俺は飛電或人、今日はイズからゲーム会社の案件ということで新型のVRゴーグルのテストを予定している。
「ということで或人社長、これです」
「おっけーイズ。これを頭につければいいんだな?」
そして俺が、それを頭に着けた瞬間……。
「あぁっ……?!」
意識を失ってしまった。
────ここは、何処だろうか。確か俺は社長室にいたはず……。なのに今俺は、廃れた街の中に1人寝転んでいる。……。しかも服を1枚も着ずに、だ。
幸い、手にドライバーが握られていたので、最悪変身すればいいか……。……などと思考を張り巡らせていると……。
「うごぉぉう」
「な?!」
俺は咄嗟にその場から立ち上がってドライバーを腰に装着する。襲ってきたのは体が腐ったような……見た目は、俗に言うゾンビなどが近いだろうか。
そして、その怪物がこちらを取り囲むように群がり始めていた。俺はプログライズキーの起動スイッチを押す。……が、反応しない。
「どういうことなんだよ……」
そしてまた、群がる怪物の数は増えていく。絶体絶命……! そう思われたが……。
「そこまでだぜゾンビちゃんッ!」
「うらッ!」
天真爛漫な声と凛々しい声が聞こえた。次いで、きらり、と煌めく刀が怪物を切り裂いた。
「え……?」
顔を上げると、2人の少女が怪物たちを切り伏せ、颯爽と登場した。……これが、ヒーローって奴か……。
「ふっふふー。無事かいお嬢さん? 怖くて腰が抜けちゃったのかにゃ?」
お嬢さん?
「えっと……」
「でも安心しぃーよ! あたしらに目をつけられちゃったからにゃ、もーう自殺なんて許さないぜ?」
「なんであんたがカッコつけるのよ……。どうせゾンビ殺んの、私なんでしょ?」
もう1人の、黒髪に少女が橙髪の少女に呆れ顔でツッコミを入れる。
「ふっふふー、わかってないなーヒサギンは。あたしは啖呵を切る係、ヒサギンはゾンビを斬る係。ほら、win-winな関係がそこに」
「ねーよ」
ヒサギンと呼ばれた少女は即答する。てか、俺置いてけぼりな気がするんだけど……。
「でも、斬り殺す係は、嫌いじゃない」
「ふっふふ〜、知ってるよー」
そして、橙髪の少女がゾンビたちの掃討を再開する。その光景を、俺はただ黙って見ていることしか出来なかった。
「ふぅ。掃討完了。虎口は脱したようだぜお嬢ちゃん」
またお嬢さん……。
「……? ??」
「もー、こんな白昼堂々素っ裸なんて、廃墟を裸で練り歩きたくなった系女子かにゃ?」
最初はなにかの冗談かと思っていたが、こんなにお嬢ちゃんとか言われたら、流石に疑問を抱いてきた。
「いや……俺、男なんだけど」
「おお……お、おお……男?!」
俺は今の自分の格好を思い出す。……俺、裸だった……。
「すっ、すみま────」
「ちょ、ヒサギン! きてきてカムバックヒアー!」
橙髪の少女はヒサギンという仲間を呼ぶ。
「へ?」
「見てよ! ご覧あそばーしょ!」
「何やってるんですか?!」
その少女の、男の裸を意気揚々と見せようとする態度に思わずツッコミを入れてしまう。
「男だよ! 花も咲き誇る男子ちゃんだよ!」
「あーもう、ピーチクパーチクうっさいわね。なによ」
ヒサギンさんは呆れながら戻ってきた。
「って、嘘……。アンタ、本当に男なの……? 男勝りの女じゃなくて?」
「よしヒサギン。致し方あるまい。真実は明らかにせんといかんからのぉ。ほれ少年、立ち上がって例のブツを見せてくれないかうへぐへへ」
……助けてもらった身で言うのはなんだけど、少し怖いです。
「ヨダレ垂れてるわよ」
「あの……」
俺が口を開くと、即座に少女が反応してくる。
「お、見せる気になったかな?」
「見せるな」
その少女の問いかけに即答するヒサギンさん。それはともかく、だ。
「その……ありがとうございますっ、本当に助かりました」
「ふっふふー、礼には及ばないぜ。大したことはしてないよん」
「そりゃアンタは『応援歌』歌ってただけだものね」
「応援歌じゃないよ! テーマソングだよ!」
「誰のよ」
「────君は」
俺は会話を遮って話をする。
「君たちは、一体誰なんだ?」
「え、あたしら?」
「はい。俺、気づいたらここにいて、ここがどこかさえ分からないんだ」
「……え?」
「それにさっきの怪物。君たちは詳しそうに見えたけど……あれは一体なんなんですか? まるで……ゾンビみたいだったけど」
「……ご、ごめん少年。冗談で……言ってるよね?」
確かに俺はよくギャグを言っていたが、状況は考えているつもりだ。とにかく俺は今の自分の状態を話すことにした。
「俺実はさ、目を覚ましたら『この場所』に倒れてて……、この街のこととか、あの怪物のこととか、まったく知らないんだ」
イズが届けてくれたゴーグルをつけたところまでは覚えてるんだけどな……。そしてそれを聞いた2人の少女は顔を見合せた。橙髪の少女は少し考えた後に口を開く。
「……ふむ、なるほどねん。事情は大体わかったぜ、ふむふむ」
少女は腕を組みながら頷いた。
「どうでもいいけど。とにかくその貧相なのを早く隠しなさいよ、不愉快」
『……ライジングインパクト!』
その言葉が、俺の心に深く突き刺さる。
「あはは、貧相だって少年くん!」
「えーっと……」
「とりまあたしの上着貸したげるから、腰に巻いチャイナったら天津飯!」
天津社長の影響で、天津飯のことを『あまつめし』と読むようになってしまったことは秘密だ。
「ごめん……ありがと」
「気にするな少年! 後で再利用するから!」
ともかく、俺は疲れもとれたので少女から服を借りる。
「疲労回復したし、拾うか衣服……。はい! アルトじゃ~ないとっ!」
「……」
どちらも無言であった。こんなときに、イズがいればどう言うだろう……。
「ゴッホン、改めまして。あたしの名前は樽神名アド。んで、このクールなこの娘は来栖崎ひさぎだよん」
「こんな変なのに、紹介しないでよ」
「まぁまぁヒサギン、自己紹介はコミュニケーションの基礎でして」
「こいつが、私の名前知って、なんの得があるの? 鬼に金棒よ」
「えーっと……言いにくいんだけど、猫に小判じゃ……」
「……。……鬼に金棒であってるし。正解だし。マジこいつ意味不明」
「あはは……ま、まぁ少年。行く宛てがないならあたしらについてきな!」
「え……いいんですか?」
「モチのロンだぜぃ! 君をあたしらのユートピアに連れてってあげるぜぃ!」
「っと!」
後ろから攻撃の気配がしたのでとっさに避ける。
「っと、ゾンビちゃんたちがムラムラ笑がって来たぜ」
「わらわら群がって、でしょ」
「意趣返しかなヒサギン! けどどっちも正解な気がするけどねッ!」
「俺も行きます!」
その戦闘に、俺も加わる。変身できなくても、俺は仮面ライダーゼロワンだッ!! だが、この身体が思うように動かない。攻撃に当たりそうになる度に、彼女たちに助けてもらう。
「ご、ごめんっ!」
「もういいから下がってろ!」
来栖崎さんに怒られてしまった。そして掃討も終わり、その戦闘で乱れたマフラーを正しながら彼女は言った。
「もっと強くなれば?」
「まぁまぁ、記憶喪失でいきなりゾンビっちに襲われてるんだし」
「だから?」
「あたしらだって最初は逃げ惑うだけだったじゃん? 立ち向かってるだけですごいと思うよ?」
「逃げ惑うだけ? 必死に戦ったから、今も生きてるんでしょ」
「あはは手厳しいなぁ……。まぁ、少年くんも気にしちゃダメだぜ!」
「……いや、俺はもっと強くならなければいけないんだ。あなたたちの拠点に、そういう施設はありますか?」
「一応あるけど……ってことは、行ってくれるということだね少年くん! だったら、さぁ、我らがユートピアまで急ごうず。歩けるかい?」
「ああ、それくらいなら」
「十全だね。説明なら、歩きながらで十分さ」
不破さんたちの方の描写とゲーム世界の描写は別話にしていく予定です。
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