感染×少女 0と1の間に   作:キラトマト

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第2話 記憶喪失なアイツは敵? 味方?

 拠点への移動を始めた俺は、樽神名さんからこの世界の話を聞かせてもらう。

 

「今から3か月前のこと……世界は突然、終わりを告げたのさ」

 

「終わりを告げた?」

 

「あー……『終わり』ってのは大袈裟だったかもしれやむ。この渚輪ニュータウン全域で、パンデミックが起きちゃったのさ!」

 

「ウイルス……? 悪意から生まれるアークライダーとか、そういうなんですか?」

 

「そのあーくらいだー? は知らないけど……でもそんなんじゃなくて────」

 

 樽神名さんはそのウイルスの危険性を説く。

 

「────潜伏期間はほぼ無しで、感染後の死亡率は100%の──超強毒性のウイルス」

 

「なっ……」

 

 俺は言葉を失ってしまう。────そして────、説明が終わり、拠点であるデパートに到着する。が、結局俺が感染していないことについては分からずじまいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁやぁ皆のしゅー、注もーく!」

 

 会議室と思われる部屋に到着すると、樽神名さんは頭上で手を三度叩き、中央会議室にいる皆の注意を引いた。

 

「敬愛するポートラルの諸君、今日集まってもらったのは他でもない。本日は大収穫があるんですぜぃ! 聞いて驚くなかれの3、2、1──ババン!」

 

 少し溜めてから、樽神名さんは発表する。

 

「男だ!!」

 

「……」

 

 少しの時間を置いて、彼女たちは……。

 

「ななななななんだってッ?!?!!」

 

 まぁ、初めての男なんだからそんな反応だろうとは思っていたけど、いざ実際に体験すると……。

 

「怖いですね……」

 

 目を剥く少女たちの視線に、僕はそう呟く。ホント、洋服屋で着替えておいてよかった。鏡で自分の姿見たけど、変わってたのでかなりビックリした。

 

「ほ、本物の……男かよこいつ」

 

 赤髪の少女はそう言いながら俺の体をまじまじと見つめる。

 

「正真正銘の男子ですぜ、リッちゃん。生存組合『メルター』との会談帰りにさ、日々宮通りに捨てられてたから拾ったの」

 

「俺をなんだと思ってるんですか……」

 

「……しゃべった」

 

 少女たちは、久しぶりの男声に感動したのか、或いは驚いたのか、それだけで「おお」とどよめいた。

 

「また樽神名の笑えねぇ冗談かこりゃ……? 男にゃ免疫がねぇはずだろ?」

 

「仮説であり定説ではなかっただけですね、姫片さん」

 

 生真面目そうな女性がメガネを正しながら口を挟む。

 

「はぁ……男見るだけでここまで感動する日が来ようとはなぁ……」

 

「それで、少年さん」

 

「俺の……ことですよね?」

 

「ええ。申し遅れましたが、私の名前は百喰恵です。初対面で失礼ですが、幾つか質問しても構いませんか?」

 

「はい。もちろんです」

 

「ではまず最初に、感染せずにいられた心当たりなどはありますか?」

 

「……すみません。わからないです」

 

「そうですか」

 

「……分からない? ではどこにいたのですか?」

 

「わからないです。目が覚めたらここにいて……」

 

「では、目が覚めるまでのことは……」

 

 姿が違うということはこの体は飛電或人では無い可能性が高い。ここで社長室にいたとか言ったらまたややこしい事になりそうな気がしたのではぐらかしておく。

 

「……覚えてないです」

 

「……ご職業は?」

 

「分からない」

 

「ご趣味は?」

 

「……分からない」

 

「出身地は?」

 

「……わからない」

 

「名前は?」

 

「……多分……いや、分からないです」

 

『パンチングコング♪』

 

 百喰さんは手に握るペンをへし折った。

 

「お、落ち着いてモグッチ?!」

 

「ゆ、許せません! この男は我々『ポートラル』を舐めています、舐め腐っています!」

 

「違いますっ」

 

 俺はそこで、初めて自分から口を開く。

 

「俺は確かに記憶喪失です。でもっ、俺は! 俺を信じてください!」

 

「記憶喪失ですか……。あなたは本当に、そうのたまうつもりなのですか?」

 

「確かに、俺の受け答えは下手だったかもしれません。でも……記憶喪失は本当なんです」

 

 記憶喪失ってか、そもそもその喪失する記憶が元々なくてまっさらな状態なんだけど。

 

「そんな供述を鵜呑みにしろと」

 

「本当なんです!」

 

「はいはい陰険な空気おしまい! 得ないぜ! これから一緒の仲間になるんだし、まずは仲良くやってくことが先決だよ!」

 

 仲間……。俺はつい顔が緩んでしまった。

 

「……ありがとう」

 

「私は反対です」

 

 そんな感動の場面を壊す者が1人。

 

「この男は私たちポートラルを舐めています。反乱分子は早期排除が妥当です」

 

 厳しいなぁ……百喰さん。

 

「モグッチ、ごめんね、でもリーダーとしては譲れないかもだよ」

 

 そして、口論は俺の口出しができない域まで達していく。だが、それに一石を投じる者が1人。

 

「────水掛け論はよせふたりとも」

 

 人形のような精巧な顔をした女性が2人を抑える。

 

「三静寂さん……」

 

 そして、仲裁が終わると、三静寂さんが俺へと微笑む。

 

「すまない。見苦しいところをお見せしてしまった」

 

「あ、あはは……」

 

 こういうとき、なんていえばいいんだろう……。

 

「私も含め、色々地獄を見すぎてここに立っていてな、幾ばくか疑い深くなってしまったのだ。許してくれ」

 

「い、いえ! そんなとんでもない、こちらこそ、無礼な態度失礼しましたっ」

 

 俺も頭を下げる。

 

「はは、優しいな君は」

 

 でも、悪意に染ってアークワンに変貌してしまったのは事実なんだけど……。と、心の中でつぶやく。

 

「そうだ、まずは私に自己紹介をさせては貰えないだろうか?」

 

「はい」

 

「ありがとう。私は三静寂礼音、『戦闘班』の狙撃手をやらせてもらっている」

 

「『戦闘班』?」

 

 俺が問う。

 

「ああ、この中央会議室にいるメンバーの通称だよ。まぁ、ポートラルの代表として戦える人間を集めて、デパート外活動要員として気張らせてもらっている」

 

「じゃ、また1人増えるわね」

 

 これまで口を開いてこなかった少女、来栖崎さんが口を開く。

 

「え……?」

 

「アンタ、強くなるって言ったじゃない。期待してるわよ」

 

「あ……。はい! じゃあ早速、鍛えるための場所、教えて貰えないかな?」

 

「うんうん。いいねぇ、じゃあ新入りくん、私が案内するよ!」

 

 そう言って樽神名さんは俺の手を引く。

 

「あ、ちょまだ話が……」

 

 百喰さんがそれを引き留めようとするが、三静寂さんがそれを止める。……ありがとう。三静寂さん! そして、俺の強化週間が始まった。




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