新一と宇田と別れてから1週間が経っていた。初めの何日かの間は新一は宇田と頻繁に連絡を取り合っていたが、喜多の話しによれば敵に動く気配はないということであったため、ここ数日は連絡を取っていなかった。宇田の話しによれば、宇田の勤めているホテルで喜多をアルバイトで雇うことになったということだった。人手が不足しており、また身元保証人が宇田であることから雇ってもらえたと宇田は新一に嬉しそうに話していた。
新一は居間で一人でテレビを見ていた。平和な日曜の夕方だった。
「はあー。俺ってなんでこんなに落ち着いているんだろう?」
新一は独り言のように言った。ミギーがすかさず瞳を出して口を開いた。
「何を不思議がることがある? 別にいつも通りの君じゃないか」
「あのなー、ミギー。つい1週間前に殺されそうになったばっかりで今も命を狙われているっていうのにこんなに落ち着いていていいのかって言ってんの」
「私にとってはその方が好都合だな。変に神経質になられると疲労感がこちらにも伝わってくるからな」
新一はミギーにそう言われるとため息をつき、ソファーに背を預けた。
「くそー、お前にそう言われるとなんかむかつくなー」
「シンイチ、わたしはお前のことを褒めているんだぞ。この緊急事態の中にあってお前のように落ち着いていられる人間はそうはいないからな」
「緊急事態だっていうのに落ち着いているからこうやって悩んでいるんだよ。はあー。やっぱり俺は普通の人間じゃないのかもな」
廊下で足音が聞こえた。足取りから陽菜であることは新一には直ぐにわかった。間もなく、ドアを開けて陽菜が入ってきた。
「お父さん、ご飯だよ」
「ああ、ありがとう、陽菜」
新一は返事をすると先刻まで陽菜が遊んでいたおもちゃを見た。
「それと、陽菜。おもちゃ、後でいいから片付けておくんだぞ。そうしないとまたママに怒られちゃうんだからな」
「えー、やだー」
陽菜はそう言うとおもちゃを片付け始めた。新一もソファから立ち上がると陽菜を手伝った。
「ねー、パパ」
「うん? なんだ、陽菜」
陽菜はキラキラとした目で新一を見た。
「コウヘイおにーちゃんはもう来ないの?」
「ん、ああ、そうだよ。コウヘイおにーちゃんは傷が治ったから自分の家に帰って行ったんだよ」
「ふーん、また会いたいなあ」
陽菜は少し寂しそうな表情を見せた。
「なんだ、陽菜。コウヘイおにーちゃんのことが好きなのか?」
「うん、好きだよ。だってパパに似ているんだもん」
新一は似ていると言われ、少し虚をつかれた。
「えっ、そうかな。パパ、似てるかあ?」
「うん、すごくよく似てる」
「ふーん、どの辺りが?」
陽菜は新一に聞かれると少し悩んだようだった。
「うーん、どの辺だろう」
新一は真剣に悩んでいる陽菜の顔を見ると和んだ気持ちになって笑った。
「ははっ、なーんだ。陽菜分からないんじゃないか」
「ううん、似ているっていうのは本当なんだよ、パパ。何ていうかね、感じが似ているの」
「感じ……かあ。ふーん」
おもちゃが片付け終わった。
「ごはん、ごはん。今日はハンバーグだよ、先に行ってるね。パパ」
陽菜は元気よく立ち上がるとそういいながら部屋を出て行った。新一も間もなく立ち上げると部屋を後にした。
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日中の肌を差すような陽射しが消え、どこからともなく涼しい風が吹き込んでくる夕暮れの繁華街――。人混みを縫うようにして一人の男が歩いていた。後藤だった。美津代の家を出てから1週間以上経っていたが初めて知る外の世界になじめずにいるようだった。要領を得ない後藤の行動は周囲の人間の不信感を招き、時折訝しげな視線を送られていた。尤も後藤は全く気にはしていなかった。
後藤はただひたすら街を歩き、そして休み、また歩くという毎日を繰り返していた。特に目的があったわけではない。ただ後藤の中の本能的な部分が後藤をそうした行動に導いていた。
交差点の角を後藤が曲がった時だった。一人の女が突然姿を現し、後藤とぶつかった。
「あら、ごめんなさい。前をよく見ていなくって」
女は後藤にそう謝った。40歳位の女だろうか。セミロングの髪型が印象的で化粧もあまり濃くなく、こざっぱりした印象の整った顔立ちの女だった。女は両手にいっぱいの荷物を抱えている。
「持とう」
後藤はそう言って手を差し出した。後藤の申し出に対して女は少し驚いた様だが少しするとはにかみながら答えた。
「いいんですか?」
「ああ、構わない」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
女はそういうと右手に抱えていた袋を後藤に渡した。後藤は軽々とその荷物を手に取った。女は後藤の様子を確認すると歩き始めた。
「ここから200m位行った所にお店があるんです。そこまでお願いします」
「分かった」
後藤は無表情に答えた。女は後藤の人物像をまだ測りかねているようだった。時折後藤に視線を向けながら歩いていた。
「今日はどこかにいくつもりだったんですか?」
女は後藤に問いかけた。
「いや、どこに行くというのは決めていない」
「そう、だったらよかったらうちのお店に来ませんか?」
「ああ、構わない」
後藤は答えた。3分ほど歩くと、女の店に着いた。
「ただいまー」
女はそう言うとドアを開き、後藤を招き入れた。店の中には60歳位の男と若い女が2人いた。20人くらいが入れそうなスナックだった。
「お帰りなさい。そちらの方は?」
「お客さんよ。えーっと、名前をまだ聞いてなかったよね」
「後藤だ」
「後藤さんね。さっき交差点でぶつかっちゃって。で、荷物を持ってもらったの」
「へー、そうでしたか。どうもすみませんね」
男は腰を低くして後藤にそう謝った。
「んー、まだお客さん入ってないんだ」
女は店内を見回すとそう漏らした。
「そうだねえ。まだ時間が早いからな」
男が女に答えた。
「そうしたら後藤さん、あそこに座ってて。綾ちゃん、祐美ちゃん、よろしくね」
若い女たちは女にそう言われると後藤をボックス席の一角に座らせ、ドリンクを作り始めた。後藤はその様子を眺めながら女たちに聞いた。
「ここは何の店だ?」
女たちは後藤の質問を聞くと二人で顔を合わせた。そしてくすくすと笑い声を出した。綾と呼ばれた方の女が後藤を見ると答えた。
「えーっと、お酒を飲んでおしゃべりをするお店……ですか?」
「そうか」
後藤は生真面目な顔をしてそう言った。女たちは後藤の様子を見ると再びくすくすと笑った。
「お酒は水割りでいいですか?」
祐美と呼ばれた方の女が後藤に問いかけた。
「いや、酒はいらない。腹が空いた。食べるものが欲しい」
「お食事はまだだったんですか?」
綾が後藤に聞いた。
「ああ、そうだ」
「じゃあ、お腹にたまるものの方がいいですよね。ピザとかならありますけど」
「それでいい」
「分かりました」
綾はそういうとにっこりと笑い、席を立った。
「お酒があれでしたら、ソフトドリンクにしますか?」
祐美は氷の入ったグラスを指先で触りながら後藤に問いかけた。
「いや、飲み物はいらない」
後藤はそういうと周囲の様子を眺めた。
「この店はわたしの他には客がいないのか?」
「そうですねー。まだ時間が早いですから」
祐美は答えた。と、その時、後藤は店の中で気になるものを見つけたようだった。後藤は立ち上がった。
「ん、どうしましたか?」
後藤は祐美に聞かれると指を差した。
「あれだ」
「あれ……ピアノですか? 後藤さんてひょっとしてピアノを弾けるんですか?」
「やってみなければ分からない」
後藤の返答を聞くと祐美は面白そうに笑った。後藤はそんな祐美のことは気にも掛けずピアノの前に進んでいき、椅子に腰を掛けた。
「へー、お客さん、やられるんですか?」
後藤の様子を見ていたマスターの男が声を掛けた。
「ああ」
後藤はそう返事をするとまるで初めておもちゃを与えられた子供の様にどこかぎこちない手つきで鍵盤蓋を開けた。そしてしばらくの間、何かを思い出すようにじっと鍵盤を見つめていたがやがて指を鍵盤の上に乗せ、ひき始めた。
後藤がピアノを弾き始めるとマスターの男は驚きの混じった表情で笑い始めた。祐美は「すごーい」と言いながら後藤が演奏する姿を見ている。
少しするとピアノの音色を聴きつけたのか、奥の方から綾と女が姿を現した。二人ともピアノを弾いている後藤の姿をみると明らかに驚きの表情を浮かべた。
後藤が奏でる音色にはどこか得体の知れない妖艶さがあった。それは聞く者を虜にさせるような何かだった。
後藤がピアノを弾き終わると誰ともなく拍手をした。
「すごい。すごいよ、後藤さん。もしかしてプロのピアニストの方とかですか?」
そう言ったのは祐美だった。
「いや、違う」
後藤は答えた。
「今の曲、よく聞きますけどなんていう曲でしたっけ?」
「分からない」
後藤は祐美の質問にそう答えた。後藤の返答は祐美の笑いのツボにはまったようだった。「分からないって……」祐美はそう言うと腹を抱えながらけらけらと笑っている。
「今のはショパンの幻想即興曲だよ」
後藤の代わりに答えたのはマスターだった。
「わたしはピアノが好きでお店にもピアノを置いているんだけどね、お客さん程上手な弾き手は初めてだよ。もちろん、わたしも結構弾く方ですけど、いやー、お客さんには全然及びませんよ」
マスターは後藤の演奏に少し興奮しているのであろうか。饒舌にそう語った。
「本当に、わたしも鳥肌が立っちゃった」
女は自らの両腕を抱えながらそう感想を言った。後藤は周囲の事にはまるで関心がないかの様にピアノの鍵盤を見つめていた。
「きっとすごく練習されたんですね」
女が言った。後藤は鍵盤から視線を上げるとどこか茫洋とした目つきで前方を見た。
「よく分からない。だが身体は覚えている。わたしの身体の中にある何かがわたしの身体を通じて顔を出そうとしている」
後藤はそういうと口をつぐんだ。女は後藤の何か特別な事情を慮ったのだろうか。それ以上何かを深く尋ねようとはしなかった。
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その日、後藤は客というよりはその店のピアノ弾きとして時間を過ごした。裕美達や他の客からリクエストを受けたこともあったが、後藤自身もピアノを弾くことを楽しんでいた。周囲の人間が喜ぶからではない。後藤はピアノを弾いている時に、過去の自分と対話をしている……そんな感覚を味わっていたからだった。
結局、後藤はその日の営業が終わるまで店にいた。店が終わると後藤はマスターの男と女と一緒に閉店後の作業も手伝った。「悪いわ」女はそう言って後藤の親切をやんわりと断ったが後藤はあまり気にしなかった。マスターの男は後藤のことをかなり気に入った様で、ギャラだと言って少しばかりの金銭を後藤に渡すと共に店専属のピアニストとして通わないかと後藤にオファーを出していた。
閉店作業も終わるとマスターの男は自分の車で先に帰っていった。女は着替えを済ませると後藤に話しかけた。
「本当に今日はありがとう。お客さんなのに何から何までしてもらっちゃった感じね」
「別に構わない」
後藤は答えた。声のトーンは変わらず抑揚のないものであったが、結局周囲の人間に薦められるようにしてアルコールを摂取していたため、頬は紅潮していた。女はくすりと笑った。
「さあ、わたし達も帰りましょうか。わたしは家までタクシーで帰るけど後藤さんの家はどちら?」
「家はない」
後藤はさも当然のように答えた。女は驚き半分で笑みを浮かべていた。
「冗談でしょう? 普段の寝泊りはどうしているの?」
「道で寝ている」
「そうだったの……」
後藤のことをホームレスの男だと思ったのだろう。女は哀れみを含むような瞳で後藤を見ていた。
「ねえ、もしよかったら家に来る? わたしは一人暮らしだし、あなたが寝泊りできるくらいの場所ならあるわ」
女は後藤にそう言った。女がそんな提案をしたのは後藤に好意があったからかも知れないし、後藤の朴訥な性格に母性本能が生まれたからかも知れなかった。
「いいのか?」
後藤は女に聞いた。
「ええ、もちろん」
女は笑顔でそう答えた。
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女の家は店からタクシーで20分程の場所だった。「店持ちだから」女がそう言って料金を払うと二人はタクシーから降り、歩き始めた。
「この道を真っ直ぐいって2つ角を曲がった所が家なの」
「そうか」
後藤が短くそう答えると女は笑った。
「ふふっ、あなたって本当に変わってる」
後藤は笑っている女を見たがなぜ笑っているのかがよく分からなかったため、再び「そうか」とだけ短く返した。
「ねえ、さっきマスターがお店にピアニストとして通ったらって言ってたでしょ? もし良かったら本当に真剣に考えてみてくれない? わたしもあなたの演奏を聞いていたいわ」
「そうだな」
後藤がそう返事をした時だった。後藤は突然ふらつくと脇の電柱に寄りかかり、そして嘔吐した。
「ちょっと、大丈夫?」
「ああ、平気だ」
後藤はそう言って立ち上がったが足元がふらつき今度は尻餅をついてしまった。「大丈夫?」女は再びそう言うと後藤が立ち上がるために手をかそうとした。
「ごめんなさい。ひょっとして無理してお酒を飲ませすぎちゃったのかしら?」
女がそう声を掛けた時だった。後藤の中で異変が起きた。丁度貧血になった時の様に、急に眼前の光景に霞がかかり、意識が遠のいていった。そして、後藤の中では過去の記憶がフラッシュバックしていた。初めて人間に寄生した時の情景――、殺して食してきた多くの人間の顔――、広川との出会い――、肉体の改造――、泉新一との戦い――、そして死――。荒れ狂う波のようにそれらの記憶の断片が、非常に鮮明な像となって後藤に押し寄せてきた。
そして、その波が収まった時だった。後藤は暖かな春の陽光に包まれた場所にいるような感覚を身に感じていた。まるで母の胎内にいるように柔らかい空気が身体を包み込んでいるような感覚だった。そしてどこからともなく、微かに聞き取ることのできる声が響いてきた。
「誰だ? 俺に話しかけているのか?」
後藤は得体の知れない声の主に対してそう問いかけた。しかし、その声の主は何も答えず、はっきりと聞き取ることのできない声で後藤に話しかけてくる。それはまるで子守唄を歌っているかのようなそんな穏やかな声だった。
「よく聞き取れない。何と言っているのだ?」
後藤は再び声の主に対してそう呼びかけた。その甲斐があってか、声は徐々に鮮明に聞こえてきた。そしてその声の主は後藤に対して限りない慈愛に満ちた声ではっきりと告げた。
「この種との調和を」
「この種との……調和?」
後藤は声の主が発した言葉をそのまま繰り返した。
「それは一体どういう意味だ?」
後藤がそう問いかけた時だった。再び眼前の光景がぼやけて来ると、代わりに元の情景に戻った。
女は後藤の肩に手を掛けて後藤を心配そうな面持ちで見ていた。後藤の眼が開くと女は安心したように笑顔を見せた。
「あー、良かった。意識を失ったのかと思っちゃった」
後藤は何も答えなかった。女は続けて後藤に言った。
「どう? 立てそう?」
「俺は……一体何者だ?」
後藤は女の顔に視線を向けることなく、独り言のようにそう呟いた。後藤が酔っ払って思考が朦朧となっていると女は思ったのだろう。くすっと笑うと女はからかうように後藤の問いかけに答えた。
「やっぱり飲みすぎたのかもね。あなたは後藤さんでしょ?」
「……そう、俺は後藤だ」
そう言うと後藤は微かに笑みを浮かべた。そして次の瞬間、女の身体は真っ二つに裂けていた。女は何が起きたのか状況を把握する間もなく、地面に倒れた。鮮血がアスファルトの表面を赤黒い色に染めていく。女は何かを言おうとして唇を動かした様だったがそれが言葉となることはなかった。
後藤は立ち上がった。そして倒れている女には眼もくれずに歩き始めた。闇夜を見据えているその瞳には怪しげな光が揺らめいていた。
********************
「ただいまー」
一人の男がアパートのドアを開けると中の住人に対してそう声をかけた。帰ってきたのは宇田だった。「いや、あっついなー」宇田はそう言いながら冷蔵庫を開けると清涼飲料水のペットボトルを取り出し、コップになみなみと注いで飲み干した。まだ午前の早い時間帯であったが、既に気温は夏日に達していた。
宇田はコップを水ですすいで流しに置くと、喜多の部屋の電気が点いているのを確認して顔をのぞかせた。喜多は窓際に座って外を見ていた。
「おはよう、起きていたんだね」
「ああ」
喜多は宇田を見るとそう短く答えた。
「喜多君は今日は昼からのシフトだったよね。睡眠は十分にとったのかい?」
喜多は何も答えなかった。宇田は暫く喜多を眺めていたがやがてあきらめたのかダイニングに向かった。
しばらく時間が経った。宇田が食事をとっている時だった。喜多が部屋から出てきた。
「ん、喜多君、ご飯を一緒に食べるかい?」
「いや、いい」
喜多は宇田に短く返した。その顔には小さな笑みが浮かんでいた。その瞬間だった。ジョーが叫び声をあげた。
「宇田、気を付けろ」
ジョーの声とほぼ同時だろうか。喜多の右腕の触手が宇田に襲いかかった。ジョーが鋭く反応し、何とか刃を防いでいる。宇田は突然の出来事に言葉を失ってしまっているようだった。
「い、いったい、どうしたんだい……」
宇田は振り絞るように声を出した。
「お前位なら片腕で十分だな」
「こいつ、完全にいかれてやがる」
ジョーは敵意をむき出しにしてそう言った。
「479……この数字が何を意味するか分かるか?」
喜多は宇田に対して問いかけた。宇田は震えながら首を横に振った。
「これは今生存しているキラーチルドレンの数だ」
「宇田、逃げるんだ」
ジョーは怒鳴るような声でそう言った。ジョーは喜多の攻撃を受け止めており、身動きが取れないようだった。そして宇田は身体を硬直させて身震いをしている。喜多は相変わらず口元に小さな笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「そして、この数は今1つ減る」
「おい、宇田、聞いてんのか? おら、動け、動くんだ」
ジョーは大声で叫んだ。しかし宇田は完全に恐怖に飲まれてしまっているようだった。手足はもがいているものの全身の統率がとれていない。
「じゃあな」
喜多の右腕からさらに一本触手を分岐させた。そして先端部分を槍の様に鋭く変形させるとその触手を無造作に宇田の身体に突き刺した。