宗谷ましろのブルーマーメイド勤務録   作:鉄玉

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お久しぶりです。よ、四ヶ月ぶりくらいの投稿ですね。
とまぁ久しぶりに投稿する時のお約束を書きましたけど厳密には二年四ヶ月くらいですか? 待っていてくださった方お待たせしてしまい本当に申し訳ありません。今後はこの時間に毎週投稿をします。

詳しい言い訳に関しては後書きにて書かせてもらいます。興味があれば読んでいただければ幸いです。
では本編をどうぞ。


晴雪食堂にて

「初訓練お疲れ様。よかったらこれも食べて」

 

初訓練を終え食堂で夕食をとっている私の前にそんな声と共に差し出されたのは猫、と言うか五十六の模様が描かれたどら焼きだった。

 

「ありがとう。ちょうど甘いものを食べたいと思っていたんだ」

 

私は杵崎姉妹の姉、ほまれさんにお礼を言った。

 

「ふふふ、どういたしまして」

 

「ほまれさんの方こそ初めて主計長をして疲れてるんじゃないか?」

 

ほまれさんは海洋学校卒業後すぐにブルーマーメイドになった。前職がみやけの給養長だったはずだから主計長は初めてのはずだ。なれない仕事に疲れてないはずがないしなんなら主計長の仕事に調理は入っていない。多分私のためにわざわざ作ってくれたのだろう。

 

「そんな事ないよ。みんなやる事は分かっているからテキパキ動いてくれて私が指示することなんかほとんど無かったよ」

 

「そうか、それならいいんだが……あまり無理はするなよ」

 

「うん。宗谷さんもね」

 

そう言ってほまれさんが厨房に戻ろうと振り返ると食堂に入ってくる人物に気がつき声をかけた。

 

「あっ! クロちゃんお疲れ様」

 

「おつかれさま〜」

 

頭を微かに左右に揺らしながら入ってきた黒木さんが椅子に倒れ込むようにして座ると机に顔を突っ伏した。

 

「随分疲れてるみたいだけど大丈夫?」

 

「大丈夫じゃない」

 

思いの外憔悴している様子の黒木さんにほまれさんが事情を尋ねると恨みがましい声で言った。

 

「まさか機関長になって初めての訓練で機関室の火災で2人負傷する事になるなんて設定だと思わないじゃない」

 

艦の心臓である機関室のダメージコントロールは一番重要だから初めからかなりキツめの訓練内容にしていたが私の想定以上にキツかったみたいだ。

 

「機関室は艦を動かす上で最も重要な部分だから機関科の対応力を知っておきたかったんだ。次からはもう少し楽な訓練になると思うから安心してくれ」

 

罪悪感が湧いて思わずそう声をかけると黒木さんは伏せていた顔を勢いよく上げてまるでお化けでも見たかのような表情を浮かべた。

 

「む、宗谷さん! いつからそこに!?」

 

「いや、最初からここにいたんだが……気付いてなかったのか?」

 

「全然気付かなかったわ…」

 

「どうやら私の予想以上に訓練がキツかったみたいだな」

 

結果として機関科の力は知れたが今何かあればさっきの訓練ほどの力は出せないかも知れないな。

 

「そんな事ないわよ! まだまだ機関科には余力があるわ!!」

 

機関科自体に余力があるのはおそらく本当だろう。大学を卒業して数ヶ月しか経っていない黒木さんはほまれさん同様まだ機関長の下について機関長としての職責を学ぶ立場にある。なのにいきなり機関長という大役を任されたのだから疲れるのは当然だ。それもこれもブルーマーメイドが拡充されて人手が足りていないからだ。私だって本来なら一度海上勤務を経て艦長になるのが道理だというのにそれができていないから黒木さんの気持ちも少しはわかる。

 

「無理は禁物だ。無理をして実力以上の力を出そうとしてもミスに繋がるだけだからな」

 

「は、はい」

 

まぁ、黒木さんが不平を言う元気があるのならまだまだ余裕があると言う事だし今後もこれくらいの訓練を重ねていけば実際の哨戒任務や救助任務でも問題ないくらいの力を発揮できるだろう。

 

「そういえば機関助手は駿河さんだけど大丈夫だったか?」

 

学生時代のおっちょこちょい具合を思うとちゃんと機関科のNo.2が務まるのか不安になる。

 

「海洋大学に行かずすぐにブルーマメイドになっだおかげで私よりも経験が多いからか随分と頼もしくなっていたわ。むしろ私の方が学ぶ事が多いくらい」

 

「そうか、人はちゃんと成長するんだな」

 

「四年もブルマーをやっていて成長しないはずがないわよ」

 

「それもそうだな」

 

晴風を降りて四年も経つのに学生のままだとそれはそれで問題か。

 

「海洋大学に行かず海洋学校卒業後すぐにブルマーになった子は初めの一年、休む間もないくらいしごかれるみたいよ。だからか知らないけどあの頃はみんな連絡しても返信が返ってこなかったわ」

 

そうだったのか。私はそれほど筆まめではないから知らなかったがそう言えばあの頃はブルマー直行組とはあまり連絡を取らなかったし遊びに行ったりもしなかった。単に仕事が忙しいだけだと思っていたけどそうじゃなかったんだな。

 

「私達の間でも機関科の新人訓練は特にハードだって有名だったよ」

 

「そうなの? 機関科の子はみんな思い出したく無いとかで新人訓練について話してくれないのよ」

 

「機関科は機関室にほとんど缶詰状態で扱かれるんだよ。あの時期になると汗だくになった機関科員がへとへとの状態でご飯を食べにくるのが食堂の風物詩なの」

 

「嫌な風物詩もあったものだな」

 

あの蒸し暑い機関室に缶詰なんてただの拷問じゃないか。だけど新人が入ってくる時期に死人が出たり病室送りになったりした噂は聞かないし、多分その辺の加減は弁えているんだろう。

 

「主計科はどうだったんだ?」

 

「朝4時に起床して朝食の仕込みが始まって就寝は22時だったかな?

今も起床時間と就寝時間は変わらないけど、艦内の掃除とかは主計科の新人の役目だからそれがキツかったなぁ」

 

「私だと途中で根をあげそうだな」

 

主計科は他の科と比べて勤務体系が不定期だ。他の科だと交代要員を用意してサイクルを回すけど主計科、特に給養員は朝、昼、晩の三食に加え場合によっては夜食を用意するなど意外と面倒臭い。それに加えて艦内の清掃や時によっては他科の補助などその業務は多岐にわたる。

晴風に乗っていた頃も夜勤中に差し入れを持って来てくれたりと大変助かったけど一体いつ寝ているのかと不思議に思ったものだ。

 

私は海洋大学を卒業した上、配属先の情報部はデスクワークが中心な陸上勤務。海上勤務のようなキツイ訓練はない。強いて言うなら資料の場所を覚えるのを兼ねてやらされた資料室の整理がそれにあたるだろうか。

 

「大学でちゃんと勉強してるからそれが代わりになってるんじゃないかな」

 

それならいいんだが海洋学校を出て以来海上勤務は今回が初めてで不安しかない。あげればキリが無いがやはり一番は……

 

「船を指揮する感覚が鈍ってなければいいのだが……」

 

「宗谷さんはよく指揮できてたと思うよ」

 

「ブルマーでは先輩のほまれさんにそう言われると安心するな」

 

「ちょっと早くブルマーになっただけで同い年なんだから。それに海洋大学に行った分宗谷さんの方が知識とかは沢山あるよ」

 

冗談半分のつもりで言えばほまれさんは困ったような表情を浮かべてそう言った。少し意地悪をしすぎたかもしれない。

 

「まさか。私なんか艦長としてはまだまだ未熟だ」

 

「宗谷さんの考える艦長って岬艦長でしょう? あの人を基準に考えると知名艦長みたいな例外を除いてみんな未熟な艦長になるわ」

 

「岬艦長って無茶苦茶な事するけどその割に大きな被害もないし艦長としてはすごく優秀だったよね」

 

RATt事件の時は無茶苦茶やる人だと思ったけど結果的に私達は誰一人として欠ける事なくあの時間を乗り切る事ができた。

 

「優秀だけど独断が過ぎるわよ。もう少し下の意見も聞いて欲しかったわ」

 

「確かに反乱艦扱いされた頃は独断が酷かったように思うけど、岬さんはなんだかんだで私達の意見を聞いていたんじゃないか?」

 

「そうかしら。戦闘行動中とかは専門外の分野ならともかく、それ以外の艦の行動を決める意思決定に関しては割と独断が多かってように思うわ。みんながそれについて行ってたのは艦長にカリスマがあったからじゃないかしら」

 

黒木さんの話は正直あまりピンとこない。私が意思決定を担う者に近い立場だったからか最初はともかく最後はそれほど独断が酷いように思えなかった。

 

「別に艦長の独断が悪かったと言う訳じゃないのよ。猿島から撃たれた時、艦長の判断が早かったからほとんど被害なく離脱できたし寧ろいいことの方が多かったわ」

 

「意外だな。黒木さんはあまり艦長の事が好きじゃなさそうだったのに」

 

「入学したばかりの頃によくない態度を取ってたから心情的にちょっと気まずかったでだけで別に嫌いって訳じゃないわよ」

 

「そう言う事だったのか。他のみんなと比べて少し距離を置いているように見えたからてっきり好きじゃないのかと思っていた」

 

機関科は晴風の中ではある半ば独立したような立場だった。最近のブルーマーメイド風に言うなら派閥とでも言うのだろうか。

艦橋とは物理的に距離があり最初の頃にはまともに意思疎通をせぬままに振り回した事もあって精神的にも距離があった。それでも晴風が生き残れたのは機関長の柳原さん中心に機関員がまとまり柳原さんが艦長の指示に従ってくれたからだ。

今にして思えば柳原さんがその気になれば最低でも機関長以下六名と入学前から友人だったと言う伊良子さん達給養員三名との冷戦状態に陥っていても不思議じゃなかったと思う。そうしなかった柳原さんには感謝しかない。

 

「嫌いではないけどだけど個人的には岬艦長みたいな艦長よりもマロンみたいな人に艦長になってもらいたいわ。優秀じゃなくてもいいからトップダウンよりもボトムアップ型の艦長の方が、弱いところを見せてくれる艦長(ひと)の方が私は好きよ」

 

「岬艦長って滅多に弱いところ見せなかったよね」

 

「浦賀水道に侵入する武蔵を止める時と宗谷さんが新橋から無事に帰ってきた時と後はいつだったか雷が苦手ってのを公表した時くらいね」

 

言われてみれば岬さんは滅多に弱いところを見せなかった。比較的近い立場にあった私にさえそうなのだから他の人なら尚更だろう。

艦長としてはそれが理想だと思う。強い艦長。だけどそれは孤独と表裏一体なんだ。こう言われて改めてそれを認識した私はやはりまだまだ艦長としては未熟者なんだろう。

 

「宗谷さんは無理に岬艦長みたいな艦長を目指さなくてもいいと思うよ」

 

「あの頃の私達とは違う。ブルーマーメイドとして一人前とまではいかないかもしれないけどただの学生だった頃よりは間違いなく力になれるわ」

 

「ありがとう。私は海洋学校から海洋大学までずっと砲雷科だから他の科については門外漢だから専門家にそう言ってもらえると助かる」

 

私は人よりも勉強ができる自覚はあるけど天才ではない。自分の専門以外の分野で専門家に頼らずに艦長を務める事ができるとは口が裂けても言えない。まぁ、そんな事ができる艦長なんてそうそういないとは思うが。

 

「この(ふね)は上も下も横須賀出身者しかいないから気負わずに入れるのがいいとこだよね」

 

「そのせいでルナにはダメだしされまくったけどね。あの子本当に成長したわ」

 

「黒木さんにダメ出しするなんて昔とは逆だな」

 

「あの子抜けてはいるけど頭は悪く無いから。なんだかんだ入学したばかりで晴風の機関を操作できてたし機関に関する事だけなら優秀よ」

 

そう言えば初代晴風は高圧缶特有のトラブルに悩まされたけど無理な戦闘行動が原因で不具合が起こることはあっても機関科員が問題となってトラブルを起こした事は遅刻した時の一度きりだったな。もしかしたら晴風乗組員で一番優秀な人材が集まっていたのは機関科だったのかもしれない。

 

「なら明日以降の訓練もこの調子で行けそうだな」

 

少し意地悪してみると黒木さんは苦笑いを浮かべた。

 

「お、お手柔らかにお願いするわ」

 

その言葉に私とほまれさんは思わず笑い声を上げるのだった。




言い訳と決意表明のようなものとちょっとした宣伝と。

前話を出してすぐに記憶が確かなら六百字くらい(本作はだいたい一話が四千〜五千字)書いたんですけど納得できずに一度それを消して新しいのを書き直しました。
新しいのが七百字くらいかけた段階でなかなか進まずほんの数日前の時点で二千四百字くらいでした。こう言うほのぼのした会話が苦手なのとはいふりってキャラ数が多いからどうしても艦橋メンバー以外のキャラクターを書くとなると自分で読んでてなんか違うなとなったりして書き直したりしてて中々進みませんでした。
途中新しい作品を書き始めてこの作品は時々息抜きくらいで書いてたんですけどそっちが完結したのか去年の11月。新しいのを書くか、本作を進めるかダラダラと考えていたんですが最近このままじゃダメだな、多分この一話書くのにこのままだともう二、三年かかるなとふと我に帰りました。
他にも書きたいものは沢山ありますしオリジナル小説も書きたい。このままだとやりたい事全部やるまで数年かかるなと思って取り敢えずまずは思い一日に書く字数を決めようと思い立ちました。
最近の平均速度は一時間あたり千字。これはだいぶゆっくり書いた速度ですけど取り敢えず一日最低二千文字書こうと思います。昔ならともかく今ならなんとかなると思います。最終的には一日に一話、つまり四千から五千くらい書けるようになりたいですね。欲を言えば四、五時間で一万字くらい書けれるようになりたいですけどまぁそれは長期目標という事で。
他に三作品書いてますけど休みの日に大量に書けばなんとかなる量。ちなみに一作ははいふりなんでよろしければ読んでください。他は本作より以前から書いてたストライク・ウィッチーズと最近新しく書き始めた艦これ作品です。

さて長くなりましたが言い訳その他はこれで終了です。待っていてくださった方、長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。ご新規の方はこれからよろしくお願いいたします。
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