その場から神峰が立ち去ってから数分後。ようやく事態を理解出来たのか、或人が口を開く。
「来栖崎……さん……」
その名を呟き、またもや沈黙が続く。
「……」
何も言わずに駆け出そうとする或人を、姫片が止める。
「おいッ、今てめぇが行ったところで何になるッ!? 無策で突っ込んで成功するわきゃねぇだろッ!」
「姫片さん……。俺、助けたいんですッ! でも、なのにゼロツーでも勝てなくて……そんなんじゃもう……」
或人の諦観の声が響く中、アドが口を開く。
「ふっふふー。諦めるにはまだ早いぜよ? 若輩よ! ほら、聞いたことあるでしょ? 1人でダメなら2人で、それでもダメなら全員でって言葉。アタシらがいるんだから、大丈夫だって!!」
「どうして……そんなにも明るくいられるんですか……」
「……アタシだって辛いよ……でも、リーダーがしょげてちゃあチームってのは成り立たないからね!」
「そうです。私たちはそうやって、やって来たんです。今までも。そしてこれからも」
百喰の言葉にみなが頷く。
「それにあーちゃん! アタシたちだって戦えるようになったんだよ! 仮面ライダー? と一緒に! ね、みんな!」
そう言ってアドは何処かへとダッシュで駆け出し、超高速で戻ってきた。
「……?」
或人は頭の上にクエスチョンマークを浮かべていたが、戻ってきたアドの手に持っていたものに目を引かれた。
「まさかこれって……レイドライザー!?」
そう、或人のいた世界で、ZAIAが開発した変身ツール、レイドライザーであった。
「まさか……作ったんですか!?」
「んー……。まーそんな感じっ」
「ですがその或人さんが持っているカセットのような物は作れなかったので、貸していただけませんか?」
百喰が丁寧に頼み、頭を下げる。
「いいっていいって。そんな真剣に頼まなくてさ。はいこれ」
そう言って或人はみんなに一つずつプログライズキーを手渡していった。百喰にはパンダのキー、アドにはジラフキー、姫片にはジャッカルキー、豹藤にはヘッジホッグキー、甘噛にはタイガーキーと、それぞれの特色にあった物を渡していった。
「良し、じゃあみんな、来栖崎さんを助けに行く────」
「「いやいやいや」」
この場にいた全員からツッコミの声が上がる。
「さっき無策で突撃してもダメって言ったばかりだよ!?」
「作戦って……。相手の場所を知らないんだし────って、そうか……どこにいるかがわからないのか……」
だが、その瞬間、或人のライズフォンに動画が届いた。
(誰だ……?)
この世界で或人のことを知っている人物がアズしかいない為、送ってきた人物は神峰、もしくはアズであると断定できた或人。彼は直ぐに動画を再生する。
『……さてと。ここは悪役らしく喋ってみようか……。こんばんは。……いや、まだこんにちはかな? まあ、まずはこれを見てくれないか? なんて、聞いたところで意味が無いのはわかっているのだがね』
「……くどいですわ」
甘噛がボソッとこぼす。
『まずはこのグラナトファという生物兵器。これはねぇ、凄いのだよ。まず、理性がある。これだけでもあの三静寂とかいうクローンの化け物よりは強いだろう?』
この時点で或人は怒りのあまりライズフォンを叩き割りそうになったがアドに諭され抑える。
『そして、これからこの……来栖崎ひさぎという少女をグラナトファへと改造しようと思う。だが、今直ぐにというのも酷な話であろう。一時間、その間に私の場所を特定し、そして私を止めることが出来たのなら、来栖崎ひさぎは返してあげるとしよう。さぁ、この渚輪区という広い広い箱庭の中から、探し出すことは出来るかな? ……と、偏見で物を言おうか』
プツリ、と。そこで映像は途切れた。
「あぁ、やってやるよ。神峰透露……俺はお前を……いや、来栖崎さんを助けてみせる!」
と、当然神峰には聞こえていないのだが宣言する或人。
「そうだね! でもアイツ、渚輪区って言ってたし、それこそ廃墟にでも隠れてるんじゃないかな? それだったら────」
「いや、それは無いと思うんだ。神峰透露は、俺……いや、仮面ライダーと戦うことを望んでいる。だからさ、多分わかりやすい場所に隠れていると思うんだ。だからさ、何かわからないか? あの男について」
「んー……そういえば、TVで見た気がする、です」
世界が違う、そして何より時代が100年近く進んでいるのだから或人は知らない情報であった。だからこそそういうメディアに関する情報はありがたかった。
「本当か豹藤さん!?」
つい口調が荒くなってしまった或人。だがそれほどまでに神峰に関する情報を渇望していたということである。
「は、はい……多分、ですが。確か研究者かなにかの賞を取って、それでどこかの研究所に所属してるって────」
「あ、それ聞いたことある! ぴーえーえるだった気がする!」
(ぴーえーえる……? PAL……パル研究所か!)
それを聞いた或人はPAL研究所、並びにそれの関連施設の場所を特定し、そして簡単な地図を作成し、みんなに配った。
「時間が無い。ここは役割を分担しようと思うんだけど、いいかな?」
「もちのろんだよあーちゃん! なにせ今のアタシらは新しい武器も入ったからね!」
「今残っているのはここにいる6人だけ……。農業と工業のテクノロジーセンターに、PAL研究所本体……」
ここから全て、或人が分担表を書いていく。
「やちると一緒に農業センターか……或人にしては悪くねぇ采配だな」
「アドと一緒ですか……先が思いやられます……」
口ではそう言っているが内心は少し嬉しかった百喰。
「甘噛さん。もしかしたらここでの戦闘はかなり厳しいものになるかもしれない。けどいいか?」
「えぇ、勿論ですわっ。或人様に付き従いますわ!」
「あはは」
(なんでこんなにも俺に対して好意的なんだろうな……)
「んじゃ、メンバーも決まったし、早速行きましょうか! みなさん!」
「うん! そうだね! じゃあポートラルのみんな! 『少女を取り戻すラブロマンスストーリー作戦』開始!」
度重なるよくわからない作戦名に、既に突っ込む気も失せた或人。だがそれのお陰で張り詰めた空気が収まったことは言うまでもない……。
元普通の高校生、現、最高最善の魔王、常磐ソウゴは時空の歪みを察知し、或人たちがいる世界へと歩みを進めていた……。
そして、ここは神山飛羽真のいる世界、小説家であり、ソードオブロゴスの剣士である神山飛羽真は全ての戦いを終え、元の小説家に戻っていた。だが、新たなメギド。ゾンビメギドによって開かれた新たな世界、インフェクトワールドへと人が飛ばされるという事件が起き、一時的にまた剣士という立場に戻っていた。
「物語の結末は、俺が決める!」
そう言ってゾンビメギドに切りかかるセイバー。だが切っても切ってもその切り傷が塞がれてしまう。
「神山飛羽真……いや、仮面ライダーセイバー! お前はここで、終わりだ!」
ゾンビメギドによって開かれたアルターライドブックでセイバーはインフェクトワールドに飛ばされてしまった……。