サトラレ少女はお嫁さん募集中です   作:百合好きの雑食

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20話 脳内で壮絶な戦いがあったんです

 

 

(……なるほど。卵焼きってお砂糖をいれすぎると焦げやすいのかぁ)

 

 すごく難しい。

 コックさんが仲間になる前にキッチンでお料理をしたくなった私は、お弁当というものに挑戦している。一時的にでもお財布の事を忘れる為の現実逃避でもある。……カヤ! なんてことを!

 

(……ううん。今はお料理に集中!)

 

 椅子に座り、本を読んでいるナミさんに時々質問しながら、色々作ってみる。

 おにぎりも握ってみたけど、形は歪でしょっぱすぎるかもしれない。骨付き肉をぎゅっと押し込んでインパクトはあるけど、野菜が少ないかな? やっぱり彩も大事なのかもしれない。

 

(……味見はしているけど、しすぎて分からなくなってきた)

 

 まずくは無い、と思うけど。美味しいって訳でもない。

 調味料一つとってみてもお料理は奥が深くて、栄養面を考えるなら好物に偏りすぎてもいけない。やはり専門家は必要だと、ナミさんたちのお話に深く同意する。

 

(フルーツは多めにいれて、うん!)

 

 こんなものだろう。

 

 流石に、初めての試作品を人様に食べさせるのはハードルが高い。

 ちょっとだけ、ナミさんに食べて欲しいってむずむずするけど、こういう手作りは好き嫌いやアレルギーを聞いてからじゃないと命にかかわる事もあるしね。……これは夜食にしようと決めて、お弁当は布に包んで大事に鞄にいれる。

 

 

「着きやしたっ!! 海上レストラン!! ゾロの兄貴!! ルフィの兄貴!! ウソップの兄貴!! ナミの兄貴!! ナナのお嬢さん!!」

 

 

 わわっ、大きな声。

 びっくりしながらも海上レストランに着いたと聞いてワクワクする。でも、まずは洗い物をすませないと!

 

「何で私がアニキなのよ……」

 

 ナミさんが不服そうにガタンと立ち上がる。……多分、姐さんって呼んだのをやめてって言ったからだと思います。

 それより、なんで私がお嬢さんなんでしょうか? 声の響きから子供扱いな気がする。……まあ身長が子供な自覚はありますけど。

 

「ナナ、先に行ってるわね」

「はい!」

 

 ナミさんの背中を見送って、ハッとしながらせっせっとフライパンを洗い出す。

 ピカピカにして、ふと目の前の惨状が余計に目につくと(んー……)胸がもやもやしてしまう。お料理でできてしまった残骸。やっぱりこれはダメだな。多めに残ってしまったのが悔しい。……まだ使ったばかりだし、野菜や果物の皮、硬い部分もスープにすれば食べられるかな?

 

(……うん。やっぱり捨てるのも勿体ないし、他のも全部煮込んでしまおう)

 

 多分味が薄くてごちゃまぜで美味しくないだろうけど、お塩でなんとかなる! 食材を捨てるのは過去に餓死しかけた経験から抵抗がある。毒がないなら全部お腹におさめたい。

 

 よし! せっせと、再度洗ったばかりの調理器具を使用して、野菜の皮を更に細かく切ったり、硬い部位を食べやすく刻んだりと調理する。そして使い終わった器具を更に洗い直すとかして、気づけば無駄に時間が経過していた。

 

 ……やはり、心からコックさんは必要だと胸に刻みながら遅れてナミさんを追いかける。

 

 

(海上レストランかぁ! どんな感じなのかなぁ!)

 

 

 胸を躍らせてガチャリ、と扉を開けると。「か……か……紙一重か……」ジョニーさんとヨサクさんが瀕死だった。――――なんで!?

 

「お前ら、やっぱすげェ弱いんじゃねェのか?」

「い……いや、なかなかやるぜ、あいつ」

「さすがのおれ達も、紙一重だ」

「何やってんだよお前ら……」

 

 ルフィさんとゾロさんは平然としているけど、とりあえず手当てしなくてはと慌てたところでぴくっと耳が反応する。

 

 

「んもう、フルボディ。弱い者いじめはそのくらいにして早く行きましょ」

 

 

 艶めかしい美女の声!?

 

 って、んん? 海軍の船? …………あっ!! そうですよ、メリーのペイントだと、海賊船ってばればれじゃないですか!?

 

「今更すぎるだろ」

「ハァ。……ナナ、ちょっとこっちに来なさい」

 

 ナミさんに呼ばれて、あわあわしながら手を繋がれる。

 だから海軍と敵対に!? ジョニーさんとヨサクさんが紙一重に!?

 

 

「何だ、今のは? ……まあいい。運が良かったな海賊ども。おれは今日定休でね。ただ食事を楽しみに来ただけなんだ。おれの任務中には気をつけてな。次に遭ったら命はないぞ」

 

 

 ひえ……こわい。

 私は正確には海賊じゃないけど、海賊にしか見えないなら一蓮托生なのかな? それは良いけど、いざお宝を見つけても海賊の仲間だと思われて財宝没収は困る……うぅ。ちゃんと考えておかないと。

 

「! ジョニーこれなに」

 

 っと。しゃがみこんだナミさんに巻き込まれる様に、ぺたりと座る。

 

「ああ……そいつあ、賞金首のリストですよ。ナミの姉貴」

 

 あ、ちゃんと姉貴って呼ぶんですね。……へえ、そんなリスト初めて見る。怖そうな顔がいっぱい。

 

「ボロい商売でしょ? そいつらブッ殺しゃその額の金が手に入るんす。それがどうかしました?」

 

 ナミさん? 繋いだ手から彼女の動揺が伝わってきて、じっとナミさんを見つめる。

 

「おいやべェぞ!! あの野郎、大砲でこっち狙ってやがる!!」

「えっ」

「何ィ!?」

 

 ……って、大砲!? メリーの危機!? いや、ナミさん!? いやここはナミさんだ!! 大砲ぐらいならルフィさん達が何とかしてくれる!!

 

 ドゥン……!! と飛んでくる大砲に、ウソップさんが「撃ちやがったァ~!!」と騒いでいるが、ルフィさんが「ン任せろっ!!」と動いている。

 あ、そういえば私は初見だなぁ。ルフィさんのあれ。……うん。本当に不思議な体質だ。

 

「ゴムゴムのっ……風船っ!!!!」

 

 ドスッ!! と膨らむルフィさんの腹部に大砲が突き刺さり「返すぞ砲弾っ!!」びよーん!! と砲弾が…………あっ。

 

 

「どこに返してんだバカッ!!」

 

 

 ドゴーン!! と、砲弾が……海上レストランに。

 ……ええと。……わあ、レストランを見るのも初見です。大きなお魚のお船、可愛いなぁ。

 

「!!」

「はぁ……」

 

 はい……。現実逃避はやめましょう。やっちゃいましたね。ルフィさん。

 

 ここにきて選択肢っ。んぐぐ。

 ナミさん。ジョニーさんとヨサクさん。壊れたお船……!!

 

 っ。いつでもお話を聞けるナミさん。怪我をしているお2人の治療。はやめにフォローしないとダメそうな下手したら怪我人がいるかもしれない海上レストラン。優先順位は――――そりゃあ。

 

 

「ナミさん!!」

 

 

 貴女です!

 

「え……」

「お、お話、しませんか……!?」

 

 目を見開いているナミさんを、まっすぐに見つめる。

 

 好きな人を優先するのは当然です。

 それに、レストランに関してはルフィさんが責任をもって謝りにいくべきです! 問題が起きたら私も一緒に謝りに行きます! そして怪我をしているお2人は、まずなんで賞金稼ぎのお2人が海軍に喧嘩を売っているのかそこがよく分かりません! そしてすでに回復中なのは見て分かるのでもう暫くお待ちください!

 

 そうだ。ここで一番気にかけて優先して労わるべきは、大切にしなくちゃいけないのは……ナミさんだ。

 

「……!」

 

 驚いた顔をしているナミさんは、ぐっと唇を噛んで何かを抑え込んで、唐突に私の手を引く。

 

「……こっちに来て」

「はい!」

 

 どこまでだってついていきます! 一瞬だって見逃さない。

 だって、明らかに様子がおかしいから。

 

(……動揺している。何かに、怯えてる?)

 

 手配書? アレを見てからナミさんは多大なストレスに潰れそうになっている。……何かが、あるのなら絶対に力になりたい。

 

「…………っ」

 

 そのまま、ナミさんに連れてこられたのは女性部屋で。……? ここで、何か話があるのかと思っていたが、どうにも空気が。振り返ったナミさんが、不意に私の肩を押す。

 

 ドサリ。

 

「ふあ?」

 

 背中に弾力のあるベッドの感触と、洗い立てのシーツの香りがする。

 え? そのまま、ナミさんに伸し掛かられて、ちょ、魅惑の太ももが間近で見えてますよ!? ……えっ、ええっ? な、ナミさん?

 

 

「……で? 何よ、話って」

 

 

 この体勢で!?

 けろっとした顔で無体すぎません!? あ、あああの、ナミさんが私に乗りあがって、んぐっ。鼻血でそう。いや、ダメだ理性で喰い止めてちゃんとお話ししろ!

 

「んっ。な、なにか、あったんですか……っ?」

「なにもないわよ」

 

 不自然なぐらい、ナミさんはにこりと笑う

 

「……! ほんとう、ですか?」

「ええ。心配してくれてありがとう」

 

 ん!? そ、そこで顔を近づけられると。うわ、うわっ、うわわっ。だめだ、集中しろ私!!

 ナミさんが何をしたいのか分からないけど、今は流されたらダメだ!

 

 震える両腕を持ち上げて、抱きしめたい衝動を百以上殺してから、ぽんぽんっと、背中をあやす様にたたく。

 

「……!」

「な……なら、良かったです! でも、少しお疲れの様なので、レストランでいっぱい食べて下さいね! 私がおごります!」

 

 お財布の中身を思い出して(あれはカヤへの借金として受け取る事にする)無理をしているナミさんの背中をよしよしする。

 

(……貴女が隠したいなら、ウソをつくというなら、私はいくらだってだまされますし、許します)

 

 その上で、貴女から目を離さない。

 

 少しでも、肩の荷を軽くするチャンスを掴みます。それに関する誤魔化しにだけは、だまされません。好きな人には、ちゃんと笑って欲しいから!

 

 

「そういう、とこが……!」

 

 

 え。

 

 ぎゅう、と。

 覆いかぶさる様に抱きしめられる。サラッと、ナミさんの良い匂いと触れる髪の感触がくすぐったい。…………えっ、そして、ナミさんの、くち、びるが。

 

 ほっぺ、に。

 

 

 ――――ナミさん!! あとちょっと理性が無かったら襲ってましたからね!!??

 

 

 

 

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