神楽舞   作:天海つづみ

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天ノ川

「疲れたぁ…」

「もう帰って寝よう」

 ギルドを出る、朝日が少し高い

 

「まぶしぃよぃ」

「徹夜明けには辛いな…」

 頭がフラフラする

 徹夜明けって言うより夜行明け

 

「あ、ヒノエ姉さん」

「ヒノエ様」

 

「あら、お早うございます」

 いつもの笑顔

 

「お早うございます…って、

ほとんど寝てないですよね?」

 

「何だか気分が昂って寝られないんです」

 何だかウキウキしてるヒノエ

 いつもなら嬉しくなる影だが、流石に疲れた

 

「ミノト姉さんはぁ?」

「帰って直ぐに寝ちゃったのよ」

そのままギルドへ入って行くヒノエ、

なぜか足取りが軽い

 

 少し歩きタタラ場の前

 

「お前…リオレウスに向かって行ったよな?」

「あー…あれはなぁ…あ??」

「ごまかすなよ、どういう…」

 

「……!」

 

「…ん?」

「何か聞こえたなぁ?」

 

「おのれぇ!!」

 

「なんだっ!!?」

「傘屋のヒナミさんだよぅ!」

 里の入り口を見る、橋の上に

 

「グロオアアア!!!」

「何だぁアレ?!!」

「こっち来るぞ!!」

 構える二人

 

黒い大きな四足の体、ジンオウガ並みの

スピードでタタラ場前へ走って来る!!

 

 紫の炎が揺れる、鋭い眼光、

 尻尾を振り上げ威嚇する

 

構える影、カタカタと太刀が震える…

ベリオロスだってココまで恐くなかった

「しっ!時雨っ!コイツは…」

「わっ、わっかんねぇ!」

時雨も震える、明らかにただのモンスター

ではない空気!

 

「影!時雨!下がってな!」

 追いかけて来るヒナミ

 

 一足飛びで斬り掛かれる距離の影!

 しかし睨まれただけで体が動かない!

 

「どうしたぁ!!」

「何だ!?今の咆哮!!」

「モンスターか!?」

 ハンター達が一斉に飛び出してくる

 

 ヒュンヒュンと尻尾を振り回し

「影ィッ!」

「えっ!?」

 時雨に突き飛ばされた!?

 

「ぎゃうっ!!」

「ドカッ!」

尻尾で突かれタタラ場の石段に

叩き付けられた時雨

 

「時雨ぇっ!!」

助け起こそうとすると、アシラの胴防具が

紫の炎で焼かれている

「時雨!時雨っ!!」

手で叩いて何とか消す

 

 

「てぇんめぇ!良い度胸だコラァ!!」

「この里に入って無傷で出られると思うなよ!」

 

 周りをハンターに囲まれるモンスター

「こやつゲコォ!」

「あの時の恨み!忘れはせんぞぉ!」

 里長も来て大太刀を抜く

 コイツが警戒していたモンスターか!!

 

モンスターはグルリと見回すと

「グルルル…」

なぜか大門の方を見て唸る、と、

突然ジャンプ!!

 

「なっ!!」

「飛べるのか?!」

空中に爆発を起こし、その反動でタタラ場を

越えて飛んで行ってしまった

「やろぉ!逃げんな!!」

「追え!!」

「待て!今は守りを固めるゲコ!!」

「ウツシを呼び戻せ!!」

 

「時雨!目ぇ開けろ!時雨!」

 

 

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

 

 

「おい!時雨は大丈夫なのかよ?!」

「ゼンチ呼ぶか?」

 ギルドの二階、座敷に寝かせられた時雨

 

 階段の所で道を塞ぐミノト

「姉様が診ています」

 誰が来てもそれを繰り返しているが

「影君、いますか?」

 

「…はい」

 

「来なさい、他の方は降りて下さい」

 いつもの事務的な声

 渋々皆が引き上げる

 

「…時雨は…」

座敷には衝立があり、横を抜けて入ると

ヒノエが見上げる

「影君…」

 

「時雨は…」

 布団で寝ている

 枕元には焦げた防具一式

 

「命に別状はありません、しかしこれから

普通に生活出来るかは…」

 

「そんな!」

 そこまで…

 

「影君、分かっているとは思いますが、

時雨は貴方の為に命を掛けました、これは

大きな借りを作りましたよ?」

 

「はい…」

 布団の傍らに正座する影

 

「どうします?」

反対側に正座するヒノエに真っ直ぐ見られる

 

「どうしますって…」

どうしたら良いんだ…

 

「貴方が一生支えて行くのですか?」

 

「………」

 

 

 

 

 ミノトも来てヒノエの横で正座する

 

「…………」

 

 ミノトは溜め息を吐くと

「もしも時雨が女だったら添い遂げる

位の覚悟はありますか?」

 

「これから一生面倒見ないと…ダメですか?」

一生…まだそんなの分からないよ、

俺17だよ?

 

「貴方は命を助けられた、その借りを返す、

覚悟を見せなさいと言っているのです」

 ミノトにも真っ直ぐ見据えられる

 

どうする、どうすれば良い?

ハンターしながら時雨を支えてやるしか…

 

 

 

 

 

 

 

「…時雨は…俺が支えます」

 

「…良かったわね…時雨…」

 二人ともうつ向き横を向く、

 口元を抑え泣く

 

 

 影もうつ向く

 

 

 

 

 

 

 

 

 ?

 

 時雨が少し…動いてる?

 

 

 

 

 

 

 ヒノエとミノトを見ると肩が震えて…

 

 

 

 

 

 泣いて……ない?!

 笑ってる?!

 

「クスクス…」

 

「ちょ!」

 

 

 

 

 

「アハハハハハ!!」

 

 

「ベシッ!」

 笑った時雨の頭をひっぱたく!

 

「いったぁ!影がぶった!」

 

「本気で心配したんだぞ!!

変な声で笑いやがって!!」

 

「変な声って!他に言い方無いの!?」

 布団から上体を起こす

 

「その女みてぇな声だ!!」

 

「鈍い!」

「え…?」

 ミノトの鋭い言葉

 

 

 

 

「影君…わw…分かりませんか?w」

 笑いを堪えながらヒノエが指差す

 

 

布団から起き上がった時雨、その首の辺りには

さっきの火傷と包帯…

 

 

 気付く?何の事だ?

 

 

 …目線を下に

 

 

 何だコレ?

 

 

 

 

 

 確か女性ハンターのインナー…

 

 

 

 

 

「はああああっ??!」

 後退る

「おま!お前っ!女っ?!」

 

「私は失礼します、ゴコク様達の

お手伝いがありますので」

 ミノトは出て行く

 口元を抑え珍しく笑っている

 

「この娘が誰か…分かりますね?」

 

「まさか……天音…」

 

 頷く時雨、いや、アマネ

 

「何で…」

 

「やっぱり忘れてる」

 ジト目の天音

 

「ちょっと昔話をしましょうか」

 

大社跡のキャンプの崖下、広く浅い川、

流れが遅く鏡の様な水面には満天の星

 

川辺には夢中で剣を振る少年

 

それを対岸からずっと見ていた少女が一人、

ガルクに乗って川を渡る

 

天の川に波紋を残し渡ると、少年は

驚いて座り込んだ

 

 

ガルクが更に近づくと

 

 

「カササギ、待って、恐がってる」

 少女はガルクを降りる

 

 少女は少年と色々な話をしました

 少年はこう言いました

「俺は兄ちゃんみたいな凄いハンターになる!」

「お前仲間にしてやっても良いぞ?」

「でも女じゃなぁ」

 

 

こう言われた少女は悔しかった、体が弱かった

けど少しずつ外に出て団子屋で働いた

 

しかし両親が戦死して一人で生きて

行かないとならない

 

13になっていた少女は男になって

ハンターを目指した

 

「ちょ!ちょっと待って下さい!!」

 

「どうしました?」

 首を傾げるヒノエ

 

「じゃあウツシ教官は?!」

 

「知ってますよ?もちろん」

 

「ええっ!」

 

もちろんウツシさんは反対しました、

でも女の子は男のハンターになりたかった

 

そこで私とミノトも一緒にお願いしたら

二つ返事で了承してくれました

 

「…でしょうね」

 この人に頼まれたら断れない

 

その後少女はガッカリする事となる、

少年は狩人ではなく守人になってしまった

 

「春香さん以上にガッカリしたんだからね!」

 睨む

 

「お、おう、何かゴメン」

 声に慣れない

 

「私が天音から聞いた話はこんなところです」

 

「あの、天音の事知ってる人は…」

 

「里長とゴコク様は当然、

あとはウツシさんとハモンさんになりますね」

 

「ハモンさん知ってたのかよ!」

 

「当然でしょ、防具の見た目、

男用にしてるんだし」

 防具を見る

 

「はぁー…」

 溜め息を吐く影

 

「あ、あとイオリも」

 

「イオリ?!あいつが?!」

 

「ほら、あそこ一応私が住んでる事にしてるし」

 

「住んでる事?」

 顔中に?が浮かぶ影

 

「やっぱり鈍いなぁ影は」

「まさかアレを…」

 ヒノエも首を振る

 

 え?何の事だ?

 

「私の家思い出して」

 

 ガルクの島の…でっかい木箱…釜が何個か…

 

「どう見ても犬小屋でしょ!」

 

「あっ!!そうか!!じゃ時雨、

じゃない天音はどこに住んでんだ?」

 

「私達の家に一緒に居たんです」

 

「毎日大変だったんだから、島に帰る

ふりして、翔虫で屋根伝いに戻ったり、朝は

誰にも見られない様に島に行くし」

 

「はあ、なんか…」

 疲れた影

 

「さすがに隠し通せるモノでもないです

からね、良い機会ですから」

 

「声変わりしないから変な話し方にして

誤魔化してたんだけどね」

 

「全然気付かなかった…」

 

 

 

 ピンときた影

「お前!朝起こした時の声は!」

 

「地声」

 

「あの『おいで!』もか…化かされた気分だ…」

 

「見てて楽しかったですが終わりにしましょう、

目の前の織姫に何年も気が付かない彦星が…

もうなんだか…」

 クスクス笑う

 

「それって七夕の…?」

 不思議そうな天音

 

「だってそうでしょ?天の川をカササギで

渡って会う男女って、まるで織姫と彦星だもの」

 

「四年もか…ヒノエ様、ずっと見て

笑ってたんですか?」

ヤバイ、俺変な事してないよな

 

「初めて手料理作ったら、まさか叩くとは

思いませんでした」

 クスクス笑う

 

「あ、あー…」

 やべぇ…

 

「一生言ってやる」

 ジト目の天音

 

「あらあら、凄い事聞いちゃった」

 ヒノエは上を見ると

「お疲れ様ですウツシさん、

里長なら一階ですよ?」

 

「どういう意味なの?ヒノエちゃん」

 天井からウツシ隊が降りてくる

「なっ?!」

「教官?!」

 

 布団の周りに四人が降りると

「俺も分からないんだけど?」

 トウジも首を傾げる

 

「男ってダメねぇ」

「師匠もトウジもモテない訳だわ」

 ヒナミとアヤメ

 

「姉さん、私何か言っちゃった?」

「俺も何の事だか…」

 天音と影も分からない

 

「あらぁ、天音も案外鈍かったのね」

 笑うヒノエ

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 

 

「時雨が女ぁ?!」

「マジか?!」

「いや、確かに顔は良いけど男か女か分からねぇ」

「いっつも笑ってるから素の顔知らねぇかも…」

 ウツシ達に伝えられたハンター達

 

「僕の隊を休ませてもよろしいですか?」

 

「うむ、連日の索敵と戦闘、ご苦労だった」

「十分に休むゲコ」

 

「なぁ里長、ゴコク様、偵察に出ても良いか?」

 春香と仲間が聞くが

 

「皆徹夜明けだ、申し出は助かるが…」

 

「問題ねぇぜ、先輩達を休ませてくれ」

「里の周りを見てくるだけだ」

 

「うむ、戦闘はするな、無事に帰る事を

優先するゲコ」

 

 

 

 

 

 




あの二体を見て七夕が先に出たんだよね、
戦うと風神雷神なんだけど
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