サトラレ少女はお嫁さん募集中です   作:百合好きの雑食

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34話 終わりよければ愛の告白です

 

「そこまでだ貴様らァ!!!!」

 

 

 ―――ふあ!?

 寝すぎた!? 誰かの大声にギョッとして覚醒すると、目の前に天使が2人いる。いや違う、いや違わない。ナミさんとノジコがいて何故か私は2人に膝枕されている。……これが夢!?

 

 

「何という今日は大吉日!! いやごくろう、戦いの一部始終を見せてもらった。まぐれとはいえ貴様らの様な名もない海賊に魚人どもが敗けるとは思わなかった」

 

 

 え? なに? 寝起きに見た2人が眩すぎて、状況が分からない。

 異なる太股の感触を後頭部に感じて、思わず頬をギリギリと抓ると凄く痛くて、現実に目をしぱしぱする。「……何、あいつ?」しかめっ面で海軍を睨むナミさんに頬をなでなでされ「……さあね」ノジコには頭をよしよしされる。ちょっと幸せが爆弾で襲ってきて意味が分からない。

 

 

「だが、おかげでアーロンに渡すはずだった金も、このアーロンパークに貯えられた金品も全て私のものだ!! 全員武器を捨てろ!! 貴様らの手柄、この海軍第16支部大佐ネズミがもらったァあ!!」

 

 

 ここは現実の筈だけど、色々な意味でシチュエーションが夢すぎるっ。だけど……うーん。幸せだ! なんかもう堪能しても良いのでは?

 

(はあぁ……2人の太股を枕に、頭とほっぺをなでなでされてる……もう死んでも良い)

 

 しっかりじっくりと幸福を噛みしめながら、チラリと、壊れたアーロンパークを視界に入れる。……ああ。血の混じった埃っぽい匂いと、微かな熱の冷めた気配に、寝過ごしてしまった事を察する。

 

(また、目覚めたら全て終わってるのかぁ……)

 

 知らず苦笑が滲んでしまう。となれば、あのネズミ大佐とやらは、それに便乗してやって来たわけだ。

 

(……バカなのかな?)

 

 気づけば、ゾロさんに頭蓋を潰されそうになって悲鳴をあげている。そのまま、集まった島民達に部下ともども鬱憤を晴らすみたいにボコボコにされている。

 

(……あの大佐さんは、つまり。勝敗が決した途端に現れて、隠れて潜んでいた事実とアーロンとの取引を暴露した上で手柄を横取りしようとむざむざ部下を引き連れやってきた、と)

 

 改めて現状を見つめ直しても意味が分からない。どうして、それができると思ったのだろう?

 アレかな? アーロン達と同じで、自分たちの優位性を信じきってノリと武力で押し通せると信じていたのだろうか?

 

(……だとしたら、流石に愚か過ぎます)

 

 観察を続けていれば案の定だ。ネズミ大佐は代表者の人達や血気盛んな島民達に囲まれて攻めたてられている。聞こえるだけでも、ゴサ復興やら残った金品に関与しない事やら今まで海軍が役立たずだった事なんかを、あれよあれよと積み重ねる様に厳しく追及されたり要求されたりと、大変な事になっている。

 

(……本当に、なんで出てきたんだろう?)

 

 此処に集まっている人々は、文字通り命を捨てる覚悟で集まったのだ。

 

 そんな”怖い”人達が、アーロン達の敗北に歓喜の声をあげ溜飲を下げたとしても、直接ぶつけられなかった鬱憤は溜まったままだろう。わざわざ当て馬になる為に登場した様なものだ。はっきり言って間抜けがすぎる。

 こうなってしまえば、この島がネズミ大佐の敵となり、その地位も財産も利用されて搾り取られるに決まっている。集団とはそれぐらい怖いものなのに。……うーん。此処にいるのがココヤシ村の人達だけなら、あっさりと海に捨てられて助かった可能性もありましたけど、これは島に監禁まった無しの直接海軍交渉コースですね。

 

(上手くやれば、この島に一気にお金が入ってきそうです)

 

 いくら最弱の海と呼ばれようと、ここまであからさまな汚点を残した以上、海軍も頭が痛いだろう。同情はできませんけどね。彼らがちゃんと仕事をしてくれれば、ナミさんもノジコも、もっと早く背負っていた積み荷を降ろせたのだ。

 

 チラと見れば、ナミさんとノジコは笑っている。ゲンさんや村の人達も集まって、明るい笑顔で、ある人は涙をこぼしながら、興奮して抱き合っている。

 そんな姿を眩しく見上げながら、そっと目を閉じる。

 

 

(……やっぱり、アーロンは8年前の方が強かった)

 

 

 あのベルメールさんが手も足も出なかった事を視たからこそ、アーロンはこの平和な海で随分と牙が丸くなったというか、ゆっくりとぬるま湯に慣らされていた事に気づいた。……彼らに自覚は無かっただろうが、平和というお酒に芯から浸かりきっていた。

 

(全盛期なら、ルフィさんももっと苦戦したでしょうね)

 

 やれやれと思いながら、あの日のベルメールさんに想いを馳せていると、指が伸びてくる。

 

「そうだったわ。ナナ、おはよう」

 

 へ? ノジコに顎をくいっとされたかと思えば、急に影がさして―――キッス!!?? 衝撃にビビビビッと全身が下から上に震える。

 

「おはようのキス……約束だったしね」

「――――!!??」

 

 間近で微笑まれてウインク付きの挨拶に、一瞬で体の全細胞が目覚めた。

 

「ふっひゃふふふへへ……しょ、しょんなぁ」

 

 慌ててズザザザっとお2人の太ももから距離をとって正座する。

 しかし、舌はふにゃふにゃになってしまい役に立たない。全身が熱い。どんなに頑張っても顔面が緩んでデレデレしてしまい、ナミさんが近づいてきてべしってされる。

 

「なぁに喜んでんのよ」

「いひゃいれふよぉ」

 

 唇の感触を反芻しながら、幸せすぎて顔が緩んで止まらない。

 

「……浮気者」

「へっ!?」

「あら、ナミ。浮気じゃないでしょ? 第二夫人が旦那様を攻めたてるのは違うんじゃない?」

「なにサラッと自分を第一夫人にしてんのよ!!」

 

 けらけら笑うノジコと、怒りつつも楽しそうなナミさん。その後ろでなんか殺意満点に歯ぎしりしながら私を睨んでいるゲンさん。……状況はもう考えても都合よく捉えそうだから横において、とりあえずナミさんとノジコが笑ってるならそれでいいや! 一歩、仲良く喧嘩しているお2人から離れると、ポンっと頭に大きな手。

 

「よっ! ナナ!」

「あ、ルフィさん」

 

 振り返ると、太陽の様に笑うルフィさんがいる。その姿は傷だらけのボロボロで、いっぱい頑張ってくれたんだと分かる。嬉しくなって笑うと、ルフィさんに頭をぐしぐしってされる。

 

「迎えに来たぞ!」

「! ……はい」

 

 ああ。ルフィさんは、ナミさんやメリーだけじゃ無くて、ちゃんと私も迎えに来たんだなって、その一言で分かって、ちゃんと仲間になれないのになって申し訳ない気持ちと、満たされる気持ちにふへへと笑う。

 ルフィさんは満足そうに笑って「腹減ったな~」と、私の頭ごとなでなでするので揺れる。

 

「おいルフィ。レディは丁寧に扱え!」

「んじゃ、パス」

「丁寧に扱えって言ってんだろうが!!」

「あ、サンジさん」

「っと。やあ、ナナちゃん」

 

 言う程には乱暴でもなく、サンジさんにぽすっとパスされる。

 

「ちゃんと触ってろよ!」

「……今更だと思うが。まあ任しておけ」

 

 そんな事を言って、ナミさんの方に行くルフィさん。ナミさんも笑ってルフィさんに手をあげている。改めてサンジさんと向きあうと、恭しく手の先を握られながらニッと素敵な笑顔をみせてくれる。

 

「改まってなんだが、この一味に入る事になったコックのサンジだ。よろしくね、ナナちゃん」

「! そうだったんですね。これからよろしくお願いします、サンジさん!」

 

 わあ、出張料理人じゃ無かったのかとテンションが上がっていく。

 でも、彼のお父さんとの喧嘩はひと段落ついたのだろうか? 海上レストランに留まる事になった2日間。レストランに行く度に、厨房から面白がる様な生温かい視線に見守られ、仲良く親子喧嘩していた光景を思い出す。

 

「……ん、んんっ!!」

 

 サンジさんは急に咳払いをして、煙草を取り出すもぐしょ濡れで気まずげに頭を掻いている。そんな態度に首を傾げながらも、船が真っ二つになってから何があったのかと少し気になるが、それは落ち着いてからでも良いだろう。

 

(終わったんだなぁ)

 

 今は、ノジコもナミさんも心から笑っていて、肩の力が抜けきっている。その後ろには、帽子を深く被って口元を緩めるゲンさんもいて、向こうの方ではウソップさんがゾロさんを医者に見せようとしていた。

 

 

「さァみんな!! 私達だけ喜びにひたっている場合じゃないぞ!!」

「この大事件を島の全員に知らせてやろう!!」

「アーロンバークはもう滅んだんだ!!」

 

 

 わっほう!! とばかりに駆けだしていく人々を見送りながら、せめてとばかりに、ゆっくりと手の平に意識を集中する。血に汚れた手袋はポケットの中だから、今なら深く視えるだろう。ふうっと息を吐いて、吸って、目を閉じる。

 

 

『ごめんみんな!! 私と一緒に死んで!!』

 

 

 ナイフで、自分の肩をめった刺しにして、痛みを堪えながらナミさんは笑う。

 

『私は、アーロン一味を抜ける!!』

 

 私が去ってすぐ、ナミさんは不敵で素敵な笑顔で、アーロン一味の敵になった。

 

『お前の相手は!! おれだろうが!!』

 

 ウソップさんは、相変わらず格好悪いから格好良い、いつものウソップさんだった。

 

『おオオオオオオオ!!!!!』

 

 勇んだり逃げたり、最も臆病だからこそ、一番の勇気を持つ彼らしい逃げ足。

 

『三本でも、おれとお前の剣の一本の重みは同じじゃねェよ!!』

 

 何故か、もの凄い大怪我をしているゾロさん。治療して……!?

 

『悪ィがてめェは眼中にねェ……早くルフィを助けに行かねェと……!!』

 

 それでも、ゾロさんはハチという魚人を、当然だとばかりの態度で倒しきった。

 

『おれはとんでもねェ、アホの船長について来ちまったらしい。――――だが、まァ。レディーを傷つける様なクソ一味より、百倍いいか……!!』

 

 サンジさんは、予想以上に強い人で驚いた。

 

『しょせん雑魚。この”ゲーム”はおれ達の勝ちだな』

 

 その不敵な笑みは、あのお父さんにそっくりな海のコックさんのものだ。

 

『うん。準備運動』

 

 思い付きの技を試して、自業自得にプールに沈められていたルフィさん。……怪我したばっかりのナミさんを働かせたのは、ちょっと思う所がありますが。

 

 

『ナミ!! お前はおれの仲間だ!!!!』

 

 

 とても、悔しいぐらい格好良かったのでいっぱい拍手させて下さい。友愛の意味で大好きです!!

 

 

(……うん。後で、ウソップさんの足取りも追おう)

 

 彼らの戦いを、私はもっと知りたいと願っている。

 

 胸を熱くさせる、余力など一切ない、全てを出し尽くす様な戦い方と背中に憧れる。

 せめて、視える自分だけでも、彼らの歩みを一歩一歩、記録して、覚えていたいと、そう欲深く願ってしまうぐらい。自慢したくなるぐらい。夢を追う彼らの歩みは誇り高い。

 

「ナナちゃん……君は」

「……」

 

 サンジさんが何かを言っているが、でも、ちょっと、そろそろ無理になってきた。……うん。最初に視たのが、好きな人の流血……

 

「あ」

 

 ゆっくりと、じわりじわりと、ショックが心臓にキた。……泣きそうってか、泣く。

 

 な、ナミさんが自傷? ……あんなグサグサ……血が……いっぱい、そのまま、海……飛び込んで……あ、気が遠くな、

 

「ナナちゃん!?」

「え、ナナ? ちょっと、何があったの!?」

「あー……その、左肩がね?」

「あ」

 

 くらくらしていると「ナナ、ナナってば」ぺちぺちされて、ハッとする。

 

「ほら、落ち着いて」

「……ナミ、しゃん」

 

 ぼやけていた視界が晴れた先には、愛しいナミさんがいる。

 そして視界に入る、赤が滲む包帯に心臓が軋み「ナナ!!」はい!? ナミさんにほっぺをむにーっと引っ張られる。

 

「さっき起きたのに、また寝る気? 今からお祭りが始まるのよ!」

「おふぁふひ?」

「そうよ、ナナ。一番良い所で起こしてあげるって言ったでしょう? ここからが一番盛り上がるわよ」

「……んぐ」

 

 ノジコも顔を覗き込んできて、あ、無理。ナミさんとノジコさんの笑顔に、ぐぅっとくる。

 だって、戦いを視たからこそ、こみ上げてくるものがあって、どうしても涙ぐんでしまう。なんとか「ひゃい」と返事をしながら、2人に笑われて、手を握られて無理矢理引っ張られて、なんだろ……なんかもう、彼女達が何を言っても泣きそうだ。

 

「あの、わたし、ええと、ですね」

「「なに?」」

 

 2人同時に私を見てくれる。

 だから、胸がいっぱいなまま、喉がつまりそうなまま、ちゃんとしなくちゃと2人の手をぎゅっと握る。

 

 

「わたし、なみさんと、のじこが、すきです……!! わたしの、およめしゃん、なってくらはい!!」

 

 

 噛み噛みの愛の告白。

 ナミさんとノジコは、ピタリと動きを止めて目を丸くして、それから嬉しそうにふにゃりと笑う。それから2人は、目を合わせて同時に私の耳元に唇を寄せる。

 

 

「バカ。もうなってるでしょ?」

「もちろん、よろこんで」

 

 

 意味を理解して。私は意識をぶっ飛ばした。

 

 

 

 

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