「ぶーぶー。ぶーぶー」
目的のペトラ橋まで歩いていると、後ろから樽神名さんの不満げな声が聞こえてきた。まぁ、理由はわかってるんだけど……。
『でもひとつ約束して。どれだけ長くなっても24時間、片道12時間以内に帰ってきて』
その蜂ノ巣さんの言葉に、樽神名さんは深くショックを受け、それからこの有様ってわけだ。
「まあ仕方ないよ。戦闘班のみんなはこの作戦に駆り出されてるわけだしさ」
「そうだけどさぁ……」
俺の言葉になにか釈然としないといった様子の樽神名さん。
「遠征に行くから応援せい……はいっ、アルトじゃ~ないとっ!」
樽神名さんの機嫌を取り戻すために俺は渾身のギャグを放つ。だが……。
「……」
樽神名さんどころか、メンバーの全員が黙ってしまった。
「てかいつも言ってるそのサムいギャグ、なんなの?」
そしてその沈黙を、来栖崎さんが破る。だが、来栖崎さんの言葉は決して励ましの言葉などではなく、辛辣な物言いであった。
「寒くないよっ!?」
「そうですよ来栖崎さん。或人様のギャグは……ふふっ。さ、寒くありませんわ」
甘噛さんは相変わらず俺の腕にしがみついたまま離れてくれない。が、俺のギャグをほめてくれるのは嬉しかった。
「なーに鼻の下伸ばしてんのよ変態」
「もうそのネタから離れて!?」
「あら、お二人に何があったのですか?」
甘噛さんが不思議そうに聞いてくる。が、絶対に言うことは出来ない……よな?
「いえ、何も無かったわ、ねぇケツパ?」
? よく分からない単語が来栖崎さんの口から出る。
「えっと……ケツパってなにかな?」
「血液パックの略、それくらいわかりなさいよ」
血液パックか……一応俺も戦えるんだけどなぁ……。そう肩を落としていると、俺たちの元にゾンビが襲いかかってきた。正直言ってこんなところで時間を割きたくないので俺は全体に攻撃できるキーを使うことにした。
「いっくぜ~、クマちゃん!」
『Blizzard!』
「変身!」
『フリージングベアー!』
そして両手から冷気を出し、ゾンビを一匹残らず氷漬けにし、そしてそれらをポートラルの皆が砕く。
「っしゃオラァ!」
威勢よく大鎌を振り回す姫片さん。そして殲滅も完了し、再び目的地へと足を運ぶ。
「なんだよこれ……」
ようやく橋にたどり着いた俺は、その光景に言葉が出なくなってしまった。
「嘘だろおい……」
「……多すぎます」
「あーそかそか、リッちゃんとやちるんは来るの初めてだったねっ」
「そうなんだ。でもまぁ、俺もいるし、いけるよ、絶対!」
「俺じゃなくて俺たち、でしょ」
来栖崎さんも協力の意思を示した。
「よし、来栖崎さん。行こうっ!!」
俺はドライバーを装着し、変身する。
『ライジングホッパー!』
『アタッシュカリバー! ブレードライズ!』
俺と来栖崎さんはそのまま、ゾンビの群れへと突撃する。
「はぁッ!!」
来栖崎さんは目にも止まらぬ速さでゾンビの首を切り落としていく。そして俺もアタッシュカリバーでゾンビたちを一掃する。
「ちょ、みんな! 私達もいくよ!」
樽神名さんの扇動の声が聞こえてきた。
「あ、ああ!」
みんながそれぞれの武器を持って戦闘に参加をする。樽神名さんは二丁の銃でゾンビを撃ち抜いていき、そして撃ち漏らしを百喰さんのアサルトライフルで掃討する。抜群のコンビネーションでゾンビを倒していく。
そして姫片さんは自慢の大鎌で豪快にゾンビの首を切り落としていく。そして豹藤さんは自前の反重力シューズでゾンビたちを翻弄し、元フィギュアスケート日本代表というのも頷けるほどの華麗な動きで倒していく。また、甘噛さんは両手に携えたトンファーでゾンビたちを破裂させていき、三静寂さんは類まれな射撃センスでみんなの死角の位置にいるゾンビの頭を矢で貫いていき、そろそろ橋の終わりに近づいてきた頃……。
身体が包帯で埋め尽くされたような、だがその中には何も入っていない奇妙な見た目の怪物が最後に残った。俺の記憶の中にそんな奴はいない。だが、今更引き返すことは出来ない。俺は初めて使うプログライズキーのスイッチを押す。
『blow! authorize』
「いっくぜ~、牛ちゃん!」
俺はキーをベルトに差し込む。
『Powerful rush クラッシングバッファロー! This charge attack will send you flying』
「おぉ~」
俺は頭に着いた2本の角を撫でる。そして、ゼアからこのフォームのスペックが送られてくる。どうやら、足の破壊力がすごい様だ。
「お前を止められるのはただ一人、俺だッ!」
地を踏み締め、相手に向かって駆け出す。そして来栖崎さんも俺に続いて奴へと飛び出す。
「はッ!」
胴体めがけてローキックを繰り出し、その破壊力で完全に破壊する。が、まだ奴は動きを止めない。弱点が頭だと悟った俺は、来栖崎さんに大声で叫ぶ。
「来栖崎さん! 足を止めるんで頭を狙ってください!」
その合図と同時に、俺はキーを押し込み、右足に力を込める。
『クラッシングインパクト!』
「はぁぁああああ!!」
そして腰から下をなくした怪物は、バランスを崩し、その場に倒れ伏す。無防備になった状態の怪物の首を、来栖崎さんは切り落とし、ようやくペトラ橋を攻略することに成功した。
「攻略するなんてこうりゃくだらない……はいっ、アルトじゃ~ないとっ!」
だがみんなは満身創痍といった様子で、笑い声どころかなんの声も聞こえてこない。と思っていると……。
「……ふふっ」
誰かから、笑い声が零れる。