元陸自のアラサーが貞操逆転異世界に飛ばされて色んなヒロインに狙われる話 作:Artificial Line
ソードワールドやCoCのシナリオ作ったり、Valorantの大会見てたらこんな時期に……。来年のZETAが楽しみです。
頭の中に無数の疑問符が浮かび上がる。アサカがやろうとしていることを理解してしまったが故に困惑が伝播していく。彼は腰に刺していたハンドガンを引き抜き右手に構えた。そして負傷者たちが残された部屋の扉を開こうとする。
彼は負傷者達を殺す気なのだ。やめろ。やめてくれ。味方殺しなど、そんなこと私達傭兵が負うべき責務ではない。別にいいではないか。友軍とはいえ所詮はベネディクテの配下ですらない正規軍なのだ。ましてや友人というわけでもあるまい。何故そんな地獄の道を自ら進もうとする。
「何をする気…?」
彼の目的を理解はしているが、言葉を発することを止める事は出来なかった。だってそうだろう。ほんの少しの共闘とはいえ、彼には窮地を救われた。何故そんな恩人が手を汚そうとしているのを黙ってみていなければいけない。
「負傷者を楽にする」
どこまでも平坦な声でアサカはそう答えた。やはりだ。私の予想通りだ。いまこの状況に限っては当たってほしくなかった。間違っていて欲しかった。
「そんな…そんな"呪い"をあんたが負う謂れは無いでしょう!?私達は所詮傭兵!彼らは友人でもなんでもない!そんな義務も責任も無いはずだ」
アサカは表情の抜け落ちた顔を私に向ける。だけどそれはどこまでも悲しそうで、辛いのだと理解できた。言葉がつまる。声が殺される。長年に渡る戦場経験が飽和していく。
「アリシア、君は戦地に残された兵士がどうなるか、知っているか」
抑揚のない声で彼はそう問いかけてきた。
人族同士の争いであれば、士官や貴族等の上級将校は殺されず、身代金目的の人質として生かされることは多い。事実、私達が人族相手の戦争を行うときも貴族を殺すことは滅多に無い。それはこの世界の暗黙のルールでもあるし、そうした方が金銭的、社会的なメリットも大きいからだ。身代金による懐の潤いは言うまでもなく、その後の戦闘でも捕虜として生き残れる可能性が高くなる。まあ私達傭兵にとっては後者はあまり縁のない話しではあるが。それ以前に貴族階級の将兵を殺しては敵味方問わずに要らぬヘイトを買うことになりかねない。くだらないとは思うが、そうして世界は廻っているのだ。
だがしかし、それが人族では無く、魔物や魔族相手の戦争であればどうだろうか?そんなこと、考えなくても想像できる。連中にとっても、私達にとっても捕虜を取るメリットなぞ一切ないのだ。良くて慰み者、普通は惨たらしく殺されるのがオチであろう。
そんな事は理解している。承知の上だ。だがそれを踏まえても、アサカが心を殺しながら味方を殺す必要など無いはずだ。何度も言うが友軍であろうが所詮は別組織の兵士。何故、何故そんなにも辛い事をしなければならないのだ。
「俺はその光景を見せつけられた事がある。アフガンでの活動中の時だ。CIAのパラミリチームと共同して作戦に従事していたが、HQのミスで俺たちは包囲された。だがC.C.Cのヘリが対空砲火飛び交う戦場のど真ん中に無理矢理駆けつけて、俺と、C.C.Cチームは脱出することができた。だけどさ、うちも企業だから、自社社員優先だった訳よ。収容人数にあぶれた数名のパラミリチームは現地に取り残された。テロリストとゲリラが全周包囲している街のど真ん中に。その後パラミリチームの処刑映像がネットワークを通じて全世界に放送されたさ。数刻だとはいえ、顔を知っている連中が惨たらしく火炙りにされる映像が。俺はあんな気持ちを味わうのはもうごめんだ。彼らを残していったとして、その後どうなったかを考えるだけで気が狂いそうになる。だからやる。義務も責務も無い。これはエゴなんだろう。だがやらなきゃ絶対に後悔する。するんだよ」
光の消えた瞳で彼は言葉を連ねる。話の中に出てくる固有名詞がなんだかは知らないが、大凡の内容は理解できた。理解したが故に息が詰まる。私が今までの戦場で置いてきた彼女らも、その様な目に合っていたのだろうか?なんとなくは理解できていたが、彼の実体験を持って話される内容は、私の想像力を多大に刺激した。身体が止まる。なんと声を返せばいいか、適切な解が思い浮かばない。
その間に彼は扉を開き、中へと入っていった。背筋に槍が差し込まれた様な衝撃を覚え、不可視の拘束がとける。思考の纏まらないまま、私はただその後を追った。
「…!」
息が詰まった。内部は先程よりも一層の死臭を増していた。まだ誰も死んでいない。だがその出血量などを見るに長くはない事は理解できる。苦悶の声と啜り泣く嗚咽だけが部屋に響き渡っていた。
アサカの姿を確認したのか、負傷兵の女の1人が安堵したような表情を向けてくる。疲れ切って、苦痛に満ちた顔。だが何処か救いを見つけた様な顔をしていた。
「ああ…よか…った。このまま食屍鬼に生きたまま…喰われるのかと…思いましたよ」
途切れ途切れに紡がれる言葉は、何処までも安堵に満ちており、それこそが彼女の本心なのだという説得力を伴っていた。他の負傷兵達も同じである。
アサカは靴音を響かせながら彼女たちに近づいていく。そしてその右手に握っている拳銃を負傷兵へと向けた。
「伝言があれば聞く。また強制はしない。拒否するならそれを聞き入れる」
銃を向けられた負傷兵は力なく微笑みを浮かべた。その顔は苦痛に満ちておりながら、何処までも優しさを伴っている様に私には感じられる。
「ハハハ…じゃあ…アリスティド様に…『貴方はお優しすぎる。全て自分で抱え込まない様に』と。それじゃ、お願いします」
彼女はそう言って目を閉じた。アサカが彼女の頭に拳銃を構える。そして背中越しに私に声に声をかけてきた。
「アリシア。部屋を出ていろ」
それが彼なりの優しさなのだということは考えずとも理解できる。だがその言葉に甘える訳には行かなかった。こんな、こんなことを、彼1人に負わせてなるものか。彼が地獄を作るというのならば、私もその呪いを共に受けよう。
「…ふざけないで」
「…そうか」
彼がそういった瞬間に耳を劈く破裂音と閃光が部屋に満ちた。赤い花を咲かせた負傷兵の身体が地面へと倒れ伏せる。息が詰まるが、無理矢理にでも頭をクールダウンさせていく。散々人は殺してきたじゃないか。何故今更動悸を跳ね上げねばならないのだ。そう理解はするものの、心臓の高鳴りが収まることはない。この何処までも酷く嫌な感情は何なのだ。
「ああ…母さん、会いたい…会いたいよ…私、死にたく…」
続けて破裂音が鳴り響く。再び頭に赤い花を咲かせた負傷兵の身体が地面へと倒れた。表情の抜け落ちた顔で引き金を引いていくアサカの内心は、はてどう渦巻いているのだろうか。ただ胸中に芽生えたこの男への印象は『人間性の怪物』というものである。でなければこんな事は出来ない。少なくとも、私にはそんな事をする気概も度胸も無かった。
自分でも矛盾した感情を抱いていることは理解している。しているのだ。
散々人の死に目は見てきた。だがこんなにも引きずられた様に感情がぐちゃぐちゃになったのは初めてであった。
理由はわかっている。これは、この地獄は、今まで無意識に見ようとしなかっただけだ。友軍殺しになりたくなくて、放置してきただけなのだ。今まで、あたしは、これ以上に残酷な事をしてきたのだ。
バァン!
再びの銃声で一気に思考が現実へと引き戻される。
部屋の中で、動くものは最早アサカだけであった。
「撤収する。行こう」
彼の手には無数の認識表が握られている。それは、ここにいた彼女達の唯一の形見であった。
私は無言で部屋を出る。吐き気がする。嗚咽が込み上げる。
なにもできなかった、全てをアサカにやらせてしまった自分に嫌悪する。彼女達の地獄を軽んじた自分に殺意がわく。
だがここであたしまでもが死のうものなら、それこそ笑い話にすらならない。
「正門側へ回ろう。裏から降りては本隊の援護が得られない」
「…了解」
指を思い切り嚙み、その痛みで思考を強制的に切り替える。
ああ、ともかく脱出しよう。これ以上地獄を広める気は毛頭ないのだから。
顔を見合せ、駆け出す。途中発砲音を聞き付けた食屍鬼が階段から上がってきたが、マッスルベアーで瞬時に膂力を強化し蹴り飛ばした。疲労、魔力消耗は確実にあるのだが、むしろ思考はクリアになっていた。どうやらあたしのスイッチもどこか壊れたらしい。
正面側の窓へとたどり着く。アサカは侵入時と同じようにワイヤーを設置しようとするが、それを手で制した。
「どうしたんだ?」
「時間が惜しい。ちょっと、失礼するわ」
アサカの返答も聞かぬまま、あたしは彼を担ぎ上げた。
彼の困惑する声が聞こえるが、無視してエンハンサーの術を発動させる。
ガゼルフット、ビートルスキン。
軽くその場で跳ねる。問題なし。
そしてそのまま助走をつけ窓から飛び降りた。
「ちょぉぉぉおおおお!?」
腕の中でアサカが絶叫している。砦の4階、地上25mほどの高さからなんの説明も無しに飛び降りたのだ。無理もない。
普通の人間であれば即死は免れない速度で地面が迫る。
だが、あいにくとあたしは普通の人間ではなかった。
着地時に成人二人分+各種装備+自由落下速度に耐えきれなかった地面が割れる。衝撃を逃がすため即座にアサカを抱えたまま前宙を行い、そのままの勢いで駆け出した。
流石の食屍鬼共も面食らったのか、行動に遅れが生じる。
その隙を逃さず、ガゼルフットで強化された脚力を持って一気に森へと突入した。
木の幹を蹴り、枝へと飛び乗り、舞うように駆け抜けていく。
その間もアサカの絶叫が轟いているが、身体能力差的にこうすることが最適解であるためしばし我慢してもらうほか無かった。
森の切れ間、本隊の姿が見える。向こうもこちらを視認したのか至近を攻撃魔術がすれ違って飛来した。
勢いそのままに本隊へと飛び込む。
「アリシアが合流した!総員撤退!」
現場指揮を行っていたシキが叫ぶ。それを聞いた面々が遅滞攻撃を行った後に一斉に踵を返して離脱していった。
しばらくすれば背後に追手は存在しなかった。
ひとまず安堵し、大きく息をつく。流石に呼吸が上がっていた。
「一先ずはご苦労様。そんでそれは拾った王子様かなにか?」
シキが一息ついた後に声をかけてくる。撤退中は余裕がなかったが、アサカに怪我などは無いだろうか。そう思い腕の中に顔を向ければ白い顔をしているアサカがいた。
「アサカ、大丈夫?」
「もうまじ無理酔った吐きそう……」
彼はそれだけ言うと、あたしの腕から転がり落ちていく。
命に別状は無さそうだ。色々あったが、今だけは二人揃って生還出来たことを喜んでも、良いだろうか。
あの地獄で死んだ彼女達の命の分、その呪いを背負ってあたし達は生きねばならないのだから。
ともかく、小休止の後にアルムクヴィスト軍の陣地へ向かうことにしよう。
「アサカ」
「ん?」
「ありがとう」
めっちゃ遅くなりました。なんでこんなに時間がたってるんだ(驚愕)
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