────これは、或人がこの世界に来る少し前の出来事。ここは、PAL研究所の一室。そこで主である八月朔日真綾を失った神峰透露は一人、人体再生実験に勤しんでいた。
「チィっ、どいつもこいつもぉっ!! どうして私の指示に従わないんだ!?」
何人もの部下を犠牲にし、薬や手術、さらにはクローンすら作ったのに、まだ何の成果も得られていない透露は癇癪を起こしていた。
「あの女の頭脳さえあれば私は!」
世紀の天才と呼ばれた真綾の頭脳さえあれば、と嘆く透露。
「感じる、あなたの心から沸きあがる悪意を」
透露の背後にアークの使者、アズが現れる。
「だ、誰だっ!」
即座に手元にあった銃を向ける透露、だがその女の持っているものを見て、銃を下ろす。
「あら、意外とまだ理性は残っているのね」
「誰だと聞いているッ!」
「そんな怖い顔しないで〜? 私はアズ。あなたの協力をしたいの」
普段なら相手にもせず殺していたはずだが、この時の透露は極限状態であったため、アズの提案にすんなりと承諾してしまった。彼はアズの指示のまま、手渡されたゼロワンドライバーを腰に装着する。するとそのゼロワンの意匠である銀のカバーが変化し、禍々しいものとなる。
『感染ドライバー』
「ッ?!」
その瞬間、透露の脳に衛星アークが接続される。
憤 恐 絶 滅
怖 悪 死
憎 怒 殺
意 荒
亡
悪意に満ちた空間に透露は一人きりで苦しんでいた。
「じ、人類は……滅ぶべき……存在……」
アークによって脳を改竄され、思想が過激なものへと変わった透露。
『virus…… authorize』
横に伸びたキーをドライバーの認証部にかざし、ロックを解除する。
「ああああ゛!!」
そのままドライバーに挿し、そしてカバーのようになった部分を折り畳む。
『プログライズ! アークライズ! Its power infects everyone and makes it their own 仮面ライダーバイラス!!』
全身がウイルスに蝕まれる感覚に襲われながら、アーマーが装着される。
「ふふ、大成功ね」
そしてほぼ自我を失った透露は、本能のままに研究所を破壊していく。そして最後にキーを押しこむ。
『バイラスインパクト!』
瞬間、大きなガラス管に入っていたクローンや、産声形態、さらには研究員全てが意思のない、透露の傀儡となった。
「上出来ね。ねぇアーク様、次はどこを狙うの?」
地図を広げた透露は、ある一点に狙いを定め、そして穴を開ける。
「どこを、か……では、手始めに渚輪ニュータウンに手をつけるとしようか……」