甘噛と共に、PAL研究所へと訪れていた或人。情報ではかなり政府軍の軍人の警備によって守られていると忠告されたのだが、警備は手薄を通り越して、無防備であった。
「妙ですわね……」
「まあ考えても仕方ないし、とりあえず入ろうか!」
そう言って或人はずかずかと研究所内に入っていく。
「ちょっとっ、待ってください或人様!」
「あ〜ごめんごめん。……ッ!? 危ない!!」
或人は、甘噛の背後に見えた影を察知して叫ぶ。
「急に……攻撃してこないでください!!」
甘噛は戦棍で謎の敵の攻撃を受けとめ、そしてレイドライザーを装着する。
『fire!』
スロットにキーを装填し、レイダーに実装する。
『フレイミングタイガー!』
甘噛は攻撃してきた敵を無力化し、その姿を確認する。
「え……」
甘噛はその姿を見て絶句する。
「これってまさか……」
「ゾンビじゃ……ない……?」
そう、人だったのだ。どこも腐っていない、何の変哲もない人間、それが侵入した或人たちを襲ったのだ。
「神峰の奴……まさか操っているのか……?」
しかも、捕まえた途端、操られた彼はグズグズに溶け、泡状に融解してしまったのだ。とても正気とは思えないその行為に、言葉を失ってしまう或人。そして、そのあまりにも広い研究所に、来栖崎を見つけられるのか不安になってきた甘噛。
「こうなったら……」
サンはメタルクラスタホッパーに変身し、バッタを向かわせる或人。そして辺にいる戦闘員を無力化し、そして探索させる。するとなにやら隠し部屋のようになっている場所を発見したのでそこに向かうことにした。
「もしかして、隠し部屋?」
男なら誰でも興奮する、隠し部屋という単語に、ワクワクを隠せない様子。ふたりは全速力でそこに向かう。
「来栖崎さん!!!! 来栖崎さーん!!」
だが何度呼んでも返事はない。甘噛が「もう帰ろう」と言いかけたところで……。
「ちょっと待った! ……なにか、物音が聞こえる……」
或人はさらに耳を研ぎ澄ませ、物音の出処を特定する。
「ここか!!」
或人は扉を壊して無理やり入る。そして他のチームが来ても気づけるよう、置き手紙をしておいた。
「よし、甘噛さん。行こうか!」
中には神峰と来栖崎がいた。もちろん神峰は変身しており、来栖崎の首元に刀を突き付けていた。
「やらせな────」
或人が走り出そうとした瞬間、神峰は叫ぶ。
「この少女の命と、君の仮面ライダーの力。この意味、わかるかい?」
その言葉の意味は、誰が聞いても明白であった。つまりは『ゼロワンドライバーを捨てなければ、来栖崎ひさぎは死ぬ』ということ。
「この……外道が……」
すると、或人の脳内に声が響く。どうやら甘噛からの通信のようだ。
『或人様』
「えぇっ────」
つい驚いた声を出してしまいそうになるが手で抑える。
『ど、どうしたんだ甘噛さん』
『わたくしに案があります』
『な、なんだそれは……』
「どうした? 早く選べ。少女か、力か」
などと神峰が急かしてくるので甘噛は要件だけを素早く言う。
『樽神名さんたちが来るまで時間を稼いでください!』
『わ、わかった……』
だが或人は芸人という仕事はやっていたものの、しゃべりが上手なタイプではなかったのでかなりの賭けということになる。だがそれしか策がないというのであれば仕方ない。或人は社長らしく交渉をすることにした。
「まずその前に一つ頼みがあるんですけど、来栖崎さんの声を聞かせて貰えませんか?」
「ふむ。何故だ?」
「本当に生きているのか? という疑問と、そして感染度のリセットの為に血を飲ませたいな、と」
この時ばかりはいつものおちゃらけた態度は封印し、真面目に対応する或人。
「では一つ目の願いは叶えてやろう……と、結論からものを言おうか」
すると来栖崎は声を上げる。
「ゼロ……ワン……?」
「……? ……!」
或人は何かを察したのか笑みがこぼれる。
「……。ハハハハ! なぁ神峰透露。お前、わかってねぇなぁ……ホント、わかってない! だよなぁ、来栖崎さん!!」
「……? ……???」
すると奥の扉が開かれ、そこから来栖崎と、アドたち別働隊が出てくる。
「来栖崎さんはなぁ、俺のことをゼロワンだなんて呼ばない詰めが甘かったみたいだな!」
「はは……よくわかってんじゃないの……ケツパの癖に……」
来栖崎は息絶え絶えの状態でつぶやく。だが或人の血を飲ませ、少し経つと元通りになったので、レイドライザーとスタッグキーを渡した。
「ホントありがとう。みんな。後は俺に任せて!」
そう言って或人はベルトを構える。
「何言ってんのあーちゃん! あたしたち、仲間でしょ!」
そう言ってほかのメンバーがキーを構えるものだから或人は少し涙が出そうになる。
「……。……ありがとう。みんな、行くよ! 変身!」
『KAMENRIDER ZERO-TWO! It's never over』
「神峰透露、お前は、俺たちが止める!」
或人の宣言とともに、戦いの幕は切って落とされた……!
戦いは、一方的であった。神峰がいくらウイルスを撒いてもフレイミングタイガーの超高温で焼き尽くされ死滅し、ならばと一度撤退しようとするとスカウティングパンダの力によって居場所を特定され、スパーキングジラフの力で感電させられる。そしてその隙に来栖崎がクワガタのハサミのような武器で挟み込み、行動を制限する。
「これで終わらせる……!!」
『ゼロツービッグバン!』
或人はキーを押し込み必殺技を放つ。
「はぁぁああ!!」
完膚なきまでに叩きのめされた神峰はなんとか立ち上がり、
「これだよこれ……これを待っていた! その傲慢さ、そして悪への容赦なさ……後悔するといい……」
などと意味深なことを言い、自分に自分で銃を撃ち込み、その人生を終わらせた。
「胸糞悪ぃな……」
姫片が呟く。
「三静寂さん……」
或人もそのやるせなさから、過去に神峰の犠牲になった者の名を呟く。だが彼女達の人生は終わらない。そう、まだ0から始まったばかりなのだから……。
或人は既に、この世界に愛着が湧いてきていた。
「なんなら、この世界で骨を埋めるのも、いいかもしれないな」
彼はそう言って、ポートラルのみんなと一緒に拠点であるデパートへと帰った。