宗谷ましろのブルーマーメイド勤務録   作:鉄玉

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前回は予約投稿ミスって12時投稿に設定してしまっていました。


仲間

発砲音と同時に私を襲った衝撃は予想していたものとは違った。

痛いのは痛かったがそれは死に直結するようなものではなかった。

 

「な、なんだこれは……」

 

弾が当たった場所は真っ赤になっているが痛みはない。いや、あるにはあるがそれは弾が当たった衝撃によるもので弾が体を貫通したから起こるものではなかった。

そしてそれは私以外に撃たれていた知床さん、小笠原さんも同じだった。

二人とも戸惑った表情でこちらを見ていた。その顔や服には真っ赤な液体が付着している。

 

「テロリストなんて何をしてくるかわからないんだから固定観念に囚われちゃダメだよ」

 

そう言って女はサングラスを外して目出し帽を脱ぐとその下からはよく知った顔が現れた。

 

「い、伊良子さん!?」

 

「私だけじゃないよ」

 

伊良子さんの後ろにいた二人が目出し帽を脱ぐと現れたのは立石さんと野間さんだった。

 

「副長私の事ももうちょっと心配してよ」

 

足元で倒れていた西崎さんが立ち上がり非難してきたが正直それどころじゃない。

 

「一体いつから……」

 

「打ち合わせをしたのは荷物を積み込んだ時だよ」

 

「よくそんな短時間の打ち合わせでこんなに上手く演技ができたな」

 

その点は感心するが人の(ふね)でやっていいことじゃないだろう。

 

「ココちゃんの劇のおかげだね。私達何度も殺されてきたから」

 

「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ〜」

 

納沙さんが好きな仁義の無い映画風に作られた劇。それに何度も付き合わされた私達の演技力は並大抵のものじゃ無い。事実、今の西崎さんの死んだ演技にも騙されてしまった。

 

「そんな事より他の船員はどうなっているんだ。まさか私達と同じような対応をしたわけじゃないだろうな!?」

 

「出会ってすぐにペイント弾を撃って死亡又は戦闘不能判定でその場に待機してもらってるよ」

 

「まさかこれ演習だったんですか!?」

 

「そうだよ」

 

なんて事ないように伊良子さんが答え、艦橋メンバーの視線が私に集中した。これは私も共犯と思われているに違いない。

 

「わ、私は聞いてないぞ!」

 

艦長である私に伝えられていない。これは大きな問題だ。

もし私達の対応が早ければ上級司令部に報告が行き大事になっていてもおかしくはないからだ。

 

「岬さんに宗谷さんの危機管理能力を養うために伝えるなって言われてたんだ」

 

「岬さんが主犯なのか!?」

 

晴風艦長岬明乃であれば驚きはしないが、警備救難部長の岬明乃が許可したと言うのは正直にわかには信じ難い。

ブルーマーメイドになってからの岬さんはかつての破天荒さとは無縁の活動をしてきているからだ。

 

「そんな事よりみかんちゃんどうしてブルマーに戻ってるの!?」

 

小笠原さんの質問でようやく私もその考えに思い至った。さっきまで伊良子さんと連絡が取れない事を心配していたけどいざその当人が目の前に現れると安堵よりも驚きや戸惑いの方が大きい。いや、驚きはこの演習のせいかもしれないが。

 

「岬さんに頼まれたんだ」

 

「頼まれた?」

 

「元々晴雪にはPRDT を乗せる予定だったけど身内で固めた方が宗谷さんも安心するだろうって」

 

「店を持つ事は伊良子さんの夢じゃなかったのか? 私なんかのために……」

 

「正直、宗谷さんのためだけだったら引き受けなかったかな」

 

夢と私なら友人としては夢を優先してほしいが面と向かって言われると少し傷つく。

 

「岬さんが晴雪のみんなには私が必要だからって土下座しそうな勢いで頼んできたんだよ」

 

土下座という言葉にみんな驚きを隠せなかった。最近の岬さんは良くも悪くも立場に相応しい振る舞いをしている。

晴風時代はお願いという言葉を使う事も多かったが今は警備救難部部長の命令として伝えられる。当然ではあるが昔の岬さんを知っていると少しの寂しさを感じてしまうのは私のエゴなのだろうか。

 

「岬さんは海上治安維持法第十一条の発令で簡単に再任官させられたのに、それをしないでわざわざ開店前、お店に来てお願いしてきたんだよ。それに応えないのは友達として失格かなって思ったんだ」

 

岬さんが私のためを思って伊良子さんに再任官を依頼してくれたのは嬉しい。だけど同時に凄さ不満もある。

 

「……私はそんなに頼りないのだろうか?」

 

私はあの艦長の下で三年間も無茶振りに答えてきた。いくら艦長という職に就くのが初めてでもこの三ヶ月間上手くやれていたと思っていたのだが。

 

「頼りないわけじゃないと思うよ」

 

「頼りないと思っていないなら一体どうして岬さんはこんなにも私をを贔屓するような事をするんだ」

 

私の事を信用しているのであればわざわざ知り合いばかりで固めて私が指揮しやすいようにする必要はない。それだけでなくわざわざわ伊良子さんを現役復帰させてまで晴雪に配属したあたり私の実力を信じてないと言われているようなものだ。

 

「岬さんはこの先晴雪が荒波を乗り越えるのに私の、私達の力が必要だと思ったから岬さんは晴雪に私達を配属したんだよ」

 

「最近は海難事故や海賊の被害が増加しているのは事実だがだからと言って私だけがこんなにも手厚くサポートされるのは……」

 

ただでさえ真冬姉さんが安全監督室室長だから周りに変に気を回される事が多いのに岬さんにまでこんな事されると居心地が悪くなる。

 

「それは違うよ宗谷さん」

 

「一体なにが違うんだ。ただでさえ横須賀出身者で揃えていてともすれば学生時代の延長線みたいな晴雪に伊良子さん達まで乗り込んだらいよいよ学生時代と変わらないじゃないか!」

 

伊良子さんや納沙さん達に不満があるわけじゃない。あるとすればこの状況を作り出している岬さんに対してだ。あるいはこんな状況にせざるを得ないと思われている私自身に対する怒りなのだろうか。

 

「そうかもしれないね。だけど岬さんはそんな状況にしてでも宗谷さんに活躍してもらいたいんだと思うよ」

 

「活躍!? ブルーマーメイドが活躍すると言う事は海が荒れていると言う事じゃないか。あまりにも不謹慎じゃないか?」

 

私が警備救難部に移動になったのは海が荒れているからだ。私が活躍する必要がある事は認めるがそれを望む事は海の平和を守るブルーマーメイドとしてはあまりにも不謹慎だ。

 

「そうだね。だけど岬さんはそれを望んでいるんだよ」

 

その意味を考えろと。そう言う事なんだろうか。

 

「伊良子さんは岬さんがなにをしようとしているのか知っているのか?」

 

だからブルーマーメイドに復帰したのだろうか。でなければ店を閉めてまでブルーマーメイドに復帰しないだろう。それがたとえ岬さんの願いであり、友達を助ける為だとしても事情も知らされずに復帰する事はできないだろう。

 

「知らないよ」

 

「知らないのにどうして……」

 

どうしてそこまで艦長の為に動けるのか。その言葉を私は発することが出来なかった。

 

「何も知らないけど友達を助ける為に友達が頭を下げているんだよ。事情を知らずとも力にならないと」

 

事情を知らずとも友達の力になる。晴風乗員らしいセリフかもしれない。だけど事情を知らせずに力を借りると言うのは岬さんらしくない。かつてのあの人なら事情を全て説明した上で協力を仰いだはずだ。

 

「岬さんは一体なにをするつもりなんでしょうか?」

 

「詳細は岬さんと知名さんくらいしか知らないんじゃないかな。もしかしたらマロンちゃんも知ってるかもしれないけど確実に全部を知ってるのは二人だけだと思うよ」

 

「柳原さんも関係しているのか?」

 

「関係と言うより主犯格じゃないかなぁ。岬さん達が私のお店で会合を開いてた時、だいたいマロンちゃんもいたし」

 

「みかんちゃんそんなにお店を使われているのに本当になにも聞いていないの?」

 

「岬さんは私には何事もなく暮らして欲しかったみたいだからなにも聞いてないよ。本当は私が復帰する事自体が不本意だったみたいだしね」

 

西崎さんの質問に対する返答が本当なら岬さんの状況はかなり悪いのかもしれない。

 

「伊良子さんに協力を仰ぐ事が不本意だったのなら余程の緊急事態があったと言う事なんだろうか」

 

情報調査隊に居たからよくわかる。表には出てきていないが裏側では大きな動きがあると言う事は往々にしてよくある話だ。

 

「うーん、計画を前倒しするとかって言ってたからそれは違うと思うけど……」

 

「み、みかんちゃん、実は色々と知ってるんじゃ……」

 

「知床さんの指摘する通りだ。伊良子さん、この際だから知っている事を全部教えてはくれないか?」

 

「そうでもないよ。聞き耳を立ててはいたけど肝心なところはちゃんとぼかしてたからよくわからないよ」

 

肝心なところはぼかしているのに岬さん達が何かする事はかなり迂遠な方法で伝えられている。

 

「なんだか岬さんの手のひらの上で転がされている気がするな」

 

「どう言う事ですか?」

 

「伊良子さんが岬さん達が何かしようとしているのを知っている。これは岬さん達が意図的に伝えた物と見て間違いないだろう。本当に秘匿するつもりならもっと相応しい場所で話すはずだからな」

 

ブルーマーメイドの会議室でもいいし二人の執務室のいずれかでもいい。わざわざ外部で話す必要があるとは思えないしおそらく聞かせる事それ自体が目的だったのだろう。

 

「宗谷さんの考えは合ってると思うよ。岬さん達わざわざ私が配膳するタイミングに限って声を大きくして話してたから」

 

「確信犯じゃないか。一体あの人達はなにをしようとしているんだ」

 

伊良子さんを使うのは不本意だった。だと言うのに彼女に対して計画の一部を聞かせるような事をしていた。

はれかぜは元晴風乗組員の溜まり場になっているし、その目的は伊良子さんを通じて誰かに計画を伝える事だろうか。岬さんが側に置かずとも信頼できる人員となれば自慢じゃないが私くらいになる。だけど今の私がそれほど信頼されているのかどうか自信がない。

 

「多分この事を宗谷さんに伝えて欲しかったんだと思うよ」

 

「今の私を岬さんがそれほど信頼してくれているとは思えない」

 

「直接伝えずとも自分の考えを読んで適切な行動をしてくれると思ったかららこそこんな遠回しな伝え方をしたんだと思うよ。これは宗谷さんの事を信頼していないとできない事じゃないかな」

 

「そうだといいとだが……」

 

そもそも私に伝えようとしていたのかどうかもわからない。ブルーマーメイドになってから私よりも信頼できる人物に出会っていてもおかしくはない。むしろ二監で部長ともなればそんな人物の一人や二人いない方がおかしいのではないだろうか。

 

「自信を持って宗谷さん。艦長が一番信頼しているのは宗谷さんだよ」

 

「……知名二監よりもか?」

 

「それは……少し話が違ってくるよ。あの二人は幼馴染だしあれは宗谷さんがお姉さん達に向けるようなものと同じ感情じゃないかな?」

 

「そう言うものだろうか」

 

まぁたしかにあの二人はの間にあるものと私と艦長の間にあるものは違うように思う。だけどだからと言って私が除け者にされる理由がわからない。

 

「一番信頼していると言うのならどうして直接伝えてくれないのだろうな」

 

「それは岬さんに直接聞いていてみないとわからないよ」

 

「だが最近の艦長はコンタクトを取りにくくなっている。そんな機会あるのだろうか」

 

メッセージを送っても既読をつくのは翌日、酷い時には三日後の時もあった。こちらからの質問に対しては煙に巻いてくるし会おうとしても忙しいと言われる。

 

「根気強く待とう。私達の艦長は私達を待たせる事はあっても拒絶する事はないはずなんだから」




ノムさん出したいなぁ。一応殆どのキャラクターは今なにをしているか決めています。ノムさんに関しては出すつもりではいるんですけど三河弁を書き切れるかどうかですごい迷いが……
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