水没林
「セキエン!どうだ?!」
「うおおぉ!重いぃぃ!」
大剣を使ってみるセキエン、振り回される
「フン、情けないヤツめ」
「お前は振れるのかよ!」
風月だって多分振れない、
二人で仲良く尻尾ビターンされる
「二人とも!ちゃんとナルガ見て!」
何でこの二人は!
「ガキン!」
「もう切れ味落ちた!」
「翼硬いぞ!」
「ぬうっ!強い!」
「三人とも!だらしないわよ!」
ナルガの背中を連続で斬る
隣のエリアで回復と研ぎ、
幸い泥水の無い場所で戦いやすい
「大剣の方が合ってないか?」
「いや、やっぱり重てぇ」
体格的にも合ってるが
「所詮お坊ちゃんだからな、鍛え方が
足らんのだ」
「もう!何で二人は仲悪いのよ!」
「コイツ偉そうに喋るんだ」
「フン!不自由なく育ってるだけのヤツが」
なぜか今は息ピッタリ
「?、本当は仲良いとか?」
「「そんなわけあるか!!」」
…………
ギルド
何とか成功したが天音の力に頼ってしまった
「とにかく翼が硬い、武器を強化しよう」
もう一度ナルガに
「あぁ、俺も溜め斬り出来るように
しないとな」
「ふっ、未熟だな」
「風月さん、一番攻撃してないよ?」
四人で組んで数日、あまり成長しないが
良いパーティーになっている
「とにかく天音一人に頼っちゃダメだ」
二階から顔を出して聞くゴコク
(ほっほぉ、影はリーダーやってる様ゲコ、
良い傾向ゲコ)
座敷に行くと
「残りの連中はどうゲコ?」
「トガシの二人は何も調べようとしませんね、
諦めた様です」
報告するヒナミ
「ニシノの三人は行商人の出入り、鉄の
生産量を探っている感があります」
「よし、全員の目が里長から離れたゲコ」
「あの異人との取引ですね?」
「あっちの島はガルクしか居ない…
と思わせたゲコ」
「新たな販路が確立すれば」
「カムラは更に強くなるゲコ」
…………
「風月はなぜハンターになったんだ?」
外の団子屋
「うむ、俺は子供の時にウツシ先生が屋根を
飛び回るのを見掛けてな、聞けば本業は
ハンターだった」
食べ終わった串を投げると盆に刺さる
「それから鍛えて、特に走る、跳ぶは
ニシノでも一番になった」
教官って何歳なんだろ?
「得意な事は?」
「狩りだ、見たら解るだろう?」
だが連れの三人は首を振る、
明らかに違うようだ
「本当は何なの?」
天音が連れに聞くと
「投網だ、漁師の方が向いてる」
「コイツの足腰は舟で鍛えられたんだ」
「それが憧れだけでハンターになったんだ」
「フン、俺はウツシ先生になりたいんだ」
良くも悪くも真っ直ぐなヤツらしい、
自信過剰だが
「セキエンは?」
「俺か?俺は里長の長男って事以外は何の
取り柄も才能も無くてな」
「自分からそう言えるって凄い事よ?」
欠点を人前で、しかも平然と言える
「おだてるなよ」
茶を啜る
「子供の頃から何をやっても誉められて、
おだてられて勘違いしてたんだ」
串を投げると盆にさえ当たらない
「誉めて伸ばそうとしたんだろうけど…
この里に来て気が付いた、ハンターやっても
人並み以下だ」
「でも続けるのは…」
三本目の団子に取り掛かる影
「子供の頃からオヤジが大嫌いでよ、
憎んでさえいた」
影と天音は複雑、憎む家族さえ居ない
「お前は何をやらせてもダメだって言われて
育った、周りは里長の子供だから誉めてた
だけだ…
親父だけだったんだな…本当の事言って
叱ってたのは」
もう一度串を投げる、刺さらずに落ちる
「親父は元ハンターでもある、越えて少しは
親父に認めてもらいたい」
食べ終わり
「それで?影は?」
「決まっているだろう、影は照殿の弟だぞ?」
「…いや、兄貴になりたいわけじゃ…」
「違うのか?あの照殿に憧れないのか?」
「身近に優秀なヤツが居ると色々あるんだろ」
「色々とは何だセキエン?」
「色々だよ」
「また始まった」
呆れる天音
「コラァ!!こんなに散らかして!!」
ヨモギが二人の前に
「お客様でもマナーがあるでしょ!
片付けなさい!」
素直に片付けるセキエンと風月、
ヨモギって愛想良いのに怒らせると怖い
「天音がハンターになった理由は?」
「うむ、興味があるぞ」
「……一人で食べて行くためと…」
影を見る
「そんなの聞くだけ野暮でしょ!早くして!」
ヨモギって…何歳だ?
…………
「良く見て!あれは構えよ!」
指示だけする天音、影から手を出さずに
見ていてくれ、と言われた
ナルガクルガへ走り込む三人は止まり、影と
風月は横へ跳ぶ、セキエンはガード
「ガキィン!!」
「そうか!隙じゃないのか!」
思い出した!夜行で見てる!
飛び掛かりの予備動作だ!
「ガードしてたら攻撃できねぇ!」
「素早く動けば良いのだ!」
「とにかく動きを見るの!」
影は視界が広いが動きを忘れてる
セキエンは大剣を使えていないし全体に遅い
風月は弱点を理解していない
…理解出来ない?
…………
クエストリタイア
天音が参加しなければ、ココが自分達の
立ち位置
「俺やっぱり太刀に戻った方が
良いかもしれない」
痩せそうなセキエン
「軽さこそ正義ぞ」
ふんぞり反る
「風月さん、翼じゃなく頭とか斬れない?
何で行かないの?」
「正面は危ないだろう?」
「とにかく明日もナルガクルガだね影…影?」
「あ、あぁ」
「何ボーッとしてんの?」
「ちょっとな、今日は終わりにしよう」
影は見回すと
(春香さんは聞きづらいから…)
「フドウさん、ちょっとお聞きしたい事が」
「あ?」
不精髭の小太り
「セキエンに大剣教えろってんじゃねぇよな?」
「影、私は?」
「天音も一緒に来てくれ」
ギルドの二階
「何だ?話は?」
座敷に腰掛ける、影の真剣な表情に察して
「気になるのか?」
「…………はい」
溜め息を吐くフドウ
「お前はまだ若い、染料が合わなくても
まだ十代だ、取り返せる」
「?」
「先ずはしっかり睡眠を取る事だ、そして兜の
中がムレないよう頭皮を常に清潔にしてだな」
「あ!そうじゃありません」
「フドウさんってもしかしてw」
「バ!天音!俺まだ30だぞ!
気になるわけあるかよ!」
レウスの兜を手で抑える
気になってんだな
「…あの、兄貴ってどんな人でした?」
じっと影の顔を見るフドウ
「…そうか、お前もガキじゃなくなったか…」
「ガキ?」
首を傾げる天音
「なるほどな、春香が居ちゃ聞けない
内容だわな」
ニヤリとする
「最近違和感があったんです、
やっぱり兄貴は何か…」
「あ!それって私が現実味が無いって
言ったヤツ?」
「ちょっと待ってろ、ゴコク様の方が俺より
上手く話せる」
フドウは降りて行くとゴコクが来る
「ほう、照の話ゲコ?」
「はい、憧れてたはずなんですが…」
その存在の薄気味悪さを話す
「ふむ、死者を家族の前で悪く言うのは
気が引けるゲコ」
「悪く?やっぱり何か?」
照の才能は確かに天才レベルじゃろう、
しかし余計な事に目立つヤツゲコ
「目立つ?」
それの何処が悪いんだ?
「目立つ天才、じゃから子供にとっては
ヒーローゲコ、子供には憧れの存在ゲコ」
春香なんぞは中身が子供ゲコ、
じゃから今でも照はヒーローゲコ
「あ、それでか…」
なんとなく春香さんには聞きづらかった
「しかしワシを始め、大人から見ると
全く別の人間ゲコ」
「別?ですか?」
「影、お前も薄々感じている事ゲコ」
照の考え方を一言で言えば
『俺を見ろ!』ゲコ
「何か子供っぽいなぁ」
クスッと笑う天音
照の行動全部がそうゲコ、
里のお使いを進んでやる、クエストを
頑張り強くなる、そこまでは良かったゲコ
「何かあったんですか?」
先ずは無謀で派手な攻撃が多くなり、大技を
使い回復は仲間任せになって来た
それに百竜夜行では指示を聞かず大物や強い
モンスターへ向かう様になって行った
「…その辺なんだ」
説明されて理解出来た
自分の勝てる見込みの無いモンスターに
立ち向かうその
『無謀な行動』
味方に支えて貰うのが当たり前
『常に中心に居ようとする存在』
子供にとってはカッコイイかもしれない
だけど大人から見れば
『子供のまま大きくなったヤツ』なんだろう
「そしてあの舟の事故ゲコ、影、
照の死に際は聞いてるゲコ?」
「?何かあったんですか?」
「一人助ける度に、俺はカムラの照だ、
と言ってたそうだ」
「う…」
なんだよそれ、すっげぇキモい
「俺を誉めろ俺を認めろ…
常にそんな気持ちでいるヤツゲコ」
「もしかして、転覆してた舟助けたのって…」
「おそらく称賛を浴びたいだけ…ゲコ」
「……」
「……」
「影よ、お前は成長して心が大人になった、
だから照に違和感を覚えたゲコ」
「私も感じてたのそれかぁ」
「何でそんなに誉められたいんだろう」
「人に認められたい、その気持ちは
当然ゲコ、しかし度が過ぎたり方向を
間違えれば迷惑な子供でしかないゲコ」
立ち上がると
「影、お前は違うゲコ、お前は
『自分が勝つ』事より
『里を守る』事を優先してるゲコ」
腰を伸ばしながら
「百竜夜行を見れば解るゲコ、お前の指示
には自己顕示欲が無い、最小限の力で効率
が良いのが解る、フドウ達もその辺りに
気が付いたからお前の指示に従ったゲコ」
「影、大丈夫?」
「あぁ、ちょっとショックだった」
ゴコク様は降りて行った
「聞いてたぜ」
「ナカゴ」
「確かに夜行で勝手な事されちゃあ
迷惑だったろうな」
「皆を危険な目にさせたんだろうね」
「でもよ?他の里を助けてカムラの株を
上げたのも事実だろ?」
礼を言って来た風月
「そこは認めてやれよ?影」
自己満足のためだけの人助け
それでも結果的には命が助かった人がいる
「はぁ…何で悩まなくちゃならないんだ…」
「でもはっきりしたんじゃない?」
「何が?」
「影ってさ、ハンターとして強くなるのは
『兄貴になる』とか思ってたんじゃない?」
グサッ!と刺さる、何だよ勘が良すぎるぞ天音
「照さんが不気味に見えたって事はさ、
影が大人になったって事でしょ?」
「実感ないな…」
「影と照さんは違うって
ハッキリ解ったじゃんw」
強くなるのを躊躇わなくなる