ウマ娘とオリ主がイチャつく話   作:シコルスキー

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初投稿です。



ウオッカ編
俺の物語はどのように動き出したのか?


 ゴールデンウイークを目前に控えた4月下旬、なぜか俺はトレセン学園に来ている。

 

 非常に居心地が悪い。

 

 なにしろトレセン学園はレースを競い合うウマ娘達の学園だけあって生徒はウマ娘、つまり女性だらけなのである。そんな環境だから、教師や教官以外の男性、特に自分のような歳の近い若い男は珍しいのだろう。

 ある者は「男の人だ〜」と好奇の目で、またある者は「男なんて」と不審者を見るような目で、またまたある者は「ククク、いい被験体になりそうだ」と実験動物を見るような目で……えっ、今の何?怖っ。聞かなかったことにしよう。

 まあ話を戻そう。俺は人々の視線に晒される生き方はしてこなかったのだから、こんなに衆目に晒されればとても視線が痛いのである。

 

 自分をこんな環境に連れてきた当のウマ娘は鼻歌を歌い、ウェーブ掛かった鹿毛を揺らしながら楽しそうに前を歩いている。せめてどこに行くかぐらいは教えてほしいものだが、着いてからのお楽しみらしい。

 というかその歌うちの母親が10代のころ好きだった歌のはずだが。この前テレビで懐かしソングとして紹介されてたぞ…

 

 どうしてこうなった……

 

 

 

 時は戻ること春休みも終わった4月上旬、トレセン学園大学の講堂で新入生向けの説明を聞いていた。

 

 トレセン学園大学、それはトレセン学園の運営母体であるURAが創設したウマ娘のレースに関わる人材を育てるための高等教育機関である。トレセン学園とは異なりウマ娘だけでなく一般の者にも入学資格があるが、トレセン学園の卒業生の優先枠がある上に、今や日本有数のエンターテインメントとなったウマ娘レースに関わりたい者は多く、一部を除き例年とんでもない倍率を叩き出している。

 そう、一部を除きである。トレーナーを育成するウマ娘育成学部や、ウマ娘医療学部はとんでもない倍率を叩き出すのだが、自分が入学した理工学部それもウマ娘生体工学などというレースにどう関わっているのか分からない学科は人気がないのである。

 まあそんな学部だから入ってくるのはウマ娘を変な方向に好きな変態か、何か事情があるような者ぐらいなのである。

 

 しばらく経ち、説明がひと段落し講師陣が休憩時間を告げると、講堂に騒がしさが戻ってくる。

 

「さて、20分どうしたものか…」

 

 そんな独り言を呟いた時だった。

 

「はろはろ~♪おにーさんひとりかしら?お姉さんとお話しない?」

 

 前の席に座っていたボリュームのあるウェーブがかかった鹿毛のウマ娘に話しかけられた。振り向いた勢いで目の前でそのたわわが揺れる。もうそれはボインボインと。ついその揺れを目で追ってしまう。

 

「あらら~聞こえてないのかしら?」

「は、はひ、聞こえてましゅ」

「うふふ、そんなに焦らなくても私は怒らないから」

 

 邪なことを考えていたせいで焦って答えて思いっきり噛んだ上に笑われてしまった。最悪だ。恥ずかしくて顔見れない…

 

「私はマルゼンスキー。貴方は?」

 

 マルゼンスキー!?その名を聞いて顔を上げる。流石にウマ娘レースにそこまでハマっていなかった自分でも知っている。その圧倒的なスピードで他を突き放すレース展開から『スーパーカー』と呼ばれたウマ娘である。広告にも出ていたし、バラエティー番組でも見たことがある。

 しかし3年前、脚部の故障によりドリームトロフィーリーグに進むことなくレースを引退。それ以降めったに表舞台へ出てこなくなり、次の世代であるシンボリルドルフに世間の話題は移っていった。かくいう自分も名前を出されるまで思い出せなかった。

 

「桐島進ノ介です」

「進ノ介くんね。何て呼べばいいかしら?」

「家族には『進』って呼ばれてます」

「じゃあ進ちゃんって呼ぶわね」

 

 ちゃん付けなのか。いやいいけど。

 

「それから私には敬語いらないわよ。私は18だし、同い年でしょ?それとも浪人生だったのかしら?」

 

自分からお姉さんを名乗っておいて同い年なのか。

 

「そうで…そうだな、俺も18だよ」

「なら決まりね。私のことも気軽に好きに呼んでもいいからね」

 

 それからお互いの情報交換も行った。とはいえ基本的にマルゼンスキーが質問し、自分がそれに答える形だったが。

 

「そういえば、どうして進ちゃんはこの学科に進学したの?」

 

 マルゼンスキーが何気なくそんなことを聞いてきた。正直あまり人に言いたいものじゃないんだよな…子供っぽいし。

 

「あ、ええと、なんというか…」

「…言いたくないなら無理に言わなくてもいいわよ」

 

 言いづらそうにしている俺を気遣ってかマルゼンスキーはそんなことを言う。この数分話して分かったことだが、マルゼンスキーは人にグイグイ来るタイプではあるが、こちらの反応を見て引くことができるタイプだ。これがコミュ強ってやつか…

 

「そうだ、スマホ出して。連絡先を交換しましょう」

「わかった」

 

 俺はスマホを取り出すがUMAINEで連絡先交換など久しぶりで手間取ってしまう。やっと交換画面に行き着くと、マルゼンスキーはUMAINEを開いて手早く交換した。そのままUMAINEを見ている。これが陽キャの交換速度か…

 

「ねえ、これってあなた?」

 しばらくUMAINEを見ていたマルゼンスキーがスマホの画面を見せる。そこには高校の文化祭でメイドカフェをした時の写真があった。しまった。と思った時にはもう遅かった。マルゼンスキーが指さす先にはメイドの格好をした自分がいたのだ。

 

「あ、ああ…」

 

 恥ずかしすぎる。よりによってそれを見られるのか。顔は熱いし、某顔がない人みたいな声しか出なかった。

 

「似合ってるわね」

「え?」

 

 あまりに予想とちがう反応でまたもや間抜けな声が出た。

 

「ほかの女の子に引けを取らないぐらいかわいいわよ」

「それは別に言われても嬉しくないなぁ…」

 

 正直自分の中性的な見た目はコンプレックスなのだ。昔からそのことで揶揄われてきたし、華奢なせいで筋肉も付きにくく同年代に比べても非力なのだ。同級生の女子に腕相撲で負けたときは本気で泣きかけた。というか家で思い出して泣いた。

 

「とにかく、もう見ないでくれ」

 

 そう言って自分のTLからその写真を消去する。

 

「あー、消えちゃった」

 

 マルゼンスキーは残念そうな声をあげるが、黒歴史なのだ勘弁してもらいたい。

 

 講師陣が戻ってきて、説明を再開しますとアナウンスすると講堂に静けさが戻ってくる。マルゼンスキーも前を向く。揺れる髪からいい匂いがする。これが女の子の匂いかなどとまたも邪な考えが頭をよぎるが、振り払い説明に集中する。

 その後はこれからの講義のことについて説明されて説明会は終了した。

 

 説明会が終わると学生たちはさっそくグループを作って群れ始めた。健全に大学生しているようで何よりだと思う。自分は帰ろうかと荷物をリュックに詰め席を立つ。

 

「進ちゃん。この後時間あるかしら」

「ああ、一応あるけど」

「ちょっと付き合ってよ」

 

 そう言うとマルゼンスキーは車のカギを見せる。

 

「これが私の相棒、タっちゃんよ!」

 

 マルゼンスキーに連れられて駐車場に行くと、そこには真っ赤なスポーツカーが停まっていた。確か欧州の高級スポーツカーメーカーの人気車種のリメイクだったはずだ。これがレースで稼いだ者の金の使い方なのかと感心する。

 

「さあ、ひとっ走り付き合ってもらうわ!」

 

 マルゼンスキーはそう言うとスポーツカーに乗り込む。自分も乗り込むとマルゼンスキーはアクセルを踏み車を発車させた。これが間違いだった。

 

 

「あああ!!死ぬ!死ぬ!うあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 結論から言ってマルゼンスキーの車には二度と乗らない。ほんの10分程度のドライブでこんなに命の危機を感じたのは初めてである。俺の心も体もボドボドだ!

 

「どうだったかしら、私のドライブテクは」

 

 当のマルゼンスキーは自信満々なのがたちが悪い。誰だ彼女に免許与えたやつは。

 

「二度と誘わないでください…」

「ええ!?ガビーン!」

 

 ガビーンとか今日日ほとんど聞かないぞ…というか自分で言う人も少ないだろ…

 

「でもまぁ、うちまで送ってくれてありがとうございます」

「もう、敬語はなし。じゃあまた明日ね」

「ええ、また明日」

 

 

 次の日から俺(とマルゼンスキー)の大学生活が始まった。あの日以降マルゼンスキーは積極的に自分に声をかけてきて、一緒に行動するようになっていた。講義では隣に座るし、食堂では共に食事を摂る。

 最初は鬱陶しかったが、地方から上京してきて知り合いのいない自分には心強かったのも事実で、正直感謝している。

 

 

 大学生活にも慣れてきた4月中旬。

 

「基礎ゼミでは実際にレースを走るウマ娘を観察してレポートを出してもらおうと思います」

 

 基礎ゼミの担当教官がそんなことを言う。

 正直キツくないかと思った。まだ元トレセン生徒ならともかく、自分のような完全に外部の人間は競走ウマ娘に関わるのは難しいのである。事実教室がざわつき始めた。

 

「静かに。まだ説明の途中です。心配しなくても、こちらで数回ウマ娘の観察を行う特別講習があるので申し込みをしてください。もちろん自力で許可を取って観察してもらっても構いません」

 

 つまり元トレセン生徒は自力で、そうでない者は学校側でトレセン学園とのコンタクトを手配をすると言うことだろう。すごいぞ、流石天下のトレセン学園だ。そういった連携もバッチリなんだな。ありがたい限りだ。

 

 荷物をまとめ、次の授業のために席を立ち上がる。

 

「ねえ進ちゃん?一緒にどうかしら?」

「んぁ?何のこと?」

 

 ボーッと片付けをしていると、マルゼンスキーが突然話しかけてきた。おかげでまた変な反応をしてしまった。きっと自分の顔は最高に間抜けだったろう。

 

「ウマ娘の観察よ」

「ああ。申し込むよ」

「そうじゃなくて、実際のレースを走るウマ娘にツテがあるんだけど?」

「特別講習で十分だと思うけど」

 

 そう返すとマルゼンスキーは露骨にムッとした顔になる。そんな顔したって俺の意思は曲がらないぞ。

 

「行きましょう?」

「アッ、ハイ」

 

 えっ何これ、すっごいコワイ!泣き落としじゃないのかよ。速攻で負けたじゃん。行くって返事しちゃったよ。

 

「そうこなくっちゃ!連絡は私に任せて。詳しい日時がわかったらまた連絡するわね!」

「あ、うん。よろしくお願いします…」

 

 その日の夜。マルゼンスキーから連絡が来た。

 

『来週の金曜日。大学の校門前に集合ね♡』

 

 確か自分もマルゼンスキー午後の講義はなかったはずである。

 

『了解』

 

 そう送るとよく分からないゴリラがサムズアップしているスタンプが返ってくる。相変わらず彼女のセンスはよく分からない。

 

 

 

 というわけで現在、トレセン学園を歩いているわけである。

 

 過去を思い返していると、突然マルゼンスキーが立ち止まり振り向く。

 

「ここが目的地よ」

 

 マルゼンスキーが立ち止まったのはトレーナールームと書かれた扉の前で、扉には『冨樫トレーナー』と書かれたプレートが取り付けられている。

 

 コンコン

 

「トレーナー?マルゼンスキーよ」

「ああ、入って良いよ」

 

 マルゼンスキーが扉をノックし声をかけると扉の向こうから返答があり、マルゼンスキーは扉を開け中に入る。自分もそれに続く。

 入室すると男性が迎えてくれた。背が高く痩せ型だが、その整った顔にに優しそうな笑顔を貼り付けた、いかにもな優男である。

 

「やあ、マルゼンスキー。元気でやっているようでよかったよ。そっちが例の子かい?」

「ええ、紹介するわね」

 

 そういうとマルゼンスキーは一歩下がる。俺と冨樫トレーナーが向き合う形になる。

 

「やあ、はじめまして。僕は冨樫剛。トレーナーだ。過去にはマルゼンスキーのトレーナーをやっていたんだ。これからよろしくね」

「桐島進之介です。これからよろしくお願いします」

 

 そうして二人で自己紹介をする。

 

「えっ!」

 

 突然冨樫トレーナーの後ろから声がするので、後ろを覗き込むようにすると二人のウマ娘がいる。片方は栗毛をツインテールにしたウマ娘で、ツインテールだけでなくその胸まででかく、全体的にボリューム満天である。片方は鹿毛で前髪に一房白い髪があるウマ娘で、背が高い。胸は…隣に比べると無いな。なんかスゴイ驚いた顔でワナワナ震えている。

 

「ああ紹介するよ、こっちがダイワスカーレット、そしてこっちがウオッカ。僕の担当ウマ娘だね」

「えっ、ウオッカ?」

 

 聞き覚えのある名前を聞いてもう一度ウマ娘の方を見ると、ウオッカがこっちに向かってきていた。そのまま俺の肩を両手で掴む。

 

「久しぶりです!新兄さん!」

「ああ、久しぶり」

 

「「「ええーー」」」

 

マルゼンスキー、冨樫トレーナー、ダイワスカーレット3人の声がトレーナー室に響いた。




読んで頂きありがとうございます。
おもしろいと思ってもらえた嬉しいです。
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