「で、地下倉庫を張るとか、単純すぎ。単細胞生物のが考えて生きてるわよ」
「大丈夫だって。……ってか単細胞生物ってなに?!」
まさか俺がそんな馬鹿に見えたってこと?!
「そんなのも知らないの? ほんと……。てか、なんで私まで付き合わされなきゃなんないわけ?」
(いやほんとなんだよ! 聞き取れなかったんだけど?)
だが聞き返すことも出来ず、俺はまず謝罪することにした。
「いや、まぁ……ごめん。でもまあ、頼まれたことは断るわけにはいかないし、かといって離れる訳にはいかないし、さ」
「はぁ……。だとしても張り込みとか……絶対時間の無駄」
来栖崎さんはため息をついて、愚痴をこぼす。
「無駄って……」
「それに犯人が都合よく来るわけないでしょ、アホくさ。何時間待つ気よ」
なんて隠れながらこっそり話していると、辺りをキョロキョロと見回しながら食料貯蔵室の入口に近づく人影が見えた。
「シッ……、誰か来た」
俺は来栖崎さんの口に手を当てる。
「まじなの……意味不明」
「あ、入ってったぞ」
「よし、追うわよ」
来栖崎さんは俺の手を引いて、謎の人物の後を追い、倉庫の中に入る。そしてその中には一心不乱に食料を食い漁る謎の人物が……。って、いやあれ樽神名さんじゃ……。
「完全にビンゴってとこか。てかすげぇな……」
それは尊敬の意ではなく、軽蔑の意だ。まだ決まってはいないが、リーダーともあろう人がこんなことを……。
「うざ。私らみんな我慢してるってのに……」
まだ来栖崎さんはわかっていないようだ。
「ぶち殺し決定よ」
ってはぁ?! 俺はそんな声が出そうになったのを口を抑えて止める。
「な、何言ってるんだよっ、ちょ待てって。穏便にって豹藤さんに言われただろうが」
「穏便にぶち殺すだけよ」
「音便の意味わかってる?」
「……。……引いてくるし」
「待て待て」
俺はゼロワンドライバーを取り出してゼアに接続しようとする。
「あっ……」
そうだ、豹藤さんに渡してたんだった。
「……まぁ要するに『静かに事を済ませる』ってことだよ」
「……静かにぶち殺す」
この人だったら本当にやりそうだから怖い……。
「はぁ……もう、早く行こう」
そう言って俺たちはこっそり、物音を立てずにその子に近寄り、コンテナの物陰をのぞき込むと……。
「はぁ……。あのさぁ……」
俺はため息をつきながら樽神名さんに近づき。
「あ、あああーちゃん?! こ、ここここれには理由が……」
仕方ない。ここは心を鬼にして、と。
「って、えぇぇえええ?!」
早速来栖崎さんが斬りかかっていっていた。
「ちょちょ、穏便にだよ!?」
「穏便に────ぶち殺すッ!」
そんな来栖崎さんに敵わないと悟ったのか樽神名さんは逃げる。
「ちっ! ここじゃ分が悪いな、場所を変えるぜ挑戦者よ!」
「はぁ……ここは樽神名さんのお遊びに乗ってやるとするか……」
────そんな悪ノリに乗ってしまった結果……。
樽神名さんと、姫片さんをカカシにしてしまった。
「なっ……なんだこれは……」
屋上にやって来た三静寂さんがドン引きする。
「いや、ほんと……何してんだろ、俺たち」
「なにしてるって、お仕置じゃない」
「いやいや、度過ぎてるってっ」
「え? そうかしら」
そんなことをサラっと言ってのける来栖崎さんに少し引いてしまった。
「────なんてことがあったんだ。ホントごめんなさいっ!」
あまりの出来事に、張本人でありながら覚えていないという樽神名さんと姫片さんに、全身全霊の謝罪をする。
「まぁまぁ、いいっていいって! ヒサギンとあーちゃんが仲良くなれたって思ったら、ね、リッちゃん!」
「おい、んでアタシまで巻き込まれなきゃなんなかったんだよ? アドおい」
豹藤さんによると、全部樽神名さんが仕組んだことだったらしい。それに姫片さんが巻き込まれた、と。
「まぁ、或人とひさぎは帰っていいぞ」
「じゃあ私も……」
流れに乗じて出ようとするアド。だが姫片さんに止められてしまう。
「アドはここでお仕置きだ」
そう言ってニヤリと笑う姫片さんに、若干の恐怖感を覚えた。そして俺たちはそそくさと部屋を出て、自室へと戻り、眠りにつく。