転生してニューゲーム、ただし役職はエキストラ。 作:騎士貴紫綺子規
とりあえずはじめは「週刊少年サンデー」からお越しくださいました、「名探偵コナン」です! どうぞ!
別タイトル
《喜怒哀楽椅子探偵》
俺は死んだ。
いや、うん。人間誰しも――一部を除いて――死ぬだろうし、別にそれはどうでもいい。人の最後って呆気ないものなんだな、と思った程度だ。
銃で撃たれて俺は死んだ。
別におかしいわけじゃないとは思う。若干現実離れしているとは思うけど。まあ、ありえないわけじゃあない。
銃で撃たれて俺は死んだ。そして気づいたら神の前にいた。
……これはアウトだろう。どう考えても現実離れしすぎている。創作小説のテンプレとも呼ぶべき以外この先の展開は考えられない。
『回想終わったー?』
「あ、はい。大丈夫です」
ぼんやりとしている間に整理がついた。俺はこれからどうなるのだろうか。
『そこはテンプレに倣おうかなって。まあつまるところ、「異世界行ってみんか?」って感じ』
「……はあ」
『……君、ずいぶんテンションが低いね。何で僕様のところの転生者はみんなこんな感じなんだろう? ちょっとははしゃいでくれないと楽しみがないんだけどなあ~』
そんなことを言われても。享年七十八歳ともなればテンションを上げろ、というほうが無茶な話だ。もうとっくに老成してしまっている。
『ふ~ん……、だったらそんな君には刺激のある日常をプレゼントしてあげるよ』
「……できれば文明の利器があるところと、死亡フラグが少ないところにしてほしいんですが」
まあいくら文明が栄えているとはいっても、科学と魔術の世界とかに飛ばされるのは嫌だなあ……と考えていると、目の前の神がニヤリと笑って言った。
『大丈夫。普通に生活している分には少ない世界だから。いくつか《プレゼント》も用意してあるしね。君の行く世界は――――』
……その言葉に多大な不安を覚えた自分は正しいはずだ。
「おお、
「んあ? ……ああ、まっつんか」
「その呼び方はやめんか」
眠気覚ましにコーヒーを買おうと自販機まで来ると同期の松本に出会った。……にしてもコイツ、
「お前……、老けたな」
「……当たり前だろうが」
何を言ってるんだコイツ、という目で見られてしまった。いやだってさ、なんか口の髭伸ばしてんだもん。数年前はそんなんじゃなかっただろ? ……あれ? 最後に会ったのって何時だったっけ?
「松本管理官、こちらは?」
「おおそうか、話してなかったか。儂の同期の杜雨
「どうもー、まっつんの同期の杜雨でーす。よろしく」
「おお、これは失礼。警視庁捜査一課、目暮十三です。にしても管理官と同期とは……、ああ、失礼」
言わなくても分かるよ。俺の見た目まだ三十代前半にしか見えないもんね。絶対同期に会うと驚かれるよ。「この裏切り者!」って叫ばれる。別に若作りしてるわけじゃないんだけどね。
「お前今何してるんだ?」
「俺? 俺は――」
「あー! 目暮警部だー!」
「あっ、松本管理官もいますよ!」
「うお、なんか事件か!?」
……突如として聞こえてきた声に邪魔されてしまった。というかこの声、まさか……。
「おお。子どもたちか」
「おう!」
「はい、今日は事情聴取です!」
「高木刑事に会いに来たの」
……会ってしまった。今まで、話には聞いていたし話を知ってもいた。あの、彼らに。
「あれ? お兄さん誰?」
「本当だ! 知らない人がいますよ!」
「お? 兄ちゃん誰だ?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。はい、当然聞かれますよね。にしても兄ちゃんか……。こいつらの目にも俺は「お兄ちゃん」に見えるんだな。
「おお、この方は――」
「初めまして、杜雨帝督です。よろしくね、えーと……」
「吉田歩美です!」
「円谷光彦といいます!」
「小嶋元太だ!」
「「「少年探偵団です!」」」
「そう、よろしく。元気がいいね。……後ろの子たちは?」
そこでようやく俺たちを傍観していた三人に目をやる。世界的に有名な赤い帽子をかぶった有名キャラクターみたいな鼻とひげを生やしたハゲたお爺さんと、その両隣にいる、
眼鏡をかけた少年と、大人びている少女。
「おお、これはご丁寧に。阿笠博士です」
「江戸川コナンです」
「……灰原、哀」
阿笠博士の背中に隠れて、哀ちゃんはかろうじて自分の名前を絞り出した。瞳孔を開いて動悸も激しい、筋肉も緊張している……完璧に怯えられてるな、こりゃ。
コナンくんはそんな彼女の行動を見て庇うようにしてこちらを睨みつけてくる。……いいね、その反抗的な目。
「あはは、怖がらせちゃったかな?」
「これ、哀くん」
「こら、杜雨、何をしてるんだ」
まっつんに呼ばれたのを機に戻る。未だに強い視線を感じるが、まあしょうがないだろう。
「お兄さんも刑事さんなの?」
「あはは、まあ近いっちゃあ近いけど、俺は刑事じゃなよ」
「? じゃあ何してんだ?」
大人には敬語を使おうね、元太くん。
「俺は科警研で働いてるんだ」
「「かけいけん?」」
「科警研!?」
おや、知識量が豊富そうな光彦君は知っているようだ。うん、物知りすぎるような気がしないでもないけどね。
「科警研って?」
「科学警察研究所の略称です。日本の官公庁の一つで、国家公安委員会の特別の機関である警察庁の附属機関ですよ!」
「特別!?」
「兄ちゃんスゲー!」
「ははは、ありがとう」
@wik並みの解説をありがとうございます。凄いね、光彦くん。俺でもそこまで説明できないよ。
「よく知ってるね。俺はそこの副所長をしてるんだ」
「副所長!?」
「副所長って?」
「科警研で二番目に偉い人のことです!」
「ええ、兄ちゃん二番目に特別なのか!?」
「まあね」
若干ニュアンスが違う気がするけど訂正する必要性を感じない。面倒くさいし。特にこの子達疲れる。子どもの中でも疲れるよ。まったく、親は何を教えているんだ。事件に首を突っ込む子供なんて危なっかしいったらありゃしないんだから。
「お兄さん若いのに凄いね。まだ三十代くらいでしょ?」
ここでコナンくんですか。大人に年を聞くのはタブーだよ、男性女性問わず。……にしても子供っぽさ含めても怪しいことこの上ないな。無理やり感が半端じゃない。若干の警戒心が見えるのもマイナスポイントだ。初対面の人間にいい印象を与えないぞ? ……ちょっと試してみるか。
「お兄さんかー、ねえ、君たち。俺、いくつくらいに見える? 当ててみてくれよ、少年探偵団諸君? プラスマイナス三歳の範囲内だったらご褒美を上げるよ」
「本当か!?」
「「よーし!」」
うん、子どもは素直でよろしい、よろしい。実に扱いやすいね。おじさんは将来が心配だよ。
「(見た目は二十代後半から三十代前半という感じですね)」
「(実際はもっと年上なのかな?)」
「(もしかして、博士と同い年かもしれないぜ)」
……この世界の内緒話は声が大きいだろう。普通に聞こえる。
おや? コナンくんも顎に手を当てて考えているらしい。まさか三十代後半とかやめてくれよ、ヒント自体はもう出てるんだから。
「決めました! お兄さんは――」
「五十代半ば。大体五十三から五十六ってとこかな」
光彦君の答えを遮ってコナン君が回答する。おいおい、友達なくすぞ? ……まあでも、褒めてやろう。
「……ずいぶん年上にいったね。どうしてだい?」
「だってお兄さん、僕たちが来る前に目暮警部たちと話してたでしょ。それも親しげに」
第一ヒント、「目暮警部と松本管理官と親しげに話している」。うん、さすがに洞察力は半端じゃない。
「次に目暮警部がお兄さんを紹介するとき、『この方は』って言ったでしょ? 『この方』という尊敬語を使うのは自分よりも身分や年齢が上の人に対して。つまりお兄さんは、目暮警部よりも年上、ってことだよね」
そう。第二ヒントは「目暮十三の証言」だ。たった五文字を聞きのがす者に探偵の資格はない。
「警部より年上なんて松本警視くらいしかいない、にもかかわらず警部は尊敬語を使った。――つまりお兄さんも、松本管理官と同い年くらいってことだ」
「……フフフ、あはははは! 凄いね、ボウヤ。大正解だよ! 改めまして、杜雨帝督五十六歳、科学警察研究所の副所長をしています。よろしくね」
「「「えーー!?」」」
おお、さすがにみんな驚いてるね。哀ちゃんの驚愕顔とかレアだ。よし、保存しよう。
……にしてもさすが主人公ってことか? 油断はできないな。
えーと、#969#6261、っと。本当に「七つの子」って覚えやすいわ。メアド登録の必要性ゼロだしね。……まあスマホは全く音にならないんだけど。
――プルルルル、ピッ
『あら、貴方から電話だなんて珍しいじゃない。何かあったの?』
「あーうん、えっとね……
『! ……へえ、やっと』
はい、やっとです。転生して五十六年、ようやく主人公勢に会いました。これいくらなんでも遅すぎない? いくら好き好んで会いたくない連中って言ってもさ。
『バーボンでもとっくに会ってるっていうのに遅すぎるんじゃなくて?』
「いやあ、俺の職場はあの子たちと一切関わりがないからねえ。警視庁とかならまだ関わりがあるだろうけど」
『そんなところにいたらすぐに気づかれたんじゃない? シェリーに』
「ああ、そうそう。そのことで電話したんだ」
『……どういうこと?』
声が硬くなった相手に苦笑して、違う違うと否定する。
「俺でも怪しまれたんだ。瞳孔が三十二パーセントも開いてたし動悸も平常のおよそ二倍速で動いてた。筋肉も緊張しっぱなしだったしさ。たぶん気づかれたね、ありゃ」
『……そういうところは変わってないわね』
「みたい」
たぶん
「あーあ、俺今の職場気に入ってたのに」
『キールはもう退職したわよ? あなたもそろそろ時期ってことなんじゃない?』
「ああうん。それは知ってる」
原作知識で、が付くけども。いや転生して五十幾年たつけどさ、原作知識が一向に抜けないのよ。にしても時期、かあ……。
「せっかく副所長にまでなったのに」
『……何年副所長やってるのよ。まあでも、辞めたくなかったらそれでもいいんじゃない? 下手すると消されるだろうけど』
「それは嫌だなあ。……でもそういやキールは目をつけられたその日に事故ったんだっけか」
『そうね』
だったら早いとこ雲隠れするのが手かなあ。幸い変装術は習ったし、逃げるくらいなら何とかなるだろう。……発信機と盗聴器には気を付けないと。
「とりあえず今週中には行方くらませるから。落ち着いたら連絡するわ」
『了解。……それと』
「ん?」
何だ? 何か用なのか?
『資料送るから、その事件調べといてくれない?』
「わかった。証拠はいるか?」
『ええ。その方が吐かせやすいから』
「ん。了解」
電話を切りつつノーパソの電源を入れる。この世界の科学技術は半端ないよな。俺初めてソーラー充電できるノートパソコン見たわ。……今なら向こうにもあるのかな?
「お、これか」
なになに……。
要約するとこんな感じだ。
組織に潜入していたある男性(仮にXとしよう)を泳がせ、何のデータを入手しているのかを捕捉。ようやく組織上層部のデータだと分かりXを始末しようとしたがすでにデータをUSBにコピーしていた。しかもそのXを始末しようとした矢先に誰かに殺されてしまった。その誰か(仮にYとする)はXを別件で追っていて、YはXのもつ機密データが欲しかった。そのためにXを殺し、USBを持ち去った、と……。
「……なんとまあ」
映画編に似ているような気がしないでもないが、「漆黒の
一度目を閉じて
「《
発動すると、途端に脳内に流れ込んでくる膨大な量の映像や文字情報。それを流しながら犯人の現在地を知る。
転生の際に神からもらったチートの一つがこれ、《
▼ 事件 が 起きた !
↓
▼ 《
↓
▼ 「犯人 は あなた だ !」
↓
▼ 事件 は 解決 した !
という感じだ。……どちらかというと「探偵が要らなくなるスキル」のような気がするが。このおかげで未解決事件の証拠・犯人・動機をそろえて次々と提出、事件が解決したことで出世。わずか二十代後半にして科警研副所長までになったのだから、ありがたいっちゃあありがたい。
だが思う。
このスキルがあれば
超事件吸引体質人間である彼は曲がりなりにもこの世界の主人公である。いくらパラレルワールドとはいえ、
原作知識がなぜか一向になくならないので細部まで鮮明に思い出せることができる。事件が起こる場所、証拠、そして犯人。防ごうと思えば事前に防ぐことはできるだろう。
でも俺はしなかった。なぜなら面倒くさいから。
そもそも「工藤新一」を「江戸川コナン」にしなければ話は始まらないのだが、この世界は死亡フラグにあふれている。探偵といえども例外ではない。むしろ自分から事件に巻き込まれに行く彼――正確には彼がいるから事件が起こるのだろうが――は、事実何度も危ない目にあっている。
なぜそんな第一級死亡フラグ建築士にならなきゃいけない? 近づかなくちゃいけないんだ。
断固として拒否! 健康第一!
そこでもう一つのチート、《
まあそんなすごい能力にデメリットがないわけもないんだが。
《
……幸か不幸か、この能力のおかげで俺は表でも裏でも重宝されている。能力自体をバラしたことはないが、「ちょっとヤバい奴」という印象だ。
犯人と証拠、それと現在の位置情報と行先を詳細にして一斉メール。たぶん一番近いのはジンとウォッカの二人だから彼らが行くことになるだろうけど。
この世界には死亡フラグがあふれてる。常に気を配っておかないと、些細な理由で殺されかねないのだ。いくら能力があるとはいえども結局は自分で自分の身は守らないといけない。
転生してすぐにここが週刊少年サンデーで連載していた「名探偵コナン」の世界だと気付いた。「米花町」に「帝丹小学校」だ。ベイカーストリートの日本語化と探偵のアナグラム、気づかないほうがおかしい。
理解してからは必死に体を鍛えるようにした。訓練が面倒くさい? 死ぬのとどっちがマシかだなんて聞かれるまでもないだろう。せっかく転生したのにまた死ぬの? 嫌だよそんなの。
幸いというか
変装術を学んで黒羽盗一に教えたり工藤夫妻とお茶したり、ちょこちょこ原作キャラにも絡んで生活していくうちに。
『メスカルか』
「あ、ジンー? 何ー?」
『終わった』
「……了解。データありったけ送って」
なぜか原作で言うラスボス、「黒の組織」のメンバー、しかも幹部になっちゃっているというね。なんでなんだろう。何を間違ったんだ? ラスボスなんて絶対主人公に倒されるじゃん、俺嫌だよ。
まあ取りあえずは退職願出してー、次の副所長にはアイツ薦めとくかーなんて考えているうちに返信が来た。あ、ベルモットじゃん。
《内容 悪いんだけどもうしばらくそこにいて探ってみてくれない? バーボンの正体が見破られている今、貴方が鍵なの》
「……はっ!?」
ちょっと待って。何それ、俺囮役? マジで?
拝啓神様、なんで俺をこの世界に転生させやがったんですか。恨むぞ。
めだ解説にしてるけどスキルではなく特殊能力。中二的名称は主人公がつけた。この世界に転生するならこれくらいのチートがないと生きていけない気がする。
迷ったけど黒の組織のメンバーにしました。産地が決まってるのが「テキーラ」、それ以外が「メスカル」。
超特殊能力持ちの安楽椅子探偵って面白くないですかね?
スペック
・
由来は「モリアーティ教授」より。また名前の由来は「とある」シリーズより。科学警察研究所副所長。五十六歳。既婚者。
小田切警視・松本管理官たちと同期であるが、外見年齢は変装なしにもかかわらず三十代前半。
神に転生させられた転生者。望んで「名探偵コナン」の世界に転生したわけではない(当たり前)。原作知識はFILE.895まで。
変装術や変声術は黒羽盗一に教えるほど。得意な武器は曲弦糸。コードネームは「メスカル」。
・
発動させると被害者が死ぬ数分前から発見されるまでの映像、および証拠の場所や犯人の逃走経路、現在地などのあらゆる情報が一気の脳裏を駆け巡る。探偵要らずの超チート。発動条件は事件現場(遺体発見場所)を見て”念じる”だけ。殺人事件のみならずスリや強盗・詐欺などにも応用可能な万能スキル……だが主人公的には「これなんて中二?」
・
……という妄想が昔浮かんだ。詰め込みすぎなので却下、お蔵入りしたネタ。浮かんだ当初は帝丹高校の生徒会長だったし黒の組織のメンバーでもなかったけど。