー、とは面白おかしな杖の談。

 

 じゃあ、イリヤは確定かな。

 

「……まあ、ダヴィンチの観点では問題がなかろう。

 今回のレイシフトに同行できる人数は、マシュ・キリエライトを含めた三人まで。

 つまり、あとひとり、ということになるわけだが、その最後のひと枠を決めるためのリストは用意した。特異点の深刻化こそ通常の特異点よりも遅いが、早い決断は待ち構える相手の策を乱し、思考するための余裕を奪い、相互の時間のアドバンテージを得られる。

 慎重に、かつ大胆に選ぶといいだろう」

 

 ありがとうございます。

 リストを受け取り、1枚1枚のページを吟味する。

 

 先生とダヴィンチちゃんの考えをあわせていくなら、これでいいか。

 

「……了解、さっそく君の選んだサーヴァントをアナウンスで呼ぶとしよう!」

 

 

 かくして、マシュたちと日本の特異点、仮称特異点Mへとレイシフトする手筈になりました。

 ちなみにMはMでもプロフェッサーやキングメーカーのほうではなく、アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科のほう、ようするに蟻地獄からとったのだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅刻、遅刻~!」

 

 どこからか、どこかのアニメや漫画で聞いたり読んだりしたことのあるようなセリフと共に、不思議とあまったるさを感じさせる叫び声が聞こえてくる。

 

「遅刻だよ~!

 遅刻だよ遅刻、遅刻しちゃうよ、あわわわ~!」

 

『レイシフト成功して、さっそくの最初の村人発見ってところだね。

 なにかに遅刻しそうなところで訊ねるのは気が引けるだろうけど、ほかにひとがいないし、良心が痛むのを我慢して、ほんのすこし聞いてみてもらえないかな?』

 

 通信機から、ダヴィンチちゃんの声が聞こえてきた。

 とはいえ、自分たちの設定は「このまま」でいいのだろうか。

 最近は地域だけからの推測では予想できないような状況、特異点全体のスキャニングでは理解しきれない状況になっている特異点にレイシフトすることが多い。

 ハロウィン案件とか水着案件とか特にそうだ。

 今回のような「現代日本」という年代が明確な特異点でも、下手に設定を固めたがために特異点の雰囲気に噛みあわず混乱するよりは、アドリブで動きやすくなるように、まずは「旅行客」「大学生」くらいの雑な設定だけは決めることにしている。

 

 ほんのちょっと考えて、それからマシュに話しかけた。

 

「……なるほど、『旅行客』という設定は外すのですね。

 確かに、第六特異点のように、この地域だけが存在している、という特殊な環境になっている可能性は否定できません。通りすがりの、この町についてのレポートを書こうとしている大学生の、先輩と後輩……と、いうことにしましょう!」

 

 なんとなく嬉しそうなマシュが今日もかわいい。

 

「遅刻すなわち遅刻だよ!

 遅刻しちゃうよ遅刻遅刻第四期告知したいよ遅刻だよぉ~!」

 

 さて、そろそろ相手もこちらを通りすがりかける頃だろう。

 そう思って、あきらかに年下であろう女の子のほうにむかって振り向く。

 

 彼女は必死に走り続けている。

 

 

 

 

 

 まだ。

 

 

 

 

 走って……走って…………こない。

 いつまで待っても、こちらの前まで通りすがらない。

 

 走ってきているのに、なぜか「近づいてきている」という実感がわかない。

 あれだけ必死そうに両足をばたばたと動かしているのに、たぶんこれ1メートルも前に進めていないんじゃないかな?

 

「先輩、どうしましょう!

 通りすがって……通りすがる前から、早々に……!

 なんだか、こう……その………………」

 

 ぐだぐだしそうな子だね。

 あっ、やっとひとまわり大きく見えてきた。

 

「遅刻だよ~遅刻遅刻、遅刻ったら遅刻、2021年7月14日現在YouTube公式サイトから無料で視聴できるけど、アニメ制作側の収益の問題でサービス終了して観れなくなっちゃう日がくるかもしれないし、DVDやグッズを買ったほうが四期五期まで期待できるから、ムーブメントに遅刻しちゃう前に応援してね遅刻しちゃうよ~~~!!!」

 

 なにを言ってるの、この子?

 

「なんとなく、本当になんとなくですが。

 あまり他人ごとに聞こえないのは、気のせいでしょうか……?」

『うーん、スルーでいいんじゃないかな?』

 

 いつものあれだね、わかるとも。

 ところで、あの子の足元、わりとおおきめの石ころがあるみたいだけど。

 あんまり公道の整備がよくないのかな?

 

「あ、本当ですね。

 大丈夫なのでしょうか、転んじゃったりとか」

 

 いやいやまさか、いくら足をバタバタさせながら走って……歩いて……走り歩きして…………どっちだろう。目はつぶっているみたいだけど、あのくらいの大きさなら見ればわかると思うし、あれで転ぶなんてまさか、

 

「はわわ、へぶぅ~っ!?」

 

「先輩、あの子転びました!!」

 

 なんで!?

 

「あいたたた…………」

 

「しかも、頭から血がたくさん出てます! 噴き出てます!!」

 

 頭をさすっている彼女の手が、どんどん真っ赤に汚れていく。

 目がさえるような金髪も茶色くなり、ところどころに白いもの(ほね)が見える気がする。

 

『いやいや怪我おかしすぎない!?

 なんで転んだだけで交通事故にあったみたいな大怪我してるの!?』

 

「…………てへっ☆」

 

「『てへっ☆』で済ませましたよ!? すごいです!

 これが日本のスクールガールというものなの……です…………か?」

 

 こんなジャパニーズ・スクールガールはいないよ?

 

『おそらく、この特異点での特殊な現象だろうね。

 サーヴァント反応に近いものを感知したから、おそらく彼女は、』

 

「私、安土桃山くるみ!

 私立笑顔ヶ丘中学に通う、14歳!」

 

『……はい?』

「えっ、今の流れでなぜ自己紹介を……?」

 

「実は私、悪と戦う

 美少女魔法少女

 恐竜天使戦士

 プリマエンジェル

 なの!」

 

 自分で「美少女」って言っちゃうのかぁ。

 

「魔法少女……イリヤさんの御同輩なのでしょうか?」

『や、あの、ふたりとも冷静になってくれないかな。

 彼女、今だれに自己紹介してるの?

 あと、さっきから同行してくれたサーヴァントのみんなからの反応とか聞こえてこないけど、やっぱりみんな霊体化したまま絶句していたりしてない?

 っていうか、魔法少女なのに恐竜とか天使とか名前についてるけど、それってどっちかっていうと戦隊ヒーローの専門分野じゃないのかな??』

 

「このプリマ端末を天高く掲げれば、あっという間に変身できちゃうんだよ!」

 

「どうしましょう、いきなり変身しちゃいましたよ!?」

 

 あ、変身すると怪我が治るんだね、すごいや。

 

『彼女、頭を打っておかしくなっちゃったのかな?』

 

「くるみぃ!

 早く行かないと遅刻しちゃうデビル!」

 

 うわ、なんか()が汚いのが出てきた。

 あの女の子の学生鞄からだろうか。宙を浮かぶ妖精のようなナニカの口元で食まれるタコ足が学生鞄にもくっついている。

 

「おおっと、説明が遅れちゃったね。

 この子は、

 タスマニアデビル型天使

”デビるん”!」

 

 天使なのか悪魔なのか動物なのかはっきりしてない!?

 

「あのタスマニアデビルっぽい子、よく見ると羽根が蠅なのでは!?」

『うーん。ノーコメントで!』

 

「最近悪の結社『暗黒ホエールズ』が悪いことしてないし、美少女魔法少女恐竜天使戦士プリマエンジェルとしては全然活動してないし美少女魔法少女恐竜天使プリマエンジェルっていうより普通の女子中学生やってるって感じなんだけど…………

 

 ま、いっか!!!」

 

 そこテキトーに流すの!?

 

「どうしましょう。

 あきらかに裏で大きな陰謀が動いているパターン、悪の組織側にたいへんなことがあったパターン、どちらもありえそうで先行きが不安になる導入に聞こえてきました……」

『まあ、今回は聖杯が絡んでいるからね。

 物語の冒頭としては悪くない入りなんじゃないかな?』

 

 どうしよう、ダヴィンチちゃんが頬杖ついてコーヒー飲み始めている。

 あんまりにもあんまりな突拍子もない変な子すぎて、真面目に聞くのがめんどうくさくなってきたのかもしれない。

 

『でも、おかげで地名がよくわかった。

 そこは日本のどこの県とも知れない、笑顔ヶ丘と呼ばれる地域のようだね。

 市町村のどれにあたるのかは、目の前の彼女に聞ければラッキーなんじゃないかな?』

 

 あ、よかった。

 見た感じ聞き流しているっぽいけど情報しっかり把握してくれてた。

 

「そうですね、彼女に聞いてみましょう。

 あの、すみません、そこのびしょう……じゃなくて、えっと…………?」

 

 マシュがめずらしく名前を覚えきれてない。

 名前が長すぎるからなのかな?

 

『どっちかっていうと、状況と設定と彼女の情報量がすごすぎて頭がついてこれないんじゃないかな。もっとも、天才の私は一発で覚えきれたからいいけどね。

 …………あ、いや、ほかのスタッフも何人か暗唱できるみたいだ。よかった、管制室側が混乱しちゃったらサポートできないからね、どうなるかと思ったよ』

 

 通信機からダヴィンチちゃん以外の声が聞こえてきた。

 今の声は、デオンやアストルフォで元気になるスタッフさんの声だったかな。やっぱり、『こういうの』を覚えるのは得意なのだろうか。

 

「急ぐデビル、もうチャイムが鳴ってるデビル!」

「はわわ、そうだった! 急がなきゃ!」

「あの、ごめんなさい、そこの女子生徒のかた!

 私、大学生のマシュ・キリエライトと申します、この町についてお尋ねしたいことが

「こうして、カルデアのみなさんと私のファーストコンタクトは始まって、なんやかんやで遅刻したあと夕方になるまで校門前でスタンバってもらいましたとさ。

 

 

 

 終わり!」

 

 えっ、終わりなのですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次回予告!

 聖杯ゲット、終わり!」

 

 なんなの、このSS!?

 

 

 

 

 

 




 両方の作品の雰囲気と設定をなるべく守ってみた結果がこれだよ!!!





 この読み切りが第一部か、第二部かは読者にお任せします。
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