なんらかの方法でこの世界に来た滅亡迅雷.netの1人、迅はこっそりと神峰たちのアジトに来ていた。
「……ゼロワン、今回だけだ」
神峰に奪われたゼロワンドライバーを取り戻した迅は、或人たちの元まで飛んでいた。
「泥棒……と、偏見で物を言おうか……」
ヒューマギアだけあって聴力が非常にいい迅の耳に、誰か男の声が聞こえてきた。
『バイラスインパクト!』
そのシステム音が聞こえたと同時に、迅バーニングファルコンの背中に着いた羽が勝手に収納されてしまった。
「なっ……」
飛行能力を失った迅は重力に負け、そのまま地上に落ちてしまった。
「我が息子に、何をしてくれた……」
「ほ、滅……?」
『フォースライザー』
迅の目の前に立ったそのヒューマギアの名は、滅。彼はバンドに結束されたような見た目のベルトを腰に装着する。
『poison』
そして表面にサソリの意匠がある紫のプログライズキーを起動し、フォースライザーに装填する。
「変身」
滅はベルトの黄色のレバーを引き、キーを開く。すると背後にサソリのライダモデルが現れる。
『フォースライズ スティングスコーピオン! ……Break down』
そしてそのサソリがアーマーになり体に引っ付く。
「滅びるのは、お前たちの方だ……!」
左手に装着されたサソリの棘が周囲に群がってきたゾンビたちを一掃する。そしてその棘は迅のバーニングファルコンキーに刺さり、壊れていた飛行能力が復活する。
「我が息子よ。飛電或人に届けてこい」
「あ……ああ!」
迅が飛び立った後、滅は一人戦い続けていた。
『スティングユートピア!』
レバーを二回引き、必殺技を放つ滅。そして殲滅されていくゾンビの大群。
「ふっ、そろそろ時間か……」
滅の体はデータのようになり、やがて消えていった。そう、彼と迅は身体をデータ化し、この世界にやってきたので、時間制限があるのだ……。
或人たちはようやくこの地獄のようなショッピングモールを抜け出し、一室で一夜をすごした。
「ねえケツパ。あんた変身出来ないみたいだけど、これからどうするのよ?」
「いや……まあ、うん」
いまいち煮え切らないような返答をする或人に、来栖崎は動揺を隠せない。
(……何よそれ。いつもは下らないギャグ飛ばしてるくせに……)
来栖崎はどこか不安げな表情を、
(変身できなかったら……みんなが……)
或人はどこか憂いた表情を浮かべていた。
「……なあ、来栖崎さん。俺ってさ、戦力としか思われてないのかな……」
或人は来栖崎の方を振り向く。
「……」
「……あ、寝ちゃった、のか……おやすみ」
来栖崎が起きていることに気づかないまま、或人は寝てしまった。
(少なくとも私は、そうは思ってないけどね……)
「……おやすみ」
彼女はそう言って眠りについた……。
そして翌日、彼女らポートラルの面々は鳳凰軍事学校へと足を進めていた。
「さぁ皆! 鳳凰軍事学校まで、いざゆかん!」
アドの号令でポートラルの面々は鳳凰軍事学校までの道のりをあゆんでいた。
「ねぇねぇあーちゃん! 聞いて聞いて!」
「ん? なに樽神名さ────うっ」
アドの体臭に或人は言葉にしないまでも鼻を抑えてその臭いを暗にアピールしていた。そして歩くこと一時間、ポートラルは新花芽地区、広末駅駅前付近にまで辿り着いた。
「しっ、みんな静かに」
先頭を歩いていた礼音がみんなを止め、ビルの影に隠れるよう指示した。
「まさかまた政府軍が……?」
或人が恐る恐る聞くと、礼音は無言で頷く。
「じゃあ迂回して行くしか……」
アドが提案するが、その後ろから男の声が聞こえる。
「────迂回してどこへ行く気だ、小娘共」
その声が聞こえた瞬間後ろへと飛び退く彼女たち。
「来栖崎さんッ!!」
「わかってる!!」
来栖崎は地面を勢いよく殴り土煙を発生させる。だがそれに構わずに銃を乱射する軍人たち。そしてあっという間に組み伏せられてしまったポートラルの面々。そして一人の軍人が礼音に注射器を刺し、中の液体を流し込む。すると礼音が苦しみもがき出す。
「ゼロワン!!!」
上空から声が聞こえ、そして空から赤い鳥のようなライダーが飛来する。
「迅?!」
驚いている或人をよそにゼロワンドライバーを投げる迅。
「ごめんゼロワン。そろそろ時間みたいだ」
そう言って迅は光となって消えていった。
そして投げらえたドライバーをなんとかキャッチした或人は腰にあてる。
『ゼロワンドライバー!』
『Blizzard! authorize』
「変身!」
『フリージングベアー!』
地面を氷漬けにし、軍人たちの足を氷漬けにしたゼロワンはブレイキングマンモスに変身し、みんなを連れてデパートへと帰還した。そして真っ先に礼音を医務室へと運んだ。或人はドライバーを装着しゼアに接続する。
「どうすれば助けられるんだ……!」
或人は必死に探した。そう、死ぬ気で探したのだ。なのに見つかったのは検索結果:0件 という無慈悲なものであった。
「これは……!」
検索を続けていると、信じられない、というより、信じたくない情報が目に飛びこんできた。
『クローン人間の産声形態への変貌薬品』
「なんだよ……これ……!」
治療方法、なし。
「ふざけるなッ!」
「?! どうしたのあーちゃん!!」
「……いえ、なにも」
「話してくださいゼロワンさん。なにがあったのか。なにを発見したのか」
百喰が或人に問い詰める。
「なんでもないですからッ!!」
そう言って或人は礼音がいる医務室へと駆け込み、容態を確認した。すると礼音はもがき、苦しみだし、その身体は素の礼音とは似ても似つかない化け物へと変貌してしまった……。