夕方春香達は戻った、あるものを持って
「この傷…食いちぎられているゲコ」
持ち込んだのは砦に残っていたヌシの首
「もう一体にも喰われた跡があったぜ?」
「タタラ場の足跡と同じ足跡あったぞ」
「ゴコク様、あのマガイマガドってやつが
夜行起こしてんのか?」
春香が腕組みする
「うむ、明日の朝全員が揃ったら話すゲコ、
今日はもう休め、ウツシが起きたら索敵に
行かせるゲコ」
…………
「……ん?」
目が覚める影、徹夜明けで昼に寝た為に
起きてしまった、今何時だろう
戸を開けて空を見る、
明け方までも時間がありそうだ
外に出てみる
「ふぅ…」
夜風が気持ち良い、いつもの喧騒も無く、
タタラ場も閉まっているために無音
色々ありすぎた…
天音は俺が言った事を…ずっと…
ペタラッ!ペタラッ!ペタラッ!…
タシタシタシ…(ガルクの足音)…
「あ…影…」
ガルクに乗った天音、水色の浴衣に赤い帯、
いつもの髪型
暫し見つめ合うと
「なんだよ、また夜の散歩か?」
やっべ…可愛いく見える…
うわ!俺インナー一枚じゃん!
「良いじゃない」
プイと横を向く
「…」
「…」
お互いに言葉が続かない
「あ、あー…」
「あのさ、大社跡行ってみない?」
天音は影を待たせると島からガルクを連れてくる
「ほら、自分で乗って」
「俺こんな格好だぜ?」
ガルク怖えぇ
「いつも朝はその格好でしょ?見慣れてる」
時雨はいつも防具全部着てた、
その姿しか知らなかった
……………
「早いんだな、着くの」
いつもは船で来ていた
「こっちは距離があるけど、
ガルクに乗れば船より早いのよ」
森の中を抜けて来た
二人で河原へ座る
「あの辺に影がいてさ」
指差す
「なぁ、あの時どんな話してたんだ俺?」
「八割はお兄さんの自慢かな」
二人で笑う
あの頃は兄貴が世界の全てだったかもしれない
「毎日色々やってくれたな」
「だって全然気が付かないのも癪だしね」
「ヒノエ様も冗談キツいな、結局軽傷なのに」
「姉さんにはお世話になってるし、
恩があるからさ、逆らえないもん」
「あ、あの雑炊は旨かった…です」
「当然!ミノト姉さんに料理は教わったからね」
威張る
「なぁ天音…俺んちの風呂に入りたがったのは
何でだ?」
顔を見れない
「あ、あれはヒノエ姉さんが」
うつ向き顔を赤くする
「恥ずかしいよ姉さん!」
「あら、影君なら覗きはしないでしょう」
「多分しないけど…男だと思ってるし」
「ならいいじゃない、ギリギリまで攻めて
みなさい、天音だって本当は影君に気付いて
欲しいでしょ?」
「本当に面白がってたのかw…っ!」
「そうなんだよw…っ!」
突然二人は固まる、顔が近い!
いや…それにこれは!
「ねぇアヤメ、見つめあってるのアレ?」
キャンプから見下ろす
「何か変ね?凝視してるって感じだわ」
「ヒナミ、アヤメ、索敵の途中だよ?」
言いながら見るウツシ
「師匠、あの二人どう思います?」
「…まさか今さらデートしてるって
気が付いたんじゃ…」
トウジも腕組みして見る
「まさかぁ!」
「だとしたら」
「相当なポンコツだね…」
四人の予想通り
あれ?ヤバくね?二人っきりで?夜中に?
里の外で話してる?これはまさか…
噂に聞く『でぇと』と言うやつじゃ…
ちょっと待って、夜中に二人っきりだよ?
しかも誘ったの私だよ?これは
『私がデートに誘った』事になるのでは?
「ふ、…ふふふふ…」
「あ、…あははは…」
目線をそらし距離を離す、
気まずい!めっちゃ気まずい!
「ポンコツだね」
頷く部下達
どうしよう!ここからどうすれば正解なんだ!
時雨、じゃない天音はどうする気なんだ?!
影はインナー一枚だし、私浴衣だよ?!
なのにデートに誘ったの?!
これってどう思われるの?!
『いっそモンスターでも出て来てくれ!!』
二人が思うと
「ざっ…ざっ…」
足音に振り返る
「対よ…対よ…我が対は…いずこか…」
「ヒノエ様?!」
「ヒノエ姉さん?!」
そんな二人に気が付かない様にヒノエは歩く、
目が金色に光っている
「何でヒノエちゃんが!」
「ドドドドドッ!」
森の方からモンスターが一斉に飛び出して来る!
イズチ、オサイズチをはじめアオアシラや
ファンゴ、まるでこの狩場全体の
モンスター全部
「ヒノエ様!」
「姉さん!」
駆け寄り肩を揺さぶると
「あ、あら?」
目の色が戻る
「ここは?」
「逃げますよ!」
「こっちへ!」
ガルク2頭と一緒に川を渡ると
「早く登れ!」
「教官?!」
ウツシたちがキャンプから飛び降り、
守る様に並び構える
「ガロロァ!」
「あれは!例のモンスター!!」
「あれに追われてるのか!!」
部下達は動揺するが
「マガイマガド、やるしかないね…」
双剣を構えるウツシ
マガイマガドはオサイズチに飛びかかると、
喉笛に噛みつき食い破る
他のモンスターは足を止める事もなく
こちらへ来るが、ウツシ達の目の前ので左右に
分かれていく
「オサイズチ1頭で満足してくれよ…」
ウツシが呟く…と
マガイマガドは空を見上げ
「グルルル…」
唸るとオサイズチを咥えたまま左奥の方へ
走って行った
こっちに注意を払わない、
他のモンスターも…なぜ?
一陣の風、突風が吹いたと思うと
「ゴアアアァー!!」
!!!
予想外の方向からの咆哮!!
全員が真上を向く
「何だあれは!!!」
雲の切れ間から身をくねらせる龍らしき姿!
金色に光る目!
その咆哮と気配に逃げ回るモンスター達!
「師匠、まさかこれは!」
「あの龍が…」
「あのマガイマガドとか言うヤツは…」
「大変だよ!直ぐに報告しなくちゃ!」
……………
朝
「大体揃ったな」
里長が腕組みする、いつものギルド、
一段高いテラス席
「皆、コレを見るゲコ」
広げた紙にはゴコクの絵
昔の装束の人々が弓や剣を持ちモンスターの
群れに向かう姿、猫族やガルク、フクズクも
描かれている
そしてモンスターの群れの一番奥に禍々しく
描かれた1頭は…例のモンスター
「これは50年前の百竜夜行を
ワシが描いた物ゲコ」
ざわつくギルド
「この絵を見ての通り、我らが怨虎竜、
マガイマガドと名付けたモンスターが
百竜夜行を起こす…と思っていた」
「そうなんだろ?ヌシにも喰われた
跡があったぜ?」
春香の言葉にまたざわつく
「コイツに喰われるから逃げてんのか!」
「昨日も結局は最後に来たよな…」
「間違ってないよな」
「ところが今日未明にウツシが新たな
存在を確認した!」
里長の言葉に全員が固まる
「新たな…存在?」
「新種か?」
「大社跡の全モンスターが
逃げ惑っていたそうだ!」
「全部って…」
「そんな化け物が?」
「まさか…それで夜行が起こるのか?」
「どうやらマガイマガドは逃げ惑う
モンスターを、横から狙ってエサにする…
そういうタイプのモンスターゲコ」
「昨日の様子を思い出して貰いたい…
ヒナミ、影、ヤツは大門の方から来た、
間違いないな?」
「躊躇無く大門を抜けて…面目ありません」
「見た時にはもう橋の上にいました」
「そして空に向かい唸り、
逆方向に飛んだ…つまり」
里長の顔が一層恐くなる
「あやつ自身も逃げている可能性が高いゲコ」
……………
二階の座敷
「里長、歴代の長の記録にそれらしき
モノはないゲコ?」
「あるにはあるが、何しろ名称と特徴だけ
ですからなぁ」
「絵に残っていない事には…難しいゲコ」
「ヒノエの件もありますし、ウツシ」
「はっ」
天井から現れるウツシ
「コレを読んでみよ」
渡されたのは古い巻物、特徴が書かれている
いくつか読むと
「このイブシマキヒコになるかと…」
「どのあたりゲコ?」
「夜なのでハッキリとは言えませんが、
色は青に近いかと、そして強い風、それに
加えて飛ぶ姿はまるで上下を関係なく…
逆さでも平気な様でした」
「さしあたり砦の復旧ですな」
腕を組む
「この前の大破…痛い所ゲコ」
予算も大きいし日数も必要
「ヒノエの様子はどうだ?」
「今のところは何もありません、
あの一つよろしいですか?」
「何かあるゲコ?」
「ヒノエちゃんはどうやらイブシマキヒコと
何らかの繋がり…と呼べるモノがあるかと」
今朝のヒノエを説明する
「うむ、つまりヒノエの様子に注意をすれば」
「イブシマキヒコの接近を知れる…
という事ゲコ」
…………
「とんでもないヤツが出て来たんだな」
「夜行が連続したのもそのせいか」
「大丈夫なのか?」
不安が広がっているギルド
「ゴコク様、大丈夫ですか?」
ミノトに聞かれる、
不安な顔をしていたんだろう
「ヒノエの様子はどうゲコ?」
「今朝がた帰って来たと思ったら、
そのまま寝てしまいました」
「…うむ」
(それなら今は…心配無いゲコ)
「あの、ミノト様」
「何ですか?影君」
「あの、えーと…」
「ふふっ…天音なら心配しなくても
家に居ますよ?姉様を見ています」
笑うミノト