魔法科高校の秘蔵っ子ガーディアン   作:プレイズ

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第一話 はかなげな劣等生

ここは魔法科高校1年一科生の教室。

現在魔法授業が行われている最中だ。

1対1の対戦形式で、魔法技能の模擬戦が行われている。

「へへっ、喰らいな連斗!」

威勢のいい声を飛ばし、がたいのいい長身の男がジャンプして空中に飛び上がった。

飛行魔法を起動した彼はそのまま身体がぶれるほどの速さで加速する。

高速で前方に進出した状態で男は第2矢を放った。

魔法式が起動し、彼の腕にパリパリと電気の光が弾ける。

次の瞬間、雷撃の閃光が縦一閃に走った。

まるで稲妻のような激しい光が轟音と共に真下へと降り注ぐ。

そして、そこには1人の男子生徒がいた。

彼は迫り来る“雷”に焦りの色を浮かべている。

雷光の攻撃が来る兆候を察知した彼は、一瞬早く障壁を展開していた。

その障壁に雷が直撃する形になり――。

 

ドオン!!

 

轟音と共に雷が障壁を打ち抜いた。

彼の張った障壁は十分な防御性能ではなく、雷撃を防ぎ切れなかったのだ。

「ぐあああーーッ!」

雷を身に受けた彼は衝撃で後ろに吹っ飛ばされる。

そのまま地面を這う形で転がった彼は床に倒れ込んでしまった。

「そこまで!」

戦闘不能と見なした審判がそこで制止をかける。

「この勝負、御陵荒矢の勝ちとします!」

今の一撃で勝負ありと判断した審判が勝者の名を告げた。

倒れ込んだ生徒はしばらく動かなかったが、やがてゆっくりと半身を起こした。

どうやらそこまで危険なレベルのダメージは受けていないらしい。

「へへ、ざまあねえな連斗。俺の雷撃魔法に歯が立たねえでやんの」

「う……お、お腹が痺れてる、、、」

腹を押さえつつ連斗と呼ばれた男がおぼつかない足取りで立ち上がる。

雷の一撃を生身に受けたため、流石に体力が削られていた。

だが“まともに”受けたわけではない。

彼は障壁で雷撃の威力を3/4は殺していた。

障壁の防壁密度が不十分だったため割られる形になってしまい、貫通した一部を喰らってしまったが。

しかし、彼は実はその身に魔法抵抗を付与したオーラを纏ってもいた。

そのオーラは魔法に対する鎧のような効果を持っており、それも雷撃の威力を削ぐ事に寄与している。

結果、連斗は稲妻を受けたにもかかわらず実際のダメージはさほど負ってはいなかった。

まあ見た目には戦闘不能のように見える形になってしまったため、審判に負け判定を喰らってしまったが。

だが彼にとっては“それでよかった”のだ。

「これで模擬戦は俺の3連勝だな。お前ももうちっと鍛えた方がいいんじゃねえか?」

「あ、あはは……荒矢には敵わないよ」

苦笑して連斗が擦れた膝の汚れを払う。

目の前に居る対戦相手の名は御陵荒矢。同じクラスの1回生で雷撃魔法を得意としている。

クラスの中でも魔法師として上位の強さを持っており、他の生徒達からも一目置かれる存在である。

一方、敗れた彼の名は蓮見連斗。

はかなげ雰囲気を纏った物静かそうな男子生徒だ。

容姿はやや中性的で、やや整った顔立ちをしている。

イケメンとまでは言えないが、顔面偏差値は平均以上はあるようだ。

彼は障壁魔法を得意としている防御主体の魔法師である。

しかしその強さは荒矢とは比べるべくもなく、クラスの中でも下位に位置している。

攻撃力は貧弱と言ってよく、相手からすると脅威に感じるような魔法も持っていない。

対して防御力の方は一定レベルにはあるが、高水準のレベルには到底なく、せいぜい平均より少し劣る程度だ。

今行われた模擬戦も2人の実力差を考えれば、この結果は誰しもが予想出来たものだった。

「まったく、また情けなくやられたわね連斗」

呆れたような顔で1人の女生徒が連斗に声をかけた。

彼女の名は七草香澄。

前生徒会長である七草真由美の双子の妹の内の1人である。

「いくら弱いからってちょっとは意地ってもんを見せたらどうなの」

「はは……また恥ずかしい所を見られちゃったな」

「香澄ちゃん、そんなストレートに弱いというのは失礼だと思いますよ」

そう言って香澄の反対側からもう1人女生徒が顔をのぞかせた。

彼女は香澄と双子の片割れの1人だ。

名は七草泉美。ちなみに香澄の方が姉で泉美の方が妹である。

活発でボーイッシュな香澄に対して泉美は大人しくお淑やかな雰囲気を纏った少女だ。

「うっ……泉美の言葉の方が僕にはボディブローのように効くよ、、」

「あら、私何か気に障る事を言ってしまいましたか?」

「泉美、あんたも相変わらずだね……」

無自覚毒舌を発揮する泉美に香澄がやれやれと肩をすくめる。

彼女はおっとりとした性格に反して意外とどぎつい事を言う所があるのであった。

「連斗。こいつらと意見が一致するのは癪だが俺もお前はもう少し強くなるべきだと思うがな」

「琢磨」

双子のさらに後ろから、男子生徒が歩み寄ってくる。

彼は七宝琢磨。クラスでも1、2を争う――いや、学年でも1、2を争う程の実力者である。

このように七宝と連斗は魔法師としての実力差はかなり離れているが、2人は友人であった。

お互い高校に入学して以降に知り合った仲である。

「何さ七宝。僕達と同じ意見じゃ気に入らないっての?」

「そうだ。気に入らない。反吐が出るね」

「んまあ、相変わらずの七宝君ですね。失礼なことです」

七草の双子と七宝がバチバチと火花を散らす。

この2組は数ヶ月前に果たし合いのような形で決闘をした関係だ。

試合は無効試合という形で途中中断されており、決着はつかず仕舞いに終わっている。

「何なら今からあの続きでもやる?」

「いずれはそうしたい所だが、今はお前達の相手をしているんじゃない。俺が話しているのは連斗だ」

七宝は双子を目で追い払うと、再び連斗に向き直った。

「連斗。お前は障壁魔法においては光る物を持っている。だがそれを活かし切れていない」

「……言われてみれば、確かにそうかもね」

「そして防御に意識を向けすぎて攻撃が手薄になっている。あれでは攻められるばかりでジリ貧になるわけだ」

七宝は連斗にもどかしさを感じるように言う。

「お前は特に部活動などには入っていないようだが。何か魔法系クラブにでも入ってみたらどうだ?お前の弱点を鍛錬するにはいいきっかけになると思うんだ」

「クラブ活動か~……悪いけど僕は遠慮しておくよ」

七宝の誘いに対し、彼は首を横に振った。

「どうしてだ?嫌なのか」

「僕は身体を激しく動かす類いの事は苦手なんだよ。今の帰宅部が性に合ってるのさ」

「あーわかる、連斗っていかにも根暗だしインドア派って感じだもんね」

うんうん、と納得したように頷く香澄。

「あはは、根暗って言われるとちょっと傷つくかも……。でも、僕がインドア派なのはその通り。琢磨のように熱く戦闘をするタイプじゃないから」

「ふふ、すぐ癇癪を起こす七宝君とは違って連斗君は温厚で落ち着いてますもんね」

「なっ、おいっどういう意味だ七草泉美……!」

泉美に毒舌をかまされて七宝が軽く青筋を立ててくってかかる。

だが彼女は気にした素振りは見せず、七宝の横を歩いて通り過ぎていく。

「連斗君にクラブに入る意思はない。人それぞれ得意不得意があるのですから、これ以上七宝君がとやかく言う事ではないと思いますよ?」

軽く微笑して七宝に呟くと、泉美はそのまま歩き去っていった。

香澄も彼女の後を追いかける形で立ち去っていく。

「ちっ、相変わらず気にくわない双子だ」

「あはは、まあ琢磨の気持ちは伝わったし嬉しかったよ。僕の事気にかけてくれて有り難うね」

自分を想ってクラブ活動に誘ってくれた七宝に対し、彼は苦笑して頭を下げた。

「別に礼を言われる事じゃない。ただ、お前のポテンシャルを考えればもったいないと思っただけだ」

「買い被りすぎだよ琢磨。僕にはそんな戦闘センスないから」

自分を卑下するように彼は笑ってみせる。

その笑みはまるで自分を嘲笑しているようにも見えた。

それだけ自らが他者と比べて劣っているという認識の表れだろうか。

先程の模擬戦においてもそれは顕著に出ていた。

片や優位に高等魔法を使いこなすクラス上位の人気生徒。

片やろくな攻撃魔法を使えず、平均レベルの障壁魔法一辺倒の下位魔法師。

彼は一科生ではあるが、その中では明確なる劣等生なのである。

そう、表向きは(・・・・)

 

「………」

まだ模擬戦が続いている喧噪の最中、コートの外で寂しげに微笑む連斗の方を1人の女子生徒が見ていた。

少女は彼の先程からの一部始終を見て、違和感を感じていたのだった。

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