『じゃが、もう日も高い。ここで一旦食事にしよう。…お主も一緒に食うか?』
「良いんですか?ならご相伴にあずからせて頂きます。」
実際有り難い。目が覚めてから今(ちょうど正午あたり?)まで何も食べられていなかったんだ。いい加減お腹が空いてきた。
…今一瞬族長が同情の視線を向けてきたの、俺は見逃さんぞ。村の入り口での会話と合わせて考えるに、どうやら俺が食べようとしたあの木の実は相当マズいーー味が悪いって意味じゃなくーーものだったみたいだね。
『では行くぞ。そろそろ先ほどの“大角”の解体が終わった頃じゃろう。』
「解体?と、いう事は…」
『うむ。お主が居らなんだら仕留められなかった獲物じゃ。お主が最初にその肉を食ったところで誰も文句なぞ言わんわい。
ギバル、食料庫からあの“大角”の肉を貰って、広場まで持ってきてくれ。』
『分かりました!』
『儂らは先に広場に向かっておくぞ。
…これ、ガジル。いつまで呆けているつもりじゃ?』
そんなこんなで族長に案内されつつ、なんとか復活したガジルと共に村の広場へと移動。
広場の中心には焚き火が燃えていて、火を使う調理とかはここでやらなきゃいけないらしい。…良かったよ。『森の中で火を
ほどなくしてギバルが、大きめの肉が長めの串(と言ってもほぼ木の枝だけど)に刺さったものを幾つも持って合流した。
焚き火で炙って食べろってことらしい。
「それでは…。」
徐に手を合わせて瞑目。
「…いただきます。」
…目を開けると、三人が奇妙なものを見る目でこっちを見ていた。
…。
……。
勘弁してくれ。
日頃の習慣ってすぐには抜けないなぁ…。
『…ニンゲンよ、今の「イタダキマス」というのは何なのじゃ?』
案の定、思いっきり不審がられた。まあ地球でも日本以外にはあんまり無い文化ーーキリスト教の食前の祈りとも微妙にニュアンスが違った気がするーーらしいし、ある意味当然の反応か。
「俺の故郷の文化ですよ。物を食べる前に、食材となった動植物や食事を用意してくれた人物、そして食事を食べられることそのものへの感謝をこうして示しているんです。」
厳密には違うらしいけど、とりあえず俺はそんなつもりで「いただきます」と言っている。要は心を込めて言えるかどうかだ。
『…! ほう、それは良い文化じゃな。
では儂らもそれに倣うとしよう…イタダキマス。』
族長が合掌しつつそう口にすると、ガジルとギバルも見様見真似でそれに続いた。族長が驚いたような表情をしていた気がするが、今のは一体…?
とりあえず、それについては考えないことにして肉を焼くことにした。
(どれくらい焼けば良いのかな?お腹を壊したら洒落にならんし、しっかり焼いておくk)
『おい、お主。もう良いのではないか?』
「え?」
そんな声をかけられ、肉を火から離す。まだミディアムレアにもいってない気がするが…?
(まあいいか。いただきます。)
心の中でもう一度呟き、肉を
…美味しい。
予想に反して柔らかく臭みも少ないその“大角”の肉を、一口ずつしっかりと
『命をいただく』という言葉の意味を肉と一緒に噛み締めつつ、追加で何串か同じように焼いて食べる。こうして、この『ラムンダ』とかいう異世界での最初の食事が終わった。
ちなみにこの後、いつもの癖で「ご馳走様でした」と言ってまた訝しがられてしまった…。