がんばれくるみ! ふぁいと☆グレぎみ殴打! 作:ウェットルver.2
「これまでのあらすじ!
201X年のわりと最近の時代*1からやってきた歴史を守るひとたち、「カルデア」のみんなとお友達になって、わたしのいる時代の不思議な現象、特異点っていうのを解決することになったんだよ!」
“いや俺たち知らないんだけど!?”(高橋イサム)
“そんな大事な話あらすじですませんの!?”(鈴木キヨシ)
“まあ、前回ボクたちいなかったし、しょうがないんじゃない?”(佐藤シゲル)
この子、また虚空にむかって話しかけてる……。
(か、彼女の奇癖については、あまり考えないことにしましょう、先輩!)
マシュがひそひそ声で話しかけてくる。
耳元がくすぐったいな、と思いながら、奇癖の持ち主、安土桃山くるみちゃんを見ていると、彼女と契約したデビるんが首を傾げた。
「どうしたの、デビるん?」
「なんか、すっごい違和感があるような気がするデビル……?」
違和感って?
「いつもならこうなる。
っていうのが、全部なくなっているような感じがするデビル。
どら焼きを食べたら中身にあんこがなかった、みたいな…………?」
「どら焼き!
いいよね、どら焼き。『パンケーキどら焼き』っていうのもあるんだって!
エミヤさん、作ってくれないかなぁ……?」
“え、なにこの可愛い子? だれ!?”(高橋イサム)
“どこの国の子だろうね、外国にもプリマエンジェルがいるのかな”(佐藤シゲル)
どら焼きと聞いて、表情をゆるませるイリヤスフィールこと「イリヤちゃん」。
同じ魔法少女ということもあるのだろうか。
彼女の奇癖には驚きながらも、しばらくすると仲良くなっていた。
(クレープの話題から、ここまで仲良くなるなんて。
たいへんお可愛らしくて、話に加わるどころか、つい遠巻きに眺めてしまいました。)
わかる。マシュもそうなってたんだね。
“なにそれ、めっちゃ見てみたかった!! 見てみたかったなオイ!!!”(高橋イサム)
“うるせぇよイサムおまえェ!?”(鈴木キヨシ)
「え、なにそれ、わたしも食べてみたい!」
「おかしいですね、イリヤさんの霊基はいつものままなのですが。
私、いつアーチャーにクラスチェンジさせましたっけ?」
「……。」
ぐねんぐねんと持ち手を曲げながら、からかうように話しかける魔法のステッキ、カレイドルビー。デビるんと同じく「魔法少女の相棒」という立ち位置ながら、「魔法少女が契約させられた」とも言える共通点があるらしい。
気のせいか、くるみちゃんからルビーへの目つきが怖い。*2
“って杖がしゃべんのかよ!?”(鈴木キヨシ)
「食い維持はってないよ!?
いつものわたしだよ、ルビー!?」
「どら焼きどころじゃないデビル!
特異点とかいう現象が原因なら、その原因はたぶん、あいつらデビル!」
「ふはは、そのとおりだ!
餡なしどら焼きな迷惑加減、それはつまり。
我々のしわざだということだ!」
「だれ!?」
イリヤが振り向いた先。
海賊の船長っぽい格好をした、なんか全身が青い、左目が星型の眼帯で覆われた成人男性。
それが地球儀……のようなビーチボールを前後に、つま先とかかとで交互に蹴りあげながら、こちらに近づいてくる。なんかこんな感じの芸人さんいたような気がする。
「あなたは、パイレイト!」
男に対して、魔法の杖の棘を向ける
…………あれ、いつの間に変身してたの?
「ひさしぶりだな、プリマピンク!
今日という日、いや今月度、いや……やっぱり今年度こそ!
我々の戦いに決着をつけようではないか!」
“妥協!?”(高橋イサム)
“今年度ってなんだ、納期とかあるのか暗黒ホエールズ!?”(鈴木キヨシ)
“いちおう「本社」とかある企業だから、悪事に納期とかあるのかもね。”(佐藤シゲル)
……って、今年度?
もしかして、何年も魔法少女を続けているの?
「そうだよ? ざっと3年くらい!」
「思ったよりも歴戦の御方でした!?」
「今度こそ貴様を倒すため、新しい怪人を用意しておいた!」
「でも、どーせ、いつもみたいに必殺技1回で倒せちゃう怪人なんでしょ~?」
「いやいや、いつもより強めの怪人なんだぞプリマピンクよ!」
“なにその通販みたいなやりとり?”(高橋イサム)
ええー? ほんとにござるかぁ?
“こっちもノリがいいな!”(鈴木キヨシ)
「にゃーっにゃっにゃっ!
はたして、そう簡単に私を倒せるかな!?」
「その声は…………だれ!?」
コンクリートジャングルに立ちはだかる、べつに黒くない影。
オレンジ色の毛並みをした野生の獣が、「待っていました!」とアスファルトのうえにハリウッド特撮映画さながらのヒーローっぽい着地で我参上。
そのやりかたが悪かったのか、ものすごく膝を痛そうに抱えて転げまわって数十秒。
何事もなかったかのようにかんばせを見せ、にやりと笑った。
「だれだおまえ!? と聞かれたら、おまえも名乗れと世が叫ぶ。
社会の常識守りつつ、名刺交換も欠かさずに。
オトナのビターな休暇に戸惑う、テスカトリポカな敵役!」
あ、あの着ぐるみは!
チャーミングな尻尾が蠱惑的な感じの、なんとも形容しがたい常識的なところもある良識的と言えなくもない教師を自称する住所密林の美女は!?
“めちゃくちゃ言うな!?”(高橋イサム)
“住所密林って住所不定みたいに言うなよ、ホームレスか!”(鈴木キヨシ)
「ふっふっふ、こいつを知っているようだな。
紹介してやろう、この怪人の名前は―――!」
そう、あのサーヴァントの名前は!
「怪人ヒロイン願望女だ!」
ジャガーマ…………うん?
「適度な睡眠と、一日三食の美味しいごはん。
あとぉ~、そういうのをOKしてくれる旦那さんとかぁ~。
ハントしたくないわけじゃないんだからねっ! みたいな!?」
“うわキツ!”(高橋イサム)
みたいな、て。
“台詞がツンデレを自覚して照れ隠しで誤魔化したみたいだ……その名にたがわないヒロイン願望の持ち主みたいだね。” (佐藤シゲル)
“解説と分析が哀愁を誘うなぁ怪人ヒロイン願望女!”(鈴木キヨシ)
「ちょ、ちょっとまってください。
そこは怪人・豹人間おと……女ですとか。もっとこう、無難な、ではなく!
わかりやすいネーミングはなかったのですか!?」
“お、そこツッコむのか”(高橋イサム)
“さすが後輩キャラ、めっちゃ常識的!”(鈴木キヨシ)
「あー……実はだな。」
こまったように、マシュを直視せず目を細め、ちいさくため息を吐いた。
「暗黒大明神様の暗黒ダークエネルギーエナジーを浴びた人間は、なんかこう、不思議なことがたくさん起こって怪人になるわけなのだが……」
ぜんぜん仕組みわかってないんだパイレイト。
「サーヴァントとやらも元は人間……人間……人類なんだよなコイツ?」
“そこ気にする!?”(高橋イサム)
依り代は人間ですけど、中にいるのは神様ですよ?
「え、マジで!? あ、暗黒大明神さまと同じタイプの御方ぁ!?」
あなたのボスの暗黒大明神が神性か仏様かは知らないけど、たぶん神様仲間だと思いますよ?
“神様が着ぐるみってなに? コスプレ?”(高橋イサム)
“どっちかっていうと人間が神様の着ぐるみになってないかな?”(佐藤シゲル)
“マトリョーシカか!? わけわからんわ!”(鈴木キヨシ)
「知らずとはいえ神様を怪人にしてしまった! やばい!
これ後でバチがあたってしまうのではないのか!?」
意外と信心深いなパイレイト!?
“悪事やっておいてバチが当たるってなに!?”(高橋イサム)
“変に常識的なところあるよな暗黒ホエールズ”(鈴木キヨシ)
「ちょっと待ってよ、ってことは暗黒大明神さまがドン引きしてたのって、
『「暗黒大明神さまの御同輩を怪人にしよう」とかなに言ってんのコイツ』、みたいな!?」
暗黒ホエールズ、なんか思ったより常識的なタイプなのかな……?
「ま、まあ、暗黒大明神さまが暗黒ダークエネルギーエナジーを注入したのだ。
だいじょうぶなのだろう、たぶん!」
たぶんて。
“いい加減だなオイ!”(高橋イサム)
“まあ、神様も色々いるらしいから、たまたま敵対関係だったとかでOKだす理由があったんじゃないかな、たぶん。”(佐藤シゲル)
“渡る世間が神様ばっかりで苦労してそうだな暗黒大明神!”(鈴木キヨシ)
…………いや、それだけ彼と暗黒大明神の信頼関係が強いのだろうか。
マスターとサーヴァントの関係もそうだけど、どっちかが想定外なやらかしをしてしまっていても、ちゃんと相手の内面性を受け入れたうえで、なぜやらかしてしまったのかを把握できるのであれば、それにあわせてフォローをすることは不可能じゃない。
仮にも魔法少女を相手に戦い続けた悪の組織なのだから、計画を邪魔され続けてきたなりの信頼関係というか、絆が強いのかもしれない。
“うわめっちゃ好意的! ポジティブ!”(高橋イサム)
“悪の組織の幹部相手にそこまで思いやる必要ある!?”(鈴木キヨシ)
“でも、「安土桃山さんがやること」を考えると、ちょうどいいんじゃないかな?”(佐藤シゲル)
“あー、それは、まあ……うん…………”(高橋イサム)(鈴木キヨシ)
「話を本題に戻そう。
暗黒ダークエネルギーエナジーを受けた”もの”は、内なる欲望により怪人への生まれ変わる」
…………はい?
「すなわち、サーヴァント・ランサー【ジャガーマン】は!
『ヒロインになりたい!』という欲望により、【怪人ヒロイン願望女】になったのだ!」
「デリカシーがなさすぎます、最低です!」
「うぐうっ!?」
”ごもっとも!”(鈴木キヨシ)
なぜだろう、ものすごく殴り飛ばしたくなってきた。
(先生の知っちゃいけないもの聞いちゃったなー、という顔)
”っていうか、パイレイトちょっと泣いてるぅ!? やっぱ今の罵倒辛かったのか!”(高橋イサム)
「とにかく、やってしまえ怪人ヒロイン願望女!
おまえの『ヒロインになりたい』という欲望、思う存分に開放してカルデアのマスターとやらからこう……『迷惑だな~』って気分がすると出てくる、そういう雰囲気の気持ちというかオーラ的なものを回収するのだ!
できるだけ多めに!」
「えー、ヒロイン願望女、そういうヘヴィ~なオブジェクトっぽいヒロインさー。
やりたくない。」
え、断れるの?
「むっ、むう。言われてみれば確かにヘヴィ~。
自発的にやって迷惑になってしまうならばともかく、命令されて攻略対象に迷惑をするのはヒロインというより、ただの怪人ウザ絡み女になってしまう……!」
“そんな問題かい!”(高橋イサム)
それ、どっちも普段のジャガーマンと変わらないような。
“変わらないのかよ!?”(高橋イサム)
「もうやめて!?
“藤村先生?”(高橋イサム)
“たぶん依り代のひとのことじゃないかな”(佐藤シゲル)
“ってことは、あの子が生徒なのか。……いや、着ぐるみで美女でヒロイン願望の先生ってなんだそれ!?”(鈴木キヨシ)
「ならば怪人ヒロイン願望女よ。
バトルヒロインさながらにカルデアのマスターを倒すのだ!」
「あいあいさー。
私ひとりで倒してしまっても……構わないのだろう?」
ジャガーマンが やる気をだした!
「先輩、ジャガーマンさん改め怪人ヒロイン願望女、きます!」
いこう、みんな! 戦闘態勢を
「
「グワーッ!?」
“瞬殺した!?”(鈴木キヨシ)
「くるみさ、プリマピンクさん!?」
“いつものことながら容赦ないなオイ!
マシュって子がドン引きしちゃってんだけど! 大丈夫なのか、これから!?”(高橋イサム)
戦闘態勢を……取ろうと、指示を送る前に。
プリマピンクか、こう、土曜日の朝のヒーロー番組みたいな回転式丸鋸じみたエネルギーを投げて、ジャガーマンの身体を…………うわぁ。
「やったぁ、だいしょうり!」
ぶっしゃあああ、と、疑似体液が飛び散るジャガーマン。
サーヴァントだから本物の血液ではないとはいえ、さすがに戦いなれていても、こういうスプラッターなやつは見慣れたからといって。
しんどくないわけではない、なぁ。
「袈裟斬り!?
そこまで切れ味いいの魔法少女が使っていいの!?」
「イリヤさーん、私たちも似たような技は使ってますよー?」*4
たぶん当たり所が悪いとまっぷたつになるやつだ、今の。
えぐい技を使うなぁ。
瀕死になったジャガーマンの肉体から、線香の煙のように魔力の粒子が飛び散る。
今の一撃で霊基がやられたのか、この特異点から消滅、退去し始めていた。
「ぐぬぬ。まさかのコミュニケーションで交通事故!?
だが、しかーし!
たとえジャガーが倒れようとも、いずれ第二、第三のヒロイン願望を持ったサーヴァントが怪人ヒロイン願望女2号、もしくはV3として立ちはだかるであろう…………!」
打ち切りでおねがいします。
「そんにゃー!?
あ、私、先にカルデア戻ります。
あとの特異点解決よろしくやっといて、くれるかにゃ?」
いいともー!
「ふっ、いい返事だ、マスター力がちがいますよ。
そういうわけで、青春を謳歌する学生諸君!
サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ…………」
“あれ? 今おれらのほうに手を振らなかった?”(高橋イサム)
“先生と呼ばれるだけあって、こっちをスルーしなかったみたいだね”(佐藤シゲル)
瀕死ながら朗らかに笑い、ジャガーマンの姿が消えた。
ダヴィンチちゃんから、ジャガーマンの帰還を確認したことが通信機越しに伝えられた。
どうやら怪人になっても、無事に、問題なくカルデアに戻れるみたいだ。よかった。
「そうなんだ、よかったね!」
うん、本当によかった。
「よかった、よかった!」
いやなんなの、そのノリ!?
“ほんっとそれな!!!”(鈴木キヨシ)
“っていうか、あのジャガーマンってひと、台詞とフリが古くね?”(高橋イサム)
“昭和世代は現役にゃ。エミヤんも「そうだそうだ」と言っています。”(ジャガーマン)
“こいつ直接脳内に!?”(高橋イサム)
(あれ? なんかさっきから変な気配がするような?)
「次回、『名前がくどいぞ! 怪人恋愛心中大炎上女!』
お楽しみにデビル……って、聖杯は?」
これ書くのが一番楽しくて疲れた気がする。
イリヤの言った「変な気配」ってなんだろうね。だれかいたのかな?
三人くらい。