『成程のう…事情は分かった。生きる知恵を得るために
じゃが知っての通り、知恵とは森で生きるための財産。村の仲間でもない者、ましてや信頼できないニンゲンに何の見返りも無く与えられるものでは無いわ。』
…うーん、とりあえず話を聞いて貰えたは良いが、対価を要求してくるか。そう言われても俺にできることなんて…。
その辺りを考えようとしたところで、聞き覚えの無い声が耳に入ってくる。
『族長!大変です!子供が“大角”に襲われています!』
声がした方を見ると、そこに居たのは見覚えの無いゴブリンだった。
…ま、俺がここまで会ったゴブリンはガジルとギバル、それに族長の3人だけだし見覚えは無くて当然か。今は「集落のゴブリンA」程度に思っておこう。
『!? あれは滅多なことでは儂らを襲わんぞ!?原因は何じゃ!』
『はっ!どうやら狩りに行った連中がしくじったらしく…“大角”を怒らせてしまった上に、それが逃げた先がよりにもよって我らの村であり、そこで暴れているとのことです!』
『まだ若者に狩りを任せるのは早かったか…!
今ヤツが暴れている場所は!?』
『食料庫のすぐ近くです!』
『分かった、すぐに向かう!お前は村の大人を全員かき集めて食料庫に向かえ!』
『はっ!』
『ガジル!ギバル!お前達も来い!少しは力になれるはずじゃ!』
『分かった!』 『分かりました!』
急な襲撃を村一丸となって乗り切ろうとしてる、ってとこなのかな…。
…。
……。
勘弁してくれ。
交渉の最中に非常事態が起こるとかどこの三流ドラマだよ…。
いや、でもこれはチャンスか?俺は先程の族長のお説教の一部を思い出す。『ニンゲンは
…これならイケル!早速交渉だ!
「族長!」
『何じゃあ!見ての通り、今はお前に構っている暇など…』
「私も同行させてください!」
『!』
「私はこの通り、図体は大きいです。故に“大角”を止める役に立てるかもしれません!」
『……分かった。正直に言えば、今は少しでも戦力が欲しい。』
『族長!? コイツは…』
『良いのだギバル。先ずは役に立つかどうかを見る。細かい話はそれからで良かろう。』
『ッ…!』
交渉成立ゥ!これでキッチリ役に立てれば彼との交渉のカードになってくれるだろう!
そんな訳で俺達は、族長の案内でゴブリンの集落の中を進んでいった…。