ここは、エノルメ居住区。……まぁ、金持ちが住んでるところらしい。だから敢えてこの道を通ることにしたのだが……。
「で、ご自分の読みが甘かったことについてなにか弁明はおありでしょうか? 或人さん」
百喰さんが俺に嫌味を言ってくる。
「……いや、これくらいの量なら俺だけで行けるよ」
「"俺だけ"? ……ずっと一緒にいるんでしょ?」
「……来栖崎さん。よし! いこう!」
『Jump!』
「変身!」
『ライジングホッパー!』
俺はアタッシュカリバーを手に取り、ゾンビを次々と斬っていく。
『ライジングカバンストラッシュ!!』
「はぁぁぁあああ!!」
周辺のゾンビを殲滅し終わり、俺たちは橋への移動を再開する。
「てか、あの女となにやらありそうだけど、なんだったの?」
「……あぁ、そうか。忘れてた」
俺はポートラルのみんなを集めて話し始める。
「まずはアズのことから。……アイツはヒューマギアっていう人工知能搭載人型ロボットなんだ」
「「ロボット?!」」
みんなから一斉に困惑の声が漏れる。が、それを気にせずに話を続ける。
「それでアイツは、アークっていう衛星の指示に従って人間に悪の力を与えてるんだ。その力っていうのがあの……神峰透露の変身してた仮面ライダーなんだ」
「仮面ライダー……あーちゃんのあれ?」
「……まあ、簡単に言うとそう。で、戦ってみてわかったんだけど、多分アイツの力っていうのが周囲の物を感染させて自分の力にする能力だと思うんだ」
「確かに! バッタが一斉に襲いかかって来てたもんね……」
「……だから一応、念の為にアイツには近づかないようにして欲しいんだ」
「……だが或人くん。その神峰透露を倒す手だてはあるのか?」
「……いえ、今のところは。すみません」
「いや、謝ることは無い。しかし、そうなるとなるべく接触したくないものだな」
「てかあーちゃん。もしも、もしもだよ? もし橋にゾンビが一切いなかったらどうする?」
「それはもし、本島に行けたら、ってことか?」
「……うん」
「渚輪区にいるゾンビを全滅させないとな」
「およ? そのこころは?」
「まだ渚輪区には結構生存者がいるんだろ? それだったら安全に移動できるように全滅させとかないと思ってさ」
「ほへー。てっきりまずは最初に一回行ってみるとか言うのかと思った」
「いやいや、今は沙織ちゃんと沙南ちゃんがいるからさ。それに来栖崎さんの治療薬も見つけないとだし」
「あーそっか……」
そうこう話しているうちに、本島と渚輪ニュータウンを繋ぐ唯一の道路『海浜間横断橋』にたどり着いた。
「まさか……な」
「おいおいおい、嘘だろ……」
橋を見た俺たちは驚嘆の声を漏らす。────それはあまりのゾンビの数から────ではなく……。
「はぁ……」
俺はそっと胸を撫で下ろす。
「ん……? あれは……」
百喰さんが何かを発見したようだ。俺はその方向を見る。そこにはなんと、軍用車両が止まっていたのだ。
「みんなっ! やったよ! 助けが来たんだよっ!!」
「しかも人いねぇか?」
「本当だ……! よし、じゃあ俺が話をつけてくるよ」
そう言って俺は軍用車両のところまで行く。が、俺がその人たちに声をかけようとしたところ、俺の存在に気づいた一人の軍人が銃を構え、一切の躊躇も見せずに発射してきた。幸い、最初の一発は肩に当たったので、俺はドライバーを装着し変身する。
「変身!」
『ライジングホッパー!』
そして来栖崎さんが勢いよく地面を踏み土煙を出し、撹乱する。そして奴らが困惑しているであろう最中に俺はマンモスキーでみんなを運ぶことにした。
『press! authorize』
「いっくぜ~、象ちゃん!」
『プログライズ! ブレイキングマンモス!』
すると、巨大な衛星が空から降ってきて、その中に俺は乗り込む。
「これに乗って!」
手の平にみんなを乗せて、近くの学校まで飛行モードで運んだ。そして今日寝泊まりすることになる教室の中で、姫片さんが呟く。
「まさか、政府軍まで敵だったとはな」
政府軍?
「あの人達って政府の人なの?」
「まあ簡単に言うとそうだ」
「でもなんでそんな人達が撃ってきたりしたんだ?」
「知るかよそんなこと。それよりもやちる、こっち来い」
すると豹藤さんがとんでもないことを言い出した。
「うん……。ねえ栗子。脱いでいい?」
「はっ、今日は好きにしな。見張りが紳士なら万事順調だ」
言い忘れていたが最初の見張りは俺ということになっている、それにも関わらず脱ぐだとか言い出したのだ。
「ちょちょちょ、何やってるんですか豹藤さん!?」
すると、豹藤さんは眠たそうな声で言う。
「今日はもう……見られてもいい……」
「はは……、まぁ、さすがに疲れたからな……」
そういう問題じゃないでしょう。
「軍のことも……考えるのは明日にしよう……」
みんなが各々の体勢で寝に着く。こんな残酷な世界で生きているとしても彼女たちはみんな年端もいかない少女。
「アークは、俺が倒す……!」
そう決意を固めていると不意に、教室のドアが開かれた。俺は慌ててドライバーを構えるが、顔を見ると来栖崎さんであった。
「もう……ビビったよ。まあそれは微々たるものだったけどな。……はいっ、アルトじゃ~ないとっ!」
みんなが寝ているのでいつもより声を抑えてギャグを放つ。すると来栖崎さんの肩が震えて急に話題を変え始めた。……もしかして怒らせちゃった?
「……ちょっと月を見に」
「月か……まあこんなムンムンした中じゃ落ち着けないもんな」
「ッ……!? まあ、あんたがついて行きたいなら勝手にすればいいけど」
そんなこと言ってないんだけど……。いや、二人きりなら話せることもあるかもしれない。と考えた俺は着いていくことにした。
「扉、閉まってるね」
俺が変身してた壊そうとすると、来栖崎さんがその扉を蹴ってこじ開けた。
「ねぇ来栖崎さん、俺さ、来栖崎さんのこともっと知りたいんだけどさ、話してくれないか?」
すると、隣にいた来栖崎さんが吹き出した。
「ぶっ……はぁ!? ケツパあんた……何言ってんの!?」
今ギャグ言ったつもりないんだけどな……。
「俺の過去も話すからさ、いいだろ?」
「あんた記憶喪失なんじゃ……」
「いや、この俺、飛電或人の過去だよ。この体の持ち主のことは全然わかんないからさ」
なんかこの説明難しんだよな。
「じゃあまずはそっちから話してよ」
「うん、わかった。まずは俺の生い立ちから──────」
俺は来栖崎さんに、父さんのことや、俺たちが今までアークと戦ってきたことについて全て話した。
「えっと……よくわかんないんだけど……とりあえず、あんたはAIに育てられて、アークっていう奴を倒したってこと?」
「うーん……まあそんなとこ。で、次は来栖崎さんの……って、あれ?」
「あれやばいんじゃないの?」
校庭に侵入してくる複数人の人影が屋上から見えた。
「ごめん来栖崎さん!! みんなに知らせないと!!」
俺は来栖崎さんと共にみんなが寝ている教室を目指した。