宗谷ましろのブルーマーメイド勤務録   作:鉄玉

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続きとか特に考えずに一話目を投稿してましたがどんな話にするかの構想がねれたのでペースは遅いかもしれないけど投稿続けれそうです。
この先も不定期ですけど二週間に一話くらいは投稿できればいいなと思ってます。


居酒屋船はれかぜ

仕事が長引いて一時間ほど遅れて飲み会の会場である居酒屋船「はれかぜ」に着くと他のメンバーは既に席について思い思いに楽しんでいた。

 

「すまない遅れた」

 

「あ、副長お疲れー。ビールでいいよね?」

 

西崎さんが尋ねた。

 

「もう副長では無いんだけどな」

 

未だに私のことを副長呼びする元晴風メンバーは多い。私も気を抜くと岬さんの事を艦長と言いそうになることもあるしその気持ちがわからな訳じゃないけど副長と言われると取り敢えず訂正するようにしていた。

 

「あはは、ごめんごめん」

 

「まぁ今はプライベートだからいいが職場では間違えるなよ」

 

「シロちゃんせっかくの飲み会に仕事の話はなしですよ」

 

「別にこれくらいいいだろう」

 

納沙さんの注意に思わずそう言った。

 

「ダメですよ!飲み会で少しでも職場の話が出たらそのままどんどん話しが広がって最後は上司の愚痴とかみたいな全く楽しくない話題になってお酒がまずくなりますよ!」

 

何やら実体験のように言っているが納沙さんは今年大学を卒業したばかりで私が納沙さんにとって初めての上司のばすだ。

 

「…という事は納沙さんも上司である私に何か言いたいことがあるという事か」

 

「えっ!?そんなのないですよ!」

 

「お、いいぞ言っちゃえ言っちゃえ!」

 

西崎さんが煽った。

 

「本当にないですよ〜」

 

泣きそうになりながら納沙さんが否定するのを見てもっと揶揄おうと口を開こうとするとタイミング悪く(納沙さんにとってはタイミング良く)私の分のビールとお通しが運ばれてきた。

 

「ビールとお通し持ってきましたよ」

 

「ああ、ありがとう」

 

「晴風カレーはいつ運んだらいいかな?」

 

「カレー!」

 

カレーという言葉に敏感に反応した立石さんが声を上げた。

 

「立石さんが待ちきれないみたいだからもう持ってきてくれ」

 

「はーい。すぐに運んできますね」

 

そう返事をすると彼女はパタパタと小走りに厨房に向かって行った。

 

「そういえばみんなは今どこの部署にいるの?私は今年から部署が変わって装備技術部で新型魚雷の開発やってるんだけど」

 

ふと思い出したかのように西崎さんが尋ねてきた。

 

「私は情報調査室第一課ですね。ちなみにシロちゃんの部下です」

 

西崎さんの問いにまず納沙さんが答えた。

 

「私は去年と変わらずみくらの操舵手をやってます」

 

次に答えたのは知床さんだ。意外と高校時代と同じことをしている人が少ない中、知床さんは卒業以来順当に航海科に配属され操舵手をしていた。

 

太平洋即応機動部隊(Pacific Rapid Deployment Team)の第三小隊」

 

「えぇ!タマあそこに配属されたの!?すごいじゃん!」

 

太平洋即応機動部隊(Pacific Rapid Deployment Team)は日本ブルーマーメイドが保有する対テロなどを専門とする特殊部隊だ。一小隊あたり戦闘員12人とオペレーター2人の計14人を定員としていて第一小隊から第七小隊まで存在している。ブルーマーメイドの中でも憧れの対象となっている部隊だ。

 

「第三小隊だからそんなに凄くない」

 

少し落ち込んだように立石さんが答えた。

 

「いや十分だって。私なんか試験受けても絶対に受からない自信あるから自信持ちなよ」

 

「そうだな。ブルーマーメイドに所属する人間の大多数がなることができないんだ。誇った方がいい」

 

確かに横須賀に司令部を置く第三小隊は他の部隊と比べると実戦経験に乏しく他の小隊よりも下に見られがちだ。そもそもが日本ブルーマーメイドのお膝元の関東圏が担当区域でありそうそう出動する機会などない。

そのためこの小隊は実戦部隊というより即応予備としての側面が強くテロが起きた際に担当区域の部隊では対処しきれない場合に部隊を増強するためによく使われる。しかし基本的にそんな事態が起こる事は稀であり結果としてそれが実戦経験の少ない事に繋がっていた。

逆に言えば第三小隊の実戦経験が少ない事は日本が平和であると考える事もできるわけだが所属している本人からすれば複雑な気持ちになるだろう。

 

「お待たせしましたー!晴風カレーでーす」

 

「あっ!みかんちゃん聞いてくださいよ!タマちゃんが太平洋即応機動部隊(Pacific Rapid Deployment Team)に配属されたんですよ!」

 

晴風カレーを運んできた伊良子さんに納沙さんが報告した。

 

「へぇーどの小隊に配属されたの?」

 

「第三小隊」

 

伊良子さんの質問に立石さんが少し恥ずかしそうに答えた。

 

「二、三回合同訓練をした事はあるけどあんまり知ってる人はいないなぁ」

 

「みかんちゃんは第一小隊でしたよね」

 

高校の時からは想像もつかない事だったが伊良子さんは海洋高校卒業後すぐにブルーマーメイドに入るとその翌年にスカウトされてこの部隊に所属していた。当時の晴風でも武闘派だった野間さんや万里小路さん辺りならともかくどちらかと言うと大人しい方の伊良子さんが太平洋即応機動部隊(Pacific Rapid Deployment Team PRDT)に配属されたと聞いた時はみんなとても驚いていた。

そもそも主計科の人間がこの部隊に配属されること自体が初めてでブルーマーメイドでもすごく噂になっていたらしい。私たちの世代の中では岬さん、知名二監と並んでブルーマーメイド内で有名だった。

 

「けど勿体無いよね。一正への昇進と副隊長への任官を蹴って退官したんでしょ。私なら受けちゃいそうだけどなぁ」

 

「うい」

 

西崎さんの言葉に短く立石さんが同意する。

 

「けどカッコいいですよね」

 

「わたしも迷ったんだけどね。ブルマーとして海を守るのも好きだけどそれ以上に私が作った料理をいろんな人に食べて笑顔になってもらう方が好きだなって思って」

 

「伊良子さんらしいな」

 

「ふふ、ありがとう。昨日岬さんにも言われたよ」

 

「えっ!艦長と会ったの!?」

 

「えっ、うん。そんなに驚くことかな」

 

驚きの声を上げた西崎さんに伊良子さんが不思議そうに尋ねた。

 

「だって艦長、今の役職についてからなんか私達と距離を置いてる感じがするんだよね。今日だって来なかったし…」

 

「そうですよね。すごく話しかけにくくなりましたよね」

 

「うい」

 

「き、今日の飲み会誘うのもすっごく緊張したよ」

 

西崎さんの言葉にみんな口々に同意の声を上げた。

 

「う〜ん。わたしは別にそんなことないと思うけどなぁ。昨日だって普通に話したよ」

 

「私が飲み会誘った時なんか忙しいの一言で世間話も何もしなかったよ。昔の艦長なら近況くらい聞いてきそうなのに…」

 

少し悲しそうに知床さんが呟いた。

 

「…あっ!けど昨日はちょっと怖かったなぁ」

 

「みかんちゃんが怖がるなんて何があったんですか?」

 

「知名二監一緒に来てたんだけどね、厨房に聞こえるくらいの大声で言い争いをしてて慌てて止めに入ったんだけどその時は二人ともすごい怖かったよ。人を殺しそうな目つきしてたもん」

 

心底怖かったと言わんばかりに体を抱きしめた。

 

「あの二人がか?そんな事があったら少しくらい噂になりそうだけど聞いてないな」

 

はれかぜの客はブルーマーメイドが多くブルーマーメイドでは有名なあの二人が喧嘩をしたとなれば納沙さんあたりが耳にしてそうだがそんな話は聞いていなかった。

 

「奥の個室だし誰も見てないからじゃないかな」

 

「そういうことか。けどあまりそういう事は人に話さない方がいい」

 

ブルーマーメイド内でも力のある二人が不仲なんて噂が流れるとこれ幸いとばかりに動き出しそうな連中はいくらでもいるのだから。

 

「ちゃんと相手は選んで話してるから大丈夫だよ」

 

「とてもそうは見えないが…。納沙さんとか人に言いそうじゃないか?」

 

納沙さんに視線を向けると言った。

 

「そんなことないですよ〜」

 

「晴風クラスが解散になるって噂が出た時、機関科の人達に噂を話したのは納沙さんだったと思うんだが…」

 

あの時は機関科の人達を責めていたが、後になって考えてみると不確かな噂話を話した納沙さんにこそ責任があったように思える。

 

「私だって成長しましたからね。そうむやみやたらと人に話したりしませんよ」

 

何故か誇らしげな様子だが正直あまり信用できない。

 

「それで、一体何が原因で喧嘩してたんですか?」

 

「そこまでは流石に分からなかなぁ」

 

困ったような顔で答えた。

 

「そもそも納沙さんはそれを知ってどうするんだ」

 

「他の晴風メンバーと会った時のネタにしようかと思いまして」

 

さっきの言葉はどこに行ったのか、まるで懲りてない様子の納沙さんに思わずため息が出た。

 

「さっきむやみやたらと人に話さないと言ってなかったか?」

 

「晴風の仲間だから大丈夫ですよ」

 

その晴風の仲間に噂好きが多くて信用できないと言っているのだがどうやら伝わっていなかったみたいだ。

 

「だからその晴風の仲間に話して昔大失敗したからやめておけって言ってるんだ」

 

「ええ!シロちゃん仲間を信じられないんですか!?」

 

「いや別にそうじゃないけど」

 

ただ無闇矢鱈と人に話しかねないという点では信用してないだけだ。

 

「じゃあなんだっていうんですか〜」

 

そう言ってガシッとと力強く肩を組んできた。

肩を組まれたことによりだだよってきたアルコール臭で気付いたがどうやら納沙さんはかなり酔っているようだった。

 

「ココちゃん副長も悪気があったわけじゃないから…。とりあえずこれでも飲んで落ち着いて」

 

そう言って知床さんが手渡したのはグラスに並々と注がれたビールだった。

 

「いや待て、それは逆効果だろ!」

 

焦る私をよそに西崎さんと立石さんはこちらを見ながら笑っている。知床さんも私からは顔が見えないが肩が震えていて明らかに笑いを堪えているように見えた。

 

「お前ら…!!」

 

「ありがとうございますリンちゃん」

 

そういうと納沙さんはグラスを受け取り中身を一気に飲み干した。

 

「プハァ。やっぱり仕事終わりはこれに限りますねぇ。シロちゃんもそう思いますよね」

 

「え、ああ、うん」

 

「みかんちゃんビール二つ持ってきてくださ〜い」

 

これをきいて私は自分が返答を間違えたことを悟った。納沙さんは酔っ払うと誰か一人に絡んで無理矢理酒を飲ませるという悪癖がある。唯一の救いは自分も同じだけの量を飲むから先に潰してしまえばどうという事はないと言う事だろう。だけど不幸な事に私はそんなに酒に強いわけじゃない。

 

「はーい。すぐに持ってくるけどほどほどにね」

 

結論から言うとその日は一時間遅れてついたことが功を奏し納沙さんが先に酔い潰れて私が醜態をさらすようなことはなかった。

しかし私をハメた三人にはいつか相応のお礼をしてやろうと思う。




そのうちみかんちゃんに何があったのかとか詳しい話を書きたいなと思ってます。
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