「とぉぉぉおおおおおおちゃぁぁああく!!」
そんな樽神名さんの言葉と共にペトラ橋を渡りきった俺たちポートラル。
「相変わらず騒がしいね樽神名さんは」
「ふっふふー、元気だけは人一倍ありますので、はい」
えっへん、と胸を張る樽神名さん。
「てか凄いよヒサギンもあーちゃんも! キミたちやっぱりスーパースターだぜぃ!!」
「……うざ、てか暑苦し」
「まあまあ来栖崎さん。こういうのは素直に受け取っとこうぜ。現に来栖崎さんめっちゃ頑張ってたし」
「あんたのが倒してたじゃないの」
「い、いや……でもあのデカいやつのトドメさしたの来栖崎さんじゃんっ」
そしてなんやかんやあって俺たちは、渚輪区本島を探索し、工業地帯へと辿り着いた。
「ふっふふー、ゾンビっちの山こえ谷こえ、ついにたどり着いたが工業・ウィズ・港! あたしゃ海が見たいぜぇぇええ!」
そう叫びながら樽神名さんは走っていってしまった。
「はぁ……まったく、面白い人だな」
てか、ここって工業地帯なんだよな? ってことは、なにか有用な材料とかが手に入るかもしれないな。でもゾンビが居ない気がするんだが……。そう思っていると、その疑問を姫片さんが口に出す。
「つーかよぉー、ここらへんゾンビの気配なくてなんか気味悪くねぇか?」
「えぇ、確かに」
百喰さんもそれに同意する。そしてさっき樽神名さんが走っていった方向から悲鳴のような声が聞こえ、そしてこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。
「ぎゃひょぉぉぉぉおおおい!!」
奇声を発しながら走ってくる樽神名さんの姿に俺は、苦笑を隠せない。
「ちょ、落ち着いて!? 何があったの一体!」
俺はそれを受け止める。
「み、見ちゃってっ、見つけちゃって!!」
「なにを、何を見たの?!」
言葉にできないくらい驚いているようだ。
「と、とと、とにかく来てっ!」
手招きをする樽神名さん。それに俺たちは続く。そしてそこにあったものとは……!
「不燃ごみと思ったら船だった……はいっ、アルトじゃ~ないとっ!」
「冗談を言っている場合ではありませんゼロワンさん。まずは中を……」
そう言って船をまじまじを見つめた百喰さんは気分が悪くなったのか口を抑える。疑問に思った俺はよーく観察してみる。
「え……?」
船の中に、死体が乗っていた。そう、死体が。そして船体は、血にまみれていた。何故今まで気づかなかったという程に。
「誰、が……こんな、こと……」
「ねぇケツパ、おかしくない?」
そんな俺を横目に船へと入っていく来栖崎さん。そして疑問を口に出す。
「どういう、こと……?」
「何で死体が残ってんのって、思ってさ」
あ……、そっか。この世界じゃ、死んだらゾンビになるんだもんな。俺も船の中に入り、ライズフォンで解析をする。だがその死体は相当腐敗が進んでおり、詳しい情報までは特定出来なかった。が、死因は特定することが出来た。
「……銃撃による、失血死……」
「銃撃? いやいや、どういうことよ。てかもしそうなら、この島にそんな危険な奴がいるってことになるんだけど」
「確かにそうなるよな……」
考えを張り巡らせていると……。
「「きゃああああッ!!」」
突然聞きなれない悲鳴が聞こえてきた。俺はファルコンキーを使って陸から離れた船から脱出し、皆が待っている場所へと降り立つ。
「今の悲鳴聞いた?!」
まっさきに樽神名さんが問いかけてくる。
「聞いたっ! ……でも、どの建物かは……」
「こっちです! あの建物ですっ!!」
「ひょ、豹藤さん!? あ、ありがとうッ! とにかく急ごう!」
豹藤さんに先導され、俺たちはその建物の扉を開け放つ。
「こんな時はこれだ! いっくぜ~、パンダちゃん!」
『search! authorize』
「変身!」
『スカウティングパンダ!』
俺は建物内のデータを収集する。どうやら悲鳴は3階の一室から出ているようだ。
「見つけた! いくぞみんな!」
俺は3階までみんなを案内する。建物の中は狭いのでかなり戦いづらいので、戦闘は他のメンバーに任せた。そして目的の部屋の扉を勢いよく開け、中にいる2人の少女に叫びかける。
「もう大丈夫だから!」
『スカウティングカバンストラッシュ!』
ゾンビだけを的確に切り裂き、部屋内のゾンビを一掃する。
「え……」
「もう大丈夫だよ」
俺は2人の少女の話かける。
「……」
「う~ん……」
俺はライズフォンを取り出し、ギャグを披露しようとする。
「ちょっとケツパ! そんなことしてる暇ないから! さっさと外出るわよ!」
あ、そっか。それなら仕方ない。
「わかったっ! ご、ごめん、とりあえずここから逃げようか!」
体力が残っていないと察した俺は、2人を抱えてファルコンキーで一足先にここから出た。
樽神名さんが2人にポートラルへの勧誘をして、それを済ませた後……。
「……ありがとぅな。ほんま……」
「ごめんだけど、まずは君たちの名前、教えて貰えないかな?」
「……うちは沙織、夢氷沙織……んでこっちは妹の沙南」
「おっけおっけー、沙織ちゃんと沙南ちゃんね。んじゃまずは俺の爆笑ギャグを……」
「或人、てめぇは一旦引っ込んでろ」
姫片さんが俺の言葉を遮って姉妹に質問をする。
「まずはひとつ、お前らはどっから来た」
「……うちらは、豊島街ってとこから来たねん」
「でも豊島街っつったら結構遠いじゃねぇか。そんな状態でよく生き残れたな」
「でも、一緒にいた子らはみんな……」
「……いや、いい。そこまでは言うな。そして2つ目、なんであんなとこに隠れてやがった。あんなにゾンビがうじゃうじゃいたようだが」
姫片さんも思いやりの心ってあるんだな……。
「うちらが来たときは、おらへんかったねん。なのに……急に入ってきて、出るに出れんくて……」
「何かを合図にして入ってきたってことか……例えば音とか?」
そこで俺は初めて口を挟む。
「あー……そりゃあるかもな。でもよぉ、今日までなんも食ってこなかったんだろ? ほらよ」
事前に持ってきたであろうスナック菓子を2人に手渡す姫片さん。
「ささ、質問も終わったということで……名刺を見つめるぅぅぅ、名シーン……はいっ、アルトじゃ~ないとっ!!」
渾身の……(いや、1回やってるけど)ギャグを披露した。
「……」
「あーあ、あんたのせいでまた元気なくなっちゃったじゃない」
「いやいや、絶対面白いって! だよね沙織ちゃん沙南ちゃん!?」
「……うん。兄ちゃん、面白い……ね?」
「ほら、こんな小さい子に気遣ってもらっちゃって、恥ずかしくないの?」
来栖崎さんに俺の気力が奪われた。
パンダちゃんって語呂悪くない?