入ろうとしたところで、甘噛に引き止められた或人。
「わたくし、来栖崎さんが羨ましいですわ」
「ん? どうした急に」
「いえ、わたくしも感染したいなーって、そしたら、力も手に入りますし、なにより或人様にワガママ言っても許されるのかな────」
或人は自分でも気づかないうちに、甘噛の方に力を込めていた。
「ダメだッ! 危険な目には合わせられない! ……あ、ごめん」
或人は自分のしたことに気がつき、気まずい空気になってしまった。
ショッピングモールへとたどり着いた或人たちはまずグループ行動をするということで或人、来栖崎、甘噛の3人で回ることになった。来栖崎のための制汗剤等を店内から拝借し、その後に甘噛が行きたいと言っていた女性物の服が並ぶ通りにやってきた。
「いやぁ〜、服がいっぱいでほんと、選ぶのに苦労するよね」
かくいう或人は、いつもの赤のパーカーに黒のジャケットである。
「あ、或人様っ! あそこにBALLY MASONがありますわ!」
甘噛は或人にそう呼びかけて或人の手を引く。
(ん? 服屋かな?)
或人はそんなことを考えながら甘噛について行く。
「おぉ〜、なんか高級そうでいいね〜」
服屋『BALLY MASON』にたどり着いた或人は一着の服を手に取る。すると、ダムが決壊したかのようにみるみるうちに崩れていく服。
「残念だったわね。……まぁ、期待してたんだけどね……」
来栖崎は誰にも聞こえないくらいの声でそうつぶやく。
「あ……。いや、まだこういうリボンとかなら……!」
「或人様! わたくしに選んでくださいまし!」
それを承諾したのはいいものの、なにせ或人は女性との付き合いや買い物など全くと言っていいほどしたことがなかったので、決めかねていた。
「ん〜……、じゃあ、これ!」
或人は白をベースに緑の線が引かれているリボンを手に取り、甘噛に手渡した。
「……」
(不満だったかな……?)
そう憂いていると……。
「ありがとうございますっ!」
そう満面の笑みで答えたのだった。或人の憂いは無事、杞憂に終わった。がしかし……。
「お楽しみのところ悪いねぇ」
『感染ドライバー』
その音がした途端に、或人たちの周りにゾンビが湧いてくる。
「神峰透露……!」
或人がドライバーを腰に当てようとした瞬間、バイラスの指先から光弾が発射され、手に持っていたドライバーを正確に狙い撃つ。
「なっ……」
そして宙を舞ったドライバーは、バイラスの手に握られる。
「八月朔日真綾……いや、今の君はもう、飛電或人だったかな?」
「真綾……?」
或人がその名に疑問を抱いていると……。
「これで君はもう、ゼロワンには変身できない。ではこの大量のゾンビをどうするか、見物しておくよ」
「……。……たとえ変身出来ないとしても、みんなのために戦う。それが仮面ライダーゼロワンだっ!」
そう言って或人はアタッシュカリバーを持ってゾンビの群れへと突撃していく。
「はぁっ!!」
或人はがむしゃらにアタッシュカリバーを振るってゾンビたちを倒すッ。
「チィっ! 甘噛、行くわよ!」
「え、えぇ! 当然ですわ!」
そして3対数百の、無謀な戦いが始まった。……だがそれは、決して無謀などではなかった。
「これで終わらせる!! はぁぁああ!!」
或人は最後の1匹を倒し、そして非常階段でみんなが待っている駐車場へと急いだ。階段にもゾンビが数匹彷徨いていたが、或人はそれを難なく切り伏せた。
そして屋上の駐車場にたどり着くとそこには、1匹の変異種が、その巨躯で破壊の限りを尽くしていた。まだメンバーは誰一人として怪我は負っていないが。
だがあれを来栖崎一人で倒せるだろうか、と。或人は疑問に思っていた。だがそれは杞憂に終わった。少女は一人で、その巨大な物体を切り伏せてしまった。