この話はウルキオラの性格が少しおかしいかも。
この間の
俺が魔物の国に行きたがっているのを知るミリムが、近々魔物の国で開国祭とやらが開かれるので其れに来れば良いと行ってきたのだ。
その開国祭では色々な出し物が行われ、其のうちの一つに武闘大会があるらしい。
其の武闘大会には、魔王リムルの配下数名と各国の人間共が参加するようだ。
俺には部下もおらず興味もないため他国の情報収集は基本行っていない。警戒するべき者や、急に情勢が変わったりした場所の事は嫌でも耳に入ってくるので、特に問題もないのだ。
なので、魔物の国も具体的にいつ行こうとは決めておらず、開国祭の話もミリムに聞くまで知らなかった。
武闘大会に参加しない者も多くいるようだが、俺の場合は見るだけで大体の実力がわかる。戦力の確認とまではいかないが、祭りとやらを楽しむついでに各国の重鎮やスライムの配下の実力を見るのは良いかもしれない。
だが、俺が魔王だと知られた状態でいけば、色々と面倒だろう。俺の場合は完全に人間に
其れ以外の条件で気づいたものがいれば、大した者だろう。
取り敢えず、ミリムには俺が開国祭に行くというのは黙っていてほしいと言っておいた。其の方が後で面白いことになるとでも言っておけば、ミリムは言うことを聞くからな。
まあ、一番の目的は魔物の国の飯なのだが。ミリムによれば最高に美味しいそうだ。
ギィの配下の用意したものとどちらが美味いのか、魔物の国の方が上手ければ、ギィに自慢してやろう。
※ ※ ※ ※ ※ ※
今日はいよいよ例の開国祭の日だ。
スライムの挨拶を市民たちに紛れて聞いていたが、其れなりにカリスマ性はあるようだ。俺からしたら甘いように感じるが、そもそもの考えが違うので俺は特に何かを言える立場でもない。素直に拍手をしておいた。
演説が終わった後は自由行動となるわけだが、歌劇場という場所で演奏会が開かれるそうだ。
俺は静かなのが好きだが、音楽は嫌いではない。まあ煩くない音楽に尽きるが。
良い音楽というのは俺の中では精神を安定させ、思考を加速させるものでもある。
貴族に紛れて演奏会を聞いて以来、暇なときなどはよく聞きに行っていた。なのでここでも演奏会が開かれるというのなら、聞きに行かないという選択肢は存在しない。
歌劇場に来たわけだが、ルミナスが居るとは思わなかった。
演奏会が終わった途端一番に拍手したのも意外だ。まあそれ程素晴らしい演奏だったというのには同意だが。
歌劇場に来る前に焼きとうもろこしというのを食べたが、其れも中々のものだった。見た目は質素で唯のとうもろこしだが、味は、手入れされた最高級の料理ほどではないが美味い。
これからは暇になったら魔物の国を訪れるのも良いかもしれない。
だが、懸念するべきは、この国の技術発達の速度だ。このままいけば遠くないうちに天使の軍勢が襲ってくるだろう。
まあ演説の時に見た感じでは、配下もそれなりのようだったし大丈夫だろうが。まさかギィと同類の奴が居るとは思わなかったが。
まあ其奴もギィと比べればまだまだなので俺にとって驚異でもなんでもない(原初という時点で性格は油断できないな)。
演奏会の後は昼食の時間だったため焼き〜をたくさん堪能した。どれも良い焼き加減でうまかった。
歴史資料館のようなものもあったが、特に興味もないので通り過ぎ、しばらくはずっと食べ歩きを続けていた。
途中でルミナスと対面したが、流石に向こうも気づいたようだ。まあ魔王だしな。其れで俺が意外と食いしん坊だとかここの飯は美味いだとか、ミリムに誘われてきただとかを話して別れた。
ルミナスも随分と満喫していたようだ。やはりこの国はどの方面にも充実しているな。
温泉とやらもあったが、人も多く、貴族がほとんどだったため行かなかった。俺が魔王だと知れば一人で入れるのだろうが、大きい風呂には余り興味はない。
俺が飯よりも興味を示したのは武器だ。
俺が始めてもらった
ギィによれば、千年以上所持していて、なおかつ俺がギィ並に強かったからこその結果なのだと。普通はここまでの進化はしないらしい。
この魔物の国の鍛冶屋は物凄く腕がいいようで、
武器屋を見て回り、食べ歩きをして、俺はすっかり武闘大会の存在を忘れていた。
まあ本戦は明日からのようだし何も問題はない。逆に今日ほとんど全ての飲食屋台を制覇したことの方が重要だ。
虚数空間に美味しいと思ったものを幾つか入れておいた。今度ギィに上げて貸しを作ってやろう。
まさかこんなに楽しめるとは思わなかった。スライムに会うのは、開国祭の3日間を満足にすごしてからでも遅くはないはずだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※
開国祭二日目、今日は忘れないよう早めに闘技場に来た。既に観客は山の様だったが。
武闘大会は一応見ると決めたからな。
防御結界は二つ。まあ納得だ。出場者のレベルを考えても、アレを破壊することは不可能だろう。
そして出場者の説明を聞いていたわけだが、どうやら迷宮があるらしい。
最近ラミリスが忙しいアピールをしながら魔物の国周辺をウロウロしていたので、おそらくラミリスが作ったのだろう。
どうやら其の迷宮ではスライムとラミリス含め、ヴェルドラやミリムも関係していそうだし、開放されたら見に行くか。
出場者に
大方
戦闘は見たが、ほとんどが大したことはなかった。
だが、あの勇者はかなり特殊なようだ。普通の勇者と比べて、強さとは別次元で違う雰囲気がした。
※ ※ ※ ※ ※ ※
三日目。今日は武闘大会の決勝と迷宮開放の日だ。
締めの日としてのスケジュールは完璧だと思う。いかに客に金を落とさせるか、といった思考さえ見え隠れしてくる。
決勝は、ホブゴブリンと勇者だ。
もはやアレはホブゴブリンではないが。嵐呀狼と合体している時点で種族不明だ。まあ制御出来ずに壁に激突したがな。
ミリムが合体後の姿を見て叫んでいた。とてもミリムらしい。
あの勇者はやはり特殊なユニークスキルを持っているようだ。洗脳に近い気もするが、アレに其れをしようと考える頭はないだろう。実際の実力は皆無だ。
まあ存在自体は面白いし、ギィが食いつきそうな感じではあるが。
アレがあそこで負けを認めたのはアレにとっての最高の選択だろう。弱すぎてバカバカしい気もするが、逆に不思議な気もする。
ギィやミリムは勇者が特殊だと言っていたが、其れを実際に感じたのは今回が初めてだ。
其れなりに充実した決勝だったな。
次は迷宮開放だ。だが、どうやら体験だけのようで、正式開放は後日らしい。
俺は体験などに興味はないので、また食べ歩きをすることにした。
迷宮を普通の人間として攻略するためにも、今日スライムに会うというのはなしにしようと思う。
そろそろ新しく食べるものもなくなってきたのだが、俺にはまだやりたいことがある。
記者になりすまし、各国との取引の様子を見ることだ。
せっかくこの国に来たのだから、知りたいことは全部知っておくべきだ。
……………………………
この光景は
記者という存在を上手く使いつつ取引を有利に勧めている。
結構な話術だと思うし、あのスライムとの雑談は楽しそうだ。
実際に対面するのはまだ後にするつもりだが、この開国祭では随分と魔物の国の良さを見せつけられたものだ。
商魂たくましいな。
ここでは
次にこの国に来るのはおそらく正式な迷宮開放後だろう。
スライムやヴェルドラ、ラミリスを驚かせたいらしくミリムに見た目は一般人として攻略するように言われた。
攻略速度は通常でいいらしい。
※ ※ ※ ※ ※ ※
俺の名はリムル。
ついこの間試験開放の後にマサユキの助言を受け、正式に迷宮開放をし、配下を集めるというディアブロを送り出したばかりだ。
ついに、マサユキ一行が三十階層突破者となった。
実を言うと、昨日の昼頃訪れた無名の冒険者が、半日で五十階層まで到達したのだ。
流石にこれを他の攻略者に公表するわけにはいかず、
本来だったら物凄く焦るんだが、俺達は其の姿を見て瞬時に納得した。
オーラは唯の人間そのものだったが、姿はウルキオラの面影がありすぎるのだ。
初めに気づいたのはラミリス。
ウルキオラは仮面と翡翠の仮面紋、首下の孔を無くしただけの状態だったので、長年一緒に居たラミリスが其の既視感に気づいたのだ。
だが、やはり俺の予想した通りギィ並だ。
たまたまミリムが来ていたのだが、急に雰囲気がぎこちなくなったため、コイツが一枚噛んでいるのだろう。
大方俺たちを驚かせたかったみたいだが、ウルキオラの外見が適当過ぎたためすぐにバレる、なんてことは予想外のようだった。
正体不明の凄い人という感じにしたかったらしい。
結局流石は魔王と言ったところか、俺の配下やミリムの連れてきた竜を一瞬で倒し、一日でヴェルドラが担当するこの階にたどり着きやがった。
全くの化け物である。
「リムルよ、我、ウルキオラとは戦いたくないんだけど」
などと言っているが、ここまでくれば仕方ない。
まあ、当然盗めなかった。
この迷宮で一番の権限を持つラミリスが脅され、情報は遮断されて戦闘シーンを見ることが出来なかったのだ。
結局、ヴェルドラが部屋をでていき、ボコボコになって帰ってきたのを見ただけだ。
末恐ろしい魔王である。
ヴェルドラが伝言を頼まれたそうで、
「この迷宮は割と楽しめた。開国祭の時の屋台をまたやってほしい。あと、近々お前らが集まって会議をしている時に現れるかもしれない」
だそうだ。
うん、まず開国祭来てたのかよ。おまけに屋台って、なんかイメージと違う気がする。
まあ一番重要なのは最後だが。
アイツが本気で隠れようと思えばさ、、、
《解。個体名:ミリム・ナーヴァが居ない場合100%の確率で会議室に現れるまで誰も気づかないでしょう》
うん、だよな。
一体あの魔王は何を考えているのだか。
初めの印象は物凄く無表情という感じだったが、ミリムの策略に参加している辺り割と悪戯好きなのかもしれない。
ディアブロを冥界に送り出したわけだが、早く帰ってきてほしくなった。
その後
其の魔素の放出は、きっとあたったらヤバイやつなのだろう。
俺は魔王の恐ろしさをしかと感じました。
※ ※ ※ ※ ※ ※
幕間-白氷宮にて-
「よお、お前から来るなんて珍しいな、ウルキオラ」
そう、本当に珍しい。
「久し振りだな。実はこの間魔物の国の開国祭とやらに言って屋台とやらで売ってるものを食べてきたんだが、其れをギィにも食べさせようと思ってな。高級料理以外の物を食べるのも大事だぞ」
あの国にコイツが興味を示していたのは知っていたし、大方ミリムに誘われでもしたのだろう。
初めて会った時は無愛想だが強いやつ、そんなイメージだった。
だが、此奴も自分では気づいていないだろうが、旅から帰ってくる頃には少し変わっていた。まあ長年の付き合いの奴じゃなければ気づかない程の誤差程度のものだったのだが。
旅の飯がうまかったらしく、其れなりに食い意地の張った奴になっていたのだ。性格も、変なところで真面目だが、ある程度の悪戯好きでもあるという、かなり以外な性格だということが発覚した。
其れがほとんど表にも内面にもでていないのが面白い。
「焼きとうもろこし、焼きそば、たこ焼きだ」
そう言って俺の目の前に3つの品を取り出し並べる。
「見た目は質素だが、美味いぞ」
「そうか、じゃあ貰っておくぜ」
俺も並べられた其れを虚数空間のコピーにしまい込む。
「ああ、あと、面白い勇者が居たぞ。ついでにお前と同類の奴も。黒だった」
黒。やはり俺の予想通り、
だが其れより、
「面白い勇者?」
「勇者マサユキといって、全然強くないが、雰囲気というか魂そのものが他の奴らとは違う気がした。スキルも面白そうな物だったしな」
「へえ、お前が弱いのに名前を覚えているなんて珍しいな」
此奴は基本的に一定以上弱いやつの名前は覚えていない。おそらくフレイやカリオンと言われても誰だかわからないだろう。
弱いのに此奴が覚えているということは、其奴の魂の格がそれ程印象に残ったのだろう。
勇者マサユキか。会いに行くつもりは今の所ないが、誰かの転生者だろうか。
「あと、
「そうか。楽しめたのか?」
「ああ。あそこの国はとにかく料理が美味いから、ギィも食べに行ったらどうだ?紅茶もきっと美味いぞ」
「そうもいかないぜ。魔王同士は基本的に不可侵だし、俺の目的に影響しない限り俺は行くつもりはないからな」
「そうか。彼処は暇つぶしには丁度良いと思ったんだが。ミリムもラミリスも楽しんでるしな」
「フッ。だが、あの国の行動で東の帝国が動き出すかもしれねえからな。其れまでは干渉するつもりはないぜ」
ジュラの大森林は位置的にも魔王達の中で一番東の帝国に近い(ルミナスもいるが)。
今はまだ大丈夫だが、あのスライムは配下に名付けまくっているようだし、配下の中にも魔王種が大量発生することもありえなくはない。
まあ推測の話だからこそ、会うつもりもないのだが。
「ギィ。俺は今お前に色々情報を渡したことになるからな。これで貸し一つだ」
結局はこれが目的だったりもするので、なんとも言えない。
まあウルキオラやミリム、ラミリスであれば貸しなど無くとも助けるのだが。
「ヘっ、よく言うぜ。俺だってお前に貸しの一つぐらいあるからな、相殺だっつーの」
「フン、まあ話したいことは話したからな。俺はもう行くぞ」
「ああ」
結局一方的に話された感じになったが、まあ彼奴の言う通り情報だって入ったわけだし、まあいいか。
彼奴の話す感じだと、天使の軍勢が早めに来そうだからな。
あのスライムがどう対処するのかは見ものだぜ。
作者、11巻以降の書籍持ってないため、お金を奮発してさっさと買おうと思ってます。
今の所次話の話何も考えていないので、次の更新はもっと遅くなるかも。
なんか話が進むごとに一話分の量がどんどん増えていく。
今回は6000字ちょいまでいきました。