いきなり異世界? 勘弁してくれ…   作:ダイ⑨

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はい、結局2本書くことはできませんでした。
あと警告が遅くなっちゃいましたが、今回から「R-15」「残酷な描写」タグ追加です…!

耐性がない方は閲覧注意です。
では…どうぞ。


愚鈍か、傲慢か

 …いやいや待て待て、落ち着け俺!

 俺はこの世界に来てから一度も自分の名前を名乗っていない。それにも関わらず、こうして俺の名前を知っているということは…。

 …やっぱりこの相手、俺の件に一枚噛んでる!

 

『…今の、“「葉」の名を持つ者”というのは?』

 っと、これについて考えるのは後だな…。族長の困惑したような呟きに対して応えるのが先だ。

 

「恐らく俺のことでしょう。

申し遅れました。俺の名前は(よう)って言います。俺の故郷の言葉で「葉っぱ」の意味を持つことから、ああ呼ばれたのでしょう。」

『ふむ…成程。(よう)、か。

儂の名はゴジルと言う。村の皆からは族長と呼ばれているぞ。』

『ガジルだ!よろしくな、ヨー!』『ギバルです。宜しく、ヨウ。』

 

 今更ながら、この流れで全員自己紹介を行う。まぁ、俺からしてみれば子供二人の名前はもう分かってたようなものだけどね。

 

“ガジルと、ギバルですね?

二人とも、良い名です。”

 

 そんなやりとりに、なんと先ほどの天の声も入ってきた。それを聞いてハッとしたゴブリンたちは、再び樹に向き合って頭を下げる。俺も(なら)っておかないと。

 

『はっ…。つきましては、神様。彼ら二人を、我らの同胞とお認め頂きたいのです。』

 

“良いでしょう。ガジル、ギバル。

この森の一員として、これからも健やかに

生きていくのですよ。”

 

『『はいっ!』』

 

 この天の声こそが“神様”そのものらしい。

 ここで“神様”に認められて初めて一人前…ってことなのかな?後でゴジル族長に聞いてみるか。

 

“さて…葉さん。

貴方(あなた)のことは“彼女”から聞いていますよ。”

 

「はっ…その方はなんと?」

 

“貴方には「思うがままに、生きてみせよ」と伝えてほしい…

と、そう言っていましたね。”

 

 …。

 ……。

 勘弁してくれ。

 この上なく要領を得ない言葉だなぁ…!

 そもそも“彼女”って誰だよ!

 

 まぁそれについては後で考えるとして、『思うがままに』か…。

 閃いた!

 

「思うがままに、ですか…。でしたら一つ、行ってみたいことが御座います。

この森に関わることなので、まずは貴方の許可を得ないといけないと思いまして。」

 

“「この森に関わること」…?

 分かりました。ひとまず言ってみてくださいな。”

 

 さて…どうなるかな。

 正直に言えば、却下されても困らない。でも…もし許可が下りれば、色々とやりたいことが出来るかもしれないな。

 

「では僭越ながら。

私としては、この森の『間伐』を行いたく存じます。

この森には確かに多くの木が生きておりますが、それ故にその木によって日の光が地面へと届かず、若い木が思うように育てない状況となっている(はず)です。

そこで、私に一部の木を伐採する許可を頂きたい。もちろん伐採は必要最小限に留めますし、切った木は私やゴブリン、或いは他の生物たちのために有効に利用していく所存です。

如何(いかが)でしょうか。」

 

 

 

 …沈黙。

 

 (しばら)くの沈黙の後で、再び声が聞こえてくる。

 

“………貴方がここまで愚かだとは、

思いませんでした。”

 

「……は」

 

“貴方の立場に置き換えて考えてみなさい。

『この地域には確かに多くの人間が生きておりますが、それ故に資源が全ての人間へと十分に届かず、若い人間が思うように育てない状況となっております。

そこで、私に一部の人間を『間引き』する許可を頂きたい。もちろん間引きは必要最小限に留めますし、その命は私や他の生物たちのために有効に利用していく所存です。』

等と言われたとして、納得できるとお思いですか!”

 

「…ッ。」

 

 そうか…あぁ、そっか。

 そんなこと言われたら、()()()受け入れられないのか。

 

“私には、この森の全ての命を見護り、(いつく)しむ義務が有ります。

他の命の有り様に干渉し、その生殺与奪の権を握るような真似を、許容するようなことが有ってはならないのです。”

 

「…失礼致しました。」

 

“いえ、謝罪は結構です。

自覚が無かったなら余りにも愚鈍、気づいていたならこの上なく傲慢。

…最早、貴方に話すことなど有りません。”

 

 うっひゃぁ…ブチ切れてらっしゃる。もう顔も見たくないってレベルで嫌悪されちゃったかな…?

 ってマズい!それじゃ駄目だ!

 

 俺は先程までの祈り(?)の姿勢から、顔を上げずに姿勢を変える。

 立てていたもう片方の膝を地面につき、揃えた両足を挟む格好で両手の肘から先も土に触れさせ、その両手の先に入れるような格好で頭を一層下げて地を拝する。ジャパニーズ・ドゲザ風五体投地(ごたいとうち)ってとこか!

 

「出過ぎた言、大変に申し訳ございませんでした!

ですがどうか、どうかお慈悲を!

私はただ、生きたいのです!この愚かさ、或いは傲慢さが私の身を滅ぼすというのなら!

どうか己を見つめなおし、正しい心の有り様を会得できるまでだけでも、この森に住まうことをお許しください!」

 

“…貴方に話すことなど無い、と言ったはずです。

()()()()()()()()()()()()()()()()()。”

 

 この言葉を最後に、声は聞こえなくなった。

 風で木の葉がざわめく音だけが、耳に残っている………。




あと2話ほどで第一章終わりです。それに合わせて小説タイトルも変える予定ですよ。
(現タイトルが一章の章タイトルになる予定)

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