東方幻操録   作:タートルザック

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まさか半年かかるとは思わなかった。


人里

ファムは森の中を伸びをしながら歩いていた。

 

「んー、なんか妖怪が襲いかかってくることもないし、暇だなぁ。こんな無防備に歩いてるんだから一体くらい襲いかかってきてもいいのに」

 

その時、上から何かが目の前に落っこちてきた。その正体は赤いリボンを付けた小さな女の子だった。

上から落ちてきたということは、妖怪だろう、てかなんで上から落ちてきたんだ?と思っていると、その女の子がムクリと立ち上がり、こちらを向いた。そして…

 

 

 

「お腹すいたのだ〜」

 

そう言ってまた倒れた。

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファムは森の中にいた猪を狩り、焼いた猪肉を倒れている女の子の前に差し出した。

香ばしい肉の匂いに反応したのか、ガバッと起き上がってそのままの勢いで肉に齧り付いた。危うく腕が巻き込まれそうだったが、ギリギリ肉を手放したおかげで避けれた。

 

女の子が肉を食べ終えると、こちらを向いてニコッと笑った。

 

「お肉くれてありがとう!私はルーミアなのだー貴方は?」

 

「僕はファムです。つい先程ここ幻想郷に来たばかりで、今は人里に向かって歩いていたところです」

 

「そーなのかー。それなら、私が案内してあげる!ついてきてー!」

 

ルーミアはそう言うと、タタタッと走りだしたので、それに着いて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーミアの後を着いて行くと、村のような場所に着いた。入口らし場所には人が1人立っている。

 

「ここが人里だよ」

 

村の入口に立っていた人がこっちに気がついたのか近づいてくる。

 

「おや、ルーミアちゃん、そこの人は?」

 

「さっき会ったの。お腹空かした私にお肉くれたからいい人だよ」

 

「そうなんだ、まぁ一応説明しとくと、ここは人里。人が住んでいる場所さ。人に害を加えないなら妖怪でも入ることを許されている。君は人に害を加えないだろうから、進んでもいいぞ」

 

その人はにこやかに笑い、定位置に戻った。

 

「ファム、中に行こ」

 

ルーミアに手を取られ、人里の中へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中も木造建築しかなく、昔を思い出す風景だった。幻想郷は外の世界とは違って、空気がおいしいなと思いながらルーミアに引っ張られていると、前から青のメッシュが入った女性がこちらを見ていた。

 

「おや、ルーミアじゃないか。その人は新しいお友達かな?」

 

「あ、けーね先生!そうだよ!」

 

ルーミアは手を繋いだままもう片方の手でけーね先生に手を振った。

けーね先生はにこやかに笑いながらこちらに歩み寄った。

 

「私はこの人里にある寺子屋で教師をしている上白沢 慧音という者だ、よろしく。君は?」

 

「僕はファムです。先程幻想郷に来たばかりで、ルーミアさんとはさっき森で出会いました」

 

食べ物くれたのだー、と横からルーミアの嬉しそうな声が聞こえた。

それを見て慧音はさらに微笑ましそうに笑った。

これから幻想郷に住むなら人里を案内するから着いてきてと言われ、着いていくことにした。ルーミアとは手を繋いだまんまだ。

 

八百屋や食堂、服屋などを教えて貰ったが、慧音はあることに気づき、立ち止まった。

 

「そういえば、ファムはこれからどこで暮らすんだ?お金は持っているのか?」

 

「えっと…暫くは野宿ですね。お金は後で働いて稼ごうかと」

 

「なるほど…なぁファム、お前さえよかったら、暫くは私のところで住み込みで働かないか、実は今ちょっと資料まとめの人手が足りなくてさ」

 

ファムは驚いたが、断る道理がないのでその提案を受けることにした。

これからよろしくな、と慧音と握手を交わし、慧音の奢りで昼飯を食べることになった。申し訳なくなったが、遠慮するなと言われた。もちろんルーミアも着いてきている。

 

「いらっしゃいませ、ご注文は如何なさいましょうか」

 

「私は天蕎麦で、ルーミアは?」

 

「私も同じの!」

 

「じゃあ僕も同じのをお願いします」

 

店員さんは注文を聞くと、そそくさも厨房へと戻って行った。注文が来るまでの間、慧音から村の話を聞こうとしたその時____

 

 

 

「泥棒ーー!」

 

 

 

 

____と外から聞こえた。外に出て見てみると、そこには2mはあるであろう大きな妖怪が盗んだであろう物を持ってこちらに向かって走っていた。慧音がその妖怪の前に出ようとしてたので、慧音を止めて、ファムが前に出た。

 

「邪魔だ、どけどけー!」

 

ファムはそこから動こうとはせず、その場で指を鳴らした。すると、地面が浮き上がり、壁が出来た。

泥棒はその壁を壊すために、力いっぱい踏み込み、壁に向かって飛ぶように突進した。

 

 

 

 

 

 

が、突進は不発におわった。何故なら壁は壊れることなく、そこに壁が無いかのように通り抜けてしまったのだから。予想だにしないことに泥棒はコケてしまった。ファムはコケた泥棒を取り押さえた。泥棒は振り払おうとしたが、振り払うことは出来ずに捕まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂に戻ったファムは英雄みたいに讃えられた。どうやら、泥棒常習犯で、捕まえるのに苦戦していた奴らしい。

席に戻ると、慧音とルーミアが拍手で迎えてくれた。

 

「すごいのだー!」

 

「すごいな、あまりにも鮮やかな確保だった。だが、1つ疑問があるんだが、あいつは何も無いところに向かって突進したように見えたが、何をしたんだ?」

 

ファムは暫く悩むふりをしたが、頷いて慧音を見た。

 

「それは僕の能力、幻を操る程度の能力であいつの前に壁の幻を作ったんだ。だからあいつはその壁を壊すために突進をしたってわけ」

 

「なるほどな、まさか君も能力持ちだとはね」

 

「『は』ってことは、慧音も?」

 

「あぁ、私は歴史を食べる程度の能力、まぁ簡単に言うと出来事を無かったことにする能力だ。無かったことにすると言ってもその歴史は消滅せずに、隠されるだけだけどな」

 

「私は闇を操る程度の能力なのだー」

 

その後、天蕎麦が届いたので、3人とも天蕎麦を食べ、寺子屋へと向かった。


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