あれから一年が経った。
ずっとバイトを続けていた肉屋の店主や、武器は買わないが立ち寄るだけ立ち寄っていた武器屋の店主とも懇意の間柄だ。
武装国家ドワルゴンは何も変わらず、相変わらず活気的な場所だ。
「俺はそろそろ次の旅に出ようと思うから、今日でバイトは終いにしようかと考えている」
ここを出るのが少し名残惜しい様な気もするが、ずっとここに停滞していては意味がない。
金もだいぶ集まったし次の国に行くべきだ。
「そうか、寂しくなるなあ。今日は扱き使うから覚悟しとけよ!」
「ああ」
寂しい、か。ここでも色々なことを教わったな。
「おーい!アンタ今日で止めちまうんだろ?だったら折角だしここに居る皆で宴会でもやろうぜ!!」
「「「お〜!」」」
誰かが叫んだと思えば、周りの冒険者たちも雄叫びを上げて一気飲みをし始めた。
宴会をしてくれるのは俺は勿論のこと店の売上的にも嬉しいが、コイツラは馬鹿なのか。
「お前さんのための宴会なんだぜ!主役が働いててどうするよ。飲んだ飲んだ〜!!」
此奴は既に酔っているな。顔がアホ面になっている。
しかし最後のバイトなのに働くな、とは。どうしたものか。
「其れもそうだな。お前の今日の仕事は、店の売上に貢献するってことで!」
この店主も上手く纏めやがった。まあ店主本人が言うのならいいか。
俺は酒に強いし悪酔いもしないからな、今日くらい存分に飲んでやろう。
「ありがとう。とりあえずこの酒をいくらか頼む」
「お!兄ちゃん行くね〜!」
「当然だ。飲める時に飲んでおくべきだろう」
俺は煩いのは嫌いだが、酒が入れば多少は気にならなくなるしな。
楽しいことには違いないので、悪くはない。
※ ※ ※ ※ ※ ※
「お前以外皆ほとんどぶっ倒れてるじゃねえか」
「コイツラが酒に弱すぎるんだ。俺に勝つなど300年くらい早いな」
「ふははっ!そうかそうか。………寂しくなるな」
豪快に笑った店主だが、今日はいつになくしおらしい。
「ああ。だがこの国を出た後もここには寄ろうと思ってるからな、二度と会えなくなるわけではない」
次の国と言っても隣の国だ。距離はそう遠くない。俺からすれば、だが。
まあ色々世話になったしな。感謝ぐらいはしておくべきだろう。
「俺はもう行くぞ。世話になった。ありがとう」
「ああ!元気でな!」
俺がこの国の者を殺さなければいけなくなった時、今の俺に出来るだろうか。
いや、それは多分簡単に出来るのだろう。俺は虚無。心などない。殺す時は非常だ。
「心」を深く知れば知るほど、冷徹な感情も増えていく。俺にこの孔がある限り、俺が虚無であることに変わりはない。「心」も興味深いが、やはり俺は俺だ。
次の街に行くか。
※ ※ ※ ※ ※ ※
次の国は、この間俺が消滅させた国の後にまた立てられた国だな。名前は忘れたが。
人間共は馬鹿で理解できない生き物だが、技術力で言えば目を見張るものがあるだろう。ドワーフの技術力は素晴らしいと言われているが、人間も負けず劣らずだ。
ここは唯の人間の国のようだが。興味を引くものもないし適当に店に寄って他の国へ行くか。
カランカラン
一番人が多そうな所に入ったんだが、ここもどうやら冒険者御用達の店のようだ。
売っているのは回復薬。俺には全く必要ないが、金の使いみちにも困っていたし買うか。少し使ってみたいしな。余り質が良いとは言えないが。
「これを頼む」
「銀貨15枚です」
「ああ」
5本程買ってみたが、少し高い気もする。
まあ回復薬というのは貴重なのだろう。人間は再生できないなんて面倒だな。
カランカラン
後は特に目立った場所はないな。
まあこの国はこの間立ったばかりのようだし、無理もないか。
さっさと次の国へ行こう。
※ ※ ※ ※ ※ ※
次はイングラシア王国。ここには互助組織の本部があるらしい。噂だとトップは老いぼれで、権力に固執しているとか。
やはり人間は醜いな。
俺はこの世界で転生者というらしいが、俺以外に召喚者や異世界人という者が居るらしい。
召喚者は国に縛られており、異世界人は好待遇で傲慢さが滲み出ている。所詮人間の醜い姿でありギィ程ではないがな。
とりあえず宿に泊まろうと思ったが、この国も互助組合の本部があるということ以外に目立ったことはない。
武装国家ドワルゴンはかなり発達していたのだと思う。あそこを始めの国に選んでよかった。
この調子だと旅もすぐに終わりそうでつまらないな。まあ旅が終われば自分の領地に帰って城でも建てておくか。
※ ※ ※ ※ ※ ※
あれから5年。特に面白いこともなく、ギィに東の帝国には行くなと言われたおかげで俺は旅を終え、自分の領地に戻った。
ギィによれば普通は領地に住民が住んでいるが、俺は煩いのが嫌いだから住民が居ない所にしてくれたのだと。少しありがたいな。
俺が旅をしている間にも、魔王が増えた。
ヴァレンタインと、、もうひとりは名前も覚えていないが。
まあ名前を覚える価値もない程塵だったということだろう。名だけの弱い魔王などには興味がない。
そう言えばヴァレンタインはおそらく従者の方が本物だろうな。本人としていた方では弱すぎると思ったが、従者はそれなりに強かったしな。
ギィやミリムは気づいているだろうが、ラミリスは絶対に気づいてないだろうな。
最近ラミリスが少しずつ大きくなっている。おそらくもう少しで全盛期とやらになるのだろう。
其れからも弱い魔王がたくさん入ってきたりなどしてルールが出来た。
茶会は気づいたら
あとは天使の軍勢と戦ったな。
アレのおかげで魔王の入れ替わりが激しいんだが、ミリムやギィは問題なさそうだった。
勿論俺も、意志のない者共に負けるほど軟弱ではない。
ラミリスは、全盛期とやらは確かに強かったが其れ以外の時はずっと迷宮にこもってやり過ごしていたな。
時々俺やギィ、ミリムが様子を見に行ったりと面倒だった。
其れから何回も天使の軍勢と戦うことはあったが、やはり弱いな。数が多いと言うだけだ。
そしてレオンという名の魔王が入った。
あの男は元勇者らしい。存在自体が変な奴だが、それなりに強いだろう。ギィのお気に入りだしな。
そう言えばギィは男ではないらしい。性別が自由に変えられるんだと。一度女の姿になってもらったが、傲慢さは変わらずだった。
其れからもなんか色々出たり入ったりしていて、今では
ギィ、ミリム、ラミリス、俺、ディーノ、ダグリュール、ヴァレンタイン、レオン、、あと3人だな。
名前は言わずもがな。弱いが、ギィのお気に入りが居たような、、。まあ俺に興味はない。
次の天使の軍勢が来るまではおそらくこのメンバーで安定するだろう。
※ ※ ※ ※ ※ ※
あれから数十年経ったころ、ジュラの大森林を庇護していたヴェルドラの気配が消えた。
ヴェルドラとは何度かあったことあるが、ダグリュールと張り合っているようでは俺には勝てない。
無限牢獄からはギリギリでヴェルザードが出すつもりだったようだし、特に気にしていなかったが。何があったのか。あいつのことだから勝手に消滅したという事はないだろう。第三者の干渉があったと見るべきだな。ギィもおそらくそうだと言っていたし。
俺はすることもなく、ミリムやラミリスが遊びに来た時の相手をするか、ギィと話すか、自分の領地でじっとしているかしてたんだが、最近ジュラの大森林に魔物の国が出来たらしい。
領主はスライムなのだと。ヴェルドラが消えたことといい、スライムが領主になったといい、何か関係があるかもしれない。
その国は人間の国やドワルゴンと友好を結んだらしい。その御蔭で技術力も素晴らしいのだとか。
もう少し国が発達したら言ってみてもいいかもな。
もう一つ気になることと言えば、イングラシアに自由組合が出来たことだな。
西方聖教会との協力もあり、魔物の討伐量が増大しているようだ。やはり異世界から来るものというのは他よりはマシな強さのようだ。
俺も異世界と言えば異世界から来たが、ギィによると例外なのだそう。
俺の前世の話を少ししたが、元々力を持っていたのは特殊らしい。その影響で転生した時にいきなり
最近はミリムやラミリスが煩い。どうやらあのスライムと友達になったらしいが、コイツラが仲良くなるという奴には興味がわくな。
ついでにそのスライムは魔王種になったらしい。このままいけばいつか魔王になるのだろうか。
ミリムによれば、あのスライムは魔王になりたがっていないらしい。勧誘したのだと。馬鹿だな。
※ ※ ※ ※ ※ ※
ギィにも念を押されたことだし、雑魚の招集だが行こうと思う。
最近はあのスライムが真なる魔王に覚醒したり、ミリムが何か企んでいたりと起こっていたからな。おそらくこの
取り敢えず行くか。
※ ※ ※ ※ ※ ※
俺の名はリムル・テンペスト。最近真なる魔王とやらに覚醒した、可愛いスライムだ。
会談中にラミリスが突然訪れて「この国は滅びる!」的なことを言われてどうなるかと思った。
この
そんな俺は今大きな円卓に座っている。
今俺以外には二人の魔王がいる。
一人目はラミリス。
一応古参だからなのか奥の方に座っている。まあアイツは放置でいいだろう。
もう一人は俺の正面に座っている。
コイツはヤバイ。もう魔素云々でヤバイ。隠し方がヤバイ。
表に出ている実力はカリオン並だが、その本質はわからない。
コイツは明らかなる別格だ。コイツが”ギィ”だな。
その後、ダグリュール、ヴァレンタインと入ってきた。
ヴァレンタインは従者が本物な気がしてならない。
そして次に、ディーノ。
ラミリスを弄ったと思えば、自分の席についた途端、寝た。
古い魔王みたいだが、やる気が全く感じられない。
何気に解析を妨害してくるので、油断は出来ないが。
次はフレイ。
取り敢えずエr……俺は紳士だからな!
従者も色々とすごかった。獅子の仮面を付けた奴がいたが、カリオンではないだろう。
お次は金髪美女。コイツがレオンらしい。
シズさんについての会話をしたあと、特に話すこともなく黙った。
そして暫くした頃、また一人魔王が来た。
残っている魔王を考えれば、コイツがウルキオラなのだろうが、ヤバイ。
ギィと同レベでヤバイ。顔は翡翠の紋に左頭部に仮面があり、なんとも特徴的だ。表情は全く動かないが。
ギィと何かを話し、アイツも奥の方に座ったから古参なのだろう。まあギィと同格だしな。
魔素を押さえているらしいが、ギィと同様少しだけ出しているようだ。その表情も相まって、威圧感がパない。
其れから40分ぐらい経った頃、クレイマンとミリムが来た。
※ ※ ※ ※ ※ ※
ミリムと塵が入ってきたかと思えば、塵がミリムを殴った。
ミリムのことだから操られているわけがないし、何か企んでいるのだろう。今のによく我慢出来たと思うが少しイラつくな。
試しに魔素を少し出そうか。もうこの塵はさっさと殺すべきか。
[面倒なことするんじゃねえぞ。ミリムの企みが見れなくなる]
[、そうだな]
ギィに止められた。まあ良くわからないが、あの塵はスライムが殺す気のようだ。
ミリムの企みのついでに様子見しておくか。
あのスライムかなり強いな。究極能力を持っているとは思わなかった。しかもヴェルドラはやはりアレに関係していたか。
弱っているように視えるが、魔素を押さえているだけのようだ。些か性格が変わり過ぎな様な気もするが。あのスライムが
スライムは魔王に認められたようだ。
個人的にはミリムが所々でガッツポーズをしているのが面白かったな。
その後に、弱いやつがミリムの配下になると言った。俺的には丁度良いと思う。
そしてスライムの一声により、十一人ではなくなったことが指摘された。
「新人のお前の仕事だ」
名前などに興味はないし、ラミリスが賛同しているのでこれでいいだろう。ギィは悪魔の笑みを浮かべている。あのスライムは気の毒だな。
結局はあのスライムのネーミングセンスが高かったため、
それからはほとんどの物が去っていき、いつもどおり俺とギィのみになった。
「あのスライムは究極能力を持っていたな」
「ああ、しかもアレは大罪系だ。他にも何かありそうだし、アレは強くなるぜ」
「少し興味深いな」
「お前が言うなんて珍しいな。次の天使の軍勢の進行では、あのスライム含め全員残りそうだ。楽しくなってきたぜ」
「俺は例の魔物の街とやらに言ってみようと思う。ついでだが、少し前にレオンが話していた協力者についてだ。余り関係ないかもしれないが、
「そうか。まあレオンの不興を買う訳にもいかねえし、気にだけ留めておく」
「ああ。じゃあ」
「お前も油断するなよ。最近は色々と怪しいからな」
ギィの忠告は耳に入れておくとして、いつ魔物の国に行こうか。
人間共の国に行くときの姿で行ってみるか。
少し市丸ギンの名言みたいな物が入ってしまった。
今回はいっぱい書いたから。次回投稿は遅くなりそうです。